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怪しい会社と危ない会社
 前々から‘怪しい会社’と思っていたスカイマークが大型機購入契約のキャンセルで‘危ない会社’に転落し、ついに‘行き詰まった会社’になった。日本航空など‘勘違いしている会社’から‘危ない会社’になって‘行き詰まった会社’に転落し、国家の支援で‘したたかな会社’に再生したと言えよう。
 ファッション業界にも様々な会社があるが、長年この業界を見て来た私は‘真面目な会社’‘したたかな会社’‘勘違いしている会社’‘怪しい会社’‘危ない会社’‘化石化した会社’などと直感的に分類している。どこがどれとは公表しかねるが、日頃の論調から推察して頂きたい。
 問題は経営陣の世代交代などで会社の方針や体質が変化し、‘真面目な会社’‘したたかな会社’から‘勘違いしている会社’や‘怪しい会社’に変質してしまうケースだ。どことは申し上げかねるが、‘真面目な会社’‘したたかな会社’と思っていたのが、‘怪しい会社’‘危ない会社’の派手なアクションに煽られて‘怪しい会社’に変質し始めているのは残念であり悲しくもある。
 創業世代が長年かけて築き上げて来た顧客の信頼感(ブランド価値)を若い経営陣が目先の成長に目が眩んで食い潰して行く姿を‘勘違いしている会社’‘怪しい会社’と評している、と受け取ってもらって構わない。もちろん、‘怪しい会社’には顧客や取引先、従業員に対する常習的違法行為が疑われるケースも含み、それは同時に司直の摘発による業績悪化リスクを抱えた‘危ない会社’でもある。
 会社活動の善悪を仕分けるのは最終的には‘法の裁き’や‘顧客の裁き’だが、それ以前に日々の行動を律する‘志’というものがあるはずだ。古くは‘商人道’、今風には‘CREDO’とでも言うべきものだろうが、顧客や取引先はそれを無言で受け止め行動で応える。
 業界がグローバルな嵐に翻弄され経営者が‘志’や‘商人道’を忘れて行く中、‘勘違いしている会社’‘怪しい会社’‘危ない会社’が増えて行く世相を憂う。歴史を見て来た老人の‘憂国’ならぬ‘憂業界’の想いは伝わるのだろうか。
 2015/01/29 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)

殿様商売
 某百貨店のECサイトから好物の菓子(乾きものです)を発注したが、受注確認や発送準備の自動送信メールは幾つも来るのだけど、発注から一週間近く経っても『発送しました』というメールが来ない。それどころか、『発送前でもカードの引き落としが有り得ます』などと神経を逆撫でするメールまで来る始末だ。
 百貨店商法の常として消化仕入れだろうから在庫は確保されておらず、受注してから業者に回して百貨店の役割は果たしたと勘違いしているのだろうが、顧客は商品が到着しないのだから頭に来る。日頃、アマゾンでも楽天でも発注の翌日には発送のメールが来て翌々日には届くから、そんなもんだろうと思っていたらとんでもなかった。そんな殿様商売だからEC比率も1%内外に留まっているのだろう。
 そう言えば、同じ百貨店の新宿店で買った獣毛混セーターの毛抜けに困って返品したきり何のレスポンスも返金もないし、買ったばかりのキーホルダーからキーが脱落するのに困って交換してもらった時など、『ひとつのフックに二つのキーを付けては責任持てない』と開き直られてしまった。
 百貨店の常識では商品の供給も欠陥も納入業者の責で、さもなければ顧客の使い方の責で、自社にはなにも責がない(それでは存在意義もない!)のだろうが、顧客にしてみれば百貨店の‘ブランド’で買っているのだから、業者に責任を振って逃げられては無責任な「殿様商売」に思えてしまう。ましてや『使い方が悪いんでしょ』と開き直られては、商取引が成り立たなくなる。顧客の側でも百貨店とはそんなもんだと諦めてECモールやブランドの直営サイトに購入を切り替えているから、『ショールーミング厳禁』のご沙汰を繰り返しても売上の流失は止まらないわけだ。
