前へ | Main | 次へ
触ると解る明日の空気と光
 アパレルのコレクションや展示会にはあまり足を運ばないが、開発力あるテキスタイラーの展示会には出来るだけ出かけるようにしている。来春夏のコレクションシーンを見ても各都市各メゾンで傾向が分散しており、必ずしも時代の光と空気が読み切れないが、開発が先行するテキスタイラーの展示会ではそれが明確に見えるからだ。
 昨日も瀧定名古屋の15AWプレビュー展にお邪魔したが、展示しているサンプルを片端からすべて触って行くと、鮮度を感じる物性と陳腐に感じる物性があたかも海が割れるように鮮明に見えて来る。ざっくり言うなら、ドライでタフな男っぽい軽い素材に鮮度があり、ウェットで甘い女っぽい重ったるい素材は陳腐に思えたが、個々の素材は様々な要素がミックスされたものだから是非は六感を総動員した瞬間的なインスピレーションに依る。そんなインスピレーションからは、15AWの世相は不安と混乱に光と空気は暗く淀み、浮つかないで強く生きる意志が問われるように見える。
 アパレルブランドの展示会でも、見るだけでなく片端から触って持ってフィーリングを確かめるようにしているが、見た目で何とか誤摩化せている場合でも触って持ってみると詰めの甘さや開発背景の浅さが露呈する事が多い。ゆえに、触れられない持てないランウェイに時間を割く気には到底なれないのだ。パーティーなイベントとしては解るが、プロが真剣勝負する場としては不適切で、費用も時間も法外に不合理だ。あたかも東京コレクション真っ最中のようだが、見て触って持って体感出来る新たな方法はないのだろうか。
 2014/10/16 10:40  この記事のURL  /  コメント(0)

喉から手が出るノウハウ
 今朝の繊研新聞「パーソン」はプロジェクトファイブCEOの太田貞利さんを取り上げていたが、同社には前々から注目していた。それは地元、岡崎の肥沃な商圏を基盤に時代を革新する有望業態のFCを次々と手掛け、それらのビジネスモデルを実地に体得して来たからだ。
 いくら有能なアナリストでもコンサルタントでも、決算書や売上情報、店頭から推察出来る事は限られるが、フランチャイジーならMDやディストリビューションから日々の店舗オペレーションまで、悉く掴む事が出来る。「無印良品」に始まって「ユニクロ」「アズール・バイ・マウジー」「ナノユニバース」「メーカーズシャツ鎌倉」、ベーカリーレストランの「サンマルク」までFCを手掛けて来たのだから、商売人なら誰もが喉から手が出るほどのノウハウを習得したに違いない。そんなノウハウの蓄積が自社セレクトショップの「トゥインクルガール」や靴のファストファッション業態「アットイージー」の開発に繋がったと推察される。
 成功業態のビジネスモデルを実地に体得して来た蓄積は何ものにも代え難く、SPAの現実的な調達手法と規模のメリット、MDとVMDを直結するロジック、立地の制約を超えるオムニチャネル戦略に目覚めれば、太田CEO率いるプロジェクトファイブは加速度的に化けて行くに違いない。四半世紀前の私にとって、もうひとつの選択肢だった姿だけに、岡崎という肥沃な商圏から発祥した事が羨ましく思われる。
 2014/10/15 09:19  この記事のURL  /  コメント(0)

MDの神髄
 アパレルビジネスのMD効率を検証する時、ファストかスローかという議論が起点となるが、企画・投入頻度と商品回転の関係を見ても歩留まり率を見てもABC分析を見ても、統計的には明確な結果が出て来る。『年間6企画で定番比率が高いか素材軸の開発に徹する場合、最も消化歩留まり率と収益率が高くなる』というのがその結論だ。
 企画頻度を高めれば回転数は高まるが値下げロスや廃棄処分も肥大し、歩留まり率は加速度的に低下する。定番の売上比率が高いほど歩留まり率も高くなり、開発素材軸で面や時系列のMDを展開すれば素材から製品まで歩留まり率はさらに高まる。ファストなH&Mよりスローなユニクロの方が商品回転も歩留まり率も高いし、企画頻度も商品回転も低い大手セレクトショップの収益を支えているのはびっくりするほどの定番依存だ。
 素材軸MDのロジックはラグジュアリーブランドのMDを見れば誰でも解る。「ルイ・ヴィトン」のバッグ・ポーチ類は今でこそ型押しレザーのタイガやエピ、デニムやキャンバス、エナメルレザーも加わったが、かつては塩化ビニールのモノグラムとダミエの展開だった。お手軽なところでは、「アンテプリマ」のバッグもPVCワイヤーとプラスティックビーズからデザインとカラーが展開されている。定番軸の代表は「エルメス」のバッグやスカーフで、定番バッグは素材のバリエーション、定番スカーフは柄のバリエーションが展開されている。お手頃ブランドでも「メーカーズシャツ鎌倉」では、定番軸の色柄売り切り展開がサイズ軸VMDとあいまって歩留まり99.9%を叩き出すロジックが成立している。
 オリジナル素材軸のデザイン・色柄展開にせよ鉄板定番の素材・色柄展開にせよ、MDの効率化とブランド神話の原点は意外なほど単純な割り切りに在る。ビジネスの成功をもたらすのは店頭から一見して解るMD展開のロジックであり、MDのロジックがVMDに体現されてブランディングに繋がり、サプライチェーン総体の効率化と高付加価値化をもたらす。
 そんなMDの神髄を学ぼうともせず、業界はあらぬ方向の夢ばかり追って誰も「画期的ビジネスモデル」の開発に動かないまま時間が過ぎて来た。残された時間が限られて来る中、11月14日(金)に開催する『最新マーチャンダイジング技術革新ゼミ』では「画期的ビジネスモデル」を切り開くMDの神髄を余す所なく訴えたいと思う。
 2014/10/14 09:24  この記事のURL  /  コメント(0)

