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いい仕事してますね
 秋の新店をチェックしに渋谷109から新宿ルミネと廻ったが、インパクトのある新業態は見当たらず、エストなど他所の館から引っ張って来た二番手三番手ばかりでサプライズもなく、つまんない病になってルミネ1に廻ったら、4Fにキラッと目にとまる新店があった。リミックスも陳列も繊細の極致で、すっかり退化した今時の店頭では例外的に洗練された大人の鑑賞に堪える店だったから、ついつい惹き込まれてしまった。
 何処がやってるセレクトかと思って尋ねると、ビギが今春、丸の内のKITTEに一号店を出した「suahhaus」の二店目で「suahhaus muse5」という店名だとか。上質でクラシックな大人のワードローブを志向するフレンチシックなセレクトショップで、セレクトやコラボが過半を占めるように見えてもオリジナルが6割なのだそうだ。各ラックのリミックスを決めているのが凝ったコラボアイテムで、「Bilitis」「Sugn」「Logette」などとのダブルネームが看てとれた。
 日頃、VMDを教えている私でも、これほど繊細なリミックスのルック回転陳列が組めるだろうかとストレート親爺の限界を感じたりもしたが、ブランドディレクターさんが自ら編成と陳列を組んだと聞いてなるほどと思った。想いとセンスとテクが揃った店だから顧客の支持を得て売れるといいネ、などと珍しく温かい眼差しで見てしまった。


 2013/09/19 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

「ホリスター」二つのサプライズ
 先週末、ららぽーと横浜に初上陸した「ホリスター」を一足早い木曜日のプレス内見会で見せて頂いたが、09年12月の「アバークロンビー&フィッチ」上陸時とは正反対のサプライズが二つあった。
 一つ目は米国のほぼ1.1〜1.2倍という誠実価格!Tシャツなど1990円から、スエットパーカで5990円から、ジーンズで5990円からと「アメリカンイーグル」に迫るお手頃価格で、元よりアバクロファンの私など、取材もそこそこに買いまくってしまった。米国の二倍というぼったくり価格でファンの離反を招いた「アバークロンビー&フィッチ」の反省が活かされたという事なのだろう。「反省」と言えば、店頭で愛嬌を振りまくストアモデル達も際どくパンツを落とし履く半裸スタイルではなく小綺麗なダンガリーシャツを羽織っていたのが印象的だった(半裸スタイル時も落とし履きは控えめになった)。
 二つ目はびっくりするほど商品の面がキレイになった事。トップスやアウターではダメージ加工は影を潜め、レディスではクリスタルやスパンコールをあしらったTシャツやブラウスまで在りだった。さすがにジーンズだけはまだ加工アイテムがほとんどだったが、これらもいずれキレイになって行くのだろうか。
 ストアモデルの半裸スタイルこそ大人しくなったとは言え、店内のレイアウトや陳列はもちろん、色目も見定め難いほど暗い照明や極端に少ない姿見配置もオリジナルスタイルのまま。ローカル対応はサイズバランスぐらいに留まるのか、しばらく定期的に観察して確かめる事にしたい。
 とまれ、誠実価格とキレイ目シフトで客層が広がり、「アメリカンイーグル」を遥かに上回る人気沸騰は確実と思われる(開店初日は1500人も並んだとか)。欧米でもアジアでもアバクロ社の海外展開の主役は圧倒的に「ホリスター」だから(海外店舗151店中ホリスターが117店)、日本でも「H&M」並みに急速多店化していくものと期待される。近くにお店が出来たら、私も通う事にしよう。





 2013/09/16 13:56  この記事のURL  /  コメント(0)

イノベーションのジレンマ
 一週間ほど前の日経の読書欄に面白い経営論が紹介されていた。クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」がそれで、『絶えざる商品開発の結果、製品が高機能になりすぎて多くの顧客が使いこなせなくなり、機能を限定した使い易くて安価な商品がマーケットを奪って行く』というものだ。書評を書いた専修大学教授の徳田賢二氏は『パソコン→スマホやタブレット』と例示していたが、私には『iPhone→低価格低機能アジアンスマホ』と受け取れたし、業界人としては『ブランドファッション→ファストファッション』と受け取れてしまう。
 実際、凝ったデザインやパターンの服を着こなせる人は限られるし、縫製仕様や素材の混率など玄人でないと(最近は玄人も怪しいが)解らない。一般の人にとっては、ほつれたり破れたり色落ちでもしない限り実用上は問題ないのだから、ブランド商品の多くは過剰機能・過剰品質の部類に入るのかも知れない。そんな視点に立てば、「ユニクロ」が品質と価格のデフェクトスタンダードとなったのも「H&M」がトレンドリーダーとなったのも必然と言えよう。
 文明論的には‘退化’であってもマーケット論的には‘必然’であり、経営論的には「イノベーションのジレンマ」あるいは「小売の環」(より低コスト低価格な事業者に世代交代して行く)と総括される。加えて、「ユニクロVS.しまむら」が何時の間にか「ユニクロVS.H&M」に変ってしまったグローバル化の現実も直視すべきであろう。
 2013/09/13 12:52  この記事のURL  /  コメント(0)

