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業界の自浄意志を問う
 バーゲン時期論争は何時の間にか「産地支援運動」にすり替えられ、ルミネは事業目的を逸脱した産地支援の意見広告まで打ち出しているが、その広告費が営業収益から支払われるのは如何なものかと思う。駅ビル事業にとって優先されるべきステークホルダーは第一に顧客、第二に株主やテナントであって「産地」はステークホルダーとは言えないからだ。権力者の思い込みで企業目的を逸脱したキャンペーンに収益を注ぎ込むという行為が何処まで許されるのか、JRグループの自浄意志が疑われる。
 駅ビルと言えば、この夏はバーゲン時期後倒しとは裏腹にフライングセールやシークレットセールが先行して実質、バーゲン時期が前倒され、6月中旬から8月上旬まで延々二ヶ月もバーゲン状態が続くという異例の事態となり、バーゲン後倒しの意図とは逆にセール売上比率が高まってしまったが(フライングをほぼ完全に統制した三越伊勢丹は例外)、それ以上に問題とすべきはタイムセールの乱発だ。
 かつては某カジュアルチェーン特有の販促手法に留まっていたのが、偽装二重価格が疑われるにもかかわらず駅ビルなどのデベが禁止や抑制の指導を怠ったため、ライバル各社も対抗して類似した手法でタイムセールを乱発するようになった。「正価」に対する信頼感を回復するにはバーゲン時期後倒しなどより余程、重要な問題だと思うが、この業界には自浄意志というものが無いのだろうか。
 偽装二重価格商法は消費者に有利と誤認させ「正価」に対する信頼感を損なうもので、悪質なケースは内閣総理大臣から措置命令が出され、その命令に違反した者は二年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人は三億円以下の罰金に処されるという重罪(景品表示法15条、18条)なのに、駅ビルなどのデベはあまりに消費者保護の遵法意識を欠いている。これ以上、偽装二重価格商法が広がるなら司直の介入を要請せざるを得ない。今一度、業界の自浄意志を問いたい。
 2013/08/20 10:04  この記事のURL  /  コメント(0)

正念場の渋谷109
 風立ちぬ高原の避暑生活から灼熱の東京へ戻って最初に訪れた渋谷109。外資ファストファッションに圧されての退潮に歯止めを掛けられるか否か最後の正念場だが、発表されている秋の新店は今のところバロックジャパンの「AvanLily」だけで、今春の8店舗に較べると動きがない。既存店舗のトレンドは何処へ向いているのだろうか。
 一周した印象では「EMODA」的モードミックスがマークスタイラー系後発ブランドから後追いのODMブランドまで一段と広がり、「GROWZE」的LAモードミックスに追従するブランドも増えた一方、渋原的カジュアルミックスは後退していた。50年代レトロとバロック的装飾回帰が言われる今秋だが、マルキュー世界はモードミックスへの集中が顕著で新たな広がりが見えず、「H&M」など外資ファストファッションとの競合激化が懸念される。
 渋谷109の現状はルミネエストと競合するキュートモード系、外資ファストファッションと競合するモードミックス系が主力で、かつての中核であったワークモード系やセクシーエレガンス系は勢いが無く、ガーリーカジュアル系やコーストカジュアル系は人気が落ち込み、渋原志向のアメカジ系やストリート系、ユーズド系やコスプレ系まで手を広げているが、独自性のある新タイプはしばらく登場していない。これでは外資ファストファッションと駅ビルに挟撃されて低迷が深まるばかりだ。
 韓流ブランドも終わった感が深まる中、新たな目玉が見出せないのが実情で、駅ビルに近付いてもファストファッションに近付いても苦境が深まってしまう。外資ブランドに城を明け渡すのかウルトラCの突破口を見出せるのか、渋谷109はまさしく最後の正念場を迎えている。
 2013/08/19 11:50  この記事のURL  /  コメント(0)

