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素人客を舐めたらあかんぜよ
 イオンモール岡山のついでにチェックした「KOE」にせよセレクト某社のファストファッション業態にせよ、玄人が見れば品質と掛け離れた価格から法外に低い原価率がお見通しだが、業界筋から聞こえて来る売上も決して捗々しくないから、素人のお客さんもそれなりにホントのお値打ちを見抜いているのかも知れない。
 「盲千人目明き千人」という諺もあるが、たとえ素人客でも自ら稼いだなけなしの金を使う以上、価格と‘お値打ち’はそれなりにシビアに見ているはずで、半分は騙される客がいても半分は見抜いてしまうし、一度痛い思いをした客は離れてしまう。結果としては素人客も玄人と大差ない判断をしているという事なのだろう。
 低価格業態の商品(とは限らないから恐ろしいが)を見ていると、どこまで品質を落として客を騙せるか限界に挑んでいるようで恐ろしくなる事があるが、商社やODM業者から聞こえて来る納入原価率もかつての業界常識の底を割って切り下げられている。SPAに対する納入原価率は00年代始めは38%が相場だったが今日では30%を割るのが当たり前になり、ファストな業態やタイムセールを乱発する業態では20%を切るケースも聞かれる。そんな泡沫商品が言い値で売れるはずもなく、はじめから値引き販売する事を前提に売価を付けているのではと疑いたくもなる。
 その一方で、品質にこだわって原価率を高く維持し‘お値打ち’を訴求しているブランドや業態のプロパー消化率は高く、バーゲン時期もギリギリ最後になる(店頭ではバーゲンしないブランドもある)。当社のSPACメンバーアンケートでも原価率と歩留まり率は見事に正相関しているから、素人のはずの一般客も結果としては正しく‘お値打ち’を見抜いているわけだ。
 長年のデフレがインフレに転じて‘逆鞘’が業界を苦しめる中、品質をさらに切り下げる誘惑にかられるのは解らないでもないが、素人のはずの一般客もしっかり見抜いている事を肝に銘じた方がよい。
 2014/12/18 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

セルフレジにメリットはない
 「無印良品」がNCR製のセルフチェックアウト・レジを導入すると報じられていたが、『レジ待ち行列の解消』という効果は期待出来そうもないし、万引き防止のために監視員をつけるというのだから顧客は不快だし不要な人件費もかかる。
 セルフチェックアウトは米国のスーパーやディスカウントストアなどで導入されているが、不慣れな顧客がバーコードをスキャンしてカード決済するのは専任キャッシャーの3〜4倍も時間がかかり、却って行列が長くなってしまう。それを解消しようとレジ列を増やすと一等地の売場が大きく削られてしまうから、一体何のメリットがあるのかと訝ってしまう。万引き防止には監視カメラに加えて各品目の重量登録が必要で(バーコードのスキャンと総重量の誤差をチェックしている)、如何にも疑われているようで快くはない。
 ホントにチェックアウトを効率化してレジ待ち行列を一掃したいなら、いちいちバーコードをスキャンするのを止める事だ。「フライングタイガー」に行列が絶えなかった(もはや過去形だが)のは一方通行レイアウトに加えてレジが渋滞するためで、多数の低価格雑貨を逐一バーコードスキャンしていてはレジを十数台並べても追い着きはしない。出口の一等地をレジ列に割くのも多数のキャッシャーを雇用するのも大変な無駄だと思う。
 既にセレクトショップ大手などで導入が始まっているICタグを使えば山ほど商品を積み上げたカートも一瞬でチェックアウトが終わってしまうから、レジスペースもキャッシャー人件費もミニマムで済むしレジ待ち行列も発生しない。低価格雑貨店がそれを導入しないのはタグのコストが一枚20円前後かかるためで、100円、200円の低単価品では採算が合わないからだが、ショールーム陳列に割り切ればそれも解決出来る。
 「IKEA」の家具のように陳列はサンプルのみにし、顧客は購入する商品のバーコードを入り口で渡される専用リーダー(スマホに読み取りアプリをインストールさせてもよい)でスキャンして購入数を入力すれば、顧客ナンバーとともにピッキングラックに表示される購入商品をスタッフが用意し、レジでは精算だけで済んでしまう。「フライングタイガー」のように一方通行を逆行して棚に商品を補給する必要も万引きの心配をする必要もない。
