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未来の洋服屋
 27日のアパログで某伯爵様が『服屋が自動販売機化してゆく』と題して人手不足下のファッション販売を揶揄しておられたが、『今日のアパレルチェーンの多くは物流ロボットと化した店舗労働者が自動販売する物流倉庫と化している』と批判して来た私としては、服屋は自動販売機化するのではなくショールーム化すべきだと思っている。
 少子高齢化に販売職の人気低下も加わって人手不足が深刻化していると喧伝されているが、その認識は必ずしも正しくない。00年以降の定期借家契約による過剰な出店と大店立地法以降の営業時間延長による二交代勤務に加え、店舗労働者に煩雑な物流労働(品出しや商品整理など)を強いる古典的なチェーンストア運営が人員需要を水増ししているだけで、これらの‘不要な仮需’を除けば「販売職」は質量ともに健全化出来るはずだ。それには「販売職」を不要な物流労働から解放するのが先決で、販売と物流を分離するオムニチャネルなショールーム販売が望まれる。
 ショールームストアではラグジュアリーブランドのようにサンプルだけを美しく陳列し、カウンター越しの接客でサイズをピックアップしてVIPなフィッティングルームで試着する。お買い上げ品は持ち帰りも宅配もクリック&コレクト(C&C)も自由に選べる。売場に在庫を積まないから品出しや畳み直しなど店内物流業務も在庫も圧縮され、その分、家賃を削減出来るし、接客スペースをゆったり確保して買上げ率や客単価を高められる。何より、物流業務から解放された「販売員」が接客に集中出来る効果が大きい。物流業務が圧縮された分、採用も接客能力に長けた人材に絞り込めるから、販売員の待遇も店舗販売の質も高まると期待される。
 販売を物流から解放すれば、洋服屋の未来は自動販売機化ではなく逆にハイタッチな接客サロン化へ向かう。それを極めるのがショールームストアを超えたデジタルショールームストアではないか。ショールームストアではサンプル陳列から接客・試着・発注というプロセスとなるが、デジタルショールームストアではサンプル陳列さえ無く、タブレットが並んだカウンターで商品を選んでから試着サンプルを出してもらって接客されるというプロセスとなり、お買い上げ商品の受け取りは宅配かC&C(購入店も含む)に限定される。お直しを伴う商品やEO/POなら無理の無い販売システムではないか。商品の価格帯にも拠るが、店舗のイメージもブライダルサロンか旅行サロンといったビジュアルに近付くに違いない。
 2015/07/31 10:54  この記事のURL  /  コメント(0)

来春夏が見えます
 今春夏のタイプ/ブランド別(レディス512ブランド/メンズ193ブランド)売上動向を検証してタイプ別のスタイリング変化と照合し、スタイリング/アイテム/ディティール/素材・柄など終わったもの続くもの伸びるものと仕分け、先行素材展の傾向も照合して来春夏の潮流を見極め、来春夏へ伸びそうな‘芽’をMD的に培養してスタイリングテーマを確定したのが6月の半ば。そこからテーマ毎の着回し/カラーパレット/素材構成を組んで全体像を固め、テキスタイラーや商社の協力も得て素材ボードを作り込み、コラージュを作成して撮影しグラフィック処理して、ようやくディレクションブックの体裁が完成したのが7月の半ば。延べ二ヶ月の大仕事でした。
 毎シーズン、こんな手間のかかる手順を踏んで組み上げているのが当社の「MDディレクション」で、レディスはカジュアルマーケットとOL〜キャリアマーケット、メンズはカジュアルマーケットとビジカジマーケット、それぞれSSでは春〜初夏〜盛夏、AWでは秋〜冬〜梅春とMDストーリーを組んで提案している。
 欧米発のトレンド情報やコレクション傾向のまとめではなく、国内市場の現実の動向を計数的/定性的に検証して来シーズンの有望テーマを提案するもので、テーマ毎にスタイリング/カラーパレット/素材構成をビジュアルに揃えて商品企画に役立つよう意図している。クリエイティブなデザイナー向けと言うよりMD政策やMDストーリーを組み立てるディレクターやマーチャンダイザー、バイヤー向けの「MDディレクション」という役割を狙ったものだ。
 契約クライアントへの解説巡回が一巡した後、8月6日には当社オフィスでささやかな公開セミナー(レディス編メンズ編)も予定している。

 2015/07/29 18:34  この記事のURL  /  コメント(0)

EC統計の信頼性
 今週のWWDジャパンは恒例のEC特集を打ち上げていたが、第一線担当者の本音を引き出す取材内容や多少?のステマ臭はともかく、そのアンケート結果は7月10日の繊研新聞のアンケート結果とは大差があった。中でも平均EC比率は繊研新聞の6.1%に対してWWDは12.3%と倍以上も高い結果で、アンケートの統計的信頼性を考えさせられた。ちなみに当社のSPAC研究会メンバー平均は8.1%、総務庁「家計消費情況調査」の1〜5月平均の衣料・服飾EC比率も8.1%だった。
 WWDのアンケートは第一線ファッションEC担当者85人、繊研新聞のアンケートは14年4月〜15年3月に決算を迎えたアパレル・服飾114社(カタログ通販大手のEC売上も含む)の回答を集計したもので、統計の母集団もアンケートの手法も異なるが、同じギョーカイで同時期にこれほどの差が出るものだろうか。
 当社がSPACメンバーに聞いた14年度のEC平均伸び率は18.9%だったが、繊研新聞では6.3%とし、WWDは何故か平均伸び率を集計していない。ちなみに総務庁「家計消費情況調査」の14年度のEC支出額は12.1%増だったが、カテゴリー別には調査していない。
 同統計のカテゴリー別内訳は今年1月から調査されるようになり、衣料・履物のEC支出内シェアは11.0%(5月)と公表されているが、対前年伸び率は来年にならないと掴めない。とまれ総務庁「家計消費情況調査」がEC支出のカテゴリー別動向まで調査するようになったとは、ECがそれだけメジャーな消費スタイルになった証であり、今後は公的機関や業界団体などによる信頼性の高い統計が継続的に公表されるようになると期待したい。
 2015/07/29 10:17  この記事のURL  /  コメント(0)

