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ウェブルーミングって有り難いよね!
 昨日はオムニチャネル戦略をテーマとした商業施設デベの研究会でユナイテッドアローズの相川慎太郎さんと前後して講演して来たが、二人の認識が期せずして『ウェブルーミングって有り難いよね!』で一致し、参加した方々も認識を新たにされたと思う。
 「WEAR」騒動もあって商業施設デベや百貨店は『ショールーミングで売上が奪われる』と構えてしまった嫌いがあるが、O2Oを実践しているアパレル企業のアンケート回答を見ても現場の担当者の実感を聞いても、店頭で見てウェブで買う顧客よりウェブで調べて店頭で買う顧客の方が遥かに多い。つまり、ショールーミングで失われる顧客よりウェブルーミングで得られる顧客の方が遥かに多いのが現実なのだ。
 ショールーミングが定着している米国の調査でも、商品の購入にあたってウェブで情報収集する人は100%近いのに、店頭で見た商品をスマホでチェックする人は半分程度だ。直近のグーグルのレポートでも、スマホによる検索の91%は地域を特定したもので、情報収集の結果、ウェブで買う人が28%いる一方、16%の人はお店で買っている。スマホの普及はGPSやWi-Fiを活用したローカルサービスを加速しており、ショールーミングよりウェブルーミングを後押ししている。
 相川さんのお話に拠ると、ユナイテッドアローズ社の場合、店舗とECを併用する顧客の平均年間店舗購入額は店舗でのみ購入する顧客の2.5倍で、併用客のEC購入額を加えれば2.9倍まで開くそうだ。単純計算すればO2Oは店頭に150%、ECに49%の売上増をもたらした事になる。これは同社の09年来のO2O活動の結果で年度単位の効果はその4分の一程度と推察されるが、SPAC研究会メンバー平均でも店頭に9.4%、ECに12.0%の売上増効果が認められる。ECを伸ばしている会社ほど店頭売上も伸びているという印象は現実を反映したものだったのだ。
 ユナイテッドアローズ社のEC売上の内訳を見ても、伸びているのは自社サイトとマルイウェブチャネルで、ZOZOやスタイライフなど店舗を持たないEC専業サイトの売上は伸び悩んでいる。O2O相乗効果の有無はECサイトの業績にも顕著に現れている。
 気が付かないでいるだけでECサイトやSNSは店舗に大量の顧客を導いており、スマホの普及はウェブサービスのローカル化を加速してGPSやWi-Fiでもっと直接的に多くの顧客を導いてくれる。それなのに一部の商業施設デベや百貨店はショールーミングという片方向ばかり見て時流に逆らい、ウェブルーミングという膨大な無償の顧客誘導を正しく捉えていない。O2Oは商業施設にも多大な恩恵を持たらしているのが現実で、ショールーミング阻止に動くよりローカルネットサービスでウェブルーミングを支援する方が遥かに多くの顧客と売上をもたらす。商業施設デベや百貨店はウェブルーミングの有り難みを知り、頭を切り替えるべきであろう。
 2013/11/21 15:23  この記事のURL  /  コメント(0)

目を開いて未来を見よ
 マツダ車ディーラーの自動衝突防止システム体験会で事故が発生して安全運転とシステム依存が問題となったが、何度か危ない所を衝突防止システムに救われた体験のある私としてはこの装備を欠く車にはもう乗りたくない。本当に危なかったのか危なそうに過ぎなかったのかは今更知る由もないが、実に見事にブレも滑りもなくピタッと止まってくれる。車の横をバイクが擦り抜けて行った時など、ほんの僅かだがハンドルが一瞬、逆方向に動いたのには正直魂消た。
 20代からMBばかり乗り継いで来た私としては『いつかはSEクーペ(W111)に』というのが引退後の夢だったが、床の間(車庫)に飾っておくのならともかく、電子制御の塊となった安全楽ちんな今日の車に乗り馴れた身には非現実的な選択でしかなくなった。それだけ最新の利便に染まってしまった訳だが、それはウォシュレットとて同様だ。ウォシュレットのある生活に慣れた身にはそれを欠く海外のホテルは苦痛に耐えず、出張を最短日程に抑える要因のひとつになっている。
