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宴の終わり
 先週末、TSIホールディングスがプラネットブルージャパンと東京スタイルインプレスラインの2社の解散、ブリジッドとスタイルコムなど東京スタイルの5ブランド、レベッカミンコフとジルスチュアート・ニューヨークなどサンエーインターナショナルの4ブランド、計9ブランドの廃止を発表した。この2社と9ブランドの売上は約100億円、店舗数は260、従業員は800人で、配置転換して8月末付けの希望退職を募集する。
 TSIホールディングスは11年に統合発足した後、不採算事業の整理などが遅れて赤字体質を脱却出来ず、15年2月期にようやく連結営業損益が黒字転換したものの営業利益率は0.5%と低収益体質は変わらず、抜本的な事業再構築が急がれていた。その意味では今回の事業整理は遅きに失した感がある。
 SPA化が進んだ今日のアパレル事業は在庫リスクが極めて大きく、期末在庫の評価次第で営業利益率は数ポイントも振れるから3%以下では収支いっぱいと看做される。リスクとリターンのバランスを考えれば営業利益率は8%以上でようやく健全な状態と言えよう。そんな見方をすれば大手アパレルや大手チェーンの大半は‘不健全’な経営状態に陥っており、ブランド/業態開発や出店拡大で戦線を広げる余裕は無いはずだが、近年は各社とも無理な戦線拡大に走っていた。
 このブログで何度も指摘したように、アベノミクス以降の景気回復期待の中、採算に乗らず離陸の読めないブランドや業態を実験段階を超えて多店化したり大型化したり、一気にブランディングを進めようと都心の一等立地に支払家賃が売上の半分前後を占めるような大型旗艦店を出店したりと、常軌を逸した拡大路線を各社が競っていた。そんな無茶な宴が続くはずもなく、消費増税とコスト転嫁の値上げで顧客が離反して売上が低迷し、収益が急速に悪化して急ブレーキや戦線の縮小を余儀なくされるに至ったと総括される。
 国内ではバロックジャパンに続いてマークスタイラーも中国資本の傘下になり、遊心クリエイションやオルケスなど少なからぬアパレル企業が行き詰まり、世界の景気を引っ張っている米国でもC.ワンダーやウェットシールが行き詰まり、ケイトスペードサタデーやマーク・バイ・マークジェイコブスなどブランドの廃止が相次ぎ、アパレルビジネスは壁に当たって戦線の整理縮小を迫られている。顧客は騙せると過信した怪しげなブランディング戦略や採算性を無視した拡張戦略の宴は終わったのだ。
 そんな中、怪しげなブランディングにも薄味なSPA化にも流れず物創りに徹して来たトゥモローランドがグローバルなマーケティング感覚で突出するリステアホールディングスを傘下に入れ、8月末にニューヨークに進出するとの報道に接し、勢いや浮ついた仕掛けで顧客は騙せるという近年の怪しげなアパレル業界のマーケティング感覚が馬鹿げたバブルだったのだと改めて痛感させられた。
 2015/05/18 10:25  この記事のURL  /  コメント(1)

郊外SCは厳しい
 消費増税以降、都心商業施設と郊外商業施設の売上前年比の格差が広がっている。始めはガソリンの高騰が指摘されていたが価格が下がっても格差は開くばかりで、インバウンド効果の有無だけでも説明はつかず、結局は景気浮揚波及度の格差なのかとうやむやにされそうだが、根本的要因は消費増税とコストインフレの価格転嫁に対する拒絶反応が低価格品ほど強烈だという事のようだ。異次元緩和のアベノミクス下で貧富差が一段と拡がっているのが本当の背景なのではないか。
 12〜14年に開業した主要商業施設のテナント企業による評価(SPACメンバーアンケート)を見ても、全34施設中、圧倒的高評価のアウトレットモール(三井木更津と酒々井PO)を除けば好評施設はまずまずの施設まで含めても6施設しかなく、完璧な失敗と酷評された施設が6施設、不評施設が12施設で、成功率は32分の6と二割にも届かないが、その酷評施設と不評施設のすべてが郊外型だった。一方で好評6施設のうち郊外型はイオンモール京都桂川だけで、4施設はターミナル型、1施設が大都市ウォーターフロント型だった。
 過去5年間の立地タイプ別メンバー評価推移を見ると郊外型の評価急落は一段と顕著で、ターミナル型やアウトレットモールの評価上昇と明暗を分けている。デベロッパー別評価を見ても、上位10社のほとんどがターミナル型とアウトレットモールで、郊外型デベロッパーは4位の三井不動産(アウトレット部門は2位)と10位のイオンモールしか見当たらない。そのイオンモールも前々年の3位が前年は7位、今回が10位と評価が急落している。ターミナル型デベのルミネが7年連続の1位、アトレも前年の5位から3位に評価アップしているのと較べれば明暗は明らかだ。
