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イオンモール幕張の疑問符
 500億円を投資したという巨大エンターテイメントモール「イオンモール幕張新都心」は幾つもの点で時代と合理性との違和感を感じさせる。開発段階からその問題は指摘されていたが、オムニチャネル消費が加速する中での開業は一段の違和感を否めなかった。以下、その理由を挙げておきたい。
1)駅から遠く(歩いて15分)、車でのアクセスも難が在り、東京湾に近接して商圏が半円状になる上に、西は船橋/津田沼、東は千葉の商業集積に挟まれ、実勢商圏(ライバル施設より占拠率が高い範囲)は34〜5万人/市場規模2700億円弱に留まる立地に、商業施設面積17万平米級の巨大商業施設は過大規模/過大投資ではないか。
2)‘コト消費’をテーマとした体験施設やエンターテイメント施設は集客はともかく安定した売上が読み難く、新規に導入された施設の中には営業採算や運営ノウハウが疑われるものも在り、集客を継続出来るか疑問符が付く。
3)‘コト消費’がテーマとは言え、四館の設定されたコンセプトと実際のテナント構成には乖離がある上(特にグランドモール)、どの館も有力必須テナントの欠落が目立ち、‘モノ消費’に応えるポテンシャルには疑問符が付く。
4)今時開業の注目商業施設にしてはオムニチャネル消費に応えるEモールと館の連携を欠いて『何時でも何処でも選んで買って受け取れる』利便性が見えず、イオンスタイルストアのタブレットを使ったオムニチャネルサービスも検索の多様性と快速性を欠き、受け取りも発注店舗か自宅に限られるなど(ミニストップやマイバスケットで受け取れる訳ではない)、付け焼き刃な印象を否めなかった。
 もちろん違和感ばかりでなく心暖まる新機軸も少なからず見受けられるが、500億円という投資に見合うのか、その巨費はオムニチャネル体制に投資すべきだったのか、オムニチャネル時代の商業施設としてこれで良かったのかなど、考えさせられる点が多い。その意味でも是非、行って体験すべきモールだと思う。
 2013/12/18 10:36  この記事のURL  /  コメント(0)

イオンモール幕張の見所
 昨日は朝一で「イオンモール幕張新都心」のプレスプレビューに行って来た。場所はJRの海浜幕張と新習志野のほぼ中間で幕張メッセの西隣、コストコを囲むように隣接する。JRの海側に沿った長い敷地に海浜幕張側から「グランドモール」「ペットモール」「ファミリーモール」と並び、「ファミリーモール」の海側に「アクティブモール」が位置する。四館にはそれぞれ駐車場が設置され独立した商業施設としてアクセス出来るが、デッキで繋がれた2Fを通れば端から端まで15分ほどで歩ける。「KAZE」「MORI」計1000mものモールが長過ぎると不評だった「イオンレイクタウン」に較べれば、四館がはっきり性格分けされている事もあって苦痛は感じなかった。
 ‘コト消費’をテーマに体験型施設が鏤められた四館計商業施設面積17万平米、テナント数360店の巨大モールの見所は、‘体験型施設’の方はマスコミ報道にお任せして、業界視点に限って幾つか挙げておきたい。
 まず第一に挙げるべきはデンマーク発の低価格北欧雑貨店「ソストレーネ・グレーネ」だ。低価格と一方通行レイアウトは先行した「タイガー」と同じだが、MDがちょっと洗練されていてカラーVMDも上手く‘ガラクタ’感もやや薄い。欠点はレジ前空間の狭さと台数の少なさで、開店すればパニックは避けられないだろう。
 第二に挙げたいのがヴィレッジヴァンガード傘下の「チチカカ」で、エスニック雑貨店という縛りを解き放って「Anthropologie」かと思うほど上手いVMDでナチュラルライフスタイル提案雑貨&衣料複合セレクトショップに化けていた。
 第三は「グランドモール」で希有だった大人向けファッション店としてレリアンの「プティレクレ」、第四は「ファミリーモール」でキラリと光っていたミリカンパニーの子供服「LOVE&PEACE&MONEY」を挙げておきたい。注目されていた業界の新業態についてはジュンの「LE JUN」を除いては見るべきものが無かった。
 オムニチャネル消費が爆発する中での‘コト消費’体験型巨大モールの開業は違和感を否めないし、テーマと必ずしも一致しない四館の物販テナント構成にも失望を否めないが、地域に密着した商業施設ではなく「モノも買えるテーマパーク」と考えればそれなりに楽しめそうだ。商業施設の地域的役割とは何か、根底から考えさせられる事件だと思う。



