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トレンドの始まりと終わり
 当社では毎シーズン、ショップやインショップを展開するブランドを悉くターゲットやテイスト、MD手法、出店立地や価格帯などでゾーン/タイプ別に分類したブランドツリーを作成し、大都市圏中心に主要100商業施設(70SC+30百貨店)のブランド別販売動向(前年比/坪効率)を毎月集計してゾーン/タイプ/ブランド別の盛衰を検証している。
 15SSではレディス1813ブランド、メンズ1005ブランドを位置付けたブランドツリーを作成したが、収録100商業施設から得られる販売データはレディス512ブランド、メンズ193ブランドに限られる。ストリートなマイナーブランドやローカルなチェーンまではカバー出来ないが、多店舗展開しているブランドやチェーンの数字は掴めるからマーケットのお天気動向はほぼタイムリーに掌握出来る。
 売上前年比だけ見れば伸びているようでも前年の低迷からの復調だったりもするから、坪販売効率や前年の数字も合わせて動向を見ている。ゾーン⇒タイプ⇒ブランドとフォーカスを替えて見るが、ゾーン全体の浮沈は世代や立地、タイプの浮沈はテイストやMD手法の盛衰を意味する。個々のブランドがタイプ総体と異なる動きを示す場合、人気の消長と言ってしまえばそれまでだが、MD政策や開発体制の変更など個別の背景を探るべきだ。
 それはともかく、タイプやブランドの浮沈とトレンドの盛衰とはデリケートな時差が生じる。その要因が需給ギャップだ。
 ひとつのトレンドが始まると最初に手掛けた自社開発ブランドの数字が跳ね、翌シーズンには他の自社開発ブランドやOEMブランドが追従して好調ブランドが広がるが、翌々シーズンになると売れ筋追従のODMブランドまで広がって供給過剰に陥り、一気に冷却してしまう。3シーズン目までもつ事もあるが、4シーズン目は値崩れで誰も儲からないし、2シーズン目で失速してしまうケースもある。
 毎月、ファーストランナー、セカンドランナー、サードランナーの売上前年比を追って行けば、サードランナー(売れ筋追従のODMブランド)から始まった前年割れがセカンドランナーまで及んだ時点でそのトレンドは終焉したと判断される。トレンドが何時まで続くかは需給の問題であり、セカンドランナーが揃わないと盛り上がらないし、サードランナーが乱立すれば一気に終わってしまう。
 テイストやスタイリングのトレンドはこのような捉え方でサイクルが読めるが、単品デザインのトレンドはこの倍速で動く事もある。ブランド別売上では掴めないし月単位の情報では間に合わない事も多いから、店頭での広がりを定時観測したり商社やODM業者の仕掛かり情報を探る事が不可欠だ。
 どんなに新鮮なトレンドも追従者がいないと広がらないし、需要の伸びを超えて供給が溢れれば一気に値崩れしてしまう。ファッション商品は野菜や鮮魚と同じ需給相場商品と認識すべきだ。
 2015/06/18 12:51  この記事のURL  /  コメント(0)

15SSブランドツリーの番付
 先月末に完成した「15SSブランドツリー」の前シーズンからの変化やマーケットでのインパクトを検証して番付にしてみた。レディス/メンズ共通する横綱はスニーカーとノームコアカジュアル、レディスではそれにボーイズカジュアルが加わる点は異論のないところであろうが、その下は小粒な動きばかりで関脇、小結が入り乱れ、大空振りの番外に大物がズラリと並ぶ手酷い番付となった。