 これはひとつの例だが、IT技術が進化しオムニチャネルな消費が当たり前になった今日、店舗へ物流して陳列し、顧客がピックアップしてレジに運んで精算するという古典的で不合理な慣習はゼロから見直した方がよい。「クリック&コレクト」や「ドライブスルー・ピックアップ」、「ショールーム陳列」や「ショールームストア」が続々と登場するこれから、旧態な提供方法(=購買方法)を小技で工夫しても意味が無いのではないか。
 2014/12/16 10:11  この記事のURL  /  コメント(0)

悪夢のシナリオ
 衆院選は下馬評通り自公の圧勝となったが、どの党を支持して良いのか迷われた方も多かったと思う。後になって歴史の分かれ目となったと言われるのかも知れないが、論点の曖昧なまま五里霧中で選択せざるを得なかった。その思案の中で気になったのが、1923年の関東大震災を起点に金解禁のデフレ政策から金本位制離脱のインフレ政策に転じての円の急落、2011年の東日本大震災を起点にデフレからアベクロミクスのインフレ政策に転じての急激な円安の奇妙な同調だ。
 関東大震災から世界大恐慌、リーマンショックから東日本大震災と順序は前後するが、金本位制離脱による日銀券の金兌換停止で円は急落し、アベクロミクスの異次元緩和で円はジリジリと下落している。関東大震災前の円ドル相場は1$=2円ほどだったのが大震災後の復興資金負担で2.5円に下がり、デフレ政策と31年1月の金解禁で2円に戻ったが、同年12月17日の金本位制離脱で5円に急落してインフレを招き、34年になってようやく3.5円前後で安定した。その後の軍事侵略による国際信用低下と戦争費用の増大で終戦時には15円まで下落し、46年の預金封鎖と新円切り替え、財産税課税による戦費国債の精算、復興資金需要を経て49年に360円で着地した。東日本大震災前には1$=80円だったのがアベクロミクスが始まった13年には100円に迫り、今や120円を前後しているが、戦前と類似したシナリオ(開戦以前)を辿るなら200円まではともかく138円までは行く事になる。
 今日の政府債務残高がGDP比250%と太平洋戦争の戦費が膨れ上がった1944年の267%に迫る中、もはや何があってもおかしくない。事実、ダイヤモンドオンラインのアンケートによれば、預金封鎖など国民資産の政府による没収があり得ると考える人は87%にも達している。
 まさかとは思うが、アベクロミクスはリスクの高いギャンブルである事は否めない。投票当日日曜日の日経朝刊の『日曜に考える 地球回覧』がワイマール公国の宰相でもあったゲーテの「ファウスト」を取り上げ、悪魔のメフィストテレスが神聖ローマ帝国の皇帝に通貨の大量供給によるインフレ政策を唆す下りを例にとって警鐘を鳴らしていたのが印象的だった(自民党は怒り狂ったに違いない)。国家も経済も『時よ止まれ、おまえは美しい』と尻を捲るわけには行かない。悪い予感が当たらなければよいのだが・・・・・
 2014/12/15 09:41  この記事のURL  /  コメント(0)

外資SPAの実態
 販売不振と調達コストの逆鞘で国内アパレルビジネスが悲鳴を上げる中も外資SPAの出店が加速し、業界紙や出版物などであたかも画期的に経営効率が高いかのように喧伝されているが、実態はかなり異なる。
 店舗数が限られて物珍しかった頃はともかく郊外SCにまで闇雲に出店するようになった今日では販売効率も国内チェーンを下回るようになり、SCでは「ユニクロ」の半分から三分の一しか売れていないのに大きな面積を要求されてデベのリーシング担当者も苦慮していると聞く。毎週のようにファストに商品を投入しても在庫は年間で4回転もせず(H&M社は3.73回転/INDITEX社は3.88回転、どちらも直近4四半期平均)、消化歩留まりは7割を下回ると推計される。
 「歩留まり率」とは実現売上を総投入上代(定価)で除したもので、プロパーで売れる比率が高いほど100%に近付く。業界の平均値はアパレルで75%前後、リテイラーで80%前後と推察されるが、普通は70%を割ると収益が望めない。外資SPAの多くは歩留まり率が70%を下回るが(某ファストSPAなど66%前後と推計される)、巨大な調達ロットによる極端な低原価率ゆえ膨大な値下げロスを垂れ流しても60%前後の粗利益率(実現売上対比)を確保し、二桁の営業利益率を叩き出しているのが実情で、決して効率的なMDでも運営体制でもない。
