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‘ブラコジマ’の極意
 先週末のお昼前、東横線で多摩川を越えて街道沿いの某駅前に降り、商店街の隅々からバス通りや街道まで延々と2時間以上、歩き回った。暇つぶしにブラタモリごっこした訳でも断腸亭主人を気取る訳でもなく、差し迫った業務上の必要から足を運んだのだ。
 事前に交通体系(特にバス路線)や人口密度メッシュ、主要商業施設の位置や規模、新設予定商業施設の位置、街区別の都市計画規制など資料を作成して頭に入れ、現地では駅からの人の流れや商店/飲食店の分布、街並や路地の雰囲気、マンションのタイプ別分布(高度規制)などを確認しながら、課題物件の商業ポテンシャルの仮説範囲を絞り込んで行く。長年慣れた手順だが、地図やグーグルマップで見ただけでは解らない地形上の障害や渋滞する交差点など、人や車の流れを遮る暗礁は行ってみなければ解らない。
 商店街に並ぶ業種にしても、近隣型かコミュニティ型か広域型か、地元店かローカルチェーンかナショナルチェーンか、同じ店でも標準規模か小型店か大型店か、物販は一階のみか二階まで成立しているか、飲食店も何階まで成り立っているか、時間貸し駐車場の分布と規模、料金水準など、ふらふらと歩いているようでもしっかりチェックしている。もちろん、雰囲気が洒落ているとか小奇麗だとか、下町っぽいとか廃れているとか、大人っぽいとか若々しいとか老人ぽいとか、女っぽいとか男っぽいとか(結構、大差がある)、街の空気や客層も五感六感で捉えている。
 そんな街歩きの印象で仮説の範囲を絞り、仮説別に物件の建築的ポテンシャルから施設規模と商業構成を設定し、ハフモデル的手法で実勢商圏と占拠率を割り出して‘開業初年度’の売上を予測する。‘開業初年度’と敢えて規定したのは、首都圏周辺では武蔵小杉のように新線開通などで人口が急増する地域もあり、過去の人口増加ペースと新線や新駅開業による人口増ペースの加速を年度別に予測する必要があるからだ。あくまで予測なので現実とはズレるが、きちんと予測して計算に入れるに越した事はない。
 こんなのが小島流街歩き‘ブラコジマ’の極意?なのだが、少々専門的に過ぎるかも知れませんね。出店検討など現地調査の参考にでもして下さい。
 2015/11/11 09:27  この記事のURL  /  コメント(0)

販売職のスキルとは
 給与の低さや勤続期間の短かさが指摘される販売職だが、給与水準を向上し勤続期間を伸ばすべく業界では様々な試みが行われている。その最たるものが接客ロールプレイイングのコンテストで、接客の話術や振る舞いが競われているが、それを極めたとして、果たして生産性が上がり給与水準が向上するのだろうか。
 店舗運営の仕組みと生産性を長年、研究して来た立場から言えば、売上を左右するのは接客の話術より販売員の曜日時間帯別員数配置の精度と柔軟性であり、さらに言えば販売体制より品揃えの精度と解り易い陳列分類配置、それを維持更新する陳列整理や再編集、機会ロスを防止する補給体制に拠る。となれば、接客技術以外に品揃えと陳列の維持・更新編集技術、出前と元番地さらには後方ストックの整理・管理技術と在庫掌握力、加えて店長にはレイバーコントロール技術が問われよう。
 今時はECと店舗販売の連動(O2O)が不可欠だし、ネットで比較検討してから来店されるお客様も多くなっているから(AISAS)、ECでの先物提案やロングテール商品の扱いを知らないでは済まされないし、店頭に在庫が無ければタブレットを取り出して近隣店舗やECの在庫を照会したりEC商品をお勧めしたり、お客様のスマホにストアアプリをインストールするお手伝いも出来なければならない。そんなデジタルワークにおたおたするようでは今時の販売職は勤まらないが、果たしてどれほどの企業がデジタルワーク研修を徹底しているのだろうか。私が店頭で見る限り、タブレット接客に慣れた販売員も各社スマホのインストール方法を周知している販売員も、まだ少数派のようだ。
 これからの販売職に必須な技術は従来の接客技術に加えて、以下の2点と思われる。
1)店頭の陳列と後方ストックの整理管理を連動する在庫掌握管理・陳列表現力(これが売場で活きるホントのVMD技術なのです!)。
2)ECと連動して在庫照会や商品推奨を行うタブレット接客技術(チャット接客も含まれるかも) 、各社スマホの使い方を周知してストアアプリのインストールやバーコードスキャニングなどをサポートするデジタルワーク技術。
