前へ | Main | 次へ
ユニクロは‘国民服’の責務を果たせ!
 すっかりグローバルSPAに出世した感のある「ユニクロ」だが、今秋冬物の値上げには抵抗を覚えた人も少なくないようだ。プロのアナリストやアパレル関係者からも疑問の声が聞かれるが、何より鮮烈だったのは一般消費者のつぶやきだ。ツィッターやフェイスブックには『もう高くて買えない』『この値段だったら他のブランドでもっと素敵なものが買えちゃう』『昔のユニクロは良かった』などの悲鳴や批判が溢れている。
 国内「ユニクロ」の既存店売上を見る限り、9月が119.7、10月が110.5と絶好調だから、そんな顧客の声も一部なのかも知れないが、9月の客単価が117.4、10月の客単価が109.8という値上げの浸透(平均5%の値上げだが前年が残暑で単価が低かった)には驚かされる一方、客数は9月が101.9、10月が100.6と伸び悩んでいるから、値上げについて行けない顧客が離反している事もまた一面の真実なのだろう。
 一時は街中で同じ服を着た人がかち合うぐらい人気が沸騰して「国民服」とさえ言われた「ユニクロ」だが、すっかりグローバルブランドに出世した今日では随分とスマートな経営感覚になり、現地生産コストの上昇や円安、店舗運営コストの上昇に加えて膨大な海外出店投資負担もあるのか、今秋冬物では経営コストの上昇を価格に転嫁するに至った。デフレ時代にはしっかり国民の衣料生活を支えてくれた「ユニクロ」だが、インフレに転じたら一転して値上げするなんて、なんだか『雨の日に傘を取り上げる銀行』みたいじゃありませんか。
 インフレに所得増が追い付かない今日、値下げで国民の衣料生活を支えてこそ「国民服のユニクロ」であり、多くの「ユニクロ」支持者は裏切られたような気持ちになっていると推察される。今の所は好調な売上も顧客の気持ちが離反すれば潮が引くように落ちて行く日が来るかも知れない。国民の支持でここまで出世した「ユニクロ」なのだから、国民がインフレに苦しむ今こそ値上げしないで衣料生活を支えるべきではないのか。
 好調に見える「ユニクロ」だが、玄人から見れば山ほど課題を抱えて膨大なロスとコストを垂れ流している。今こそ抜本的な経営革新でコストインフレを吸収し、「国民服」の責務を果たして欲しいものだ。
 2014/11/20 09:20  この記事のURL  /  コメント(0)

下手なドメコンブランドは壊滅だな!
 遅ればせながら南青山(フロムファースト前)に開店したH&Mの上級業態「COS」を品定めに行って来た。
 元は「Joseph」があった建物で、嘗て此処でVMDのアドバイスなんかをしていた事を思い出した。そんなVMD視点の第一印象は『安っぽい量販陳列』で、ハンガーに全サイズをアイテム別に突っ込む「H&M」的陳列手法は、「MAXMARA」なんかを研究して陳列が洗練されて来た「ZARA」と較べると安っぽくみえてしまう。シーン別分類と聞いたが結構アバウトで、似たような商品がカラーグループ別に(それも結構アバウト)アバウトなルック組みでぎっしり並ぶ様は小奇麗なアウトレットのようだ。
 全体が今風のコンテンポラリーモード一色で統一されテイストが極端に狭く、デザイン的にはそこそこ鮮度があって無難だが、コントラストする柄物や尖ったデザイン物、アクセントする小物がほとんどなくリミックス感は皆無で、大味な印象を否めなかった。一品一品を手に取って素材の風合いや縫製の始末、見た目の量感と持ってみた重さなどをチェックして価格とのバランスを見たが、『なんでこんなに高いの?』と思う商品と『これなら割安だな!』と思う商品が「H&M」同様、脈絡無く混在してバリューの安心感がなく、上級業態とは言っても所詮は単品で美味しいものを漁るファストなストアなんだと納得した。
 辛い採点に聞こえるかも知れないが、この評価は同時に『「H&M」並みに売れる!』という前向きな評価でもある。素材や縫製はもちろんディティールの味付けもコンテンポラリーモードの著名ブランドとは較べるべくもないが、何せ値段が何倍も違う。大味とは言え見た目のデザインはグローバル感覚で無難に洗練されているから、こだわらずトレンドを楽しみたい大人OL〜キャリア層には十分魅力的で、「COS」が多店化すれば中途半端な品質とローカルなデザイン感度のドメコン勢は蹴散らされてしまうに違いない。オリンピックの決勝進出組と国体の予選落ち組みでは喧嘩にならないと痛感させられた。

 2014/11/19 09:54  この記事のURL  /  コメント(0)

