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商業施設デベの踏み絵
 『調達コスト圧縮と価値向上の商品開発手法総研究』をテーマに開催した昨日のSPAC月例会では、メンバー企業は今秋冬商品の調達コストが前年より平均6.0%アップし、販売価格も同6.1%アップすると回答していた。今春夏商品でも調達コスト上昇の価格転嫁をマーケットは受け入れておらず、価格の上げ巾以上に客数が減少して売上を落とすブランド/業態が多く、今秋冬でも同じ轍を踏むのかと業界の先行きが案ぜられた。
 価値向上を伴わない価格転嫁を続ければ顧客が離反して一段と経営が苦しくなるのは必定だが、そんな自滅ゲームに陥っているのはアパレル業界だけではない。アパレル業界とは一蓮托生のはずの商業施設デベロッパー業界とて同様なのだ。
 商業施設デベロッパーは3.11以降の建設費高騰にアベノミクス以降のインフレも加わっての開発コスト上昇を家賃や共益費等に転嫁して来たが、オーバーストアとECの拡大で店舗販売が低迷し、調達コスト上昇の価格転嫁で売上も収益も一段と窮してテナント出店の投資採算が成り立たなくなったアパレルチェーンが堰を切るように不採算店撤収に動き出すに及び、商業施設デベも開発やリーシングの方針はもちろん、オムニチャネル対応も抜本転換を迫られるに至っている。
 店舗販売の収益悪化がアパレルチェーンのオムニチャネルシフトを一段と加速させ、店舗投資の圧縮と不採算店の撤収が広がる中、商業施設デベロッパーも開発や運営を効率化して家賃への転嫁を抑制し、オムニチャネル化を積極的に受け入れて来店客数を増やさないと、テナントチェーンの店舗離れとオムニチャネルシフトが加速してしまう。商業施設デベロッパーとテナントチェーン企業の収益性は大きく乖離するに至っており、もはや抜本的な関係の再構築が不可避となっている。
 開発や運営を効率化して家賃へのコスト転嫁を抑制し、オムニチャネル対応を進めて客数を増やし、テナントの収益性を改善しないと、両者の共生関係は継続が困難になる。テナントのO2Oアクションを容認し、飛躍的な客数増に繋がる‘クリック&コレクト’を館ぐるみで導入するか否か、商業施設デベロッパー各社の決断が問われている。
 2015/05/28 09:52  この記事のURL  /  コメント(0)

クロスマーチャンダイジングの技
 蔦屋家電では書籍で培われたクロスマーチャンダイジングの技が随所に見られるし、スーパーマーケットではゴンドラエンドの常套手段として定着した感があるが、ファッション店では試行錯誤の段階で、多用すれば訴求効果はあるものの在庫が分散して解り難くなり、売り逃しや在庫管理の混乱も生じる。そんな弊害が生じるのは‘出前’と‘元番地’が明確に認識されていないからだ。
 クロスマーチャンダイジングとは一般的なカテゴリー分類を超えて関連陳列するVMD手法で、パスタの棚にパスタソースやスパイスを添えたり(パスタ鍋やパスタトングまで添えるケースも見られる)、登山本の側にコンパスや防水カバーを置いたりするのは定着しているが、蔦屋家電では炊飯器の側にお米のパックまで添えている。確かに便利だしインパクトもあるが、それぞれのアイテムのバラエティから選ぼうとすると何処を探したら良いのか解り難さも指摘される。
 クロスマーチャンダイジングの便利さや陳列のインパクトと探し易さや在庫管理を両立するには、クロスマーチャンダイジングは‘出前’、バラエティや在庫の奥行きを揃えるのは‘元番地’と割り切って売場を構成する必要が在る。クロスマーチャンダイジングは米国で言う‘アウトポスト’(出前)であり、クロスマーチャンダイジング陳列から一見して解る近所に元番地を配するか接客で誘導し、訴求期間が終われば元の陳列場所(元番地)に戻す運用が不可欠だ。
 ショールームストアではサンプル陳列の出前だけに割り切り、元番地はカウンター越しの‘見える店内ストック’に置いて陳列整理作業と在庫量を最少に抑えるが、オムニチャネルにECと連動してDCから宅配する比率を高めれば店内在庫は格段に圧縮出来る。その分、在庫運用は効率化し、店舗の家賃負担も人件費も大きく圧縮出来る。ショールーム型サンプル陳列はEC画面と売場陳列の一致であり、オムニチャネル時代の必然的帰結だと思う。オムニチャネル化とともにVMDも急速に変貌せざるを得ないのだ。
※写真では島のテーブル陳列が‘出前’、壁面の棚陳列が‘元番地’。
