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H&Mシンドロームの蹉跌
 H&M上陸以来、ファストファッションがブームとなり、短サイクル期中企画に依存する52週MDが蔓延したが、ここへ来て反省の気運が広がりつつある。
 ファストに期中企画を投入してもファストには消化が進まず、売れ筋後追いの企画が同質化して値崩れに巻き込まれ、流動客に依存して固定客化が進まず、客単価も低迷して売上が伸びず、マークダウンロスが肥大して収益が低迷し、結局は何もいい事がなかった。本家本元のH&Mにしても年間20コレクションも投入して3.37回転(12年11月期)しかしておらず、ファストなMDもスローにしか回転していない。高収益を稼ぎ出しているのはファストなMDではなく巨大ロットがもたらす低コスト調達であり、規模で遥かに劣る中小ブランドが真似ても何も得られなかった。
 ファストなMDと言っても元ネタとなるコレクションシーンはAW/SSにプレフォールとクルーズを加えても年間4サイクルしかなく、日本的季節展開を組んでも6〜8サイクルが限界だ。それ以上のMDサイクルを組んでもネタ切れになるから鮮度ある提案を続けるのは難しい。実際、H&Mでも新鮮提案が途切れるネタ切れ期間が見られる。
 立ち上げ〜実売〜売り切りに要する販売期間は補給体制を組む定番品や基幹商品では12週、末期は次シーズン品に入れ替えるとしても8週はフェイスを占めるから52÷8=6.5サイクルが物理的限界で、期末バーゲン期間も考慮すれば年間6サイクルが妥当と思われる。これにスタイリングやフェイスに変化を加える売り切り企画を倍サイクル(12回)で加え、販売期間の長いサイクルでは期中補充・修正企画(最大6回)を投入するのが定石ではないか。これ以上のサイクルでMDを組んでも個々のバラエティや完成度が損なわれ、残品が溜まってフェイスが切り替わらず継ぎ接ぎになり、計画通りに在庫が回転せずロスが肥大してしまう。
 ファストなMDは無理を重ねても成果が乏しく、かえって売上や収益が低下するケースがほとんどだ。『H&Mシンドロームを脱してMDの定石に回帰すべき』というのが昨日開催したSPAC月例会メンバーアンケート検証の結論だった。
 2013/10/31 09:57  この記事のURL  /  コメント(0)

日本型モノづくりの敗北
 最近読んだ「日本型モノづくりの敗北」(文春新書)という本は目から鱗の啓示が満載で、つい何度も読み返してしまう。湯之上隆さんという半導体技術者が書いた技術革新の空転を批判した書籍だが、半導体からPCやスマホ、TVや冷蔵庫、かつての零戦まで事例を挙げて解り易く解説している。
 彼の主張は『市場創造なき技術革新はイノベーションとは言えず、技術至上のモノづくりが日本の製造業を敗北に追いやった』と総括出来るが、マーケティングを先頭に『売れるものを作る』サムスンと技術開発を先頭に『作ったものを売る』日本の製造業を対比する下りは我ら業界にも通ずるものがある。
 自己目的化した‘クリエイション’は市場創造に繋がらず、産地振興を叫んでもモノづくり至上では市場は広がらない。サムスンではないが、『最初にマーケティング在りき』というスタンスが不可欠なのではないか。ゆえに、ブランドビジネスにはSPAロジック、とりわけ産地振興ではファクトリーダイレクトSPAが突破口になると提じて来たのだが、未だ地方名産品紹介的イベントに終始し技術至上で特攻する様には匙を投げたくなる。
 産地振興を本気で考えるなら、業界の免罪符的お付き合いに振り回される事なく、行政の焦点が定まらない中途半端な支援などあてにせず、マーケットを見据えてイノベーションを仕掛けるファクトリーダイレクトSPAに自力で取り組むべきだ。
 2013/10/30 10:35  この記事のURL  /  コメント(0)

結局は量の論理?
 近年の「ユニクロ」の進化や「H&M」の急拡大には目を見張るものがあるが、玄人目には商品にもビジネスモデルにもそれほどの魅力は感じられない。ファストファッションのミニマムな品質を見ても「ユニクロ」の機能本位な量産規格品を見ても、「退化する消費文明」「イノベーションのジレンマ」とは割り切れないし、大風呂敷な戦略展開のパワーは評価出来てもビジネスモデルは古典的だしプロセス精度も怪しい。
 「H&M」は年間20コレクションも多頻度投入して4回転にも満たないし(前期決算では3.37回転)、外れ品をあれほど投げ売り処分しても60%前後の粗利益率が残るのだから、原価率は初期売価の四分の一程度と推察される。あの低価格をそんな原価率で実現出来るのは数百万枚のロットがあってこそで、ファストに投入してもスローにしか消化出来ないビジネスモデルの欠陥をカバーしているのは「量の論理」という事になる。
 「ユニクロ」は逆に年間4コレクションで6回転(13年8月期で国内は5.87回と推計)もさせるというマジックを実現しているが、誰もが必要とする生活機能パーツをお値打ち価格で単品量販補給する古典的なSPA論理が効いている。その要となっているのが初期売価の38%程度と推察される大手SPAでは例外的に高い原価率で、数百万枚というロットでは突出したバリューを発揮する。
 そんな「ユニクロ」にしても、ちょっと前まではローカルっぽい企画と野暮ったいカラーでグローバル展開が危ぶまれていたし(13SS以降、企画のグローバル進化には目を見張る)、パワーアイテムを欠く春/秋の売上比率が極端に低く(国内推定36.4%)、古典的な単品量販陳列は今も店舗要員に過大な労働を強いている。原点的なコンセプトのインパクトと高原価率・巨大ロット生産がもたらすバリューこそ突出しているが、ビジネスモデルとしては古典的で業務プロセスにも課題が多い。
 両者ともパワーコンセプトと巨大ロットで押し切る「量の論理」を大きくは出ておらず、ビジネスモデルも業務プロセスも改善の余地が大きい。さらに改善して成長を継続するか、より斬新でプロセス精度の高い(運営コストとロスの低い)ビジネスモデルに世代交代されていくか、結局は経営者の視野と力量次第なのだろう。
 2013/10/28 17:42  この記事のURL  /  コメント(0)

