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「定数定量」より「定数定型」
 9月も半ばになってファクトリーブランドのデリバリーも出揃ったようなので伊勢丹メンズ館に秋物を仕込みに出掛けたが、お目当てブランドの陳列ラックを前にして販売員さんとのやり取りは漫才になってしまった。
 このブランドのフェイスは壁面の2ラックに限られるため、サイズどころか型も色も出し切れず、型違い/色違い/サイズ違いを頼む度に販売員さんは何処か遠くのストックへ消え、5分も10分も帰って来ない。いい加減、痺れを切らして帰りたくなる頃にようやく決めたが、そんなロスタイムがなければもう一点余計に買えたかも知れない。
 不思議に思ったのはラックに出ていない型や色があるのに同型同色2枚づつ(2サイズ)並んでいる事だった。『どうせ出し切れないなら中心サイズ一枚だけにして全型/全色を陳列した方が選び易いのに、それでも出し切れないなら少しは詰め込んでも良いのに』と販売員さんに言ったら、『定数定量陳列で各色2サイズづつ出せと伊勢丹さんに指導されています』との事。「定数定量」ってここまで金科玉条に浸透してんだと驚かされた。
 ブランディング上は「定数定量」陳列は好ましいかも知れないが、ハンガー陳列はともかく棚陳列には必ずしも当てはまらないし、円滑かつ効果的な販売訴求と在庫コントロールの基本は「定数定型」であって「定量」とは限らない。「定数」は展開ラック数(アナログ什器ではフェイス長)、「定量」はラック内陳列数と在庫量を指すのだと思うが、欧米のSPAで確立された「ロジスティクスVMD」においては、ラックの「定数」と出前を含んだ配置パターンの「定型」が基本中の基本で、ラックの「定数定型」配置が心太状の出口となって商品展開計画と連動する。
 「定数定型」配置された各ラックの陳列は「定量」ではなく、ルックや単品のMD設計を効果的に表現出来て購買階梯を最適に誘導出来るよう型/色/サイズの配置順とSKUフェイシング量を個々の企画毎に棚割り設計して「定型」化し、各店の販売効率差をカバーすべくSKUフェイシング量を高効率/標準/低効率などと変えてパターン化するから「定量」ではない。それでも効率差を埋め切れないから、補給頻度に格差を付けたり、高効率店には後方ストックを積んだり「前進デポ」を配置したりする。ただし個々の店舗においては、そのラックの補充が継続する間、棚割りの「定型」もフェイシング量の「定量」も維持される。
 各ラックの「定型」「定量」は基本だが、販売ピークの直前アイドルタイムに意図的な積み増しを行ってピークタイムにストックに走るロスを回避するという技もある。この場合はハンガー陳列でも「定量」を超えた詰め込みが一時的に生じるが、ビジュアルと販売ロスのどちらを重視するかで分かれよう。逆に立ち上げ直後で「定量」に至らない場合はハンガー陳列ではフェイスアウト、棚陳列では姿畳みするよう「陳列マニュアル」で定めておくべきだ。
 陳列を核とするVMD体系はMD展開を体現する「定数定型」の心太面を補給と回転で時系列展開する一方、顧客の購買プロセスを最適に誘導し販売人員の接客効率を極大化する(店内物流業務を極小化する)階梯誘導棚割りと補充が要で、「定数定量」に囚われて購買プロセスを損なうとすれば本末転倒が指摘される。
 2013/09/30 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

やっぱ地軸は傾いている
 9月末の店頭MD展開を見ていると、秋物もそこそこに獣毛混やアクリル混の微光沢起毛パステルカラーの梅春風アウター/ニット/スカートが結構目立つ。一部コレクションの影響もあるのだろうが、近年の欧州型シーズン展開が一段と加速しているように感じられる。肌で感じる季節進行も残暑が短く、朝夕は肌寒いほどだ。
 夏と冬が厳しく長く秋と春があっという間に過ぎてしまう高緯度地域型の気候に年々、シフトしており、やっぱ地軸が傾いているのではないかと訝ってしまう。天文学的な事実はともかく、亜熱帯に近い温帯ゆえの四季の移ろいが崩れ、欧州型の気候に近付いているのは間違いない。
 そんな状況下で端境期のMDを拡げたり売れ筋の後追いをすれば、あっという間に陳腐化して残品の山を築いてしまう。気候の変化にマーケットのグローバル化が加わる今日、売れ筋後追いの52週継ぎ接ぎMDに忙殺されていてはトレンドにも季節進行にも置いて行かれてしまう。グローバル化と気候の欧州シフトは計画MD(コレクション展開)への原点回帰を促しているのではないか。
 2013/09/27 10:06  この記事のURL  /  コメント(0)