 2015/05/25 11:14  この記事のURL  /  コメント(0)

オムニチャネル化でVMDが変る
 多店舗運営では在庫の適正配分・補給が売上と消化歩留まりを左右するが、ディストリビューションの手法もともかく、在庫を何処に積むのかという方針が要となる。店舗販売ではDCより店舗、店舗内でも後方ストックより売場に積むという‘前進配備’が常識とされて来たが、EC比率が急拡大するオムニチャネル時代の今日では‘後方配備’が常識となりつつある。
 店舗よりECの方が断然、売上伸び率が高く経費率も格段に低いとなれば店舗よりECに在庫を優先して回すのは当然で、店舗に在庫が偏在してはECへの引き当てが滞りかねないから、EC用のDCやピッキングラインに遅滞無く在庫を回せるよう基幹DCの備蓄率を上げる‘後方配備’が新たな常識になって来る。元より多店舗運営では在庫の偏在が機会ロスと値引きロスの元凶で、セブンイレブンやしまむらなど自社ルート便による物流体制の整った企業では店舗在庫を最少に抑えてDCから多頻度補給して成果を挙げて来た。
 『オムニチャネル化でVMDが変る』と言うのは売場と後方ストック、DCの在庫の持ち方が変るからだ。売場はサンプルをフォーカスする‘出前’と売場内ストックたる‘元番地’で構成されるが、ユニクロなどのウェアハウス型のストアは‘元番地’に在庫を積み上げてお客さんがセルフサービスで買う仕組みゆえ売場と後方ストックに大量の在庫を積む必要があり、オムニチャネルな在庫引き当て効率は極めて低く、在庫に関わる店内物流業務も煩雑になる。こんな不合理を解消するには、売場の陳列を‘出前’だけのショールーム陳列にして‘元番地’をカウンター越しなど顧客が触らず陳列整理が不要な位置に配し、店舗在庫と店内物流業務を極小化するのが効果的だ。
 となればVMDの手法も店舗のレイアウトも大きく変わる。VMDとストアプランの基本に加えてそんな最新の技術革新をビジュアルに提ずるのが6月5日に当社で開催する『最新VMDストアプランゼミ』なのです。VMDは販売員のお遊戯ではなくマーチャンダイジングとロジスティクスを販売プロセスに繋ぐ在庫フロー技術体系であり、買う側と売る側の労働、在庫と運営コストを極小化する仕組みなんですが・・・・・もちろんブランドの感性を伝える美術的陳列表現や建築的店舗環境も問われます。最新の陳列や売場の写真、図面をたくさん用意して解説しますので、理解してもらえると思います。
 2015/05/21 11:52  この記事のURL  /  コメント(0)

蔦屋家電は遊べるショールームストア?
 5月3日に二子玉川ライズSCに開業した蔦屋家電は大混雑と聞いていたので、連休明けて熱りも冷めた先週末、ルン妻に同行をお願いして探検に出掛けた。
 二子玉川駅直結の第一期ライズは‘二子玉’らしからぬニューファミリーぽい安っぽさが鼻に付いたが、バスターミナルを過ぎて一段高く登ったテラスロードを二子玉川公園に抜けて行く第二期ライズは勝ち組アラフォー的ライフスタイル感に溢れ、テラスロードに面したカフェやレストランに集う人々は80年代たまプラーザの‘金妻文明’を想起させる。
 蔦屋家電はバスターミナルに面してテラスロードに昇る右手の1〜2F計7160平米を占める巨大店舗だが、この手の大型店に在りがちな安っぽさは欠片も無く、代官山の蔦屋書店をさらに洗練させた建築的美術的なセンスは軽薄なアパレル系大型店とは天と地ほどの差がある。ダークウッドの内装に繊細なLED照明で陰影を付ける店舗空間はリピテーションの迷宮のようでもあるが随所にシンメトリーの美しい均整を見せ、アートな陳列手法もあって古典建築の美術館か図書館のような格調さえ感じさせる。
 家電は2Fのバスターミナル側から多摩川側へと廻るサイドに‘フード&クッキング’‘ビューティー’‘ウエルネス’‘ハウスキーピング’、1Fはエントランスから時計回りに‘アップル正規販売店’‘ネットワーキング&フォト’‘ステーショナリー&ムービー’‘ミュージック’‘サウンドレンタル’‘モバイル’‘アップル正規サービスプロバイダ’と続く。いずれも家電商品のサンプル陳列に関連する書籍や生活用品、一部は食品までクロスマーチャンダイジングするライフスタイル編集で、書籍で培われた蔦屋流編集陳列が家電でも遺憾なく発揮されている。とりわけ‘フード&クッキング’‘ビューティー’‘ステーショナリー&ムービー’などでは書籍で多用される多重露出クロスマーチャンダイジングが目を惹いた。商品も一般的な家電メーカー品よりこだわりの専業メーカー品やデザイン家電ブランド、家電量販店では見られないマニアックなブランドがフォーカスされており、まさしく‘家電のセレクトストア’という印象だ。