 当社の独断で以下を番付すれば、大関はレディス/メンズ共通してジャパンクリエーターのみ。関脇は同じく共通してハンサムカジュアルキャラクターとドメスティック系ワーク&デニム編集ストア。小結にはレディス/メンズ共通でコンテンポラリーコモディティストア、スポーツライフスタイル編集ストア、百貨店サテライトストアなど、レディスではドメスティックコンテンポラリー、フレンチナチュラルキャラクター、ガーリーポップキャラクターなど、メンズではクリエーター系インポート編集ストア、サーフ系インポート編集ストア、渋谷系アドバンスキャラクターなどが並ぶ。大空振りの番外にはやはりレディス/メンズ共通でグローバルSPA、セレクトスパイスSPA、トラフィックストアなどが並ぶから、15SSのホントの横綱は「メンズ主導のカップルカジュアル」だったのだろう。
 総じてメジャー化したSPAが飽きられ、勢いを失った多くのブランドが脱落する一方、メンズ主導でストリート/クリエーター/ライフスタイルのマイナーな萌芽が広がった世代交代の始まりのシーズンだったと総括される。
 「15SSブランドツリー」では日本国内でストアやインショップを展開するブランドをレディスで1813、メンズで1005収録し、レディスでは26ゾーン/336タイプ、メンズでは19ゾーン/194タイプに分類したが、前シーズンからはレディスで73ブランド、メンズで23ブランド減少した。6月25日に開催するSPAC月例会で配布して詳しく解説するが、その折に番付表も公開したい。
 2015/06/17 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

先祖返り願望は報われない
 ブランドを軸に垂直統合ないしは水平分業で製販一貫の効率的流通体制を志向するSPAが業界のデフェクトスタンダードとなって久しいが、最近のギョーカイの動きは卸流通への先祖返り願望が目立っている。その背景となっているのは‘クール・ジャパン’な海外市場開拓とインバウンド需要の急拡大に加え、利益もリスクも抱え込んだSPAが必ずしも効率的な流通とならなかった失望感も在ると思われる。
 定期借家契約が導入された00年以降、商品調達への資金投入が進んでSPA化が急進したが、ロット買い取りで商品を抱え込んだ結果は必ずしも利益の独り占めとはならなかった。利益とリスクは表裏の関係で、抱え込んだ在庫の消化歩留まりが悪いと利益はリスクに転じてしまうからだ。実際、今日に至る15年間でカジュアルSPA業界の調達原価率は10ポイント前後、セレクトSPA業界のそれも7ポイント前後切り下げられたが、利益率は逆に低下傾向が著しい。多店化とともに調達コストは圧縮出来ても、在庫の偏在で消化歩留まりがそれ以上に悪化するケースがほとんどだからだ。
 外資グローバルチェーンのビジネスモデルは消化歩留まりの低下は必然として、巨大な調達ロットでそれ以上に原価率を切り下げるマジックで成り立っているが、ロットの限られる国内チェーンではそんなマジックは成り立たない。その突破口がオムニチャネル化で、多店舗間の在庫の偏在をカバーして消化歩留まりを改善する効果も販売コストの圧縮効果も著しいが、それがまたオムニチャネル化を加速して出遅れたチェーンを追い詰めている。
 そんな事情に消費増税や円安インフレ転嫁値上げによる顧客の離反が重なってSPA事業の収益性が一段と低下しているところに‘クール・ジャパン’やインバウンドの盛り上がりが加わり、百貨店の消化仕入れ流通やセレクトショップの卸流通が再評価されだした、というのが昨今のギョーカイのムードだと推察される。実需と乖離した極端な早期投入やバーゲン時期の後倒しなど、そんな‘先祖返り願望’から発したものだろうが、時代の歯車は逆転する事は無い。
 先祖返りしても成長性や収益性の回復は一時的で限定されたものだから、より消化歩留まりが高く(在庫引き当て効率が高い)販売コストも低いオムニチャネルかつファクトリーダイレクトなSPAモデルへの進化を急ぐべきだ。
 2015/06/16 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

顧客よりギョーカイ?
