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秋立ち上げはブリット&アメカジ
 分散したまま勢いを欠いた夏バーゲンだが、一部では秋物も立ち上がり始めている。その報告レポートのスタイリングを総覧すると去年とは雰囲気が違う事が解る。
 今年の秋立ち上げで目立つのはトムボーイやグラニーガールからクラシックまでブリットモードのオンパレードで、カジュアルではミリタリーやオールドスクールをミックスしたアメカジモードがセレクトショップからSCのカジュアル業態にまで広がっている。昨年の同じ時期のレポートを振り返って見ると、ブリットモダンも出ていたがバロックやヴィクトリアン、グラニーフェミニンが主流で、カジュアルではオカルトモチーフやグラフィックを効かせたパンク&ロックモードが多数派だったから、相当の変化と言えよう。
 8月末になって秋物が出揃ってみないと早計には言えないが、モードからライフスタイルへ、トレンドからベーシックへ、作る側のクリエイションから着る側のユーティリティへ、という来春夏への変化が今秋の立ち上げにも色濃く現れているように感じられる。それだけマーケットがファッションに醒めて来ているのではないか。ましてや消費増税に便乗してプライスアップを図ったブランドが受け入れられるはずもなく、業界紙などは消費増税による売上減少は一巡したとか楽観論を振り播いているが、本当の影響は単価が上がる秋冬物で露呈するに違いない。
 作る側から着る側にファッションの主導権が移る分、付加価値の分担も移るはずで、この秋冬物は利幅を抑制してバリューを高めないと顧客に総スカンを食らいかねない。秋になれば業界の楽観論など吹き飛んでしまうのかも知れませんね!
 2014/07/31 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

その手があったか!!
 今朝の日経は日本空港ビルデング、成田国際空港、三越伊勢丹ホールディングスの三社が合弁で新会社を設立し、三越銀座店内に空港型のデューティーフリーショップを開設する事を報じていた。市街地に在る免税店は皆、8%の消費税を免除するタックスフリーで、関税まで免除するデューティーフリーは空港内に限られていたから、『その手があったか!』と絶句した百貨店関係者も多かったのではないか。
 関税は革製のハンドバッグで8〜16%、同シューズで30%、毛皮コートには20%も掛かっているからデューティーフリーになるとタックスフリーより断然、お買い得になり、外人観光客を惹き付ける事が出来るが、これまでは沖縄振興特別措置法に基づく那覇市内を除き空港内の免税エリアに限られていた。都内の市街地で開設するのは不可能と思われていたが、空港運営会社と組んで店舗を設け、空港での出国手続き後に専用カウンターで渡すという手があったのだ。外国人に限らず出国する日本人も購入可能で、三越伊勢丹にとっては強力な武器となりそうだ。
 この販売手法は販売と商品渡しが分離されるのが要で、外国人観光客にとっては出国時に受け取るので手ぶらで観光出来るメリットがあるのに加え、銀座で売っても商品はDCから空港へ直送されるから、売り手にとっては販売と在庫・物流を分離出来るメリットがある。その分、店舗への物流費や店舗の在庫コスト/スペースが削減され、売場スタッフも店内物流業務から解放されて接客に集中出来るから、運営コストは劇的に圧縮される。これは私が繰り返し提唱しているオムニチャネル時代の「ショールーム型販売システム」に他ならない。
 この市街地デューティーフリーショップが契機となり、売場の生産性を抜本改革して販売労働者の待遇を劇的に改善出来る「ショールーム型販売システム」への理解が広がる事を期待したい。
 2014/07/30 09:58  この記事のURL  /  コメント(1)

商品企画の基本はシーンの光と大気