店頭に学ぶECのVMD革新
 アパレルウェブの杉本さんとECのコンバージョン率(買い上げ率)について話す機会があったが、サイトを訪問した顧客が買い上げる率は通常千人に2〜3人、キャンペーン時でも同10人ぐらいだと聞いて驚いた。店頭ではOL向けの量販的な店でもピークタイムで千人に40〜50人、アイドルタイムでは千人に100人を超えるから、買い上げ率は一桁違う。固定客比率の高いプレタ店などではこの数倍の買い上げ率になる。ECの買い上げ率は店頭に較べて何故、こんなに低いのだろうか。
 実物を見て触って試着出来るモルタルとクリックの物理的な違いはともかく、店頭では買い上げ率や客単価を上げる様々な仕掛けが研究されて来た。買い上げ率を上げる最たる仕掛けが多重露出で、同一店内でコーディネイトする相手や色組みを替えて何ヶ所も陳列する。それも通常のハンガーや棚よりトルソーやT字、テーブルを使う方が遥かに効果的で、壁面陳列より島陳列の方が倍以上回転する。多重露出陳列にインナーや服飾雑貨を組み込んでクロスマーチャンダイジングすれば客単価も伸ばせる。この他にもコーナー毎に接客空間(姿見とスペース)を上手く配置すれば買い上げ率は確実に上がるし、フィッティングルーム脇にベルトバーを置いたりレジカウンターに低単価の雑貨を置くなどすれば客単価を稼げる。
 ECでも似たような工夫が行われており、『この商品を買った方はこれも・・・・』などと追加購買を訴求する画面が出て来たりするが、勝負のポイントは1)最短ページビューで欲しい商品に行き着けるよう階梯構成する、2)様々な切り口から欲しい商品にダイレクト誘導する(多重露出)に尽きるのではないか。
 階梯誘導は店頭でも買い上げ率を左右する基本で、シーンやテイスト、カテゴリーなどでコーナーへVP誘導し、コーナーの各ラックでは購買プロセス順に型/色/サイズの階梯順(MDによって型優先/色優先/サイズ優先と変える)を棚割り誘導する。この階梯誘導がMDの組み方を体現し顧客の購買プロセスと一致すれば買い上げ率は極大化する。テクニカルに右往左往するよりブランド/ストア固有のシナリオを確立して顧客の購買慣習を定着させるのが要で、ブランディング効果も大きい。
 そんな視点でECサイトのページ階梯構造を見直せば、買い上げ率も客単価も大きく改善出来るのではないだろうか。店頭では物理的に不可能なショートカットもカーテンビューもピンタレストもECサイトでは自在に駆使出来るから、階梯直行も多重露出もクロスマーチャンダイジングも面白いように仕掛けられる。ECサイトのVMDはまだまだ革新出来るはずだ。
 2013/09/11 13:05  この記事のURL  /  コメント(0)

『ユニクロVS.しまむら』
 かつて『ユニクロVS.しまむら』と同列に論じられたしまむらだが、「ユニクロ」がグローバルブランドに化けファーストリテイリング社が快進撃を続ける一方、しまむらの業績には陰りが見える。直近四半期(3〜5月)の国内ユニクロの売上が11.3%伸びたのに対ししまむらは3.8%しか伸びていないし、毎月の既存店売上伸び率を較べれば格差は一目瞭然だ。直近の8月など国内ユニクロの128.9に対してしまむらは96.2と32.7ポイントも格差が開いている。
 売上伸び率の大差をもたらしたのは客数伸び率の格差に他ならない。両巨人ともなれば国民的支持率の格差と言って差し支えないだろう。両者の格差をもたらした要因は大きく四つあると思う。
 第一は圧倒的な単品開発力の格差で、グローバルな開発組織で素材から開発するユニクロと仕入れ調達からようやく商品開発に踏み込み始めたばかりのしまむらでは巨人と赤子ほどの差がある。素材も品番も集約して単品量販を追求するユニクロと原則一店一点売り切り主義(アパレル商品)のしまむらでは売上規模以上の開発ロット格差が指摘される。
 第二はECサイトやSNSを駆使したウェブ・マーケティングの格差だ。国内アパレルブランド最大のEC売上を誇り(EC率3.3%と抑制気味だが206億円に達する)ウェブ広告やキャンペーンで何度も世界的な賞を獲得しているユニクロに対し、しまむらは未だECサイトさえ立ち上げていない。これではブランディング力に大差がつくのは当然で、先行ネット空爆を欠いては海外進出も制約されてしまう。ちなみにしまむらの海外店舗は台湾の36店と上海の4店のみで(13年8月末)、ユニクロの410店(13年5月末)とは大差がある。
 第三はグローバルなリテイリング技術革新の格差だ。ユニクロが店舗デザインからVMD、ロジスティクスやプライシングコントロールなど先行するグローバルSPAに学んで次々と最新技術を導入し、今や彼らからベンチマークされるほどに進化したのに対し、しまむらは十年一日のように技術革新に背を向けている。店舗もVMDも洗練を欠いて華が無く、外資ファストファッション店に較べるとみすぼらしくさえ見える。5%を切っていた値下げロス率も11年2月期からは公表しなくなったから悪化しているのかも知れない。
 第四は商品企画におけるグローバル感覚の格差だ。ユニクロが着々と開発チームをグローバル化し世界の一流クリエイターとコラボして商品企画を洗練させる一方、しまむらは社内スタッフの海外視察を増やす程度に留まり、ローカルな市場追従に終始している。このままでは海外進出も足踏み、グローバル化する国内市場でも劣勢を余儀なくされ、外資ファストファッションや「GU」にシェアを奪われて行くと危ぶまれる。
 しまむらのロジスティクス体制や店舗運営には学ぶべき事も多いが、マーケットのグローバル化とオムニチャネル化という奔流は同社のアドバンテージを見る見る突き崩して行く。このブログでも幾度か同社の時代ズレを指摘して来たが、今や正面から危機を指摘せざるを得ない。警鐘に耳を傾けないと巨人も膝を付く事になろう。
 2013/09/10 09:33  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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