 2013/12/17 11:18  この記事のURL  /  コメント(0)

代替性のない存在
 最近は目玉外資SPAの多数導入などテナントの全面的な入れ替えで長期低迷SCの再生を図るケースが相次いでいるが、商圏の広がりは在っても施設に問題が在ったモレラ岐阜はともかく、商圏も限られるユニモちはら台、ましてやピエリ守山までそんな力技で再生しようという機運が広がる事には違和感を否めない。
 違和感のひとつは、『如何に目玉テナントを揃えたとして、立地や施設の地理的物理的ポテンシャルの限界を超えられるものだろうか』という商圏分析・商業施設研究の専門家としての素直な疑問だ。モレラ岐阜や自分も再生企画に関わったイオンモールむさし村山の場合は元々のポテンシャル(獲得可能な売上)を回復させたのだから科学的合理性の範疇と思うが、元々のポテンシャルを極端に超える ‘奇跡’を期待しては科学の領域を超えて‘魔術’の領域に入ってしまう。
 もちろん、業界の常識を超えた革新も奇跡を実現するから十把一絡げに‘魔術’と切り捨てるべきではない。‘目玉外資テナント総揃え’も‘カテゴリーアウトレット’や‘オムニチャネルモール’と並んで商業施設に‘奇跡’を起こし得る革新だと思う。それでも施設の地理的物理的ポテンシャルを大きく超えるのは限界がある。科学的革新を超えて‘奇跡’を期待する風潮には警鐘が必要だ。
 もうひとつの違和感は目玉として導入される外資SPAの極端な優遇条件だ。一般テナントが家賃に加えて共益費だの共同販促費だの駐車場協力金だの何やかや総計して売上の18%近いレントを取られるのに対し、有力外資SPAはオール込みで6〜8%が相場だと聞いていたが、‘奇跡’を狙って導入するケースではその下限に初年度賃料不要、内装費半額負担などが加わるそうだ。ここまで来ると「LOUIS VUITTON」並みの破格優遇と言わねばならない。そこまで優遇しても‘奇跡’が起これば元は取れるという計算が在る一方、国内一般テナントの家賃条件はいったい何なのかと考えさせられる。
 その背景は内外差別と言うよりテナントとしての代替性の有無が大きいと思う。テナントリーシングにおいて、国内テナントの第二第三候補は容易に挙げられるが、有力外資SPAの第二第三候補を挙げるのは極めて難しいからだ。逆に言えば、国内テナントの大半は代替テナントが存在する同質化した存在ゆえ不利な出店条件に甘んじている訳で、突出したコンセプトとMD、VMDとロジスティクスを軸とした提供方法で代替性のない「グローバル業態」となれば条件は容易に一変する。その意味でも、やや古典的ビジネスモデルではあるが「UNIQLO」も‘外資系’と位置付けるべきであろう。
 村の論理と微温湯の中に居ては何も変えられない。日本が一段と海外の脅威に晒される来14年、グローバル&オムニチャネルに通用する代替性の無い存在へと変貌を決意して欲しい。
 2013/12/16 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