 アパレルの商品企画には、時間をかけて素材構成から組み上げる伝統的なコレクション手法から流通素材で単品売れ筋を追うファスト手法まで様々だが、海外生産が96%超という今日では商社のお膳立てした生産背景(素材/工場/パターン)の範囲内で収めたがるブランドが多いのも致し方ないのだろう。
 国内産地が元気でテキスタイラーがリスクを張ってオリジナルの意匠素材を供給していた80年代までは、アパレルが素材から開発しなくてもコレクションを組む事が可能だったが、国内産地が空洞化しテキスタイラーがリスク負担力を失って受注生産が一般化した今日では、早期からテキスタイラーと組んで素材から開発しないとまともなコレクションは組めなくなった。結果として、ある程度の売上スケールがあって開発組織を維持出来る収益力のあるブランド以外は、同質化覚悟で商社のお膳立てに乗るか流通素材によるファストな開発に流れるしかなくなったのが今日の実情だ。
 商社のお膳立てに乗ったり流通素材によるファストな開発に流れるブランドが単品企画になってしまうのは必然だが、テキスタイラーと組んで素材から開発するようなブランドでもオリジナルなスタイリングと素材構成からコレクションを組めるブランドは限られる。きちんと開発するブランドでも単品MDに流れ、シーズンの光と大気と身体との間合いを構想してスタイリングとデリケートな素材構成を組み上げる力量は望むべくもなくなったのは悲しい限りだ。営業サイドのMD要求に流れて前年踏襲アイテムが大半を占めてしまうのか、産地に行かなくなったデザイナーが机上の企画に終始してリアリティを失ったのか、どちらにせよスタイリングではなく単品で売る体質に陥っているブランドばかりに見える。
 もはや古典的な技法なのかも知れないが、アパレル商品企画本来の手順は、来シーズンのシーン/デリバリー別の光と大気、ターゲットのウェアリング・ユーティリティ(着こなし着合わせの気分)を読み、テキスタイル開発の動向とテキスタイラーの読んでいる時代の光と大気を擦り合わせ、ストリートや先端的なコレクションから次シーズンに繋がる‘芽’を見出して(インスタグラムやピンタレストが使える!)培養し、自らのコレクションを組んで行くべきだと思う。
 私はクリエーターではなくマーケッターだが、来シーズンの『MDディレクション』を組む時、必ずこの手順を踏んでいる。クリエーターと違うのは、来シーズンのシーン別の光と大気、ターゲットのウェアリング・ユーティリティを読むのに、勘ではなく、ブランド別売上動向と客層タイプ別のスタイリング変化を毎月追って統計的に解析している事だ。魔術ではなく科学で構想すると言っても、そこには産業革命以来、今日に至る経済・社会・建築・美術・工芸・文芸・素材・服飾の膨大な感性データベースがあってこそで、文学作品や名作フィルムのアーカイブがそこに加わるのは当然だろう。
 今シーズンの『MDディレクション』にも、そんな感性データベースから発想されたスタイリングテーマが幾つか含まれる。メンズの『京都に死す』、レディスの『バルベックの夏』など、時代の光と大気がスタイリングとデリケートな素材構成に反映されていると思う。
 2014/07/29 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

顧客は防衛する
 忙しさにかまけて時は過ぎ、ようやく伊勢丹本店メンズ館のバーゲンを覗いたが、既に夏休みモードで閑散としており、目星い品はあらかた片付いてサイズも切れ、売場は最終処分体制に再編集されていた。
 目当てのファクトリーパーツブランドのパンツはブランド別のラックが解体されて場所もエスカレーターの反対側に移動され、スリーブアウトでサイズ別に再編集されていた。サイズ切れが酷くなる末期はサイズ別に編集した方がお客様も選び易く、買上率も上がって処分が進む。かつては常識的な再編集手法だったが、退化が著しく現場が幼稚園化した百貨店業界では久しぶりに見る‘現物’だった。ちなみに、同じファクトリーパーツブランドをセール中の某百貨店の自主編集売場ではセール末期にも拘らず品番別に畳み置きしていたから、伊勢丹の売場運営力はやはり突出しているのだろう。