 家電量販店では電卓片手の営業員やメーカーの派遣が交錯して忙しないが、蔦屋家電では‘コンセルジュ’という書店員感覚の博識アドバイザー(多くは東急ハンズ的に良く訓練されたパート&バイト)がライフスタイル視点でじっくり相談に乗ってくれる。私もカメラ売場で興味の赴くままあれこれと質問したり触ったりと半時ばかりも遊んでもらったが、購入段階では量販店やECとの価格比較もするだろうから‘楽しく遊べる美術館的ショールームストア’になりかねないと思った。
 サンプル陳列はショールームストア的だが(消耗家電やパーツ類は積んでいる)、ストックは後方に在って(棚下在庫は知れている)売場への補給体制は未確立だしECの同時展開もないから、オムニチャネルな拡販と効率的な在庫引き当てというビジネスモデルは見えておらず、採算性は度外視した実験的な段階と推察される。
 蔦屋家電は効率至上のデジタルなECに対するアンチテーゼとして提議されたアナログな時間消費のライフスタイル型家電ストアであり、‘楽しく遊べる美術館的ショールームストア’として若者から熟年層まで熱狂的な支持を得ると思うが、それをアップルストア的な高収益ビジネスモデルに昇華するにはオムニチャネルな販売体制と効率的な在庫引き当てが不可欠だ。売場と店内ストック、DCの在庫の持ち方や補充方法はもちろん、ベンダー/メーカーと連携するロジスティクスの仕掛けが要となるのではないか。天才企画マンたる増田氏の次の一手に注目したい。
 2015/05/20 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

店は負の資産になった
 TSIホールディングスの260店舗に続いてワールドも500店舗の撤退を発表したが、ブランドの廃止や店舗撤収はこれだけで終わりそうもない。売上の低迷と収益の悪化に苦しむアパレル各社の店舗撤収は加速度的に広がるのが必定だからだ。
 『売れない店をなぜ増やすの?』と何度も指摘しなければならないほど、アベノミクス以降のアパレル業界の出店ラッシュは採算を度外視した常軌を逸したものだった。消費増税と調達コスト転嫁の値上げで顧客が離反したのが撤収ラッシュの直接的な引き金とは言え、店舗小売事業が根本的に行き詰まりつつあった事が本質的な要因だ。
 店舗の価値とコストのバランスは00年3月1日、00年6月1日の連続した異変によって崩れ始め、近年のオムニチャネル化の急進で致命的な段階に入ったと指摘したい。
 00年3月1日の異変とは定期借家契約制度の導入、00年6月1日の異変とは大店立地法の施行だ。前者はテナント店舗の営業権に期間を定めた一方で巨額な差し入れ保証金を不要にし、ODMの一般化と相まって‘誰でもSPA時代’をもたらしたが、店舗の資産価値は激減し、運営コストが問われる流動資産と化した。後者は商業施設の営業時間を自由化して延刻ラッシュを招き、店舗要員の二交代制を必然化して全国的販売員不足を状態化し、接客や店舗運営の質が劣化して消化歩留まりの悪化を招いた。それが買う側と売る側の両面からアパレルECを急拡大させた遠因のひとつと見る事も出来よう。
 近年のオムニチャネル化は店舗での購入を選択枝のひとつに追い遣り、ECが毎年二割前後も売上を伸ばす一方で店舗は前年維持も難しく、売上対比の運営コストに至っては店舗とECで倍近く違うという現実を突きつけられるに及び、店舗は経費を垂れ流す負の資産と認識されるに至った。アベノミクスのもたらすインフレが家賃や内装費の高騰を招いた事も店舗の採算性を一段と苦しいものにしている。
 将来性も収益性も望めず負の資産と化した店舗はもはや戦略的負債でしかないから、アパレル各社が店舗網の整理撤収に転じたのは必然の結末だった。オムニチャネル化が急進する今後、店舗網は一段と絞り込まれ、クリック&コレクトの導入やショールームストアへの転換が加速するに違いない。
 2015/05/19 09:46  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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