 加えて、これらの技術習得が売上向上やコスト削減、機会損失/値引きロスの圧縮に繋がって販売職の給与水準が向上するよう、経営サイドが業務体系を抜本から組み直す必要が在る。販売職不足が深刻化する中、生産性の向上と待遇の改善は最優先の緊急課題だと思う。
 2015/11/10 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

Amazonがリアル書店?の理由
 アマゾンは11月3日、ホームグラウンドであるシアトルの「ユニヴァーシティ・ヴィレッジ」に初のリアル書店を開店した。ネットには逸早く訪問記論評が氾濫しているが、日本では総じて??という受け止め方が目立つ。日米の受け止め方の違いにアマゾンがリアル店舗を開設した戦略的意図が伺える。
 『店舗を持たないゆえの圧倒的低コストが最大の武器なのに、どうしてリアル店舗に進出するのか』という根源的疑問には、『モルタル(実店舗小売業)側のオムニチャネルな反撃に圧されて成長が鈍化して来た』というのが模範的な回答であろう。日本でもショールーミングに圧されていたはずの家電量販店が反撃に転じ、ヨドバシカメラが店舗を起点としたサービス機能(設置や設定)付き自社物流を武器に業績を伸ばすなど、顧客への配送を宅配業者に依存して対面サービスをカバー出来ないアマゾンの弱点を突く動きが広がっている。
 米国でもモルタル側のオムニチャネル攻勢、とりわけ店受け取りや店取り置き、店出荷など、実店舗を活用した顧客利便の追求が功奏する中、ウォービーパーカーやボノボなどEC事業者の一部はオムニチャネルなショールームストアを布石して対抗している。モルタル側は商品に直接、触れて試せて販売員と双方向な確認が出来る事に加え、ECの出荷拠点(アマゾンでも米国内の出荷拠点は55ヶ所/日本は10カ所に過ぎない)とは比べ物にならないほど多数の受け取り・出荷拠点(実店舗)を活用出来る事も顧客利便上、極めて優位だ。
 EC化が最も進んでいる英国(消費に占めるEC比率は13.5%と米国の7%を遥かに上回る)や欧州では宅配より‘クリック&コレクト’(受け取り所渡し/送料が割引や無料になる)が主流で、アマゾンも各国に千ヶ所単位の‘アマゾンロッカー’や委託受け取り拠点を設けているが、PPP(ピックパックポイント/配達・代金徴収・返品手続きの代行)を540拠点で提供するハンガリーのラプケル社のような対面サービスは期待出来ない。
 加えてアマゾンにとって一番、危急な理由だと思われるのが宅配費用の重すぎる負担だ。ヤマト運輸と佐川急便、日本郵政など大手宅配業者が利便とコストを競う日本では通販品の宅配コストは受印不要のメール便なら165円〜216円(600g以下/飛脚メール便)、180円〜300円(500g以下/ゆうメール)、受け取り印を要する宅配便でもヤマトの宅急便コンパクトの最大割引料金は354円(関東圏内)、通販大手と宅配業者の相対契約では一律300円以下の攻防と言われるが(横田増生氏の新刊「仁義なき宅配」に詳しい)、UPSとFedExの寡占状態にある米国では最も低料金のUSPS(米国郵政)のメール便でも$12.65と日本の5倍もするし、さらに高いUPSやFedExでは配達日数を短くすると加速度的に高くなる。欧州も米国ほどではないが日本の比ではなく、日本は世界でも例外的に宅配サービスの質とコストが揃った通販天国なのだ。
 そんな訳でアマゾンの宅配コストも売上の10%に迫って収益を圧迫しており、米国はもちろん日本でも大手宅配業者を使わない独自の宅配体制を模索している。ラストワンマイルをドローンで宅配するという驚愕の構想も100%本気なのだ。アマゾンではないが今年6月、ローソンとSGホールディングス(佐川急便)が共同で設立したローソン店舗を軸に宅配・ご用聞きサービスを展開する「SGローソン」も注目で、店舗や受け渡し所を拠点とするラストワンマイル双方向サービスがオムニチャネル戦略の要になって行くと思われる。
 独自宅配によるコスト圧縮とラストワンマイル双方向サービスの拠点確保というのがアマゾンがリアル店舗に進出する理由だと結論されるが、現地からの報道に拠れば‘アマゾン書店’は「Fire」タブレット専用のテーブルや「FireTV」の実演コーナーなどを除けば米国の今風(カフェ併設のラウンジなんかが在る)書店と変わらず、「蔦屋家電」のような書籍とデジタルツールとの目を惹く編集もなく、宅配サービス拠点としての後方施設も欠き、周到な準備をして戦略的に仕掛けた代物とは言えないようだ。
 2015/11/09 09:53  この記事のURL  /  コメント(0)

