| Main | 次へ
エクスクルーシブ・バイイング
 日本のギョーカイではあまり聞かないバイイング手法だが、ブランド商材を大量買い取りする欧米の大手デパート/スペシャルティチェーンでは様々に競われる差別化と価格決定権確保の策だ。
 どんな大手チェーンでも人気ブランドのすべての商品を買い占める訳にはいかないから、自社のMDシナリオに合った特定企画や特定品番を販売地域を定めて独占(エクスクルーシブ)契約する事になる。米国の場合、全米エクスクルーシブがベストで、コールズなど大衆NBの定番品を買い占めてキックオフでオフ・プライス販売する手法で成長して来た。ノードストロムやサックスフィフスも人気ラグジュアリーブランドの品番や色を絞って全米エクスクルーシブを仕掛ける。全米をカバー出来ないローカルチェーンの場合は東部13州とか中西部12州とかでエクスクルーシブを図るのだろうが、具体的なケースを知る機会が無い。
 消化仕入れの日本の百貨店ではブランド商品の扱いが店舗単位で(取引条件も店舗で異なる)、セントラルバイイングで独自の価格政策を実現する意志も力量もないからエクスクルーシブ・バイイングが発達しなかったが、その分、ブランドメーカーに対する「別注企画」が横行して来た。‘横行’と言ったのは買い付けロットと納入コストの経済的合理性を欠く‘優越的地位を利用した強用’という性格が強いからで、数十枚〜百枚単位で別注品の開発・生産を要求するケースも在ると聞く。
 米国のエクスクルーシブ・バイイングはロットとコストの経済的合理性で独占領域を確保するもので、ロビンソン&パットマン法など独占禁止法の優越的調達規制をクリアする合理性透明性が問われる。日本の百貨店バイヤーにそんなコンプライアンス研修が行われたという話は余り聞いた事が無いが、そんな姿勢ではバイイング技術も進化しないのではないか。
 2015/09/30 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

『爆買いは続かない』が現実に!
 百貨店や家電量販店、ドラッグストアなどの業界は中国人観光客などの‘爆買い’という棚ぼたに沸き、衰退する国内消費への対策を先延ばしにしているかに見えるが、そんなギョーカイを震撼させる変化がついに現実となりはじめた。先週木曜に当社で開催した月例の「販売情報交換会」席上、某百貨店から9月に入っての免税売上の急減が報告されたのだ。
 同店によれば、免税売上比率は8月の約30%から9月23日段階では23%に急落しており、10月以降はさらに減少する可能性を示唆していた。その要因は株価の急落もともかく9月1日から実施された中国政府による入国時の課税厳格化で、2010年に施行された5000元までの無税持ち込み枠をこれまでとは一転して厳格に適用する方針に転じた事に拠る。大量のお土産や転売目的の多数持ち込みは特にマークされており、不申告が発覚すれば高額の罰金が課される事もあって差益目的の業者買いは成り立たなくなった。厳格化は別送品にも適用されており、抜け道は限られるようだ。
 バブル期やその後の円高時代の日本でも欧米で‘爆買い’する旅行客が目立ったが、無税持ち込み枠の20万円を超えるブランド商品などを身に着けて‘使用品’として持ち込む人も多かった。市場開放の圧力に晒される当時の日本では適用が甘く多少のオーバーは大目に見られていたが、内需主導の経済成長への転換を急ぐ今の中国政府にとっては消費の海外流出阻止は危急の課題であり、今回の海外購入品に対する課税厳格化もなり振り構わぬ阻止策の一角に過ぎない。次々と繰り出される海外消費抑制措置によって中国人観光客の‘爆買い’は一転して急減すると見るべきで、努々棚ぼたの継続を期待すべきではない。
 2015/09/28 10:34  この記事のURL  /  コメント(0)

PDCAボケ?
 今世紀に入った頃から「プラットフォーム」という言葉がアパレルギョーカイで流行るようになって何の事なの?と訝しく思っていたが、最近は「PDCAサイクル」という言葉に置き換わって来た。こっちの方がストレートな言い方でPlan(計画)⇒Do(実行)⇒Check(検証)⇒Action(修正)の実務遂行の精度や速度を高める実務マネジメント手法を意味し、特定企業に置けるPDCAサイクルの標準形を「プラットフォーム」と言うようだ。
 PDCAサイクルにせよプラットフォームにせよ現場の業務精度・速度をマネジメントする戦術(tactics)と作戦運用(operation)の次元であり、現場の活力を高める一定の効果が認められるが、何年も同じパターンを続ければ消耗戦に陥る麻薬でもある。経営者が考えるべきはより上位かつ長期の戦略(strategy)や企業理念(principle)であり、PDCAサイクルやプラットフォームを声高に言われては近視眼的時流対応に流されて長期のシナリオを誤るのではと懸念してしまう。
 経営者が考えるべきは5年先10年先に何処(生存領域)に居てどんな収益構造(付加価値の創造−営業経費)にして社内外ステークホルダーへの責務を果たすかで、半期や四半期の業績で部下を評価する視点で外部に語るべきではない。経営者が戦術に踏み込み過ぎて近視眼化すれば時流対応の消耗戦に陥り、やがては収益力も成長力も損なって生存領域さえ失ってしまう。一世を風靡しながら崩れて行った有力企業に共通する失策であり、他山の石として肝に銘じて欲しい。
 2015/09/25 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