 そんな外資SPAの粗っぽいやり方をロットが二桁も三桁も違うローカルSPAが真似れば値下げロスと運営経費で収益を食い潰すだけだが、派手な出店と高収益な本国決算を見れば、つい煽られて真似したくなってしまうのだろう。商品開発手法やVMD手法、プロモーションには学ぶべき点も少なくないが、一部のコンサルタントや業界の物知りが如何にも素晴らしいMDや運営体制のように吹聴する風潮は如何なものかと思う。
 ファッションビジネスは本質的にローカルなもので、グローバルな展開には多大なロスと非効率性が伴う。それでも多店化して高収益を継続出来るのは巨大ロットによる想像を絶する低コスト調達があるからで、ローカルビジネスが安易に真似しても良い結果は得られない。ロットの限られるローカルビジネスには顧客に密着したMDと緻密なロジスティクス、きめ細かい店舗運営が求められるのは言うまでもないだろう。ローカルビジネスがグローバルビジネスと同じ土俵で勝負しても惨めな結末が待っているだけだ。
 2014/12/12 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

辣腕経営者の退き時
 アバクロの神話的中興の祖、マイケル・ジェフリーズCEOが12月9日、退任した。1888年創業の名門アウトドア・ライフスタイル店「Abercrombie&Co.」の再生をリミテッドのレスリー・ウェクスナー会長に請われてCEOに就任した92年以来、22年の在位についに終止符が打たれた。
 77年にチャプター11を申請して行き詰まった同社を吸収したオッシュマンズ・スポーティング・グッズ社から4521万ドルで買収したリミテッド社も再生に難渋し、メンズカジュアルチェーンで実績のあったマイケル・ジェフリーズをCEOに招聘。就任直後からWASPなキャンパスエイジに向けたヴィンテージ風アメカジに転じたアバクロは著名写真家ブルース・ウェーバーを起用したカタログや店内演出も奏功して急成長し、96年1月期までの僅か3期で売上を3倍に伸ばして赤字会社を二桁営業利益率の好調企業に変貌させた。事業再構築を急ぐリミテッド社は96年にアバクロ社をスピンオフさせてNY市場に上場。同年と98年の二回に分けて84.2%の株式を放出して17億6918万ドルを得たから、マイケル・ジェフリーズの起用は大成功だった。
 その後もアバクロ社は成長を続け、98年にはトゥイーンズ向けの「Abercrombie」、2000年にはサーフカジュアルの「Hollister Co.」を開発して成長を加速。08年1月期に年商37億5000万ドル/営業利益率20.1%を記録したのが頂点で、04年開発の「Ruehl 925」、08年開発の「Gilly Hicks」の離陸に失敗し、アメカジにしては法外な高価格政策がリーマンショックの直撃を受けて売上が失速。09年12月にはついに大幅な値引き販売に追い込まれ、10年1月期には売上が前期から16%も減少して営業利益率は4.0%に急落。以降、ECの拡大や海外進出で売上は回復したが収益は回復せず、14年1月期には営業利益率が2.0と収支一杯寸前に追い込まれ、ついに今回の退任に至った。
 神話的成功劇の一方で半裸の販売員やブルース・ウェーバーのカタログ写真がセクシーに過ぎると物議をかもし、4810万ドル(12年)というマイケルの法外な年俸が批判を呼んだり、彼の白人優性的な発言が人種差別と批判され雇用の差別が訴訟沙汰になったりと波瀾万丈の在任期間だったが、それだけ強烈な思想を持った神話的経営者だったという事なのだろう。そんな辣腕経営者の退き時としては望外に潔いタイミングだったのではないか。
 幾度も失策を繰り返し業績を悪化させても一向に身を引かない経営者が少なからぬ我が国業界と較べれば、その強烈な優性思想にふさわしい潔い退任だったと賞賛したい。
 2014/12/11 10:30  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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