レトロフューチャーとスチームパンク
 当社の『14年秋冬MDディレクション』製作も大詰めを迎えているが、‘北欧’‘東欧’‘ロマノフ王朝’などと並んで‘レトロフューチャー’や‘スチームパンク’が注目される。
 ‘レトロフューチャー’は30〜60年代に夢想されたコズミックな未来スタイルだが、‘スチームパンク’は19世紀英国ヴィクトリア朝の蒸気機関による産業革命を主として70年代以降に夢想したパラレルワールドな過去未来スタイルで、‘サイバーパンク’の一種と位置付けられる。真鍮やジュラルミンを職人が叩き出すクラフトワークでヒューマノイドやロボット、飛行船や航空機などを造形するヴィンテージアートで、SF映画の古典となった「メトロポリス」を原点に、「スターウォーズ」や宮崎駿のアニメにも色濃く影響している。
 そんな‘スチームパンク’がなぜ今新鮮なのだろうか。未来を指向しても未来が見えない現状では未来もレトロ回帰にしか見出せないという一般論はともかく、文明の退化による廃墟の予感が‘サイバーパンク’のリアリティを増しているとしたら、「アキラ」に描かれる廃墟化したトーキョーも現実味を帯びて来る。せっかく2020年のオリンピック開催が東京に決まったのも束の間、開催準備の主役たる都知事が失脚してしまうという躓きも偶然とばかりは言えないのかも。
 外では中韓の憎悪が収まるところを知らず‘白村江’的構図が迫り、中ではアベノミクスが大増税にすり替わって言論統制の不安も高まる中、東京オリンピックまでケチがつくとなれば、2014年に明るい展望を見出すのは難しいのかも知れない。
 そんな14年AWを占うトレンドがメルヘンな‘北欧’‘東欧’‘ロマノフ王朝’とパラレルワールドな‘レトロフューチャー’‘スチームパンク’の対極構図となるのは何を予感させるのだろうか・・・・・
 師走が迫る中、来年の不安を掻き立てるのも詮無いから、心暖まるクリスマスアニメをひとつ紹介しておこう。カルティエの「Winter Tale」は可愛いよ。
 2013/12/13 09:54  この記事のURL  /  コメント(0)

オムニチャネル革命に取り残される商業施設デベ
 オムニチャネル戦略を巡るセブン&アイ・ホールディングスとイオングループのせめぎ合いが注目される一方、両者を除く商業施設デベのオムニチャネル戦略は確固たる展望もなく見当違いに右往左往するばかりで、未だ様子見という状況に留まっている。
 多くはショールーミングに怯えて「WEAR」を拒絶するのみで、「tab」などを活用して積極的なウェブルーミング誘導を行うデベはまだ限られるし、米国の大手デベで普及している‘at Mall’アプリサービスも実験段階を出ていない。ましてや、Eモールはおろか課金体制も物流サービス体制も整わない現状では、O2Oを超えて『何時でも何処でも選んで買って受け取れる』便宜を競うオムニチャネル戦略の最前線からは遠く脱落していると言わざるを得ない。
 まずは‘at Mall’アプリによる案内&プロモーションサービスと「tab」などによるウェブルーミング誘導で足場を固め、次にEコマース商品の店受け取り&返品/店発送、店頭販売商品のEコマース配送に対応する物流取次サービスと課金ルールを確立する事が急がれる。となれば、賃料一元化やオムニチャネル課金のルールなど出店契約も根底から組み直さねばならなくなる。
 加えて、オムニチャネル時代にはSCの機能も商圏の取り方も一変してしまう。後方の物流デッキは納品対応に加えて小口取次の機能とストックヤードが必要になるし、ショールーム型店舗やデジタルキオスクが増えればモールのレイアウトも一変しかねない。
 『何時でも何処でも選んで買って受け取れる』オムニチャネルショッピングが広がれば何処に居ても希少な商品でも手軽に入手出来るからモルタル商業施設の商圏は足下に集約され、コンビニエンスモールやコミュニティモールに来店が偏って広域型の巨大モールは衰退するリスクが指摘される一方、個性的な小型モールが全国区に商圏を拡げるチャンスもある。
 オムニチャネル革命で商業施設の競争ルールが一変しつつある今、デベロッパー業界はこれまでの‘村社会’の常識を捨て抜本的な革新を急ぐべきだ。
 2013/12/12 10:35  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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