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カタルシスの刻
 我らファッションギョーカイは今やカタルシスの最終局面に雪崩落ちようとしているが、いまだ茹で蛙を決め込む企業、リストラだけで新天地を描けない企業が実に多い。
 生産地の人件費高騰に円安も加わっての調達コスト増を売価に転嫁すれば覿面に客足が遠のき、転嫁しなければ‘逆鞘’に収益が圧迫される。中国から南アジアへ生産地を移動しても束の間の時間稼ぎにしかならず、中間層化と労働力の逼迫で人件費の高騰が追いかけて来る。それはH&MやユニクロのようなグローバルSPAも同様で、大ロット低コスト調達による在庫偏在ロスとマーケティングコストの吸収はもはや困難になりつつある。
 今ギョーカイが直面しているカタルシスの本質的背景は、この世界的なアパレル製品の調達コスト上昇に加え、オムニチャネル消費が急進する中で成長性も収益性も失った店舗販売の行き詰まりが大きい。少子高齢化がもたらす若年店舗要員の慢性的不足と賃金上昇も店舗販売の収益性をじりじりと圧迫している。「小売SPA化」に邁進して来たワールドの挫折はその典型的結末と言えよう。アパレル店舗の行き詰まりはSCや駅ビル、百貨店の経営に波及するのは必然で、アベノミクスもインバウンドも店舗販売を延命させる抜本的な助けにはならないだろう。
 加えて、ファッションギョーカイはもっと根源的な衰退要因に圧迫されている。ひとつはライフスタイルと消費対象が多様化する中で‘装う’消費文化が衰退し、一部のファッションビクティムを除けば装いに関心を失ってファッションがコモディティ化する流れが止まらない事だ。「ユニクロ」や「H&M」で良しとする人々が広がってファッション係数が4%まで落ち込んだ今日は、若者が最新ファッションを競ってファッション係数が10%の頂点に達した72年頃とは較べるべくもない。そんな‘脱ファッション化時代’の今日、売れ筋を追って同質化していくギョーカイにも、時代の要請とは懸け離れた‘クリエイション’や‘モノづくり’に固執するギョーカイにも、ファッション消費を復興させるパワーは期待出来ない。
 もうひとつの根源的な衰退要因が、少子高齢化とともに老化成熟して行く世代構成と消費文明の変化にギョーカイが対応していない事だ。未だナイスバディな若い人々をイメージした商品開発が主流で、衰えた身体に成熟洗練のセンスを纏う老いた人々に訴える商品開発はまだ主流となってはいない。ランウェイや広告のモデルは実際の顧客より若きに過ぎるし、一部に見られる‘シニア服’は成熟洗練の装いとは悲しいほど掛け離れている。化粧品業界が薬品・化学分野や食品・飲料分野からの参入も加わって‘アンチエイジング’が本流となり大人市場を広げたのと較べれば、ファッションギョーカイは老いる事に消極的過ぎたのではないか。
 このように事業構造と世代構成や消費文明の変化に取り残されてカタルシスに瀕するファッションギョーカイは根源から変わらなければならないが、それには川上から川下そして流通・販売の海まで消費と生産をオンラインに繋ぐファクトリーダイレクトな連携、ギョーカイに若者を送り込む専門学校や大学のカリキュラムや教育理念の根源的実学化と産学連携が不可欠だと思う。モノづくりと流通販売が分断されたまま、面子や建前に囚われて騙し合い誤摩化し合うギョーカイもガッコーももはや先が無い。根源から禊いで蘇らせるカタルシスが急がれる。
 2015/08/31 09:50  この記事のURL  /  コメント(0)

怪しいブランド
 ハワイ発祥の某ライフスタイルブランドのマスターライセンス権を某商社が取得してライセンス商品の展開も始めると報道されていたが、私も夏場に愛顧して来たブランドだけに正直、がっくり来た。同じ商社が前後してマスターライセンス権を取得した伊発バッグブランドは元より26社30アイテムにもライセンス商品が氾濫していたから、某商社がさらにライセンス先を拡げてもブランドイメージはたいして変らないだろうが、ハワイ発祥の某ライフスタイルブランドのブランドイメージはどうなるのだろうか。
 三陽商会による「バーバリー」のような完成度の高いケースもあるからライセンス商品が必ずしも怪しいとは言えないが、ライセンス先を多岐に広げればブランドイメージを維持するのは難しくなる。かつて『トイレのスリッパまで』と揶揄された某著名仏ブランドのように結果的にブランドイメージを損なったり、もっと酷いのは元からイメージをでっち上げてライセンス商品で稼ぐ‘泡沫ブランド商法’のギョーカイもあるらしい。昔は著名だったブランドの名を借りて再生する‘ゾンビブランド商法’なんかもその仲間なのだろうか。
 90年代以降、製販一貫直販体制がブランドビジネスの王道になり、著名ラグジュアリーブランドも卸先やライセンス先を整理してブランド価値を高めて来た事を思うと、未だライセンス商法が健在なのには驚かされる。ライセンス管理を徹底する‘全うなライセンス商法’もあるのだろうが、‘泡沫ブランド商法’や‘ゾンビブランド商法’がまかり通る以上、ライセンス商品はオリジナルブランドより格下というイメージは避けられない。‘怪しいブランド’と思われないよう、マスターライセンス権を獲得した某商社が企画や流通の管理を徹底してくれれば良いのだが・・・・・
 2015/08/28 14:02  この記事のURL  /  コメント(0)

