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方程式依存の弊害
 10月21日の日経朝刊は、出身学者が相次いでノーベル賞を獲得する京都大学の山極学長の教育理念を大きく取り上げていたが、その骨子は以下の三点だった。
1)正解をひたすら暗記するのではなく、文理融合の答えの無い問題を考えさせる。
2)厚い知識の積み重ねや深い教養がないと独創的な発想は出て来ない。
3)今すぐ役立つ人材ではなく未来の社会に応える人材を育てる。
 これは産業界に即戦力になる理工系人材の育成に傾く文部科学省の方針を暗に批判したものだが、我らギョーカイも真摯に受け止める必要が在る。
 即効果が出るPDCAプラットフォームへの過度依存は連作障害に陥るばかりか、中長期の収益体質を損ない生命線たるドメイン戦略を崩しかねない。現場の戦術やPDCAのスピードに偏れば、広範な時空を見据えて中長期の経営戦略を組める知性豊かな人材が埋もれてしまう弊害も指摘される。
 このギョーカイに限らず‘プラットフォーム’や‘○○理論’などパターン化された方程式に依存する傾向が強まっているが、どれも一時の情況から帰納された過去のパターンに過ぎず、賞味期限が来る事を忘れてはならない。そんな過去のパターンに依存する‘思考停止’経営に陥るのも、長年続いた受験教育の弊害なのだろう。
 山極学長の言う『暗記や方程式に依存しない、解の無い問題を考える教育』こそ未来を開く本質だと思うが、このギョーカイもいいかげんに‘思考停止’のプラットフォーム経営から脱するべきではないか。
 2015/10/22 11:31  この記事のURL  /  コメント(0)

点をPOSで繋ぐバラックMDを超えて
 駅ビルやSCに並ぶアパレル店のMD展開を見るとほぼ99%、点のMDをPOSで繋いでグロスで在庫コントロールする‘単品MD’だと看て取れる。点をPOSで繋ぐMDだから似たような後追い商品が重なってバラエティがなく、素材やカラーの軸も通っていない。MDが継ぎ接ぎだから編成も陳列も継ぎ接ぎになり、それを並べる器(店)も必然的に構造性を欠くバラックになってしまう。
 駅ビルやSCの開業やリモデルを取材しても‘絵になる’ストアは滅多に見られず、多少は面のMDを展開する外資SPAとて安普請の金太郎飴に見飽きてカメラを構える気にもなれない。やはり絵になるのは百貨店の欧米プレタ〜ラグジュアリーブランドだが、これとて見られるのは本社のVMDerがセットしたシーズン立ち上げ時だけで、一ヶ月も経てば破れ障子のごとく無惨に崩れてしまう。シーズン末まで美しい陳列を崩さないのは素材と色を絞って定番を補給する一部の高級雑貨ブランドだけで、それらは皆、ショールーム陳列に徹している。
 手袋をして接客するような高級バッグやハイ・ランジェリーのブランドでは陳列してあるのはサンプルで、購入を決めるとストックから真っ新な品を出して恭しく渡してくれる。さすがにサイズのある靴やプレタでは陳列している商品も売るようだが、高級バッグやハイ・ランジェリーでは‘新品渡し’がお約束のようだ。
 点のMDをPOSで繋ぐ‘単品MD’ではストーリーある美しいVMDもショールーム陳列も見果てぬ夢だが、LV型の素材軸MDやエルメス型の定番MDならストーリーある建築的なVMDもショールーム陳列も容易だ。そんなMDをECと連携してオムニチャネルに展開するなら、EC(B to C)物流で店舗へ補給して店舗在庫を圧縮し在庫回転を飛躍的に改善するマジックが成り立ってしまう。オムニチャネルなショールーム陳列までは行かなくても、ちょっと頭を切り替えれば店舗在庫と店舗運営経費を格段に圧縮する手近なカイゼン手法は幾らでもある。
 そんなカイゼンを仕掛けるには、どんなMDを組んでどう陳列し、どんな機能とレイアウトの店舗を創り、何処に在庫を持ってどう補給するか、11月11日に開催する『VMDストアプランゼミ』、同12日に開催する『最新マーチャンダイジング技術革新ゼミ』でビジュアルに解説したい。
 2015/10/21 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