 2015/01/28 09:55  この記事のURL  /  コメント(0)

ファストファッションの功罪
 リーマンショック(08年9月15日)とほほ同時(08年9月13日)にH&Mが上陸して以降、経済の失速とともにデフレも加速し、ファッション業界は低価格競争の泥沼に陥った感があるが、アベクロミクス以降、円安インフレに転じた今日、その功罪を総括しておきたい。
 まず‘功’はグローバルモードなトレンド商品が‘速く’‘安く’大量に供給されるようになり、価格的に手の出なかった層までモードなトレンド商品を楽しむようになった事で、業界的には次々と濫造される大型商業施設の床を埋める‘大箱’の供給が広がった事が大きかった。
 逆に‘罪’は1)品質の良識が崩れた、2)価格信頼感が崩壊した、業界的には3)デフレが加速して市場が一段と萎縮した、4)売れ筋後追いのODMが蔓延して業界の開発力が一段と低下した、5)開発力でも価格競争力でも劣るローカルのカジュアルチェーンが総崩れになった、6)チープな品を畳み掛けるような値下げで煽って消化する‘大箱’商法が蔓延した、と挙げればきりがない。
 見てくれのデザイン鮮度を訴求して素材や縫製を限界以下に切り下げたファストファッション商品が市場に受け入れられた結果、国内業者もこれまでの‘良識’を捨てた低コスト開発を加速し、市場も品質の劣化に麻痺して品質の‘良識’が崩壊してしまった。しかも品質を落とした分、調達原価率は急ピッチで低下し、SPAなのに百貨店ブランド並みに25%を割り、顧客の品質音痴につけ込むように20%を割り込むチェーンまで出て来た。
 如何に品質音痴な素人と言えども、そこまで落とせば見え見えのチープさに買い気が殺がれ、プロパーで買う客が激減して値下げが繰り返され、「定価」は有名無実と化した。結果、購入単価が低下して市場規模が萎縮し、さらなる価格競争と品質の劣化が繰り返されて来た。
 外資ファストファッションチェーンや国内業者の低価格‘大箱’業態の商法は極めて類似しており、極端な低原価率で調達したチープな商品を値引きで煽って消化して行く「二重価格商法」に他ならない。何ら割安でもない商品を値引きで煽って割安と錯覚させる商法は商人道に悖るのはもちろん、価格信頼感を崩壊させてさらなる値引き競争と掛け値商法を招く悪循環が指摘される。景品表示法第四条第一項第二号「有利誤認表示」違反が強く疑われる商法だが、商業施設デベも何ら抑止せず公取委も消費者庁も摘発に動かないまま顧客を欺く商法が蔓延してしまったのは遺憾と言うしかない。
 値崩れが広がり原価率が切り下げられる中、リスク回避と開発固定費削減を志向して売れ筋後追いのODMが蔓延し、アパレル企業の開発組織が一段と圧縮されて企画・開発職の給与水準も低下し、そんな実情を見てこの業界を志向する人材も激減し、業界の開発力は加速度的に退化してグローバルな競争力も損なわれて行った。
 ファストファッションの功罪を総括すれば罪がはるかに大きく、価格不信感が高まって流通が非効率化し、国内アパレル業界も大きなダメージを受け、国内産地の衰退も加速した。‘クール・ジャパン’の勢いを悪循環を断ち切る転機として欲しいが、業界の開発人材も産地のサプライチェーンも枯渇した今、復活は点か線に限られてしまうのだろうか。
 2015/01/27 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

販売員の地位向上
