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成長を阻む四つの壁
 このギョーカイでは凝りもせず、煽られたり勢いにまかせて赤い海に突進するチキンレースが繰り返されているが、ごり押しすればするほど経営効率が悪化し、果ては予期せぬ不祥事まで起こって急激に業績が悪化するケースも見られる。経営陣の思い込みとは裏腹に、業績を左右しているのは需給バランスとバリュー感、在庫マネジメントと企業統治だ。
 売れ筋も供給過剰となれば残品の山に化ける。成功例に煽られて皆が同じマーケットや商品に殺到すれば青い海も一瞬にして赤い海に変じてしまう。今や農家や漁師は毎日、市場(いちば)に供給される品目別の数量と競り値をネットで確認して翌朝の採り入れ品目や漁労品目を決めるのが常識となっているが、何週もかけて投入するアパレルのQRでは供給過剰が避けられない。計画MDあっての補正投入に留めるのが賢明だろう。赤い海で徒労を繰り返し消耗していては成長など遠のいてしまう。短期長期の需給バランスを見た‘振れない’マーケティングとMD政策こそ王道だと思う。
 現在のように調達コストがインフレする局面では調達コストと売価のバランスはギリギリのせめぎ合いにならざるを得ず、わずかの売価の差や原価率の差で顧客がサーッと引いてしまう。日頃からギリギリまで原価率を切り下げていた企業など、わずかなコスト転嫁でも顧客が離反してしまい、単価が数%上がって客数が十数%も減るケースが多々見られる。ここは目先の利益に囚われる事無く、原価率を3%上げる事をお勧めする。‘3%’は売価では一割以上の差になるから、消化歩留まりが格段に上がって粗利益率は逆に上昇する結果をもたらす。商売の基本は何時の時代も「盥の水」なんですよ!
 もうひとつの商売の基本が在庫マネジメンと商品財務である事に異論は在るまいが、その手法は結構、時代環境や商品政策に煽られて蛇行している。ファストファッション商法など週サイクルの多頻度投入と裏腹に年間4回転にも満たないし、普通借家時代に多店化したチェーンと今世紀の定期借家時代に多店化したチェーンでは在庫マネジメントと商品財務の常識がまったく異なるのには驚かされる。オムニチャネル化が進んだ企業と立ち後れた企業でも同様な認識の差があるに違いない。自社で‘ジョーシキ’だと思い込んでいる手法がホントに最適か、視野を拡げて確かめるべきだろう。
 戦略以上に中長期の業績を左右しているのが企業統治だ。企業内所得格差の大きい「蟹工船」的階級搾取統治では現場の意欲が低下して業務の精度や顧客対応が荒み、やがては情報の流出や不祥事など企業内テロやバイトテロが発生して企業に致命的なダメージを与えかねない。社員や取引先などステークホルダーの将来を担保すべく年々、生産性を向上させ分配とチャンスを公平にし、‘カイゼン’提案を取り入れて現場の意欲を盛り上げてこそ、企業の成長と収益も担保されるのだ。業界は異なるが『クロネコヤマト 人の育て方』(中経出版)など是非とも一読すべき良書だと思う。
 古いチェーンストア経営では未だ「蟹工船」的統治が横行して現場を荒ませ企業の成長と収益を妨げている。オムニチャネル化とコストインフレが進む中、チェーンストアはマネジメントと企業統治を抜本から‘革命’しなければならない。そんな想いで4月9日に開催するのが『オムニチャネル&インフレ時代のチェーンストア経営革新ゼミ』なのだ。
 2015/03/25 11:17  この記事のURL  /  コメント(0)

オムニチャネルは画期的新局面へ
 あさって26日(木)に開催するSPAC研究会の準備が一巡したが、メンバーのお申し込み状況は既に満員御礼寸前で、関心の高さが伺える。EC関連では2010年以来五年目になる今回は『最新オムニチャネル戦略総研究』と題して、爆発的成長期に入って技術革新とコスト競争が過熱するオムニチャネル戦略の最新状況を報告するが、今回はここでしか聞けないEC関連のコスト比率や手数料率に加え!!と驚く情勢の急変が明かされる。どんな変化が起こっているか、私の報告後に開催するパネルディスカッションの顔ぶれを見れば敏感な方々は想像がつくだろう。
 常連のユナイテッドアローズの相川さんやアパレルウェブの杉本さんに加え、ANAPの川窪さん、Farfetch Japanの和島さん、そしてスタートトゥデイの廣瀬さんまで揃うとなれば、もう何が飛び出すか私の制御も効かなくなるかも知れない。それほど急激な情勢変化が起こっているのが今のオムニチャネル最前線なのだ。
 オムニチャネルはもはやECと店舗の連携といった次元をはるかに超え、全社の販売とブランディング、物流と在庫コントロール、コストとキャッシュフローを画期的に改善する基幹戦略と化しつつある。今回のSPACに出席すれば認識が一変するのではないか。
 一昔二昔と言うが、オムニチャネルの世界では変化が加速度的で、ちょっと前の常識に囚われていると即、置いて行かれてしまう。今回のSPAC研究会は時代を画す転換点になると思う。
 2015/03/24 09:58  この記事のURL  /  コメント(0)

ベテランとシンマイ?