着付けって30分もかかるの!
 日曜の朝日新聞に『1109人が同時着付け ギネス世界記録に認定』という小さな記事が載っていたが、これはきもの着付け学校の創立記念イベントで宣伝効果を狙ったものらしい。1109人が1109人に着付けする(一人に一人)のに30分を要したというから、これではきもの消費は広がりっこないよね!と思わされてしまった。記事では振り袖、留袖、訪問着、小紋と紹介されていたから皆、正絹の礼装・準礼装(小紋には街着もあるが)で、きっと帯板、帯枕はもちろん、手ぬぐいやタオルをいくつも補正に入れ、腰紐や伊達締めなど何本もの紐で締め付けるのに手間取ったのだろうと推察される。
 きもの姿の女性は魅力的だが、大半の殿方が帯を解かせるのを躊躇するのは着付け直す技が無い事もあるのだろうが、帯を解く色っぽい衣擦れの後に出て来る無粋な帯枕やタオルを見たくないという想いもあるのだろう。『よいではないか!』も一興だが(是非とも存命中に一度はお座敷遊びでやってみたいものだ)、その後の興醒めを思えば、ドレスを落とした後に繊細なレースに飾られた最後の一枚を目にする方が余程、洗練されたフェティッシュな快楽だと思う(「LA PERLA」はレデイの必需品ですよ!)。
 今のように幾つもの補正部品や紐を駆使して着付けるようになったのは戦後の事で、江戸期はもちろん戦前の大正〜昭和期も帯板や補正のタオルなど使わなかった。大正ロマンの竹久夢二や高畠華宵、蕗谷虹児や加藤まさおの挿絵のきもの姿を見ても、帯はウエストでしなやかに折れているし、胸や腰の線も自然に出ている。竹久夢二の質素な銘仙をしどけなく着崩す下町娘は切ないほど可憐だし、高畠華宵の華やかな錦紗で着飾った令嬢などグラマラスでさえある。
 きもの業界や着付け業界が高価・高度な伝統??技法を売り物にする限り、きものは日本人の日常生活に戻っては来ない。夢二やまさおが描いた普段着の着付けが今風モダンな解釈(蕗谷虹児のアールデコなミニマルモダンなんて今でも超素敵)で広がってノームコアなきものスタイリングが一般化する事を期待したい。


 2014/11/18 09:19  この記事のURL  /  コメント(0)

デフレ時代は良かったね!!
 安倍政権と黒田日銀は2%というインフレ目標に固執して消費再増税も先送りするという奇策に出たが、果たして日本はこれで豊かになるのだろうか。
 今春の消費増税に加えて黒田日銀のさらなる異次元緩和による日銀券の過剰供給で円の国際価値は急落し、予定通り消費再増税を断行すれば円安に歯止めがかからなくなる危機が迫っていた。消費再増税を延期しなければ年内にも対ドルで120円台に乗り、増税実施段階では130円台も避けられなかったかも知れない。「FRBが利上げに踏み切った段階での日米金利差予想%+消費増税%」+α(変化予想ベクトル)分は対米ドルで円安が進むのは必然で、再増税の先送りは必然の選択だったと思われる。
 インフレと円安は鶏と卵の関係だが、安倍政権と黒田日銀が目論むインフレ(=円安)が実現したとすれば、ホントに景気が良くなり所得も増えて消費が拡大する好循環に乗るのだろうか。残念ながら今日の日本の産業生態系と階級構造では、株が上昇し輸出産業の業績が伸びても、金はヒエラルヒーの上部を循環するだけで中底部への恩恵はインフレ率に到底追い付かず、下請中小企業や勤労大衆の苦境は一段と深まってしまう。
 我らファッション業界など「失われた20年」のデフレ局面では単価下落による市場の縮小に苦しんだかもしれないが、実は購買単価の下落巾より調達単価の下落巾の方が大きい状態が続き、業界はその‘さや’で凌いで来たというのが実情だった。ところが3.11を契機に円安に転じ、アベクロミクスと消費増税で円安が加速するにつれ、調達単価の上昇が購買単価の上昇を上回る‘逆ざや’状態に転じ、調達コスト増と諸経費のインフレで行き詰まる会社が続出するという最悪の状況になってきた。
 デフレ局面では価値を創造出来ない会社でも安く売れば‘さや’で生き延びられたが、‘逆ざや’が開いて行くこれから、本物の価値を創造して顧客に価格上昇を受容してもらえる会社しか生き残れない。デフレ時代に蔓延した52週MDやOEM/ODMが潮が引くように減少し、自社開発の計画生産という原点に回帰する会社が増えているのも動物的な生存本能が作動しているからだと思う。
 内需産業はみなファッション業界と同じ構図に陥っており、インフレと円安が加速すれば多くの事業者が干上がって雇用と所得も減少する悪循環に転落する。『白河の清きに流れに住みかねて もとの濁りの田沼恋しき』という風に‘デフレ時代は良かったね’と懐かしく振り返る事になるのではないか。
 2014/11/17 09:50  この記事のURL  /  コメント(0)

ブランディングの極意
 昨日は当社で開催した『マーチャンダイジング技術革新ゼミ』を満員御礼(好評に付き本日も満員で追加開催)で終わった後、日本ハンドバッグ協会/日本皮革産業連合会が開催する『ジャパンブランド戦略の可能性を考える』という講演会を聞きに上野の精養軒まで足を運んだ。
 さすが一橋大学や九州大学の大学院で客員教授を務め政府の各委員会にも参画する妹尾堅一郎氏の産業構造論の論展は冴え渡り、インテル&ウィンドウズの「オープン&クローズ戦略」からアップルやロールスロイス(航空機エンジン)の「製品とアフターサービスの融合戦略」、果ては東西冷戦終了後の産業生態系の変動を捉えてグローバル水平分業戦略を押し進めて復活した米国産業界とローカルな垂直統合戦略に固執して凋落した日本産業界との明暗まで、実に解り易くエキサイティングな講演だった。最後の日本バッグ業界のグローバルブランディングへの言及でもデザイン/素材/ファブリケーションのグローバル水平分業を暗示しておられたが、私も共感するものがあった。異分野の一流研究者の話は時間を割いて聞くものだと改めて痛感させられた。
 話は我らファッション業界に戻るが、ローカルなものづくり神話に固執してはグローバルなブランディングへは到底、繋がらない。企画/素材/ファブリケーションのグローバル垂直協業、オムニチャネルな販売とロジスティクスの連携、というサブライサイドとセールスサイドの両輪を一貫するビジネスモデルの確立こそグローバルブランディングの必須要件だと私は思うが如何だろうか。
 2014/11/14 10:13  この記事のURL  /  コメント(0)

前へ | Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