マルキュー文明はどうなるの
 昨日、中国靴小売大手チェーンの百麗国際がバロックジャパンの筆頭株主になったというニュースが入って来た。バロックジャパンは07年に仏クレディ・アグリコール系のCLSAサンライズキャピタルが買収し、その後10年10月にオリックスが株式の29.9%を取得。今回、百麗国際が31.96%、百麗国際に出資するCDHランウェイインベスティメントが23%を取得し、サンライズキャピタルの手を離れた。
 H&M上陸以来、渋谷109の売上は下落が続き、H&Mなど外資ファストファッションの多店化とともにマルキューブランドの売上は全国的に低迷。マルキューアパレルの経営も悪化し、ギルドコーポの身売りやララ・プランの民事再生法申請、ローズファンファンの破産などが相次いでいた。マルキュー世界の筆頭企業バロックジャパンとて逆風は否めず、13年1月期は「アズール・バイ・マウジー」の多店化などで売上こそ14.1%増の598億6500万円と600億円に迫ったものの営業利益は78%減の6億1700万円と売上対比1%強に落ち込み、22億9800万円の特別損失計上もあって31億7700万円の純損失に陥っていた(本日の繊研新聞参照)。
 グローバルなファストファッション企業の攻勢に太刀打ち出来ず後退を続けるマルキューブランドだが、その敗因は1)商品開発体制の大差、2)調達ロットの大差、に他ならない。マルキュー世界の数十店舗の展開では、グローバルな数百店数千店展開の調達ロットによる価格競争力と開発コスト負担力に太刀打ち出来ず、企画の感度鮮度もお値打ち感も大きく引き離されてしまったというのが現実だ。
 このままではマルキュー世界はグローバルなファストファッション企業に制圧され、渋谷109の一等地を外資系が占めるのも時間の問題であろう。マルキューアパレルのグローバルな進化を祈るばかりだ。
 2013/08/08 12:54  この記事のURL  /  コメント(0)

付加価値の創造と実現の乖離
 ファッションビジネスには「夢を見せる」付加価値創造と「商品を売る」付加価値実現の両面が在る。「夢を見せる」方はクリエイションやプロモーション、PRなど華やかだが、「商品を売る」方はチャネルミックスからマーチャンダイジングやロジスティクス、ストアオペレーションまで地味さを否めない。だからなのか、業界のビジネス教育はクリエイションやPRなどに偏り、デザイナーがビジネス論を教えていたりする。専門学校だけならともかく、経営者の価値観も「夢を見せる」方へ偏り、「商品を売る」実務戦略や運営技術には関心が薄い。後者に使うコストは恐らく前者の百分の一か千分の一ではあるまいか。
 「夢を見せる」付加価値創造はマジックやオカルト、あるいは心理学の世界であって定性的定量的科学的検証にはほど遠い。だからこそクリエイションやランウェイ、プロモーションやPRには法外な費用がかかる。「商品を売る」付加価値実現はチャネルミックス/出店戦略からマーチャンダイジングやロジスティクス、ストアオペレーションやECサイト運営まで技術も費用対効果も読めるから法外な費用はかからないのに、経営者も学生も関心が薄い。だから、ますますコストを掛けなくなる。
 しかし今世紀に入って以来、業界の付加価値創造と付加価値実現の乖離は加速度的に開いて来た。この10年強で業界の調達原価率は平均5ポイント、大手SPAに限れば10ポイントは切り下げられ、それだけ値入れ率(付加価値創造)は高まったが、「商品を売る」付加価値実現力が急速に低下して歩留まり率が悪化し(値下げロスや廃棄ロスが肥大)、利益率は逆に低下してしまった。「夢を見せる」付加価値創造に偏った結果、「商品を売る」付加価値実現の実務技量が低下し、かえって収益力を低下させる結果となったのだ。
 それでもなお今日、業界の関心は「夢を見せる」方に偏り続け、「商品を売る」実務技術への関心は低下し続けている。科学の評価がマジックやオカルトに遠く及ばないのはこの業界特有の水商売気質なのかも知れないが、いい加減に目を覚まさないと収益力低下に歯止めが掛からなくなる。
 リテイル実務の技術体系を費用対効果が読める域にまでアップデイトし続けるのは大変な費用がかかるが、この業界ではそれに見合う評価は到底得られそうにない。今秋の公開ゼミを別表のように予定しているが、果たして何人が来てくれるのだろうか。
 
 2013/08/06 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

コンビニの犯罪
 天候が許す限り毎朝、近くの玉川上水緑道をジョギングしているが、ローソンに近い所ほど食い散らかした塵や吸い殻が散乱している。区が委嘱したおじさんが毎週、清掃しているが追いつかず、私も東京に居る週末には塵拾いに一周しているが、塵の分布は明らかにローソンを中心としている。
 コンビニの塵はかつて問題となり、店頭に分別塵箱を置くようになったが、レジの後ろに『塵や吸い殻を路上や公園にポイ捨てしてはいけない』などとポスターが張ってあるわけでも、煙草を買った客に『路上禁煙、ポイ捨て禁止』などと書いたチラシを配布するでもなく、周囲の環境を守ろうという誠意は感じられない。企業の社会貢献が叫ばれる時代だが、貢献以前に迷惑をまき散らすのを防止する方が先ではないか。
 近所に在るのはたまたまローソンだが、他のコンビニも大差ないだろう。コンビニ業界がこの問題を放置するのは『未必の故意による犯罪』と言うべきで、全国に5万店以上もあるコンビニが迷惑をまき散らすのを防止するだけで周囲が一気に奇麗になる。何処の業界でもお偉方は権力の行使ばかりで浄化作用は期待出来ないが、コンビニ業界は例外だと思いたい。
 2013/08/05 09:56  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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