科学的分析アプローチの罠
 TSIホールディングスは世界的なコンサルティングファームから転じた上席執行役員を軸に「科学的分析アプローチ」で業績改善を図るそうだが、この手の「科学的アプローチ」は三つの欠点があって、必ずしも成果に繋がらない事が多い。
 ひとつは計数的アプローチが結果の後追いになって‘後ピン’を繰り返してしまう事で、POSデータによる売れ筋後追いが同質化と供給過剰をもたらして値引きロスと残品を肥大させるばかりか、先の売れ筋の芽を刈って縮小再生産のスパイラルに陥るケースなど典型例だ。80年代までは稼ぎ頭だったイトーヨーカ堂の衣料部門が痩せ細って赤字転落するに至った元凶と指摘したい。
 もうひとつは計数的PDCAを繰り返して情況対応がパターン化し、成果が薄れる一方で労力や投資が嵩んで行くという‘麻薬中毒’に陥る事で、大手アパレル各社に蔓延した‘プラットフォーム’などその典型だと思う。プラットフォームは始めの2〜3年は効果が出るものの、繰り返すと労力や投資に見合わなくなる‘連作障害’が避けられない。効能が薄れたら新たなプラットフォームに乗り換えるべきだが、一旦浸透したプラットフォームから抜け出すのは相当に難しいようだ。
 三つ目は「科学的分析アプローチ」が企業をPDCAサイクルの精度やスピードの改善に注力させる結果、企業行動が近視眼化して戦術や作戦の域に留まり、中長期のドメイン戦略や収益構造戦略が疎かになる事だ。短期の時流対応が結果的に消耗戦に終わり、収益力や財務体質を毀損してしまうケースが少なくない。
 この三点はワールドやTSIが苦境に陥った元凶であり、言い方は変えてもまた同じ過ちを繰り返すのかと陰鬱になる。経営は幾つものレンズを臨機応変に付け替えて、もっと空間的時間的視野を広げ、拙速に流れず柔軟かつ建築的に組み上げて行くもので、「科学的分析アプローチ」は‘後ピン’な数字のブラックホールに陥る事無く、現実の空間的時間的流れをビジュアルに捉える4Dツールとして活用すべきだと思う。
 2015/10/20 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

「Amazon」ログイン決済が広がる!
 ECでいちいち個人情報を入力するのは面倒だし知らないサイトだと情報の管理も不安なので、同じ商品がアマゾンで買えるなら登録済みのアカウントで容易安全に決済したくなる。そんな心理を捉えたのがEC支援のフューチャーショップが9月1日から始めた「アマゾンログイン&ペイメント」サービスで、同社が構築するECプラットフォームを使うECサイト上で「Amazon」に登録したアカウントによるログインと決済が出来るという。
 実はこれアマゾンジャパンが15年5月11日から始めたオープンサービスで、フューチャーショップに限らずアマゾンジャパンと契約したECサイトならアマゾンのアカウントで決済出来る。消費者側のメリットもともかく、個人情報の入力を面倒がったり躊躇ったりしてカートを離脱する率を抑制出来れば新規登録率もコンバージョン率も高まるし、カード利用のセキュリティ管理もアマゾンにお任せだから、EC業者側のメリットも大きい。このサービスは13年10月の米国から始まって英、独、印に続く5カ国目で、すでに各国で数千社が利用しており、コンバージョン率が10〜34%改善されたと報告されている。
 アマゾンはアカウント登録時に配送や決済に必要な基本情報以外の個人情報を取得しておらず、このサービスでEC業者に提供するのも個人名、住所、メールアドレスなど配送に必要な情報に限られ、クレジットカード情報は提供されない。一方で、アマゾンマーケットプレイスと同様の保証が適用され、購入者と販売事業者のトラブル解決をサポートする。
 アマゾンにとっても手数料収入に加えて決済サービスの取り扱いが広がるメリットも大きく、積極的に拡大して行くものと思われる。これもオープン&クローズ戦略の好例で、クリック(EC事業者)側もモルタル(店舗事業者)側もオムニチャネル時代のラッダイトにならぬよう柔軟適確な戦略が望まれる。
 2015/10/19 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

10月18日はミニスカートの日?
 今週の日曜日10月18日は「ミニスカートの日」なんだって、ギョーカイ人ながらまったく初耳だった。なんでも1967年にミニスカートの女王 ツィッギーが初来日した日だからだそうだが、いったい誰が決めたのだろう。色々と調べたが起源がまったく解らないので、ご存知の方がいたらご一報願いたい。
 ミニスカートは60年代スインギン・ロンドンが生んだパワーアイテムで、トラペーズラインのジャンパードレスやホットパンツなどのバリエーションがあった。長澤均さんの「BIBA スウィンギン・ロンドン1965-1974」は当時のファッションカルチャーを伝える必見の一冊だ。今日の日本や韓国ではミニスカートに見える超ミニキュロットやショーツ付き超ミニスカートなども加わって独特のエロカワスタイルが定着しているが、これなどファッションのローカル性を象徴するものだと思う。たかがミニスカートされどミニスカートだが、次はどんなミニスカートが登場するのだろうか。
 2015/10/16 09:20  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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