 様々な要素が重なっての商業施設評価、デベロッパー評価だが、少子高齢化でローカルと郊外が萎縮していく一方でアベノミクスの恩恵が大都市中心部に偏っている実情が露呈している。その大都市中心部とて家賃の高騰で採算点に乗せるのは難しく、資本力のある外資や大手に偏らざるを得ない。このままでは商業施設開発や出店の機会は一段と限定され採算はさらに厳しくなる。それがまたオムニチャネル化を加速して店舗販売を追い詰めるとしたら・・・・・・
 2015/05/14 12:47  この記事のURL  /  コメント(0)

顧客を裏切れば
 このギョーカイのさまざまな企業について業績はもちろん商品政策や業態開発、マーチャンダイジングやロジスティクス、果ては公正取引や消費者保護まで注視しているが、企業イメージを一番、左右しているのは消費者としての体験的印象に他ならない。
 接客サービスで名高い某セレクトショップなど、販売員の商品知識の低さに失望したり、購入したショルダーバッグの汗による色染みに困ったり、名声とは裏腹のいい加減な実態に足が遠のいた。いつも何らかの値引きキャンペーンをやっている外資カジュアルチェーンでは、うっかり定価で買ってしまった商品が投げ売りされているのを見て落胆したり、アウトレット店で買った専用企画商品が数回、洗濯したらボロボロになって捨てる羽目になったり、荒っぽい商売に失望して足が遠のいた。それに引き換え、ユニクロでは品質で裏切られた事は一度も無い。堅牢すぎて飽きがくるほどだ。感性も年を追う毎に進化しているから(今春のクルチアーニ風?ニットカーディガンの2,990円には腰が抜けた)、感性を売物にいい加減な商売をしている輩は次第に肩身が狭くなっていくのではないか。
 このギョーカイは今世紀に入って以降、グローバル化とともに価格も品質も商売のモラルもどんどん怪しくなり、誠実な対応を期待しては裏切られる事ばかりになって来た。顧客の側もSNSでインスタントに煽られたイメージに乗せられ、品質にも加速度的に鈍感になっているから、上手に騙す方がお利口というご時世なのかも知れない。
 今世紀に入って以降、SPAの調達原価率は平均して10ポイントも下がり、タイムセールやギャンブルセールで値引き販売しても60%前後の粗利が残る原価率20%未満のチェーンももはや例外ではなくなりつつある。ギョーカイと顧客の退化が相まって価格と品質と商売のモラルが崩壊して行く荒廃を放置しては消費者のファッション離れが加速し、取り返しのつかない事態にまで至るのは時間の問題だと思う。
 いまさら「現銀掛け値無し」「店は客の為に在る」などと‘商人道’を説いても馬の耳に念仏だろうが、マクドナルドのように顧客の手痛いしっぺ返しを食らってからでは手遅れになる。そんな兆候(客数の減少)が露呈しているストアは手遅れになる前に顧客に懺悔し、悔い改めて出直すべきだ。
 2015/05/12 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

ディストリビューションの解
 多店化すればロットの拡大で調達コストを切り下げられる反面、在庫の偏在で機会ロスと値下げロスも肥大するから、マスメリットとマスデメリットの綱引きになり、多店化が必ずしも高収益化に繋がるとは限らない。マスデメリットを如何にして極小化するかが多店舗運営の要と言ってよいだろう。
 オムニチャネル化が急進する今日ではショールーム陳列を取り入れて店舗在庫を圧縮し、DC在庫からECに引き当てる比率を高めるのが鉄則だが、店舗群への商品配分・補給(ディストリビューション)も放置する訳にはいかない。それを如何に適正化するかで売上もロスも大きく変わるからだ。
 多店舗ディストリビューションは組織体制と配分技法(再配分も含む)が要となる。チェーンストアの組織体制では、バイヤーやMDがディストリビューションを兼務するジュニアチェーン段階から、多店化とともにバイヤーのアシスタントとしてディストリビューターが分業する段階を経て、ナショナルチェーンではコントローラーを頂点にディストリビューション部が独立するというのがスタンダードだが、分業すればするほど単品軸の部分最適に偏って品揃えバランスが崩れロスが肥大しがちだ。それを解決するのが配分と再配分の技法で、アイテムやシーンの構成バランスを枠決めして「カセット配分」と「傾斜配分」を基本に店タイプと上下のリミッターを設定する。それに消化率や回転日数によるアラートを設定したり自動再配分のアプリを加えたりと様々に工夫するのだが、なかなか上手く行かないものだ。
 そんな試行錯誤に対する抜けた回答がウォルマートの「カテゴリーキャップテン制」(ベンダーに数入れをアウトソーシング)であり、しまむらの「バイヤー&コントローラーチーム制」はその対極に在るが、もう一つ再注目すべきがアパレル直営店の「営業ディストリビューター制」、とりわけオンワード樫山の確立した「支店営業ディストリビューター制」ではないかと思う。
