| Main | 次へ
第三の流通革命
 今年はアベノミクス景気で消費も回復したとは言え、大都市と地方都市、都心と郊外、百貨店と専門店、紳士服と婦人服、高価格帯と低価格帯、高年齢層と若年層など様々な格差が開き、好景気に沸く会社も在れば売上不振に苦しむ会社も在るという斑模様の一年となりました。来年は米国の金融緩和終了、消費税などの増税ラッシュに中韓との軋轢が加わって何が起こるか予想もつかず、消費も一段と明暗が交錯する年になるのでしょう。
 今年の流通業界は「オムニチャネル元年」とも言うべき様相を呈して「WEAR」や「tab」などのアプリが注目され、年末にはセブン&アイ・ホールディングスによるオムニチャネル戦略絡みのM&Aが連発されるなど状況が過熱して行きましたが、本番はむしろ来年になると思われます。
 オムニチャネル消費がO2Oの域を超えて『何時でも何処でも選んで買って受け取れる』便宜が本格的に競われ、クリックとモルタルの際が消えてラスト・ワンマイルの物流ネットワークが問われる中、テナント企業やEC企業、商業施設デベや百貨店のみならず、金融/物流サービス企業まで巻き込んだ事業再編の嵐が吹き荒れる事は必定で、小売業は古典的なチェーンストア物流/提供方法/店舗労働からの解放が急がれます。
 流通業界は前世紀のチェーンストア革命、SPA革命に続く「オムニチャネル革命」という第三の流通革命に突入したのであり、戦略対応次第で企業の優劣が一変する激動期を迎えたと覚悟すべきです。来年はショールーミングVS.ウェブルーミングといった戦術論を超えてオムニチャネルな事業再編やショールーム型ストア/デジタルストアの開発が一刻の猶予もない現実の課題となるに違いありません。
 当社も「オムニチャネル革命」を勝ち抜く戦略と実務技術体系の開発、とりわけショールーム型ストアの設計とデジタルストアの商業化に注力していますが、解る企業と解らない企業の温度差は極端で、‘KT境界’的大量絶滅による世代交代を予感させます。14年は外交・政治・経済から流通・消費まで、本当に何が起こるか予測もつかない激動の年となるでしょう。恐ろしさに身震いがするほどです。覚悟を決めて備えたいと思います。

 ※当社も本日が仕事納めで、明日から新春5日までお休みして鋭気を養います。新年は6日月曜日からブログも再開します。
 2013/12/27 13:33  この記事のURL  /  コメント(0)

「Gattaca」と「Solaris」
 『14年秋冬MDディレクション』の製作がようやく完了してクリスマス休暇明けからのクライアント向け解説を待つだけになったが、強く印象に残ったのは‘スカンディナビアン・モダン’と‘パラレル・ワールド’だった。週末に持ち帰って総点検も終わり、一息ついた日曜の夕刻、久しぶりに「ガタカ」を鑑賞した。
 「ガタカ」は97年製作の米国SF映画。未来の遺伝子カースト社会で神の子(遺伝子未操作児)が宇宙飛行士への夢を他人のDNAを買ってまで実現するというストーリーで、NASAが‘最もリアリティのあるSF映画’に選んだ事でも知られている。主人公を演ずるイーサン・ホークや相方のジュード・ロウの渋いダンディぶりも良かったが、恋人役を演じたユマ・サーマン(キル・ビルでも知られる身長181cmのスーパーモデル女優)の怯えたような凛々しさも忘れ難い。
 ガタカ社屋にフランク・ロイド・ライトのフューチャーモダンな傑作(シスコ近郊のマリン郡庁舎)を配したセンスも抜群だが、何より美しかったのがヤン・ロルフスによるレトロ・フューチャーな映像美だ。ハイパーモダンな金属モジュールをセピアな光で鈍く映したり、一瞬とは言えアールデコ的装飾性さえ覗かせる繊細さは、ジュラルミンをわざとらしく錆び付けて見せるお子様相手のお伽噺SF映画とは次元が違う。
 レトロ・フューチャーな映像美と心に残る思索性は「惑星ソラリス」(72年製作の旧ソ連映画)にも通ずるところが在る。未知の惑星の思索する海が人の精神に潜む悲しみの記憶を実体化して送り込むという、ポーランドのSF作家スタニスワス・レムの難解な原作をアンドレイ・タルコフスキー監督がさらに難解にした名作で、その02年リメイクの米国映画「ソラリス」も同様、何度鑑賞しても惹き込まれてしまうのはレクイエムに通ずる何かがあるのだろう。
 来秋冬企画へ向け、クリエイターはピンタレストを駆使してハイパーモダンとレトロ・フューチャー、北欧メルヘンとスチーム・パンクをパラレル・ワールドに彷徨ってみてもよいのでは。
 2013/12/26 11:07  この記事のURL  /  コメント(0)

