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EC拡大か海外拡大か
 オムニチャネル対応と海外市場拡大が日米の大手SPAに共通する課題となっているが、両者の投資バランスはどうあるべきか、大手各社の決算推移を見る限り答えは明白だ。オムニチャネル対応をEC売上比率、海外市場拡大を海外売上比率、両事業の成果を営業利益率で見ると、ECの収益性が海外事業の収益性を格段に上回っているからだ。
 店舗事業とEC事業の営業利益を分けて開示している米国大手SPAでは、ギャップ社が店舗事業の営業利益率11.0%に対してEC事業の営業利益率は22.5%、アバークロンビー&フィッチ社が店舗事業の▼2.7%(国内は▼7.0%/海外は5.2%)に対してEC事業は22.0%、ルルレモンアスレティカ社が店舗事業の22.5%に対してEC事業は35.0%と、それぞれ格段に収益性が違う。米国大手SPAのEC事業の売上対比営業経費率は店舗事業より11〜14ポイント低いと見られるが、我が国アパレル業界ではどうだろうか。
 ファッション系モールサイトの手数料率(フル・フルフィルメント・サービスの場合)は毎年上昇しており、数年前は20%台後半だったのが最近の新規契約では35%が相場になっている。それもあってECに慣れて来た企業は自社サイトの拡大に力を入れているが、自社サイトも年商1億円を超えるまでは実質、モールサイトより運営経費率が高くつく。当社の主催するSPAC研究会メンバー企業や米国SPA企業のデータを検証すると、おおむね5億円超で30%を切り、100億円超で24%を切るようだ。モールサイトでも小売売上が1000億円を超えるスタートトゥデイ社の小売売上対比営業経費率は推定18.4%と20%を切るから、自社ECのスケールメリットは加速度的と言ってよいだろう。
 にもかかわらず国内大手SPA企業の多くはEC拡大に必ずしも積極的ではなく、むしろ海外売上拡大に投資を集中し、自社EC売上拡大によるトータル経費率圧縮が後手に回っている。その典型的な例がファーストリテイリング社であり、EC売上比率が3.5%前後に留まるまま収益性の低い海外投資に全力投入し続けた結果、収益性は釣瓶落としに悪化している。海外拡大とEC拡大をバランスさせて営業経費率を抑制し収益力を維持しているギャップ社と比較すれば、ファーストリテイリング社の海外投資集中に警鐘を鳴らしたくなる。それはアダストリアHDなど海外拡大に注力するSPA企業に共通する問題ではなかろうか。
 2014/09/30 10:34  この記事のURL  /  コメント(0)

店舗運営の死角
 昨日の日経MJは食品スーパー業界の「支払いセルフレジ」導入を報じ、「従来のレジ」「セルフレジ」と比較してなるほどと思わせる記事にまとめていた。
 「従来のレジ」はバーコード読み取りも金銭決済もキャッシャーが行うのに対して「セルフレジ」はどちらもお客がセルフで行うが、慣れない素人が行うので時間がかかり「従来のレジ」の3倍も要する。「支払いセルフレジ」ではバーコード読み取りはキャッシャーが行って金銭決済はお客が機械で行うもので、「従来のレジ」の倍速、「セルフレジ」の6倍速で処理出来るそうだ。「セルフレジ」は処理速度が遅い分、レジ列を増やさざるを得ず、家賃も坪効率も高い日本では非現実的だから、「支払いセルフレジ」という第三の選択に至ったと推察される。
 単価の低い食品はともかく衣料品ではRFIDタグによる一括読み取りが可能で、NFCを使ったスマホ決済が加われば一気に処理速度が加速するが、店スタッフが陳列棚に品出しして売れる度に補充し整理し、お客が陳列棚から買い上げ品をレジカウンターまで運び、店スタッフが包装するという手間は変らない。これらは販売プロセスに付随する無駄な店内物流作業で、削減出来れば店スタッフが接客に集中出来て売上が伸ばせるし運営人時量も大幅に圧縮出来る。
 陳列をサンプル品に限定して店内ストックと分離するショールーム陳列は靴や家電、ラグジュアリーブランドでは一般化しつつあるが、後方にストックを積み上げては在庫や物流費、人件費の圧縮には繋がらない。大枚かけて「セルフレジ」や「支払いセルフレジ」を試行錯誤するより、販売と在庫・物流を抜本的に分離するオムニチャネルなショールーム販売システムを開発する方が余程、コスト削減効果が大きいのではないか。
 ショールーム販売システムは店舗運営コストをEC並みに圧縮する21世紀の流通革命であり、VMDも店舗環境も格段にスマートになってブランディング効果も期待出来る。インフレに転じて店舗運営コストがジリジリと上昇する今、ショールーム陳列とショールーム販売システムは不可避の経営課題となったのではないか。
 2014/09/26 09:45  この記事のURL  /  コメント(0)