 なんでこんな事を挙げるのかと言うと、『新しい市場のつくりかた 技術競争/価格競争はもう止めよう』(三宅秀道)という本への共感を伝えたいからだ。人工衛星の姿勢制御に開発された三菱重工の高価なジャイロシステムがクルーザーのパーティでワインを零さないというニーズに市場性を見出したというイントロからウォシュレットが新たな生活文化を切り開いたという話に移り、プールで水泳帽を被るという習慣は一企業が仕掛けたものだ(それ以前にはそんな習慣はなかった)とか様々な事例を挙げながら『新たな市場を切り開くのは技術革新ではなく生活文化の創造だ』と喝破する論展には目から鱗が落ちる。
 私としては未だクリエイションという魔術が跋扈するこの業界に『新たな市場を切り開くのはクリエイションではなく使用価値と提供方法の創造だ』と声を大にして言いたい。「IKEA」は社会民主主義思想に基づくフラットパックによる物流と組み立ての顧客分担で低価格を実現し、「UNIQLO」はカジュアルをモードの階級性から解き放って万人の生活部品と化し、スーパーマーケットは大量生産を大量流通に繋いで大量消費社会を実現し、インターネットと宅急便はEコマースという提供方法を創造して流通を立地的制約から解放し、ブロードバンドとスマホはモルタルとクリックの壁を解き放ってオムニチャネルショッピングという購買慣習を創造したではないか。
 『新たな使用価値と提供方法の創造によって新たな市場を切り開き流通を革命する』という課題に正面から向き合わない限り、企業はやがて市場から置き去りにされてしまう。今更、クリエイションやものづくりに固執したり、化石化した流通秩序や提供方法に固執してラッダイト的反動行為に走る場合ではないと思う。業界は目を開いて未来を見るべきだ。
 2013/11/19 09:20  この記事のURL  /  コメント(0)

「WEAR」は良く出来てたけど
 週末に渋谷に出掛けたついでにパルコに立ち寄り、早速「WEAR」を体験してみた。
井の頭通り側から坂を上ってパルコの前まで行くと、パルコや参加店舗のチェックインバーコードをプリントした大看板の前にスタートトゥディのキャンペーンスタッフが並び、立ち寄る若者達に声をかけていた。
 「WEAR」使用の手順は
1)「App Store」などから「WEAR」アプリをスマホにダウンロードする
2)商業施設(パルコ)か参加テナントのチェックインバーコードをスマホでスキャンする
3)ショップで目を惹いた商品のバーコードをスマホでスキャンする
4)その服のコーディネイト情報を見たり自分のコーディネイトを投稿してコメントしたり、お気に入りリストに保存したり、ZOZOやブランドのサイト、あるいはブランドの店舗でオムニチャネルにショッピングを楽しむ。
 という訳で、チェックインバーコードのスキャンというステップが加わって面倒くさい気もするが、「スキャン」という行為はいずれも「WEAR」内のアプリ機能が自動的にスマホのカメラ機能を立ち上げてくれるから『カメラ機能を立ち上げて撮影してる』感はなくスムースだ。ただし、バーコードを読み取るには画面上のバーコードにタッチするなどピント合わせが不可欠で、ただ写しているだけではなかなか読み込めない。服の影で暗くても読み取らず、サクサクッというスピード感はなかった。加えて館が協賛していると言っても参加テナントは各フロア2〜3店しかなく、購買慣習に定着させるには館ぐるみ全テナントで盛り上げる必要を感じた。
 「WEAR」はスタイリングSNS機能付きO2Oアプリとしては良く出来ていると思うが、いちいち館やテナントのチェックイン手続きを踏むのは抵抗が残るし、カメラ機能自動立ち上げと言っても明るさを確保して画域とピントを合わせる必要もある。米国では一般的と言っても『バーコードをスマホのカメラで読み取る』という行為はかなり抵抗があり、やはりショールーミングの本命はNFCタグ近接読み取り方式(スマホを近づけるだけでカメラ撮影は不要)になるのかもと思ったりもするが、アンドロイドには標準装備でもiPhone5には搭載されなかったから、これもハードルがある。ショールーミングが日本の購買慣習に定着するには館の認知と協力、もう一歩の技術革新が必要なのかも知れない。
 2013/11/18 10:21  この記事のURL  /  コメント(0)

VMDとストアプランの壁
 新設/リモデルされた商業施設を見る度に思う事だが、ほとんどの店は建築的な様式美を欠くバラックにしか見えないし(平場に什器を並べた展示会の仮設ブースのような店が多い)、きちんとVMDから組み上げた店など外資系の一部を除けば皆無に近い。