 アパレルメーカーの直営店運営は担当営業が店舗の運営管理とディストリビューションを兼務し、品揃えや配分、店間移動はもちろん、販売員の採用やメンタルマネジメント、陳列や接客の指導までトータルに経営する支配人方式とも言うべきものだ。ひとりで担当出来る店舗数は店舗の集中度にも拠るが、おおむね6〜8店舗が限界だろう。属人性に左右されるのが欠点だが、分業の弊害を排して全体最適を実現するメリットは大きい。一昔前の話になるが、消化取引で物流と一体化したのがオンワード樫山の「支店営業ディストリビューター制」で、委託取引で物流と一体化出来なかった他のNBアパレルが業績を悪化させたのと明暗を分けた。古典的チェーンストアが壁に当たる中、ディストリビューションや店舗運営にアパレル直営店の仕組みを導入するのも一策ではなかろうか。
 私の旧著『ブランディングへの解る見えるマーチャンダイジング』を御一読頂ければ理解が深まると思うが、6月25日に開催するSPAC月例会ではオムニチャネル対応の最新ロジスティクスをリテイルチェーンとアパレルメーカーの両面から組織体制と技法を体系的に提示したい。
 2015/05/11 09:24  この記事のURL  /  コメント(0)

フレンチリネンとMDの技
 今年の初夏はセレクトショップやカジュアルチェーンからユニクロやしまむら、イトーヨーカ堂まで何処の店頭にもフレンチリネンのシャツが氾濫し、GWには早くも値引き販売する店も見られたから、‘大ヒット’と言うより供給過多の‘氾濫’状態と言うべきだろう。
 数年前にロンハーマンが「フランク&アイリーン」のフレンチリネンシャツを紹介して以来、徐々に扱うブランドやストアが広がって、レディスでは昨年、メンズは今年になって一気に氾濫した感があるが、その価格とMD展開は様々で‘百花繚乱’を呈している。
 価格は税別で「フランク&アイリーン」の23,000〜27,000円からユニクロの2,990円、しまむらの1,900円まで10倍以上の巾があるが、消費者としてもプロとしても価格差ほどの品質の違いは認識出来ない。ラフに着るカジュアルならユニクロやしまむら、せいぜいカジュアルチェーンの3,900円や4,900円で十分だが、ビジカジに着るなら上質素材をきちんとプレス成形した10,000円以上の商品が好ましい。カジュアルなのに10,000円近いセレクトのオリジナルにはちょっと首を傾げたくなる。
 それはともかく、各社のMDの組み方は千差万別で実に興味深い。‘フレンチリネン’という素材軸は共通してシャツに集中するケースが大半だが、ショートパンツや羽織アイテムまで展開するケースも稀にあり、「無印」はパジャマやベッドリネンを展開している。シャツに集中する場合、最も一般的なのがカラーと袖丈の展開で、6色×七分袖/長袖というのがスタンダードのようだが、カジュアルチェーンやセレクトSPAでは七分袖に限定しているストアが多い。その場合は色数を拡げたりストライプやミニギンガムなど柄物を加えている。
 最も大々的に展開しているユニクロの場合、レディスでは長袖/七分袖/ノースリーブ/チュニックと型を拡げ、12色に大小のチェックと花柄、ラフなストライプまで揃えている。メンズでは長袖に絞り、13色にチェック3柄とストライプを揃えている。レディスは4サイズ(オンラインでは6サイズ)、メンズも4サイズ(同7サイズ)を展開している。レディスでは型×色柄展開なのにメンズは色柄だけで型展開しておらず、どちらもボトムやアウターの展開は無い。
 私から見ればMDの組み方があまりに単純で鮮度も季節感も着こなし提案も薄弱だ。メンズでは織りも仕様もプレスも分けてビジカジ用の長袖とカジュアル用の七分袖を展開すべきだし、レディスではドロストのショーツやバルーンパンツ、リゾートドレスも加えたい。プレップ&シャーベットに限定された色柄も初夏向きだから、ダークな晩夏色や濃色単彩系のトロピカル柄やボタニカル柄を加えて夏まで引っ張るのが正解だと思う。
 MD展開の技は素材軸の型・色・柄展開というLV型、定番軸の素材・色・柄展開というエルメス型、二つの基本から様々なバリエーションがあり、素材やスタイリングのトレンドはもちろん、季節対応や顧客対応、競合関係やロジスティクス、生産コストやVMD手法など様々な要素を考慮して戦術的戦略的に仕組むもので実に奥深い。それに月指数やアイテム構成比、在庫回転などの計数制御も加わり、追求すればきりがないが、技術を極めれば改善効果は極めて大きい。という訳で、基本から最新技術まで満載して5月14日に開催する『マーチャンダイジング技術革新ゼミ』は乞うご期待なのです!
 2015/05/08 11:44  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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