「F.T」は大化けするかも
 「米国のしまむら」とも揶揄される大衆デパート「Kohl’s」を意識してイオンリテールが開発したという小商圏型ソフトライン複合業態「F.T」(エフティ)の第一号店を武蔵野線吉川美南駅前に見て来た。‘体験型コト消費’を謳って華々しく開業した巨大エンターテイメントモールの影で目立たないスタートとなったが、これが結構面白かった。
 吉川美南駅は12年3月17日に吉川と新三郷の間に出来たばかりの請願駅で、一日の乗客は2000人にも満たない武蔵野線で唯一、一万人を切る寂しい新開地だ。そんな立地に敢えて一号店を開いたという戦略性が、この業態の性格を物語っている。 
 「F.T」一号店は3500平米と「Kohl’s」「しまむら」のほぼ中間サイズで、立地もカテゴリー構成も両者に近似しているが、顧客層を30〜40代の若々しい主婦層とその家族に特化している点は「Kohl’s」に近い。テイスト別という衣料品の売場分類はリスク負担を背景としたベンダー別構成と表裏一体で、大衆NB主体の「Kohl’s」とも量販メーカー品主体の「しまむら」とも異なるモール商材と量販NB商材中心に構成されている。開発過程でワールドの全面支援を得た事もあり、「しまむら立地のフラクサス」という印象もちらつく。
 そんな衣料品の調達手法は開発過程の時限対応で、多店化とともにメーカータイアップ型のSPAモジュールが増えて行くのかも知れない。そう推察するのは、ホームリネンの一画がメーカータイアップによるSPAモジュールで構成されているからだ。特に完成度が高いのがベッドリネンとタオルで、カラーと柄でVMDが組まれた前者、素材を限定してカラーVMD展開した後者は一見の価値がある。
 衣料・服飾・靴・ホーム関連に集中してコスメ関連が欠落している事、衣料でもトゥイーンズ対応が欠落している事が指摘されるが、二号店以降に期待したい。レジの出口集中型は当然としても、FRが婦人服/紳士服とも見え難い奥側に配置されているのは課題が残る。レジカウンターの左右に開口部をレジに向けて集中配置しアドバイザーを置けば顧客利便に応えられるし、フィッティングサロンをオムニチャネル販売の拠点にする事も出来よう。
 修正すべき点は多々在るが、「F.T」はこれまでイオンリテールが手掛けたソフトライン業態の中で一番、可能性を感じさせる。オムニチャネル時代には大商圏の巨大モールではなく生活圏のコンパクト業態が消費の主役となるからだ。





 2013/12/25 09:23  この記事のURL  /  コメント(1)

