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「蟹工船」か偽りの楽園か
 ちょっと前にファーストリテイリングの柳井さんがパート&バイトの大量正社員化に絡んで『チェーンストアと決別する』と発言していたが、やっと解ってくれたかという感じがした一方、『販売員でも300〜400万円の年収を提供して長期間、勤めてもらいたい』という発言には唖然とさせられた。正社員になってもそんな収入では家も買えないし子供も育てられないから長く勤める事は不可能で、使い捨て感覚から飼い殺し感覚にちょびっと進化しただけなんだとがっかりしたり、世界共通の給与水準ってそんなものなのかと納得したり、所詮、チェーンストアって人余り発展途上時代の低給与‘店頭物流労働者’大量雇用業種なんだと冷めてしまった。
 同社に限らず、国内のカジュアルチェーンからグローバル展開の巨大SPAまで共通しているのが極端な企業内貧富差体質だ。本部の一握りのエリートが○千万円〜○億円もの年収を得ている一方(アバクロのマイケル・ジェフリーズCEOなんて30億円ですよ!)、店舗の販売員は300万円前後、パートやバイトとなればその半分以下で、朝から晩まで物流労働(販売業務はほんの数%なのが実態!)に汗水を流している。それで利益を叩き出すビジネスモデルはほとんど「蟹工船」の世界で、H.G.ウェルズが「タイム・マシン」で描いた未来世界の‘偽りの楽園’(有閑階級のエロイとそれを食用する労働者階級のモーロック)さえ想起させる。
 収益力が急落している某大手カジュアルチェーンは幹部の高給と店舗の薄給という格差が知られているし、全員正社員を謳う某カジュアルチェーンは‘ブラック企業’との噂が絶えず、とうとうTVドラマにまでなってしまった。一見は華やかに見える外資SPAとて実態は同様で、途上国縫製工場の労働環境改善キャンペーンでお茶を濁しても、店舗労働者の貧困の上に収益が成り立つという「蟹工船」体質は何も変わらない。
 諸悪の根源は店舗労働者に不要な物流業務を強いる前世紀のチェーンストア・オペレーションであり、店舗業務から物流を分離して販売に集中させない限り、労働条件も給与も運営効率も大きくは改善出来ない。販売と物流の分離こそオムニチャネル流通革命の本質であり、店舗のショールーム化が突破口となる事はもはや疑う余地もない。
 柳井さん、ブラック・プレジデントくん、すべてのチェーンストア経営者達よ、前世紀のチェーンストア理論の呪縛を脱して店を‘販売の楽園’に変えようではないか!
 2014/04/30 10:06  この記事のURL  /  コメント(0)

15年危機の結末は?
 昨日の日経朝刊は『バーバリー 日本を直営に』と見出して英国バーバリー社が三陽商会とのライセンス契約を15年6月末で打ち切る方針である事を報じ、三陽商会の株価は急落した。15年危機は業界では既に広く知られており、12年11月22日号の「週間ダイヤモンド」は『バーバリー関連は三陽商会の売上の半分、利益は大半を占めており、人件費を削らないと5年で債務超過に陥る』とまで詳しく報じ、13年1月に募集した230人の希望退職に従業員の15%にあたる270人が応募するに至って、15年6月末の契約打ち切りは既定路線と見られていたから、今回の報道で今更株価が急落するというのも不思議な感じがした。
 三陽商会も様々な手を打っては来たが、自社開発の百貨店ブランドは伸び悩み、駅ビル/SC進出もEコマースも試行錯誤し、バーバリーに代わる事を期待してライセンス契約したマッキントッシュ関連も好調とは言え売上規模が限られるから、15年危機が現実となれば最悪のシナリオとなりかねない。
 カネボウは97年のディオールの契約打ち切りを契機に業績が急落して07年6月の会社解散決議に至るという悲劇となったが、ほぼ同時期(98年末)に独アディダスのライセンス契約を打ち切られたデサントは自社ブランドを拡充して業績を立て直した。契約打ち切り当時、ディオールは500億円、アディダスは400億円近くを売り上げ、契約打ち切り通告も寝耳に水だったが、バーバリーの契約打ち切りは09年に20年契約を15年に短縮された時点で予想されていた。
 三陽商会は国内縫製、とりわけバーバリー製品は国内自社工場縫製にこだわって大手アパレルでも突出した品質が評価され、15年危機の噂を聞きつけた中国人富裕層が三陽商会製バーバリーコートを買い漁るという現象さえ見られるが、三陽商会がその高品質神話を自社ブランドの開発と拡販に活かして来たとは言い難い。バーバリーの契約打ち切りがカネボウ型の悲劇となるかデサント型の復活劇となるか、経営者の力量が問われる最終局面が迫っている。
 2014/04/25 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