新生三峰新宿店は要チェック
 三峰が創業の地である新宿にフラッグシップをオープンするというので内覧に伺った。場所は駅東口からトップショップの角を入って明治通りに抜ける通りの中程で、二層36坪のコンパクトな路面店だ。
 1Fの入り口から受ける印象はカモフラ柄やレオパード柄が目立つせいか尖ったイタロファクトリー系カジュアル〜ビジカジで、実際、イタロファクトリーのセレクトが1Fの30%を占めるそうだ。1Fでも奥側はユーロトラッドなビジカジのオリジナルが中心だが、綿ジャケットの18900円(税別/以下同)からロロピアーナ生地ジャケットの45150円までというお手頃価格の割に品質感があり、イタロファクトリーブランドと比較する価値がある。オリジナルの60%はジャケットを中心に日本製で、カジュアルジャケットやシャツ、ニットは中国の日系工場製だと聞いた。2Fはユーロトラッドなブレザー/スラックス、ドレスシャツ/スーツで1Fに較べるとコンサバだが日本製が80%を占めて品質に安心感があり、スーツで39900円からゼニアやロロピアーナ生地の71400円までとお手頃だ。
 イタロファクトリーのカジュアル/ビジカジから安心感あるユーロトラッドのクロージングまでお手頃価格で揃う品揃えは大人のビジネスマンに享けそうで、もう一回りスケール感があれば(せめて百坪)イセタンメンズの4〜5Fと買い回る顧客も出て来るのではないか。バーニーズが一頃の勢いを失った現在、イセタンメンズと買い回れる大人の大型メンズストアが新宿に希求されている。


 2013/09/26 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

元気に育った「コーエン」
 昨日は朝から吉祥寺で「コーエン」の定期クリニックを終えた足で新宿ペペの「コーエンゼネラルストア」を覗かせてもらったが、09年のモゾワンダーシティから手伝って来た私としては『よくぞここまで育ってくれた』という感慨が深い。
 関わりだした頃はファストファッションの影響もあって方向を絞り切れないODMの継ぎ接ぎMDを否めず、出店立地もローカルのイオンモール中心で、ユナイテッドアローズ社の血筋を引くとは思えない状態だったが、板谷社長が着任してアメカジ軸のカップルカジュアルに方向を定め、私もお手伝いして店舗の什器レイアウトと商品編成から出前のVMDパターンまで標準化して業態を固め、出店布陣も再編してドミナントに収斂し、販売効率も年々高まって来た。年間のMD計画や52週の在庫運用はまだまだ完成には遠く、店舗スタイルのアイデンティティもグローバル水準に高める必要が在ると思うが、モールを歩けば一見して「コーエン」と解るところまで来れたのは嬉しい限りだ。
 そんな中、ようやく自信がついて欲も出て来たのが「コーエンゼネラルストア」なのだろう。勢いに乗って飛躍して欲しいと思う反面、基本を崩さず煉瓦を積むように業態を確立して欲しいと願うのは老師の親心なのだろうか。





 2013/09/25 13:47  この記事のURL  /  コメント(0)