 週末に新宿の伊勢丹へ出掛けたルン妻が『この暑いのに売場はもう秋冬物ばかりで買うものが無かった』『表参道や青山のブランド店ではもうシークレットセールが始まっているのにバーゲンはまだ先みたい』と手ぶらで帰って来た。消費者としてフツーの実感であろう。先週の業界紙に掲載された太田伸之海外需要開拓支援機構社長の講演録の『プレフォールの先行投入が重要で5月からデリバリーすべき』という発言とも重なり、ギョーカイがますます顧客から離反して行く異様さを痛感した。
 ギョーカイとしては売れ残って値引き販売しては損だからシーズンに先んじて早期投入して売り逃げてしまいたいのだろうが、実際の衣料品購入は実需期シフトが強まっており、先物購入するファッション好きはごく限られる。ファッションビクティム向け越境ECが主力となった欧米のセレクトショップではシーズン先行の需要もあるのだろうが、四季の移ろいが明確な日本では先行需要は限られる。欧米ギョーカイは「AW/SS+プレフォール/クルーズ」の2+2シーズンだが日本は最低でも「春夏秋冬」の4シーズンで6〜8シーズンが大勢だから、季節の需要と極端に乖離した先行投入先行売り逃げは市場の実態を無視した欧米追従と言わねばなるまい。インバウンド需要が盛り上がり‘クールジャパン’と囃される時流下で舞い上がっているのだろうが、売上の大半は国内の顧客だしインバウンドの勢いがいつまでも続く訳でもない。
 異様な早期立ち上げにせよバーゲン後倒しにせよコスト転嫁の値上げにせよ、ギョーカイ都合の顧客への押し付けは早晩、手痛いしっぺ返しが避けられない。それでも反顧客的アクションが広がってしまうのはギョーカイの村社会的体質が背景に在るからだろう。ブランド企業とファッションメディア、プレスアタッシェの利益共同体関係はSNS時代になっても変わらないが、それがマーケットを見えなくしてギョーカイと顧客の乖離を広げているとしたら・・・・・・
 2015/06/15 09:24  この記事のURL  /  コメント(0)

メディアは信用出来ない
 今朝の業界紙は某カジュアルチェーン郊外店の売上が好調と報じていたが、その報じる月坪売上が業界から伝わって来る数字とあまりに乖離している事に驚いた。業界紙としては取材企業が提供する‘大本営発表’をそのまま報じているのだろうが、これではその業界紙の信頼性まで怪しくなって来る。
 そんな話を社内でしたら、『業界紙なんてそんなものですよ。鵜呑みにする方が非常識です』『業界紙に限らず、新聞や雑誌、TVまでみんな利益共同体でステマばかりなんだから、まともに受け取る人はいませんよ』などと諭される始末。安倍政権によるメディア統制も露骨だが、メディア側も利益誘導体質が染み込んで‘事実を公正に報道する’というジャーナリスト魂などとっくに捨て去っている。そう言えば民放TVなどほとんど見なくなって久しいし、最近はNHKさえ怪しくなって、特番はやらせっぽいしドラマはホントつまらなくて見る気もしない。
 調べ物もニュースもネット依存が強まるばかりだが、これも真偽交錯しているから真贋を見極める見識が必要だ。ネットもSNSを使ったステマや情報操作が露骨で、メディアは何も信用出来ないという不信感に陥ってしまう。
 1925年にラジオ放送が始まって一気に普及した時、23年の関東大震災の時にラジオがあったらと言われたが、ラジオの普及が軍国主義の時流を加速した事もまた否めない。ナチスの宣伝相ゲッベルスがラジオと集会を連動して国民を煽動した事はよく知られているが、今ならメディアとSNSを連動して情報を操作し国民を煽動するのだろうか。
 そんな大仰な事はともかく、我らギョーカイではメディアとプレスアタッシェが利益共同体化して情報の意図的操作が競われているが、メディアを操作しているつもりの発信側とて、メディアやプレスアタッシェの反応ばかり見ていては顧客の実態が見えなくなってしまう。そんな見当違いが業績に影を落としている企業も少なくないのではないか。
 2015/06/11 10:19  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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