今更バブル親爺でもないでしょ!
 先週末の新聞各紙に派手な広告が出ていたのでお気付きの方も多いと思うが、「ちょい不良オヤジのLEON」で舞い上がった岸田一郎氏がまたまた「やんちゃジジイ」を謳ってオヤジ向け新刊雑誌「MADURO」をセブン&アイ出版から売り出すのだそうだ。
 久方ぶりにインフレに転じ百貨店でも高額消費が勢いづく中、『相続税をぼったくられるより派手に使ってしまいましょう』と打ち上げるのは解るし、溜め込んだ札束を使ってもらう方が景気刺激になって良いが、ようやく煩悩を脱して枯れ始めたオヤジ達には迷惑な誘惑にも思える。今更これ見よがしな高額ブランド品をちらつかせるのは嫌みでしかないし、派手なニキータを連れて法外価格の高級車で乗り付けるのも顰蹙を買うだけではなかろうか。新宿某百貨店メンズ館を最新モードで着飾って歩くのも上品なジェントルマンの趣味とは言い難い。
岸田氏は「LEON」「NIKITA」の大成功で勢いに乗り、06年9月に主婦と生活社を退社してKI&カンパニーを設立し富裕層男性向けのウェブマガジン(@zino)や男性誌(zino)を創刊したが08年6月号で休刊。その後もラグジュアリーなウェブマガジンを手掛けていたが、「LEON」の大成功にはほど遠かったようだ。
 団塊世代富裕層のオヤジ達は年相応に枯れ、高額ブランドでバブルの再現を演じるより内面の充実や趣味の良いライフスタイルに大枚を投ずるよう成熟しており、これ見よがしな高額ブランド消費は若手ニューリッチ層や中国人富裕層にお任せしたいのが本音だと思う。いつまでも往時の夢を追っても詮無い事で、世代と時代の価値観も『ゆく川の流れは絶えずして、もとの水にあらず』と得度すべきだと思う。
 2014/09/25 10:00  この記事のURL  /  コメント(0)

華やぎが甦る銀座
 三越銀座店がインバウンド効果もあって快調に売上を伸ばしている。8月は外国人売上が10%を超え、今年の春節時期には紳士服など外国人売上が二割に達したそうだ。
 振り返れば10年9月11日に増床開店した時、『銀座四丁目角という世界を相手に出来る一等地なのに東京ローカルなMDに終始して中国人富裕層好みのブランドも豪華絢爛な内装も欠いている』と手厳しく批評して三越伊勢丹関係者の怒りを買ったものだが、外国人観光客に顔を向けだして以来の売上増を見れば、不当な批評ではなかった事が解ってもらえよう。実際、増床開店からの一年間の売上は震災にも災いされて560億円と予算の88.8%に留まり、翌11年度も575億円と足踏んだが、12年度は613億円、そして外国人観光客が急増しだした13年度は692億円と急伸し、今年度(14年4月〜)は720億円まで伸びると推計される。15年秋に空港型免税店(タックスフリー+デューティーフリー)が8Fに1000坪で開業すれば軽く800億円を超えるはずで、全面的にグローバル対応すれば1000億円の大台も射程に入ると思われる。
 三越の増床で11〜12年度は低迷した松屋銀座も13年度以降はグローバル対応を進めて急回復し今年度(14年3月〜)は650億円に迫ると見られるのに加え、16年11月には松坂屋跡地再開発商業ビルもラグジュアリーブランドを軸に250〜300店のテナントを揃えて開業するから、リーマンショック以降、ファストファッション店が氾濫してすっかり野暮ったくなっていた銀座に華やぎが甦ると期待される。景気回復と交際費減税効果でリーマン前のように艶やかな蝶蝶さんたちが夕闇に舞うようになるかは解らないが、それもクール・ジャパンの一面だと思う。
 2014/09/24 09:26  この記事のURL  /  コメント(0)

VMDになってませんよ!
 エドウィンが9月12日にグランフロント大阪南館4Fに開店した婦人ニットパンツ専門店?「LADIVA by EDWIN」にはちょっと失望させられた。
 婦人ニットパンツ専門店と称しながら、たった13坪に「サムシング」のトップスやトートバッグなどの雑貨、化粧品までてんこ盛りでフォーカスが暈けているのに加え、Facet Studio(一級建築士 柏木由人代表)がデザインしたシドニーの「Streetology」からパクったと思われるディスペンサー型壁面什器が商品配置とまったく整合しておらず、店内の陳列手法がバラバラで販売プロセスが混乱しており、VMDになっていなかった。
 VMDとはブランドコンセプトを体現すると同時にマーチャンダイジング展開を販売プロセスに表現して店舗運営と在庫回転の効率化を図るもので、思いつきのアイデアを継ぎ接ぎにてんこ盛りしても見苦しいだけで成果は期待出来ない。パンツ専門店は「ビースリー」に見られるように省在庫/接客集中のショールーム型VMDを実践し易く、パンツや靴の業態開発にはショールーム型VMDの新機軸が期待されるが、ここにはそんな工夫のかけらも見られなかった。
 大手企業がスポンサーになってブランドの再生を仕掛けるにしてはお粗末な店で、我が国アパレル業界のVMD退化を憂いて敢えて批判させて頂いた。

 2014/09/22 13:42  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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