限りなく白に近いグレー?
 ブラック企業との噂に対して某大手SPA企業のトップが『我々は限りなく白に近いグレーだ』と発言していたが、『我々は真っ白だ』と言い切れない中途半端さに革新性を失いつつ在るその企業の限界を感じた。
 『真っ白だ』と言い切れない背景は、その企業が創業以来のコンセプトのひとつである「ウエアハウス」という古典的な倉庫型陳列方式を引き摺っているため、店舗要員が過大な店内物流業務を強いられる事、入店客数や売上、納品量やキャンペーンなどに合わせてレイバーコントロールを組み人員を運用する店長や副店長の労務負担が大きい事が指摘される。オムニチャネル時代に突入した今日、『何時でも何処でも選んで買って受け取れる』顧客便宜が競われ、生産地から顧客に手渡されるまで最もスピーディーでローコストなプロセスが問われる中、前世紀のチェーンストア物流に拘るのはもはや非現実的で化石的とさえ言いたくなる。
 オムニチャネル消費に対するモルタル小売業のひとつの回答が「戦略的ショールーム化」であり、「アップルストア」はその最先端に位置づけられる。「アップルストア」ではお試しサンプルしか陳列しないから店内物流業務は極小化され、店舗要員は専門的アドバイスに集中出来る。最新の専門技術に通じたプロフェッショナルによる接客が顧客を捉え、「ルイ・ヴィトン」並みの超高販売効率を実現している事に流通業界はもっと注目すべきだ。
 物流センター要員より格段に時給が高い?店頭販売員に過大な物流業務を強いるのは合理的ではないし、接客スキルがあるのに物流労働ばかり強いられては意欲も損なわれてしまう。労務管理体制はともかく労働の人間性という視点から見れば、「アップルストア」と較べてもなお、某大手SPA企業のトップは『我々は限りなく白に近いグレーだ』と言い切れるのだろうか。「Apple」と並ぶグローバルブランドを夢見るのなら、同社に匹敵する革新性と人間性が問われるのではないか。
 2013/12/24 10:53  この記事のURL  /  コメント(0)

ウェンディーズまたも撤退か!
 二年前の開店以来、三日に空けず愛顧して来たグルメバーガーの「ウェンディーズ」表参道店が年末の30日21時をもって閉店してしまうと聞いて、日本は食の感性も退化しているのかとガックリ肩を落としている。フラッグシップであり記念すべき再上陸一号店でもある表参道店を閉めるからには日本撤退も検討されているに違いない。
 パテもバンズも量販バーガーチェーンとは雲泥の差で、これを食ったらMなんて二度と食えなくなるほど美味しかったし、パフェ類も下手なスウィートブティックに負けないほどデリケートに美味しかったのに、なんで閉店するんだと経営の下手さを詰りたくなる。‘高級バーガー’と言っても他社と較べるべきベーシックバーガーのレギュラーサイズなら180〜320円ぐらいだから(百円Mとは次元が違う)、めちゃ美味いパフェと合わせて500〜700円でデザート付きランチが楽しめる抜群のコスパだったのに、違いの解る客も少なかったのだろうか。
 通い詰める中、いつも思っていたのは、カウンターの女の子がコロコロ変ってオペレーションが安定せず、5〜6人も並ぶと待ちが長くなってしまう運営の稚拙さだったし、メニューを替えてみたり色々とキャンペーンを仕掛けたりと試行錯誤も目立っていた。そんなことより致命的だったのは出店立地選定の迷走で、表参道は一本路地裏だし、六本木や曙橋は一昔二昔前の立地で、この三店舗で売れないからといって音を上げるのは、ちょっとどうかと思う。外資SPAが揃うような都市型のららぽーとやイオンモールなどに出店していれば、今時は100店舗になっていたかも知れない。
 かつてのダイエーやゼンショーの時代も相当にピントが外れていたが、二年前にヒガ・インダストリーズと組んで再上陸したウェンディーズ・ジャパン合同会社も時代ズレした出店戦略で行き詰まってしまった。ずば抜けて美味しくイメージも良くコスパも許せるウェンディーズなのに、経営陣がアホなのか日本の消費者が退化しているのか、こんな結果になってしまった。三井不動産さんでもイオンさんでも三菱地所さんでも、どうかウェンディーズを引き継いでくれませんか!
 
 2013/12/19 09:28  この記事のURL  /  コメント(0)

| Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