H&Mの果たした三つ?の革命
 H&Mが上陸(08年9月)して5年が過ぎ、玄人には大味なスタイリングやミニマルな品質が訝られても幅広い客層に受け入れられ、日本のマーケットとビジネスは一変してしまった。グローバルなロットでトレンド商品の価格を破壊してデフレを加速し、手厚い開発陣容(自社開発外注生産でODMではない)による2Wサイクルの多頻度企画投入で店頭展開のスピードを一変させる一方、ロットと開発陣容が桁違いに劣るローカルブランドはODM依存の52週単品継ぎ接ぎMDに流れて同質化と値崩れで疲弊して行った。
 H&Mはいったい何を変革したのか、その本質は何か、5年間を総括すれば三つ?の革命が見えて来る。
 第一はモードの階級性を否定してモードの民主化を果たした事だ。ユニクロはコモディティ(生活必需品)としてのカジュアルを民主化したが、H&Mは本来、階級的なモードを民主化したのだからインパクトはさらに大きい。その背景は北欧の社会民主主義思想に求められる。
 貴族文明を産業革命以降のブルジョワジーが継承した西欧の階級文明と戦前から社会民主主義の実験を積み重ねて来たスウェーデンの非階級文明は本質的に対極的なものだ。スウェーデンドラマに見るモードの民主性(社会的地位が必ずしも服装に反映されない)にはしばしば驚かされるが、それは住宅やインテリアでも大同小異のようだ。IKEAもH&Mも同じ社会民主主義文明から生まれたものなのだろう。25%という付加価値税(食品や交通費は12%、書籍や新聞は6%)と極端に累進的な所得税/相続税で『貧富差が一代で解消される』とまで言われた高負担・高福祉のスウェーデンも富裕層の国外脱出に歯止めをかけざるを得ず(IKEAの創業家はスイスに、持ち株会社はオランダに、その株式を支配する財団はルクセンブルグにというのは有名な話)、04年に相続税と贈与税を廃止し07年には富裕税も廃止して少しは変ったのかも知れないが、社会民主主義の文明思想は脈々と引き継がれている。
 第二はモードとビジネスのスピードをシーズンから週に一変させた事だ。欧米ブランドのコレクションはAWとSSに近年はプレ・フォールとクルーズが拡大して4シーズンが定着し、多くのコンセプチュアルなSPAは6シーズン+期中補正/スポット投入がスタンダードとなっているが、H&Mは2Wサイクルのコンパクトなコレクションを端境期まで展開して顧客を飽きさせない。と言ってもODM依存の単品継ぎ接ぎMDに流れている訳ではなく、ミニコレクションと言えどもスタイリング/素材/カラーの設計から外注生産の管理まで自社で行い、スウェーデンの労務常識に鑑みれば複数の社内開発チームが織田鉄砲隊方式で商品開発を担っていると推察される。
 開発陣容もロットも伴わないローカルブランドがH&Mのスピードを表面的に真似ればOEM/ODMに流れてバリューが伴わずMDも継ぎ接ぎになり、在庫運用を担うディストリビューターや売場編集陳列を担うVMDスタッフも疲弊してしまう。52週MDは本来、計画的なコレクション展開を進行補正する補充企画や在庫運用、プライシング・プロモーションであり、コレクションの完成度とバリューを損なってはくたびれ儲けに終わりかねない。
 本家本元のH&M社にしてもスピードMDの成果は年間3.72回転とファストとは到底言えず(日本ではもう少しましだと思うが)、61.1%という高粗利益率が収益を生み出しているのが現実だ(13年3〜5月四半期)。H&Mの稼ぎはMDのスピードよりミニコレクションの開発力と膨大なロットがもたらす調達コストの低さが担っているのではないか。
 第三は立地の革命だが、これはH&Mジャパンへの警鐘と受け取ってもらいたい。H&Mの集客力は評価するが(当社の商業施設企画には駅ビル以外、ほとんど入れている)、売れないSCでも売れると考えるのは過信だと思う。商圏/立地/器のポテンシャルと競合を科学的統計的に検証して推計される商業施設の売上をH&Mひとりの集客力で劇的に押し上げられるとすれば、これは科学でなくマジックになってしまう。H&M処女商圏ではモールの衣料服飾売上を最大5%程度押し上げる効果が得られるかも知れないが、平均月坪10万円の商業施設が12万円になったりはしない(目玉外資SPAが勢揃いすれば可能)。H&Mジャパンにとっても消化回転の足を引っ張る店を増やしてしまう事になる。出店判断にあたってはマジックより科学を重視すべきであろう。
 2013/09/20 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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