独裁体制か幕藩体制か
 一世を風靡した躍進企業も何時かは壁に当たり、業績悪化からリストラを繰り返し、不幸にして破綻に至るケースも少なくない。このギョーカイも例外ではなく、むしろ一般産業界より新陳代謝は速いのではなかろうか。
 優良企業の経営が悪化する引き金が引かれるのは表面化する5年も10年も前の事で、振り返ってみれば、あの時のあの判断が転落の契機となったのだと総括出来ても、その当時は逆に躍進への大英断などと囃し立てられたものだ。このギョーカイの長年の盛衰を見て来た老獪には経営悪化した各企業の転落への転換点はその時点で見えていた事が多く、付き合いの距離感によって直言したり遠回しな説話を流したりしたが、どちらの方法でも聞き入れられた事は少なかった。真理を伝える識者は不吉な予言者として遠ざけられるのが世の常なのだろう。銀盆に首を乗せられた予言者ヨハネや地動説を唱えて宗教裁判で有罪を宣告されたガリレオに較べれば、進化論の唯物論的本質を20年も隠してから世に問うたダーウィンは真の賢人だったのかも知れない。
 それはともかく、社内の見識ある者や外部の識者には致命的失策と喝破される戦略が組織の決定として断行されてしまう要因は組織の政治体制に在る。それは独裁体制と幕藩体制だ。
 独裁体制では異論を挟む者は銃殺されるか収容所に送られる。このギョーカイでも異論者や進言者を悉く放逐して来た独裁者もないでもないが、むしろ封建的幕藩体制で判断を誤ったり隘路に陥った会社の方がはるかに多い。幕藩体制では事業別の論功行賞が会社の方向を決めがちで全体最適が蔑ろになり、勝ち続けている時は良いが負け戦になると投資が次々と焦げ付いて総崩れになる。今のゼッコーチョー企業でも勝ち戦には滅法強いが負け戦では総崩れになる体質の企業が目に付くが、これは旧日本軍と極めて共通している。
 日清日露の戦争から満州事変、太平洋戦争とエスカレートして行った軍国主義の原点は265年も続いた軍事政権たる徳川幕藩体制の士族層を引き摺った明治維新に在る事は明白で、その証拠に維新(内戦だったので論功行賞の土地も金も出せなかった)直後から不平士族層の反乱が続発し、その捌け口に征韓論が台頭して西南戦争を招いた。それが1910年の日韓併合、1932年の満州国建国、1941年の仏印進駐、日米開戦へとエスカレートして行ったのは必然と言うしかない。関東大震災から昭和恐慌と国家が危機的に疲弊して行く中で「貧困と平和」を選択する事も出来たはずだが、現実は「侵略戦争による経済圏拡張」という博打に突き進んでしまった。なんだか失われた20年の果てに東日本大震災、アベノミクスと続く今日と似ているような気がする。
 話がギョーカイから離れてしまったが、企業経営は常に資本と権力闘争の拡張圧力に晒され、採算性の疑わしいギャンブルに突き進みがちだ。それは封建幕藩体制の論功行賞圧力と大差ないだろう。そんな圧力が経営判断を誤らせ、巨額の損失と店舗や人材のリストラを招くとしたら、何だか満州国か太平洋戦争のようだ。その戦争責任はいったい誰が取るのだろうか。
 2015/07/28 09:35  この記事のURL  /  コメント(0)

鎮魂のゴジラと日経の気骨
 昨日の日経の日曜特集「美の美」は『鎮魂のゴジラ』と題して見開き二ページを割いていたが、その論旨は評論家の川本三郎氏が94年に岩波書店から刊行した『今ひとたびの戦後日本映画』中の「戦争未亡人と死者」「復員兵 帰って来た男達」に続く「ゴジラはなぜ暗いのか」という一文から論展したものだった。
 54年という戦後の転換期に本多猪四郎監督によって作られた暗いモノクロの作品「ゴジラ」は明らかに東京大空襲の再現であり、太平洋の藻屑と消えた兵士達の怨念の象徴であった。ゆえにゴジラは国会議事堂まで破壊しながら目前の皇居を回避して上野・浅草・隅田川と廻って海に帰って行く。それを天皇に対する畏敬の行動とする川本に対し、民俗学者の赤坂憲雄は畏敬でも恨みでもなく諦めを現したものだと反論している。赤坂は『「ゴジラ」は前大戦で米国に叩き潰された海から描いて日本人が被害者を演じ、加害者だった大陸の戦争を無意識に隠している。それは戦後70年の日本人の精神史そのものだ』とまで言い切っている。
 政財界権力側に迎合するかに見える日経が「戦後70年」の加害者意識を問い、「蟹工船」の小林多喜二を日曜版のコラムで連載したり、衆院選投票当日にワイマール公国の宰相でもあったゲーテの「ファウスト」を取り上げて通貨の大量供給によるインフレ政策の危険性に警鐘を鳴らしたり、ちぐはぐと言うか是々非々と言うか編集の独立性と言うか、最近の政権政党におもねる国営放送なんかに較べると気骨が在って意外に面白い。大本営発表と提灯記事ばかりのギョーカイ紙に較べれば格が違うという事なのだろうか・・・・

 2015/07/27 10:07  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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