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MDの組み方にもトレンドがある
 ファッションにトレンドがあるようにMDの組み方にもトレンドが在る。デザイン鮮度を追うトレンドではデザイン先行で流通素材軸の短サイクル開発に流れ、OEM/ODMなどアウトソーシングの比率が高まる。逆にベーシック品の完成度を追うトレンドでは素材先行で素材軸の長サイクル計画開発が志向され、インソーシングの比率が高まる。
 リーマンショック(同時にファストファッション上陸)の08年秋冬以降10年秋冬まではデザイン鮮度を追ってのグローバルモードなファスト局面で、3.11の11年春夏からローカル回帰とベーシック回帰に転じたもののファストなグローバルモードも並行し、14年春夏からノームコアな新世代ベーシックのサイクルに入った。15年春夏はファストなグローバルモードが退潮し、ローカル回帰/ストリート回帰/ベーシック回帰が一段と鮮明になるから、MDもスローで長サイクルの素材軸インソーシングが志向される。15年秋冬では景気や世相の暗転を背景にノームコアなベーシックにミリタリーやバイカーが加わる一方、グローバルモードも北欧的なインダストリアル・ベーシックやスノーファンタジーへ流れるから、MDもスローで長サイクルの素材軸インソーシングが加速すると思われる。
 当社の『15年秋冬MDディレクション』ではスタイリングテーマの展開ストーリーを提案し、スタイリングテーマ毎に素材/カラー/アイテム/ディティールをビジュアルに構成してMDの組み方まで解説している。15年秋冬のMD計画もそろそろ大詰めを迎える時節ゆえ、是非とも参考にして頂きたい。
 2015/01/21 10:31  この記事のURL  /  コメント(0)

会社のライフサイクル
 アパレルチェーンの業績を長期に見ていると、会社のライフサイクルという現実を痛感させられる。売上はまだ伸びているものの、営業経費率がジリジリと上昇する一方で調達原価率を目に見えて切り下げるようになると、終わりの始まりを予感させる。
 会社がまだ伸び盛りの頃は経費率も低いし調達原価率も際立って高く、歩留まり率も高く商品回転も速いが、やがて出店が荒っぽくなって不振店が増え始め、歩留まり率が低下して商品回転も目に見えて遅くなる。その分、経費率は高くなり、粗利益を補うべく調達原価率のあからさまな切り下げが進む。それでも売上が伸びているうちはよいが、やがて既存店売上が減少に転じ、調達原価率の切り下げも限界に達して収益力が急速に低下して行く。
 これを顧客側から見ると、伸び盛りの頃は希少性もあり、原価率が高いからお値打ち感もあり、歩留まり率が高いから価格信頼感もある。ブランド価値が高まって行くサイクルと言って良いだろう。それが多店化とともに経営効率が悪化して来ると、何処にでもあるから希少性が薄れ、原価率が低下するからお値打ち感も低下し、歩留まり率が悪化するから価格信頼感も崩れる。かつて築き上げたブランド価値を食い潰して延命しているサイクルと言って良いだろう。
 経営している当事者達は良くも悪くも前ばかり見て振り返る事をしないから、ブランド価値を食い潰すサイクルに入っている事に気付かないし、若手に世代交代して行く現場は過去のブランド価値を自分たちの実力と勘違いして反省もしない。割高な価格を付け高コストな運営をしても顧客はついて来ると錯覚しているが、そんな幸運は続かない。顧客にとっては選択枝のひとつでしかないから、魅力的な新手ブランドが出て来れば、やがて乗り換えられてしまう。
 この十年間で調達原価率を10ポイント前後も切り下げ、営業経費率が5ポイント以上も肥大した会社は既にブランド価値を食い潰しており、‘死亡フラグ’が立っている。一度‘死亡フラグ’が立った会社で再発展したケースはほぼ皆無だから、命運は尽きているのだろう。貴方の会社は大丈夫だろうか。
 2015/01/20 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

『騙す技』より『始末する技』
 今年になってから業界の調達原価率と消化歩留まりの関係、その時代的変化を数字を挙げて様々な角度から検証し警鐘を鳴らしているが、この業界の経営者たちは真摯に受け止めているのだろうか。
 今世紀に入っての変化、とりわけファストファッション上陸(リーマンショックと一日違い)以降の変化は、有り体に言えば『始末する技』を放棄して『騙す技』に流れた反顧客的(同時に反商人道的)退化であった。消化率を高め経費を抑制して『良い品を安く売る努力』を放棄し、原価率を切り下げて割高な価格を付け大きな店と派手なプロモーションで『顧客を騙す技』を競って来たのが現実だ。デフレ期には成り立ったその怪しげな商法も円安インフレが加速する今では原価率切り下げどころか逆ざやが肥大する状況で壁に当たり、お手本となった外資ファストファッションチェーンの業績も陰り始めている。
 考えてみれば、巨大ロットを背景に劇的な低原価率で調達し、ファストな投入とスローな販売消化のギャップを畳み掛けるような値下げ販売で埋め合わせる商法は事実上の『二重価格商法』に他ならない。外資ファストファッションチェーンの歩留まり率は60%前後と推計されるが、逆算すればプロパー価格での購入は20%前後に過ぎない事になる。これが『二重価格商法』でなくていったい何だと言うのか。
 ロットが二桁も三桁も違うローカルチェーンがそんな商法を真似ても値下げロスが利益を食い潰すのみならず、価格信頼感も損なって顧客が離反するだけで何も良い事はないが、多くの国内チェーン経営者が煽られて道を踏み外したばかりか、中には積極的に『騙す技』を磨いて『偽装二重価格商法』で伸し上がる者さえ出て来た。それに煽られて、また道を踏み外す経営者が出て来るという悪循環に歯止めをかけないと、価格信頼感がとことん崩壊して衣料品をプロパーで買うという購買慣習そのものがなくなりかねない。業界は『騙す技』より『始末する技』で『良い品を安く』という王道に回帰すべきだが、果たして間に合うのだろうか。
 2015/01/19 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