新ブランド/業態の評価
 毎シーズン、当社で作成している「ブランドツリー」の14年春夏版がもうすぐ完成するが、社内で議論になるのが新ブランド/業態の評価と位置付けだ。当社の「ブランドツリー」はアパレルから服飾までマーケット全体を鳥瞰してレディス2000強/メンズ1200強/計3300近いブランドやストアを位置付けるもので、商業施設や百貨店のテナント/ブランドミックスには不可欠のバイブルと自負しているが、それだけに新ブランド/業態の位置付けには神経を使う。
 既に立ち上がっている新ブランド/業態については店頭でMDもVMD手法も店舗環境も検証し、断片的ながら売上数字も入って来るので一応の評価は出来るが、そのブランド/業態が画期的であれば既存の分類に収まらず、新たな分類を設定する必要が生じる。問題は画期的であればあるほどお仲間が存在しない事で、たったひとつのために新たなタイプを作るのは躊躇されるが、翌シーズンになって追従ブランド/業態が次々に立ち上がるようなら新たなマーケットが創造された事になる。数年前の「エモダ」は‘アラモ’マーケットを切り開いたが、今シーズンは「ミラオーウェン」が‘ニューベーシックパーツ’マーケットを切り開いたと推察される。それは、来シーズンになって追従ブランド/業態がどれほど立ち上がるかで証明されよう。
 逆に、何を狙っているのか曖昧なため位置付けが難しいブランド/業態も見られるが、そんなブランド/業態は過去の例を見ても、離陸も適わず2シーズンほどで消えて行く結末が推察される。
 一昨年来、セレクトチェーンやカジュアルチェーンが開発したSC向けファミリー業態は未だ評価が定まらないが(どれも離陸したとは言い難い)、今シーズンはライフスタイル業態の開発ラッシュとなった。エッ?と思うものやアレッ?と思うもの様々だが、店頭を見た評価と立ち上げ直後の売上数字は必ずしも一致しておらず、少なくとも2シーズンは経過を看ないと評価は定まらないだろう。
 それやこれやで完璧とは言い難いが、四月末に立ち上がる幾つかのブランド/業態も加え、すべての新ブランド/業態を評価して位置付け、既存ブランド/業態の位置付けも見直し、連休明けの「最新テナントミックス研究ゼミ」までには完成させて詳細を解説したい。「ブランドツリー」を子細に見ればマーケットの変化が一望出来るはずだ。
 2014/04/23 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

減速する勇気、立ち止まる勇気
 一昨年あたりからカジュアルチェーンやセレクトショップの新業態開発が相次いでいるが、必ずしも上手く行っていないのに強引に多店化しているケースが目に付く。どんどん出店しているから素人目には好調に見えるが、実際には売上が低位に留まったり、最初の勢いが急速に陰ったりと、多店化どころではない内情が垣間見える。
 そんな店は商品も陳列も店舗環境もぱっとせず、新業態としての鮮度がいまひとつで、シーズンを追う毎に一段と色褪せて行くのに、何故か出店ペースにブレーキがかからない。行き詰まれば多大な損失が発生するのではと他人事ながら心配になるが、店舗数が揃えば市場の認知度が高まり、ロットもまとまって開発力も高まり、やがて軌道に乗ると楽観しているのだろう。
 残念ながら、近年の日米の業態開発を検証する限り、そんなハッピーエンドは滅多に見られない。デビュー当時に人気が盛り上がらなかった業態が以降の改善で化けたケースは極めて稀で、初期には注目されても多店化とともに魅力が薄まって人気が削がれ、中途半端なお荷物事業となってしまうケースも多い。開発初期に人気が出なければ、抜本から別物に組み替えないと離陸する可能性はほとんどないのが現実だ。
 国内でもそんな例は数多あるが差し障りもあるので、米国の例を幾つか挙げておこう。09年9月にスタートしたアメリカンイーグルの「マーチン&オサ」は第一段階で空振ったのに第二段階まで強行して28店まで拡大し、10年7月に全店を閉鎖している。04年9月にスタートしたアバークロンビー&フィッチの「ルール」も28店まで拡大したが大幅赤字を脱却出来ず、09年中に全店閉鎖された。08年2月にマサチューセッツ州ナテックモールに一号店を開設した「ギリーヒックス」も10年1月末までに37店舗という当初の目標に届かず、28店(国内20店/海外8店)に留まったまま廃止される事になった。
 マーケットが評価しないのに強引に出店を続ければ損失が大きくなるだけだから、一旦は出店を止めてMDはもちろん陳列手法や店舗環境まで再構築して再びマーケットに問い、手応えを得てから出店を再開するべきだと思うが、業界の評価や社内の士気を危惧してブレーキが遅れる事が多い。経営リーダーには「減速する勇気」「立ち止まる勇気」も時には必要ではないか。
 2014/04/22 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

ビジネスモデルが見える店舗図面
 先週水曜に当社のセミナールームで開催した「オムニチャネルVMD&ショールームストア開発ゼミ」には狭い会場に定員をオーバーする多数のご参加を得て大いに盛り上がったが、お勉強だけに留まっては意味が無い。実際の業態開発に結びつかなければ時間の無駄と言うものだ。
 当日は米国の実例に加えて当社で仮想した店舗図面を幾つかお見せして開発の現実性と効率の高さを訴えたが、はたして何社が実際の開発に踏み切るのだろうか。MDから店舗での陳列・販売プロセス、Eコマースと連携したロジスティクスまで一貫した仕掛けで流通を革新しないと飛躍的な成功には至らない。‘プロデュース’とは、そんなビジネスモデルを設計して開発実務をサポートし画期的な成功に導く仕事だと思う。ビジネスモデルが顧客に見える形になる店舗図面には、そのすべてが表現されるから、陳列・販売・在庫運用プロセスを緻密に設計して提案したい。
 巷の商業施設には毎シーズン、新業態が出揃うが、ファッション性やライフスタイルを謳うだけで提供方法やビジネスモデルの革新性を欠いている。流通の常識が一世紀振りにひっくり返るというオムニチャネル革命が急進する今、業界のピントは時代ズレしていると思うのは私だけなのだろうか。
 2014/04/21 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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