‘ダークストア’が増えて行く
 ネットスーパーには、近隣に配送エリアを絞って店舗の陳列棚からピッキングする「店舗型」、専用センターでピッキングしてリージョナルに配送エリアを広げる「センター型」がある。スーパーがネットに進出するなら既存の店舗を使う前者の方が断然、コストもリスクも低く、初期投資が大きく稼働率が高まらないと採算に乗らない後者をわざわざ手がけるケースは限られる。
 という訳で、ほとんどのネットスーパーは「店舗型」だが、受注が増えると各店舗でのピッキングでは間に合わなくなるし、来店客と棚の商品を奪い合う事態になりかねない。そこで登場するのが「ダークストア」なのだそうだ。これは家賃の安い非商業立地に置くピッキング専用の店舗(店舗レイアウト型物流センター)で、不採算化して閉店した店舗が使われる場合もある。ネットスーパーが普及しているイギリスから始まったそうだが、日本でも今年三月、イトーヨーカ堂が「ネットスーパー西日暮里店」(お客様は入れない!)を開業している。ウォルマートのドライブスルー専用スーパー「ウォルマート・ピックアップ・グロッサリー」は店舗の駐車場を使ったクリック&コレクトサービスだが、店舗にはお客を入れないから、これも既存店舗転用の「ダークストア」と言えよう。
 生鮮食品を含むネットスーパーに限らず、ひとつかふたつのDCからEC受注品を全国に発送する体制がベストとは限らない。ユニクロが目指しているように、店舗在庫を圧縮すべくEC向けDCから店舗にもスピード補給する体制(初期投入はこれまで通りパッキン単位の直流)では全国6〜10カ所のDCが必要になるし、紳士服やパンツ、矯正メガネなど加工が不可欠の商材ではリージョナル毎に加工機能を持ったDCを配置すれば顧客の利便性が格段に高まる。となれば、立地が悪化して閉鎖されたロードサイド店舗などが「ダークストア」に転用されるケースも増えて来るに違いない。
 2015/11/06 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

昇るか下るか
 『昇るか下るか』は出店戦略のみならず価格政策や調達政策まで企業の戦略ベクトルを問う方向感だが、長期間にわたって同一方向ばかりに動くと収益構造が疲弊して動きが取れなくなる。それはPDCAプラットフォームの連作障害とも似ているが、時間軸のスパンが違う。
 出店戦略で‘昇る’とは、より都心立地を志向する事、‘下る’とは、より郊外立地やローカル立地を志向する事で、昇れば下る余力が積み上がるが、下るばかりでは昇るバネが失われてしまう。よって、出店戦略では情況を読んで数年毎に昇りと下りのバランスを切り替える事が肝要だ。
 価格政策でも‘昇る’とは価格帯を上げたり高価格なブランド/業態にシフトする事で、‘下る’とは価格帯を下げたり低価格なブランド/業態にシフトする事だが、これも下るばかりでは企業やブランドのイメージが大衆化して昇るバネが損なわれてしまう。
 調達政策で‘昇る’とは高付加価値を志向して、より川上(生産ラインや素材開発)に踏み込む事で、インソーシング志向と言ってもよいだろう。‘下る’とは市場対応の速さと開発固定費圧縮を志向して、より川下(小売側)に流れる事で、アウトソーシング志向と言ってもよいだろう。これも下るばかりでは開発組織が痩せ細り、登りたくなっても登れなくなってしまう。
 もうひとつ、経営政策で‘昇る’とは、より時空を鳥瞰出来る高位の視点(principleやdomain strategy)を志向する事で、CEO主導と言ってもよいだろう。‘下る’とは、より現場に降りて実務運営の視点(tacticsやoperation)を志向する事で、COO主導と言ってもよいだろう。前者では10年単位のドメイン戦略や収益構造が問われる一方、後者では四半期や半期、せいぜい年度の業績が問われる。
 このような視点からワールドやTSIの長期的な業績推移(数十年)を俯瞰すれば、両社とも ‘下る’ベクトルに偏った経営が長期に続いた弊害が指摘される。アダストリアの場合、2010年3月2日の石井社長解任から紆余曲折を経て今日の再成長軌道に乗るまで様々な‘昇る’‘下る’のせめぎ合いが在ったと推察される。機会を見て検証してみたい。
 2015/11/05 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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