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革命性を欠く業態開発
 今週金曜(30日)に開催するSPAC月例会『有望業態総研究』のレポートがまとまったが、メンバーが注目するブランド/ストアには大きな変化が見られた一方、業態開発で重視する要件には革命性が欠けていた。
 メンバーアンケートでは255業態に503票が集まったが、前年と比較してアパレル軸業態の得票が伸び悩む一方で非アパレル軸業態の得票が大きく伸び、業態数も得票数も大差ないところまで接近した。非アパレル軸では「生活雑貨/趣味雑貨」が突出し、「ルームウェア」や「シューズ」「スポーツ」「HBC」が続いた。企業グループ別の得票はマッシュグループが突出し、「ミラオーウェン」に全業態中、最多の得票が集中した。以下、ファーストリテイリング、ユナイテッドアローズ、サザビーと続き、アーバンリサーチ、ベイクルーズ、ワコールが新たにベスト10入りした。その一方、H&MやGAPなど外資はいずれも得票が急減してベスト10から消え、グローバルからローカルへの潮流反転がリアルに現れた。
 業態開発で重視する要件では、商品開発で自社開発が拡大してOEMが減少し価格より品質やテイストが重視されるなどバリュー志向が高まり、トレンド感よりライフスタイル感が重視される傾向が強まったものの、未だ感覚的な市場性(ヒット狙い)に関心が集中して商品開発・調達や提供方法の独自性、オムニチャネル対応には期待したほど関心が集まらなかった。オムニチャネル販売やショールームストアのような革命性(圧倒的な低コストや利便性)、アマゾンやアップル、スタートトゥデイ、ウォービーパーカやオーマイグラス、メーカーズシャツ鎌倉やビースリー(顧客化と圧倒的な消化率)の革命性の本質をもっと学べば、業態開発の方向も変って来るのではないか。
 30日のSPACでは、オムニチャネル対応の遅れに危機感を持ったユニクロの消費地物流への転換(大和ハウス工業との提携)が、先行したインディテックス社の物流革命(産直物流から消費地物流とのクロス・ドッキング型へ)に学んだ事、それはショールームストア流通革命への突破口を開く決定的な戦略転換である事など、商品開発・調達と提供方法の革新を繋げるロジックの神髄を明らかにしたい。加えて、今春〜今秋登場の新ブランド/業態を加えて3000近いブランドを位置付けた「14年秋冬版ブランドツリー」も解説する。また、それら最新のビジネスモデルを反映したマーチャンダイジング技術については11月13日に追加開催する『マーチャンダイジング技術革新ゼミ』で体系的に解説したい。
 2014/10/27 12:41  この記事のURL  /  コメント(0)

MDの定石がもたらした成功
 繊研新聞では20日から連日、マッシュスタイルラボの開発体制を掘り下げて紹介しているが、同社の開発体制はアパレルメーカーの古典とでも言いたくなるほど全うなものだ。デザイナー、パターンナー、生産管理の開発チームをしっかり揃えて自社開発に徹し、年4シーズン、素材から開発してデザイン毎に実素材サンプルでフィットを詰め、期中企画はせずODMにも流れない。シーズン毎の型数も170〜190型に絞って各色サンプルもケチらず、原価率もロットが3桁も違うユニクロ並みに高く(38%前後か)、確かなバリューでプロパー消化率は73%に達するそうだ。
 注目すべきは6年で売上が20倍近くになるという急成長(14年8月期で428億円)にもかかわらず、自社開発体制を堅持して来た事だ。一時、ライバル視されたマークスタイラーが「エモダ」「ムルーア」など基幹5ブランドの成功の後は売上拡大を狙ってODM依存の新ブランドを乱打して失速し、「マウジー」「スライ」など基幹ブランドは自社開発に徹した来たバロックジャパンとてODMによる低価格で急成長した「アズール・バイ・マウジー」の成功でODMの誘惑に一時、流されたのと較べれば、ぶれない信念が顧客の支持を拡げて行ったと評価される。近藤社長が建築デザイン出身で3D建築パース業から発展した事を考えれば、砂上の楼閣ではなく煉瓦をひとつひとつ積み上げて行く仕事の大切さが徹底されているのだと察せられる。
 同社の成功は開発・調達とMDの定石をぶれずに積み重ねて来た結果と見るべきだが、業界の大半はその定石を無視して赤い海で溺れている。11月13日に当社で開催する「マーチャンダイジング技術革新ゼミ」では、開発・調達体制とブランド戦略、MD組み立てと展開ストーリー、オムニチャネル展開とディストリビューションなど、いま業界に必要なマーチャンダイジングの定石と最新手法を近年の様々な企業の成功例/失敗例を検証しながら体系的にお伝えしたい。
 2014/10/23 15:11  この記事のURL  /  コメント(0)