VMDの内外格差を解消したい
 巷に溢れる国内ブランド/ストアが一部の人気ブランドを除けば同質化して見えるのに対し、外資SPA/ブリッジブランドは店頭から一見してそれぞれのキャラがはっきり見える。その本質的な差は計画的なコレクションMDと売れ筋後追い継ぎ接ぎMDの違いなのだろうが、ブランド固有の「定数定型」な什器レイアウトや陳列手法が確立されているか否かも大きいと思う。もちろん外資といってもファストファッション系は派手なディスプレイで継ぎ接ぎMDを化粧している量販店でしかないし、ラグジュアリー系でも「定数定型」な什器レイアウトや陳列手法が確立されていないブランドも少なくない。豪華だけどスタイルが決まらない虚仮威しの店舗という感じがする。
 「定数定型」の什器レイアウトと陳列手法は「Gap」や「Holister」などデジタル型の米国式が解り易く多店舗の運用も容易だが、「アンテプリマ」や「エミリオプッチ」などアナログ型の欧州式も運用にセンスとスキルを要するもののアートな魅力は捨て難い。低〜中単価SPAはセルフ販売のデジタル型、高単価ブリッジ〜ラグジュアリーブランドは接客販売のアナログ型というのが定石だが、中単価でも部分的に後者を組み込むメリットが指摘される。
 両者の具体的なレイアウトや陳列手法を説明するには多量の事例が不可欠だから欧米日亜の注目店を徹底して取材して来たが、国内ブランドには好例がほとんど見られない。MDとVMDが一体のパターンを確立してストアをブランディングするという欧米ブランドビジネスの常識がどうして我が国には定着しないのだろうか。そんなバラック状態のままアジアに進出してもブランドとして認知されないし、国内でもVMD体系を確立してブランディングする欧米勢に太刀打ち出来ない。
 そんな格差を解消すべく、グローバルに通用するVMD技法とストアプラン技法を体系的に提示するのが11月14日(木)に開催する「ブランディングVMD&ストアプランゼミ」なのです。近年の研究を集大成した「完成版」として、事例画像やレイアウト図面を駆使してビジュアルに解説したいと思います。
 2013/10/25 16:41  この記事のURL  /  コメント(0)

10月末の店頭スタイリング動向
 今月も月末のSPAC研究会を控えてコーディネーターから店頭スタイリング動向報告が多数のカラースタイリングイラストを添えて上がって来た。毎月、レディスだけで34体ものイラストを揃えてタイプ別にスタイリング/アイテム/素材/カラー展開を詳細に報告してくれるので、私は有力商業施設をピンポイントで一周するだけで傾向が掴める。毎月のSPACレポートではこれらのイラストに詳細な説明を付けてタイプ別のMD展開動向をまとめ、ブランド別の前年比/販売効率のマップと合わせて全体傾向が掴めるように編集している。
 当社では毎月のスタイリング変化を検証して半年以上前に来シーズンの有望スタイリングテーマを設定し、シーズン進行に即したMDストーリーを組んでクライアントに提案しているが、それから二ヶ月ほど遅れて(メンズはほぼ同時期)開催されるコレクションシーンをチェックして修正するのはごく一部だから、かなりの精度だと自負している。今シーズンも日々、ウェブに載るコレクションをチェックしているが(便利になったものです!)、予想外の傾向はほとんど見られない。
 H&Mなど外資ファストファッション店の売場はコレクションシーズンのこの時期、シーズンの狭間でネタ切れ状態になりがちだが、今年はとりわけ魅力を欠いている。コレクションを先取りした新鮮提案はさすがにまだ投入されず、今シーズンの外れアイテムが捨て値で処分コーナーに溢れている。11月も半ばになればコレクショントレンドを反映したホリデイ企画が揃って勢いを回復し、12月に入ればクルーズ企画も投入されてネタ切れの国内勢を圧倒するのだろうが、今の店頭は鮮度を欠いている。
 109やルミネエストなどに犇めく国内ファストファッション店も外資とは異なるローカルトレンド(モノトーンのツィーディな布帛セットアップやニットアウター)が氾濫して同質化しているが、自社開発の計画MDで完成度の高い商品を提案するブランドは来春夏のトレンドを先取りした梅春企画(欧米流に言えばホリデイコレクション?)を揃えて顧客を惹き付けている。暖かそうな獣毛混起毛素材と透けるクリアな素材を組み合わせて白やライトグレー、サックスやミントなどのパステルカラーでハーモニックに構成したスタイリングは品質感も鮮度もあり、売れ筋追いの継ぎ接ぎMDで乱れた周辺店舗の中でキラリと輝いている。ブランド別の販売数字を検証しても、伸びているのは皆、素材から開発する計画MDのブランドばかりだ。
 2013/10/24 10:03  この記事のURL  /  コメント(1)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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