 ブランド別の売場を解体してサイズ別やカラー別に再編集出来るのは買い取っているからと推察されるが、「PT01」や「INCOTEX 」って伊勢丹は買い取ってたっけ? せっかくサイズ別にスリーブアウトしているのにカラー順が出鱈目だったのは残念。朝一だったから整理されているはずで、お客様が崩したとも思えなかった。
 誉めたり貶したりになるが、ここまでバーゲン時期を後ろ倒しするのは顧客の季節行動から見ても無理が在る。海の日直前の週中からのスタートではバカンスの準備と重なるし週末はリゾートに出掛ける方が優先だ。パリ市のソルドが6月最終週の水曜日からと条例で定められているのも、バカンスに出掛ける市民の便宜を考慮しているからだと思う。
 ちなみに、当家のバーゲンハンティングはシークレットセールが一巡した後は混雑する都心のデパートを避け、爽やかな空気の中でゆったり買える避暑地のアウトレットに割り切っている。ラグジュアリーブランドは売場もサービスもプロパー直営店と変わらないし(保証書も付く)、最新モデルに拘らなければ(今期モデルも訳有りの掘り出し物が見つかる事がある)割引率も百貨店のバーゲンより断然高いから、お買い得感はひとしおだ。
 アウトレット専用開発商品が大半を占める要注意ブランド(「COACH」「TUMI」「GAP」・・・・)を避ければ騙された感もないし、ラグジュアリーブランドはハガキやメールで新入荷も教えてくれるから、プロパーの店頭に精通している顧客は上手に使い分けている。ファクトリーパーツブランドなんて定番ばかりで最新モデルに拘る意味も無いから、インポーター直営のアウトレットが出来ないものかと期待してしまう。
 利益追求でバーゲン時期を遅らせる業界には鼻白むが、顧客にはアウトレットモールやバーゲンサイトといった選択肢も在る事を知るべきだ。業界は消費増税による売上減少も喉元過ぎたと安堵しているようだが、円安が本格的に売価を押し上げ消費増税が身に凍みる今秋冬、消費者がどんな防衛行動を採るか舐めない方が良いと思う。
 2014/07/28 09:20  この記事のURL  /  コメント(0)

ライフスタイル業態が転けている
 ロンハーマンに触発されてか、昨年から今春にかけて各社が次々とライフスタイル業態?を立ち上げたり出店を加速したりしているが、4月以降、月を追うように売上が萎み、そのせいか秋の立ち上げも変にトレンド商品が出張ったりして『何処がライフスタイル業態なの?』と揶揄したくなる店頭が目立つ。
 最初は消費増税の影響やアパレル商品と生活雑貨の陳列乖離などが要因かとも見えたが、秋の立ち上がりを見て、ライフスタイル業態とは言ってもアパレルに生活雑貨を足しただけで一体の生活感も空気感もない継ぎ接ぎの業態という実態が露呈して来たように感じられる。中には様々な社内ブランドから寄せ集めたホントの継ぎ接ぎ業態も在り、即席の開発ではマーケットの支持は難しかったと見える業態もある。
 ライフスタイル業態の要はやっぱ生活のアティチュード(リズムとか空気感とか・・・・)で、その主張を持たないままアパレルにルームウェアやインナー、生活雑貨やフレグランスなどを脈絡無く積み上げても顧客の支持は得られず、在庫が積み上がるだけのようだ。アパレルが売れないから生活雑貨などをくっ付けた安易なケースでは、売れないアパレル以上に生活雑貨なども売れず、生活雑貨の回転はアパレルの半分以下に留まるようだ。
 中途半端なライフスタイル業態はどのカテゴリーも品揃えが浅くて選びようが無く、楽しく店内を一巡した後は、そのカテゴリーの専門店に買い回る事になる。HBAやタオル、インナー、ソックス、シューズなどはその典型で、著名ライフスタイル店周囲の専門店はそんな恩恵に浴しているそうだ。
 2014/07/25 18:36  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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