 『ファッション業界の光と影』と言えば、80年代から『ランウェイでスポットライトを浴びるデザイナーとフィッティングルームの影でシャケ弁当をかき込むハウスマヌカン』という図式は基本的に変わらないが、オムニチャネルな今日ではハウスマヌカン(販売員)に物流センターのピッカーを加えるべきかも知れない。そんな関係は欧米のファッション業界も大差ないようで(格差はもっと極端だ)、フィッティングルームの影でサンドイッチやパニーニをぱくつく姿をよく見かけたものだ。
 光の側だったはずのデザイナーとて頂点は80年代で、デフレとともにアパレル企業がアウトソーシングに流れ企画開発スタッフを削減するとともにデザイナーの大半がOEM/ODM業者側に移り、給与水準は見る影もなく低下して行った。80年代には数千万円の年俸を取るデザイナーも珍しくなかったが、今やOEM/ODM業者のデザイナーの給与は販売員と大差ないのではないか。
 販売職の給与とて、人手不足で売り手市場と言われながらも直近の三大都市圏バイト募集平均時給は950円弱で物流・清掃バイトより低い。ショールーム陳列で販売員を物流労働から解放し接客に集中させれば給与水準を伸ばせるが、この業界の経営者はまったく関心を示さない。恐らくはショールーム陳列を導入して成果が上がっても、販売員の待遇に還元する意志はないのだろう。アパレルに限らず流通業の経営者にとって販売員(店舗要員)は低コストに使い捨てる搾取対象でしかなく、店は永遠に「蟹工船」のままだ。
 SCや駅ビルの業界では販売員啓蒙として接客コンテストの類が盛んだが、私には階級搾取の現実を粉飾し待遇改善を先送りする如何わしいイベントとしか映らない。刻々と変化する商品や洗濯に関する知識、フィッティングのトレンドとお直しの知識、オムニチャネルな在庫確認やサービス対応はもちろん、愛想までふりまいてくれるのだから、それで時給千円未満とは非道過ぎる。服飾専門学校から商業施設デベまで業界ぐるみで若者を見果てぬ夢で釣って搾取する悪しき慣習を一掃しない限り、この業界はますます衰退して行くしか無い。もっと深刻な人手不足になって時給が高騰し、店舗運営システムを抜本的に革命せざるを得なくなる事を願うしかないのだろうか。
 2015/01/26 10:04  この記事のURL  /  コメント(0)

悪魔との取引
 企業が頂点を謳歌してから衰退の坂を転げ落ちだすまで、ほんの一瞬と言って良い。何十年かの企業生命の中の数半期にすぎないと思う。何故そのような暗転に至ったのか、振り返ってみると確かに‘その一瞬’が在った事がわかる。それは企業の将来と引き換えに今の利益を先取りする「悪魔との契約」の誘惑に堕ちた瞬間だった。
 かつて今日のユニクロ並みに隆盛を誇ったSPA企業が在った。一社は当時としては巨大ロットの海外生産で超低コスト調達を実現したが、「偽装二重価格商法」の常習犯として司直の摘発を受け、それを契機に業績が悪化して行った。一社は特異な素材絞り込みMDの成果として極端な低原価率を実現して超高収益を謳歌したが、その高収益ゆえ投資判断が甘くなって不採算事業で大きな損失を被った。どちらも一時は超が付く高収益を謳歌しながら、その高収益性ゆえ道を踏み外す災いを招いた例だ。
 小売価格に比して低すぎる調達原価率(20%以下と定義しよう)は一時は超の付く高収益をもたらすが、やがては顧客にそのマジックが露見するか高収益に慢心して経営の箍が緩み、結局は業績を悪化させてしまう。まさしく「メフィストフェレスの誘惑」であり、賢明な経営者は悪魔の誘惑に堕ちてはならない。薄い利幅で懸命に販売消化する仕組みを築き上げてこそ、顧客の信頼を得て長く続く高収益体質が約束されるのであり、悪魔の誘惑に堕ちては泡沫の夢を見て奈落に堕ちる。顧客を欺く超低原価率の誘惑は経営者が慎むべき最たる悪徳と肝に銘ずるべきだ。
 2015/01/22 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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