ローカルカジュアルときものが復活!
 H&Mなどファストファッションを筆頭としたグローバルモードの奔流に109系やジーンズ系、裏原系などのローカルカジュアルが圧し潰されて行った6年間が終わり、ローカルカジュアルの反撃が始まったと幾度か指摘して来たが、秋に入ってその勢いは目を見張るほど加速している。モードカジュアルやクロージング系ビジカジが勢いを失う一方、アメカジに加えてジーンズカジュアルまで復活して来たのだから、もはや潮流は一変したと見るべきだろう。
 世界のコレクションシーンでもジャポニスムとノームコアの奔流は広がるばかりで、増え続ける外国人観光客を見るにつけ、アベノミクスがぐずつく経済はともかく、‘クール・ジャパン’の勢いは本物だという実感が日に日に強まって来る。
 そんな中、目を見張らされるのが坂を転げ落ちるように萎縮して来たきもの消費の復活だ。業界大手の決算業績や市場規模統計にはまだ反映されていないが、家計調査では今年になって1〜3月の駆け込みで前年比2.48倍の伸びを記録し、4〜8月も1.27倍に伸びている(1〜8月では1.57倍)。家計調査は一万世帯とサンプルが限られるが、一瞬とは言え東関東大震災を契機にスロー消費に転じた11年度もきもの支出は10%強の伸びを見せているから、国民の消費動向を反映していると見てよいだろう。きものの大手チェーンはアパレルチェーンのように月度の既存店売上伸び率を公表していないが、当社のSCデータで見る限り、一部の大手チェーンは今年に入って大きく伸ばしているから、きもの復活の勢いは本物に違いない。
 浴衣ブームできものを体験した若い女性がきものの魅力に目覚めて徐々に愛好家が広がる中、リサイクルきものやお手頃プレタきもののチェーンも多店化が進み、リサイクルきものの「たんす屋」は119店に広がり(表参道や原宿にも在る)、京都に発した3プライス(1/3/5万円)きものの「大塚呉服店」は神戸に続いて8月30日、新宿ルミネ1(4F)に出店を果たしている。そんな新世代の若向けきもの店で人気なのはお手頃で普段のお洒落も楽しめる秩父銘仙や伊勢木綿であって、高価で着装機会も限られる錦紗、友禅でないのは当然だろう。
 もはやきものは振り袖(フォーマル)や浴衣(季節商材)という枠を超え、若い女性のお洒落の一画を占め始めたと認識すべきだ。若い女性のみならず‘クール・ジャパン’が注目され外国人観光客が日本文化への関心を高める中、都心の商業施設でも新世代きもの店は必須業種となったのではないか。

 2014/10/22 14:53  この記事のURL  /  コメント(0)

きもの業界の衰退に何を学ぶか 
 欧米のクリエーターがノームコアだジャポネスクだとデザイン至上からユーティリティ重視へシフトする中、きもののスタイリングと流通に興味を持つようになったが、調べれば調べるほどきものの魅力に取り憑かれる一方、その狂気の流通と業界自爆の経緯を知るに連れ、我らアパレル業界にとっても対岸の火事とは言い切れないものを感じるようになった。
 業界データに拠れば、きもの市場は81年の1兆7700億円をピークにつるべ落としに縮小し(家計調査でも82年がピーク)、近年はほぼ6分の1の3000億円前後で推移しているが、きもの市場は何故つるべ落としに縮小して行ったのかを考察すれば、けっして対岸の火事でなかった事が解る。
 72年頃まではきものはまだ一般の日常生活に根付いていたが、洋装が拡大して需要数量が減少するにつれ、業界は作家(テキスタイルデザイナー)軸の高付加価値戦略を加速し、晴れの場の高価なフォーマルウェアという性格が極まって行った。そんな高付加価値きもの市場を支えて来た着道楽ファンを取り込んだのが80年代前半のDCブランドブームで、80年代後半にはインポートブランドに流れ、90年代以降はラグジュアリーブランドに流れて行ったと推察される。91年以降のきもの市場の縮小分の大半はラグジュアリー市場に流れたのではないか。
 顧客が急減する中、きもの業界は一人の顧客に過大な購入を迫る強引な商法に流れ、払い切れないほどの長期ローンを組ませる「過量販売」や根負けして買うまで帰さない「監禁商法」、美男販売員が迫る「ホスト商法」や「デート商法」、無理なローンを虚偽申告で通す「不正信販」、果ては売る側さえもノルマ未達で「自爆買い」に至るなど無法の限りを尽くし、女性客が怖くてきもの店に近寄れないという所まで行き着いた。それを象徴するのが2006年8月31日の大手きものチェーンたけうちグループの破産申請で、500店舗500億円の企業が一瞬で消滅し、きもの業界は壊滅的な打撃を受けた。前後してマスメディアに大量に流れたきもの販売の怖い話は消費者のきもの離れを一段と加速し、05年からの5年間できもの市場は3000億円強へと半減してしまった。
 さすがに今日では怖いきもの販売は影を潜めたと思っていたが、今もネットには被害者の怨嗟の声が渦巻いているのには驚く(www.somesho.com/ankeito/ikari.cgiなど)。そんなきもの店恐怖症がもたらしたのか、今やリサイクルきものは市場の1割に、メーカー直販やECは18%近くに達しているという(矢野経済研究所)。
 われらアパレル業界ではさすがに怖い販売の噂は聞かないが、80年代半ばを過ぎてDCブランドブームが陰り始めた時、業界はデザイナー軸で高付加価値戦略を志向するクリエイション派と効率的な直販流通を志向するSPA派に別れ、私はSPAC研究会を立ち上げて後者を支援したが、行政とデザイナーブランド業界はクリエイション戦略を強行して急激な市場の縮小を招いた。歴史の結末はSPAが主役となって巨大なバリュー市場を形成するに至った一方、クリエイション信仰を脱してグローバル直営店展開に動いた欧米高級ブランドも相応に巨大なラグジュアリーSPA市場を築くに至ったが、80年代に栄華を極めた欧米のクリエイション派メゾンは今や見る影も無い。
 低価格なバリューSPAが席巻する今日のアパレル市場は感性の退化を否めないが、きもの業界のように高付加価値化一辺倒に流れていたら、アパレル市場も6分の1になったきもの市場ほどではないにしてもピークの3分の2では済まず、もっと酷い縮小に直面したに違いない。対岸の火事ではないと肝に銘ずる所以はそこに在る。
 高付加価値を志向するならグローバルなラグジュアリーSPAビジネスを志向すべきで、きものデザイナーもジャポニスムの波に乗ってマーケットを世界に広げて欲しいし、国内では若い人たちにもファンが増える中、お手頃に日常のきものライフを楽しめる(錦紗・友禅ではなく銘仙・江戸小紋)ファクトリーダイレクトなバリューSPAが待たれる。
 2014/10/20 11:49  この記事のURL  /  コメント(0)