マス・メリット幻想から覚めよ
 マス・メリットを追って多店舗展開して来たアパレルチェーンや量販店チェーンが軒並み不採算店舗の大量退店を迫られているが、ここに至った最大の要因はマス・メリットの勘違いに在ったと思われる。
 多店舗化すればロットが大きくなってバイイングパワーで調達コストを下げられると単純に考えられて来たが、それは供給が潤沢で問屋流通比率の高いNB商品や自社がロット買取するPB商品、あるいは欧米式のエクスクルーシブ買取(販売地域や品番を限定して独占)についてであり、需要より供給がタイトな人気商品や供給が不安定で生産者直あるいは市場経由の生鮮食品などではバイイングパワー効果は限られる。加えて、大量調達した商品を適時適量に多数の店舗に供給し機会ロスなく販売して行くには情報システムで武装したきめ細かいロジスティクス体制が不可欠で、直流物流やパッケージ補給など粗っぽいやり方では在庫の偏在による機会ロスと値引きロスがマス・メリットを食い潰してしまう。ゆえに生鮮食品などではナショナルチェーンより地産地消体制が整ったローカルチェーンの方が効率的で、顧客にとっても魅力的な場合が多い。
 それはアパレルの世界も大差なく、顧客を見据えて店舗展開を絞り需要が供給を上回る人気ブランドは地産地消なローカルチェーンのごとく効率的だし、シャツやパンツで例外的に見られる ‘ファクトリーダイレクトSPA’もEC並みの在庫効率が注目される。
 オムニチャネル消費が拡大し在庫効率も営業効率も投資効率もECが店舗を大きく凌駕する現実を突き付けられる中、マス・メリットを追って多店化するメリットはもはや極めて限られ、ECを基軸に店舗事業の在庫効率と運営効率を抜本的に改善するオムニチャネル戦略が至上命題となった。10月8日に開催する『チェーンストア経営革新ゼミ』、10月15日に開催する『ショールームストア開発ゼミ』では販売と物流の分離でチェーンストアの在庫効率と運営効率をEC並みに高める流通革命の実務手順を豊富な実証資料で提じたい。
 2015/09/24 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

世界のジョーシキ
 『ティーンエイジャーのみならず、経営危機のブランドは全て「店舗が多過ぎる」。ある店舗数を過ぎたところから、「誰もが着ている」ため突然地割れを起こすのだろう。逆の言い方をすると、店舗過多になる前に店舗数を制限しオンラインビジネスにスィッチしているブランドは足元を固めている。なぜかというと、ティーンエイジャーも大人も携帯を見ている時間とモールに行く時間の長さは到底比較にならない。』・・・・・とはクイックシルバーの倒産、パシフィックサンウェアの上場廃止危機、ズーミーズやホリスターなどティーンズブランドの凋落を伝える今日の平山幸江さんのブログからの引用だが、『多店化して飽きられるよりネットで稼げ』は私の指摘を裏付けるものだし、『モールに行く時間よりスマホを使ってる時間の方が遥かに長い』はもはやティーンズのみならずネット世界の全ての世代に言えるのではないか。
 そんなジョーシキが通じないのが奴隷制資本主義の残滓を引き摺るチェーンストア業界なのだろう。『目標○○○店!』、「ビッグ」あるいは「スーパー」はたまた「旗艦店」など大きく多店舗である事が至上であるかのごとき錯覚はオムニチャネル時代の今日、在庫効率も運営効率も投資効率も劣悪で勝ち目の無い大艦巨砲主義に固執するようなもので、EC空爆の前に玉砕するしかない。
 数百億円以上の事業スケールなら売上対比の営業コストは、国内店舗を100とすれば国内ECは50〜70、海外店舗は120〜140と推計されるから、国内店舗/国内EC/海外(店舗とEC)の売上を4:4:2にするぐらいが賢明なバランスではないか。すくなくとも、海外店舗売上が国内EC売上を上回るような無茶だけは止めておくべきだ。
 2015/09/22 14:16  この記事のURL  /  コメント(0)

| Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