 『きちんとVMDから組み上げた』とは、ブランド固有のMD編成が元番地と出前の「定数定型」な什器配置に表現され、個別什器の棚割りもMD展開と一致した購買階梯順に組まれ、出前のVPから個別什器のLP/IPまでスムースな視線誘導が設計されている状態を言う。加えて、お客様の購買動線とスタッフの販売動線が最短で購買労働と売場運営労働が極小化されるよう全体のレイアウトと陳列手法が組まれていればベストだが、そんな店は見た事もない。ストアデザインの斬新さと虚仮威しのディスプレイが競われるだけで、そんなVMDの本質が軽視される状況は何故、改善されないのだろうか。
 その要因は以下の二点だと思う。ひとつは経営者がVMDをMDからロジスティクス、店舗運営やブランディングまで貫徹する戦略的垂直統合ロジックと認識していない事、ひとつはストアプランが店舗開発や建設セクションと設計会社とのやり取りに留まって営業部門や商品部門の意向が反映され難い事だ。
 経営者がVMDを戦略的ロジックと認識し、MDからロジスティクス、店舗運営やブランディングまで理解したVMDディレクターにブランド固有の「定数定型」レイアウトを書かせ、店舗開発セクションや設計会社に指示するのが正道なのではないか。その手順を踏まない限り、グローバルブランドに張れるブランディングは成り立たない。
 グローバルブランドでは常識のVMDロジックとストアプラン手法がなぜ我が国のアパレル業界には定着しないのか(食品業界には定着している)、現場の実務から検証する科学よりクリエイションという魔術を信奉する業界体質ゆえと推察するしかないが、諦めずに啓蒙を続けたいと思う。明日開催する『ブランディングVMD&ストアプランゼミ』では戦略的ロジックから個別MDの棚割りの組み方、「定数定型」レイアウトの書き方まで体系的に提示するが、業界の関心は悲しいほど低い。
 2013/11/13 11:06  この記事のURL  /  コメント(0)

「バーグドルフ 魔法のデパート」を見て来ました
 日曜日の午後、ルン妻を同伴して文化村ル・シネマに「バーグドルフ 魔法のデパート」を見に行きました。週末の午後だというのに観客は疎らで、やはり業界ネタを出ない作品なのでしょう。
 映画の内容は「バーグドルフ・グッドマン」を取り巻くデザイナーやセレブのエピソードと名物スタッフの紹介、1901年の創業からの歴史と創業者ファミリーの華やかなエピソードなど、なんだか同社のリクルートビデオかFITやパーソンズの学生向け啓蒙ビデオといったドキュメント&インタビュー構成で、94分という上映時間を飽きさせないには平坦過ぎという印象でした。「バーグドルフ」の何たるかを知っていて敬意を抱く業界人でない限り、楽しむには無理が在ると思います。
 米国が世界のファッション産業を牽引していた20年代から70年代までの‘良き時代’の華やかな業界模様と大枚かけて大見得を切る‘エレガンス’の輝きを知る世代の業界人は共感出来るにしても、「ユニクロ」がコモディティカジュアルを「H&M」がモードを民主化してしまった‘洪水後’の今日しか知らない若者達にとってはほとんど‘失われた文明’の「源氏物語」的王朝絵巻にしか見えないのではないでしょうか。
 とは言う私も若き日のマンハッタンで「バーグドルフ・グッドマン」の栄光に触れ、そのゴールドエイジ的再現をリミテッドの「ヘンリ・ベンデル」に見出し、‘ジャパン・アズ・ナンバーワン’華やかなりし80年代末にはNYに行く度に散財したものです。「バークドルフ・グッドマン」の神話世界を知る最後の世代なのかも知れません。
 ブランドのセレクトや編集にしても、ウインドウ・ディスプレイや売場の陳列技法にしても、販売員のスタイリスト的接客センスにしても、マニュアル化し難い洗練の域に達した「バーグドルフ・グッドマン」はもはや‘失われた文明の神殿’と言うべき国宝的存在で(ニーマンマーカスグループのフラッグシップでもある)、そんな「バーグドルフ・グッドマン」を崇拝して研鑽して来た世代もまた‘失われた文明を伝える神官’でしかないのかも知れません。
 2013/11/12 10:30  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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