 今春夏のイタロビジカジは不作だったのか値上げにバイヤーがちびったのか百貨店店頭の品揃えに魅力が無く、セレクトを廻ってもストリートスポーツなノームコアカジュアルばかりで、ほどよいトレンド感とクオリティ感の揃った‘大人のビジカジ’は探すのに苦労する。そんな訳で春物のビジカジもセットアップも揃わず、過半は前年前々年の縒れた服で誤摩化す毎日だ。
 いち顧客としては、そんな羽目になった元凶はビジカジの主力調達先である新宿某百貨店メンズ館の品揃え精度の低下にあると思う。私が愛顧しているのはピッティブランドから編集される5FのDEブロックと4FのGブロックだが、今春は跳ね上がったトレンド商品か飽きの来た実績商品ばかりで旬のストライクゾーンがごっそり抜け落ち、わずかなストライクゾーンに顧客が集中したのかサイズの奥行き確保を誤ったのか、私のサイズ(48か50)は欠品が目立っていた。
 売場から離れた倉庫には適品が潜んでいるのかもしれないが、いちいち10分もかけて探して来るのを待つのも嫌だし、忙しい中をそんな手間を煩わせるのも心苦しく、前シーズンからの定番アイテムを買い足して我慢することにした。
 関係者から聞く所に拠れば担当バイヤーがベテランからシンマイ?に交代したとかで、それだけでこんなに品揃えの精度が落ちるものかと今更ながらに驚いた。これまで担当していたベテランバイヤーはオリジナル開発に転じたと聞いたが、そちらの企画も手堅くコンサバに振れ過ぎて面白みがなく、難しいものだと思った。
 業界では『一人前のバイヤーに育つまで三億円は溝に捨てる』と言われるが、担当分野が代わればまた三億円注ぎ込まねばならないのだろうか。ベテランは業務の精度は高いが成功体験が足を引っ張って面白いチャレンジを欠きがちだし、シンマイは目先のトレンドに飛びついて品揃えのバランスを崩しがちだ。このギョーカイは未だ属人的な要素が大きく、一流百貨店の主力売場と言えども担当者で少なからず品揃えが振れる。担当者が代っても品揃えが大きくは振れない「マニュアル」みたいなものは在るのだろうか・・・・・
 とまれ、こんな体たらくではグローバルな越境ECが本格化するこれから、トーキョー市場の覇権を守れるとは到底思えない。もっと桁外れな物量的アクションや提供方法革新が必要なのではないか。
 2015/03/23 09:24  この記事のURL  /  コメント(0)

Rady事件の教訓
 既に旧聞に属するとは思うが、ルミネエストの人気店「Rady」のカリスマ店員ら三人が後方ストック他社商品の窃盗で新宿署に逮捕された翌日(二月四日)、即シャッターを下して退店に至った事は業界に衝撃を与えた。飲食業などで頻発している‘バイトテロ’とは性格が異なるとは言え、従業員の犯罪行為やテロ行為が企業に致命的な打撃を与えかねない事はベネッセ事件を振り返るまでもない。
 この事件から学ぶ教訓は二つあると思う。第一は企業統治の問題で、従業員の待遇やキャリアアップ、現場のカイゼン活動や従業員提案など、全社の成果配分と経営参画という‘統治’の軽視が思わぬリスクをもたらすという当たり前の事。現場を経営層が搾取する‘蟹工船’的専制統治では現場の不満が鬱積し、意欲の低下やサボタージュ、果ては情報の流出や企業内テロを誘発しかねない。