ドメコンとグロコンがマーケットを変える
 国内でも海外でも次々と新ブランド/業態が登場してマーケットの構造が変化して行く中、当社の「14年秋冬ブランドツリー」をどう編成し各ブランドを位置付けるか、外部の協力も得て毎日のように議論しているが、グローバルな変化とローカルな変化に共通するのが「コンテンポラリーモード」のムーブメントだと思う。
 ファッションマーケットはグローバル化とローカル化がせめぎ合いながら変化して行くものだが、生活文化に直結する衣料品はローカル性が強い。世界のマーケットは北欧系/南欧系/アジア系でテイストやフィットの骨格が異なり、南欧(ラテン民族)から発したブランドは欧州と中南米には浸透しても北米やアジアには馴染み難く、北欧から発したブランドは北米やアジアには容易に浸透するが中南米には馴染まない。アジアから発したブランドは欧州にも中南米にも馴染み難く、北米でも浸透に手こずる。H&MやZARA、GAPやユニクロなどのグローバル展開の進捗状況を子細に見れば、この壁は想像がつく。店舗布陣を見ても、GAPは北米と日本に91%、H&Mは欧州と北米に89%、INDITEXは欧州と中南米中近東に84%、ユニクロは日本とアジアに97%が集中している。
 そんなローカル性の壁を超えつつあるのが、バリューマーケットのグローバルSPAに加え、リーマンショック後の混乱を脱した欧米で台頭するコンテンポラリーモードのニュークリエーター群(3.1フィリップ・リムやアレキサンダー・ワン、MSGMなど)、その流れに乗ってアパーマーケット開拓に動くグローバルコンテンポラリーブランド群(H&M社のCOSや&OtherStoriesが代表的)で、国内でもドメスティックコンテンポラリーブランド群(エンフォルドやアストラットなど)の台頭が目に付く。ドメスティックコンテンポラリーブランドを‘ドメコン’と称するならCOSや&OtherStoriesなどのグローバルコンテンポラリーブランドは‘グロコン’とでも呼べばよいのだろう。
 ‘グロコン’はアパーモデレート、‘ドメコン’はボリュームベターと価格帯が異なるが、どちらもバリューマーケットとベターマーケットの間を狙う新世代ブランドという点は共通している。‘グロコン’はローカルなセレクトショップや専門店など駅ビルやファッションビルのアパーゾーン、‘ドメコン’は消え行くライセンスブランドやコンサバなNBなど百貨店のボリュームゾーンに交代する台風の目となるのではないか。そんな認識を欠いては、せっかくの‘グロコン’‘ドメコン’ブランドもポジションを確立出来ないまま試行錯誤する事になりかねない。
 ローカルとグローバルの複眼で検証して詰め上げた「14年秋冬ブランドツリー」は今月30日(木)に開催するSPAC研究会で詳細に解説します。皆様ご期待下さい。
 2014/10/09 09:40  この記事のURL  /  コメント(0)

マクドナルドの劇的凋落に学ぶ
 日本マクドナルドホールディングスが7日発表した14年12月期連結業績予想は劇的と言うべき暗転を見せた。予想売上は2500億円から88%の2210億円に、同営業利益は117億円の黒字から94億円の赤字に、同純損益は60億円の黒字から170億円の赤字に転落するという。
チキンナゲットの消費期限切れ問題が契機とは言え、これほどマーケットに浸透した巨大ブランド企業が劇的に業績を悪化させるとは、ブランドイメージの毀損がどれほど怖いか痛感させるに十分だった。長年積み上げたブランドイメージも、些細な擦れ違いが重なって何かが契機になれば一瞬にして崩れてしまうものだ。
 小売業界やアパレル業界では総会屋やインサイダーにからむ不祥事が露見しても不当表示や二重価格が摘発されても業績への影響は軽微に収まるが、食品業界やフードサービス業界では極端な客離れを招いて業績に響くどころか、中小業者では倒産や廃業に至る事さえある。着るものと口に入れるものの差と言えばそれまでだが、着るものはそれだけ不要不急の商品なのだろう。
 とは言え、業績への影響が軽微だからと問題を放置すれば、顧客の不信感が蓄積してブランド価値がジワジワと毀損しかねない。それは水面下で浸透し、臨界点に達すれば一気に客離れを招く。かつて日本最大のSPA企業だった株式会社三貴が公取委に偽装二重価格商法を摘発された事を契機に顧客が離反し、わずか2年後の97年にはアパレル事業からの撤退に追い込まれ、02年の債務整理まで釣瓶落としに転落して行った事を忘れてはなるまい。それに較べればマクドナルドの凋落は劇的とまでは言えないのかも知れない。
 なんでそんなに人気があるのか売上が伸び続けているのか不思議で仕方が無いというブランドや企業が世の中には幾つもあるが、危なげな人気は些細な擦れ違いから崩れ始める。イメージを演出して上手に騙す商売もファッションの世界では無視出来ないが、長く栄える商売はもっと地に足の着いた実直なものだ。浮ついた成功に目を奪われる事なく、きちんと手をかけて開発したお値打ち品を競争力ある価格で提供する効率的なビジネスモデルを真摯に追求すべきではないか。素材軸あるいはアイテム軸のファクトリーダイレクトなオムニチャネルSPAこそ、その究極だと信ずるが、業界はあらぬ方向ばかり見ているように思える。
 2014/10/08 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

前へ | Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