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 昨日は当社主催の『ショールームストア開発ゼミ』を終わってヒカリエホールの斉藤上太郎コレクションに駆けつけ、オフィスに戻ったのも束の間、ユナイテッドアローズ本店メンズ館「ユナイテッドアローズ&サンズ」の増床リニューアルのお披露目に伺った。
 斉藤上太郎は東コレ唯一のキモノデザイナーで、今回は父斉藤三才との合同コレクションとしては最後になるとかでフアンが押し掛け、80年代初頭の東コレ最盛期を思わせる盛り上がりを見せた。意表をつく柄合わせなどで遊んでも着付けは伝統を外さず、粋(すい)な艶やかさと粋(いき)な渋さが交錯する大人のエレガンスには溜め息が出るばかり。ジャポニスムブームもあってか、欧米人プレス関係者が多数集まっていたのも目を惹いた。それにしてもコレクション終了後、キモノで着飾ったフアンのおばさま、おねえさま達が斉藤父子にスマホのカメラを向けて殺到していたのにはさすがに驚いた。東コレ最盛期を懐かしく思い出してしまいましたよ。
 その後、オフィスからユナイテッドアローズ本店までキャットストリートを歩いて行く途中、リサイクルきものの「たんす屋」(山喜)がやってる若い子向けアンティークきものショップ「Tokyo135°」を目にして惹き込まれ、超お手頃(ひと揃いで二万円ぐらいから)で可愛いリサイクルきものや戦前昭和期のアンティークきもの(華宵風の錦紗から夢二風の銘仙まで様々)に目を奪われるうち、ゴスロリ風のお嬢さんや台湾からの観光客が次々と買い求めていく。聞けば原宿に本店を開いて9年(キャットストリートに移転したのは今春)になるとかで、徐々に若いきものフアンが増えているそうだ。家計調査でも長年萎縮の一途だった和服購入が今年になって急回復しており、欧米のジャポニスムブームもあいまって久々の復活が伺える。
 きもの姿の店員さんとの尽きぬお話を切り上げて向かった「ユナイテッドアローズ&サンズ」は斬新な品揃えと溢れるばかりの今が旬のお洒落な招待客に意表を突かれ、じっくり見て回る気になった。以前から在るB1はややナチュラル感のある東京クリエーター系ブランド中心だが、新たに広げた1Fは如何にも急に金回りがよくなってお洒落してボス風を吹かせたいストリート系ヤンエグが好きそうなカジュアルラグジュアリーがお手頃な東京ブランドからラグジュアリーなメゾンブランドまでエッジーにセレクトされている。テイストもヒップなボス系やエコなナチュラル系から渋いユーロモード系まで幅広く、ギャラリーに物流ラックを持ち込んだような店作りもあいまって、パリやロンドンで増殖しているインターナショナルミックスな隠れ家的セレクトショップを想起させる。お洒落なヤンエグやスラッシャーはもちろん欧米観光客にも享けそうで、ユナイテッドアローズにとって久方ぶりのヒット業態になりそうだ。
 2014/10/17 09:52  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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