努力の方向が違っていたのでは?
 昨年末あたりから株も衣料消費もいよいよ雲行きが怪しくなって来たが、株価はともかく衣料消費の方は買い気を殺いでも致し方ない業界側の事情があるようだ。近年はバーゲン時期で業界が揉めているが、バーゲン時期などより、正価がここ10年ほどでエッ!と思うほど怪しくなってしまった事が売れなくなった最大の要因だと思う。
 アパレルチェーンのオリジナル商品の調達原価率は今世紀始め頃は売価の38%が標準と言われたものだが、昨年末に商社筋にヒアリング調査を行った所、現在の標準は27%と10ポイント以上も落下しているとか。なかでも業界で「大箱」と呼ばれる百坪級あるいはそれ以上のストア業態では原価率はもうひと回り低く、18%まで下がる。大型店で在庫の消化管理が粗くロスが大きい事が要因なのか、真似た元の外資ファストファッションチェーンの歩留まり率が60%前後で原価率が20%強というバランスだったからなのか、ともかく顧客を舐め切った酷い商売だ。割高の代表のように言われる百貨店NBでさえ原価率は24〜5%だから、さらに割高と言う事になる。円安インフレ下の調達コスト急騰による値上げで、この水準はさらに切り下げられる傾向に在る!と言うから、顧客の買い気が殺がれるのも当然だ。
 一昔前は『良い品を割安に』と拘っていたセレクトチェーンのオリジナルも、当時の38%からやはり27%程度に低下しているから、昨年秋口以降の円安インフレ値上げで顧客に愛想を尽かされたのもやむを得まい。
 原価率をこれだけ切り下げても増益しているケースは極めて稀だから、利幅を増やした以上に売れなくなって値引き処分ロスが肥大し‘笊に水’な悪循環に陥っているのが実情だ。加えて外資SPAに張った大型店舗投資や大仕掛けな宣伝費も利益を食い潰していると推察される。
 値引きロスをカバーすべく調達原価を切り下げたり宣伝経費をかけたりするぐらいなら、顧客にお値打ち感が解るよう、うんと原価率を高くして『良い品を安く』に徹すれば、高歩留まりとなって一段とお値打ちに出来る好循環に乗れたのにと思うのだが、外資SPAの派手な仕掛けに煽られて自分を見失う経営者が多かったという事なのだろう。
 努力の方向が違っていたと解ったら、『良い品を安く』『店は客の為に在る』という原点に戻って出直すべきだと思うが、如何だろうか。猿だって‘反省’するんですからね!
 2015/01/15 09:50  この記事のURL  /  コメント(0)

ローカルとグローバル
 近年のアパレルチェーンの動向を見ていると、グローバルな外資チェーンに煽られてか、やたらと大きくなる事ばかり志向して自分に似合わぬ手法を猿真似し、顧客を失望させる愚行が目に余る。アパレルチェーンのビジネスロジックはローカル/ナショナル/グローバルの事業規模で異なり、顧客との距離感やMD手法、店舗運営とロジスティクスにそれぞれ最適なバランスがある。事業規模に見合わない手法を猿真似しては却って顧客が離反し、収益性も成長性も損なう事になりかねない。
 それを数字で論証出来るのが原価率と歩留まり率の関係だ。ロットの限られるローカルチェーンは「高原価率×高歩留まり率」、ロットが中間のナショナルチェーンは「中原価率×中歩留まり率」、ロットが巨大なグローバルチェーンは「低原価率×低歩留まり率」のバランスで収益性を確保している。MDの組み方や店舗展開の標準化度、ロジスティクスの精度にも拠るが、ローカルチェーンとは概ね3ダースまでの店舗展開で38%以上の原価率×85%以上の歩留まり率、ナショナルチェーンとは概ね10〜20ダースの店舗展開で30%前後の原価率×75%以上の歩留まり率、グローバルチェーンとは概ね40ダース以上の店舗展開で25%前後の原価率×65%以上の歩留まり率と捉えられる。もちろん、これらの狭間の規模でのバランスもあるが、ほぼ同一の二次曲線近辺に位置すると考えて良い。
 それぞれの規模で、このバランスより高原価率にするほど顧客の支持を得て高歩留まり率に振れ、収益性も成長性も高まる。逆に、このバランスより低原価率にするほど顧客が離反して低歩留まり率に振れ、収益性も成長性も低くなる。『良い品を安く』は理念だけの掛け声ではなく、統計的な結果を伴う商売の真理なのだ。
 業界各社の原価率と歩留まり率のバランスを見回すと、どこまで顧客を騙せるか挑んでいるような偽装二重価格商法のチェーンもあれば、誠実価格(高原価率)と高い歩留まり率の好循環を実現しているチェーンもある。どちらが末永く繁栄する商法か素人が考えても明白だと思う。原価率を極端に抑えた怪しい商売(偽装二重価格商法)が絶えない業界体質に重ねて警告を発したい。
 2015/01/14 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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