明日はビッグコンベンション
 明日は『オムニチャネル時代の商業施設と出店戦略を問う』をテーマに、SPAC研究会の半期に一度のビッグコンベンションを開催します。
 二ヶ月かけて検証して来た国内外の最新情勢と企業業績をベースに、「店舗型SPAビジネスモデルの挫折」「オムニチャネル型SPAへの全体最適な事業再構築」「オムニチャネル時代への商業施設の対応」を提言する私の基調政策提言に続き、大手商業施設デベロッパーを代表する三人のパネラーにオムニチャネル時代への対応を語って頂きます。00年、08年に続く今世紀第三の転換点に直面して店舗小売業が成長力も収益力も失ってリストラが広がる中、明日を開く明確な方針を提示し、商業施設デベロッパーの本音を引き出したいのです。
 オムニチャネル化が急進する中、成長性も収益性も投資効率も限界以下に低下した店舗販売を拡大する意味はもはやなく、店舗販売より成長性も収益性も在庫効率も投資効率も格段に高いECを拡大して店舗を撤収して行く事業再編が津波のように広がりつつあります。そんな転換局面で店舗販売をECと一体化して高収益化し全体最適を実現するにはどうすべきか、商業施設デベロッパーはテナント企業のオムニチャネルな事業再編にどう応えるべきか、画期的な提言と議論の場にしたいと思います。
 2015/08/27 09:41  この記事のURL  /  コメント(0)

これがデファクトスタンダードになる
 今朝の繊研新聞は、ケイトスペードジャパンが海外工場から国内の店舗やEC顧客までDHLをサプライチェーンパートナーに一元化してロジスティクスを効率化する事を報じていた。
 海外工場から店舗までの直流物流にこだわってEC顧客と店舗への機動的交流物流体制への転換が遅れたり、その意思決定をしても自前(リースバック)にこだわって体制の確立が数年も先送りされたり、生産地からDCまでのロジスティクスとDCから店舗やEC顧客へのロジスティクスが分断されていたり、ギョーカイでは??と思うケースが多々見られる。オムニチャネル化が急進してBtoB物流とBtoC物流の一元化が問われる中、究極は工場から顧客までの一貫ロジスティクス体制をプロに任せるべきだと思っていたら、先を見て聡明な決断をする経営者もいるものだ。こんなBtoB&BtoC一貫ロジスティクス体制がオムニチャネル時代のデファクトスタンダードになるのだろう。
 SPAチェーンがこのようなBtoB&BtoC一貫ロジスティクス体制を築こうとしても、現実のロジスティクスでは商業施設(SCや駅ビル、百貨店)の旧態依然とした後方施設や主導権を主張するエゴが障害になる。物流網にしても‘クリック&コレクト’の受け取り拠点にしても、流通各社や商業施設がエゴを主張すれば煩雑化して社会効率が悪化し渋滞やコスト上昇などの弊害が避けられない。国交省は社会効率重視の一元化へと旗を振り始めているが、一元化を担うのは大手流通グループではなく宅配便などの物流業者、とりわけ工場から顧客までとなるとグローバルなロジスティクス事業者に絞られて来るのではないか。今回のケイトスペードジャパンとDHLのパートナー提携はそんな明日を想起させる。
 ECの拡大でBtoCロジスティクス効率化へ様々な取り組みが行われているが、個別最適に陥る事なく、工場から顧客までのBtoB&BtoC一貫ロジスティクス体制を視野に入れた戦略構築が急がれよう。
 2015/08/25 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

『ワールド 惰性のツケ』?
 今日の日経MJは『ワールド 惰性のツケ』と題して多ブランド化と店舗拡大が裏目に出たとこき下ろしていたが、突っ込みは表層に留まり、挫折を招いた戦略判断の起点とその背景を追求するには及ばなかった。
 ワールドの規模拡大は定期借家契約導入以降の00年代で、売上のピークはリーマン前の08年3月期(連結で3583億円)だったが、営業利益のピークは07年3月期の212.4億円、経常利益のピークは86年7月期(87年に決算期変更)の234.9億円、営業利益率のピークは82年7月期の16.0%、経常利益率のピークは84年7月期の18.9%だった。
振り返ればワールドの戦略転換点は84年4月のDC参入、92年1月のスパークス構想発表、01年3月の小売SPA型への会計基準変更、05年7月の上場廃止だったと推察されるが、DC参入は卸事業の衰退を下支えするに留まって売上にも収益にも期待ほど貢献せず、小売SPA化は売上規模拡大はもたらしたもののQRとOEM/ODM依存で付加価値を損なって収益性を低下させ、今日の挫折に至ったと総括される。
 戦略転換点の背景には80年代の商店街の衰退やFCオーナーと顧客の世代交代、90年代のアパレル生産の空洞化とデフレの進行、00年の定期借家契約導入と大店立地法施行による営業時間延長が在り、08年のリーマンショックを契機とするファストファッション蔓延とマーケットのグローバル化も業績に大きく影響したが、95年1月の阪神淡路大震災も経営マインドに少なからぬ影響を与えたと推察される。ワールドの過去の戦略決定には不可解な事もあるが、基本的な構図はこのように見てよいだろう。
 ワールドに限らず、過去半世紀余の内外の環境変化や行政ルール変更など幾度もの‘ガラガラポン’がファッション業界の盛衰にどう影響しビジネスモデルを変えて来たか、9月9日に開催する『FB70年史とビジネスモデル変遷の経営史観形成ゼミ』で明らかにしたいと思う。
 2015/08/24 10:25  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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