 第二は商業施設後方の複数テナント/ブランド在庫の管理・ピッキング体制の在り方で、第三者はもちろん当事者従業員による盗難を避ける為にも、販売に集中すべき店舗要員を在庫管理やピッキングのために売場から離さないためにも、物流専門業者に全面委託すべきだ。すでに大型商業施設や百貨店ではテナント毎に多数の搬入車が出入りする事を回避すべく、近隣の物流業者施設に納品させた商品を一括して運び込む体制が広がっているが、商業施設内後方のテナント/ブランド在庫も同様に、搬入・検品して棚入れ管理し、売場からの要請に即応してピッキングして届ける一貫サービスを物流専門業者に委託すべきだと思う。
 百貨店の後方など管轄消防署が見たら目を吊り上げそうなほど乱雑にパッキンが積み上げられ、各ブランド在庫のセキュリティなど無いに等しく、プロなら盗り放題に見える。新宿某百貨店など売場陳列の色・サイズを絞っているため、売場によっては後方の在庫を探して持って来るまで10分近くを要する。その間、顧客は待たされるし、売場を離れた販売員さんは接客する事が出来ない。消化仕入れのブランドが大半という百貨店の現実を考えれば、ブランド後方在庫のセキュリティ管理上からも専門業者委託が強く望まれる。
 2015/03/20 11:19  この記事のURL  /  コメント(0)

ビジネスモデルをリセットしよう
 70年代を謳歌した卸型ブランドビジネスは過去のものとなり、80年代のDCブランドから発展した企業や90年代のナショナルチェーンも成長力を失ったが、00年代に成長したカジュアルチェーンやセレクトSPAは壁に当たりながらも依然として成長の夢を追っている。
 彼らの成功体験が既に過去のものとなり顧客に響かなくなっている事は新規業態/ブランドの迷走や主力事業の伸び悩みを見れば明らかだが、かつての成功をもたらしたビジネスモデルやマネジメント手法への依存を断ち切れず、出口の無い消耗戦に陥っている企業が多い。そんな消耗戦が続けば、やがては出血多量で動きが取れなくなるが、立ち止まって周囲の景色を冷静に見ようという経営者は極めて限られる。
 80年代からのブランドビジネスや90年代からのナショナルチェーンのマーケティングや企業統治、在庫コントロールや店舗運営などの実務手法を垣間見ると、あまりの時代ズレと非効率性に驚く事が多いが、00年代に成長したカジュアルチェーンやセレクトSPAとて今となっては大差ない。本質的なアップデートが出来ないまま、ファストな外資チェーンに煽られて横道に逸れたり、勝算の怪しい新業態/ブランドに大枚を投入したり、右往左往するうちに体力を消耗して‘過去の会社’に堕ちて行く者もある。
 目の前だけを見て走れるラッキーな期間が過ぎれば、時代の波に流されて過去の世代となるケースが多いが、時代を超えた歴史観のレンズに付け替えれば、過去から未来への環境変化とビジネスモデルの変遷が見えて来る。壁に当たった時は下手にもがいて体力を消耗するより、過去から未来へ流れる時の真理を見据えてビジネスモデルをリセットする事が肝要だ。業界の50年間の変遷を見て来た老識者の話(ファッションビジネス70年史とビジネスモデル変遷の経営史観形成ゼミ)を謙虚に聞いてみる事も必要なのではないか。
 2015/03/19 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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