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クリエイションとマーチャンダイジング
 「クリエイション」とは一品あるいは一ルックのデザイン、そこから一定の着回しまで拡げてシーンを構成したり、複数のシーンから「コレクション」を構成する事もあるが、基本はアイデアの沸き出す「点」だと思う。「マーチャンダイジング」とは「点」のクリエイションを水平な「面」や時系列な「線」に増幅する行為だから、同時にビジュアルマーチャンダイジングの設計でもあり、多店舗を時系列に繋ぐディストリビューションとも絡んで来る。私はそれらを一貫するのが本来の「マーチャンダイジング」だと考える。
 クリエイターも一品あるいは一ルックのデザインに留まるとは限らない。かつてのパリ・コレクション(なぜか他のコレクションシーンではあまり見られない)では多人数のモデルを繰り出してカラーや柄、ディティールを展開するスペクタクルを見せる事があったが、これなどクリエイターがマーチャンダイジングの領域まで踏み込んだ例と言えよう。近年はさらに踏み込んで、時系列なQRの「線」の展開までクリエイターが手掛けるケースも見られるが、短期の売れ筋追い開発では完成度も創造性も疑わしく、ブランド価値を損ないかねない。
 長年、この業界でブランドの消長を見て来た実感で言えば、クリエイターがマーチャンダイジングに踏み込むのは「コレクション」(計画MDの骨組みと言えよう)の構成までに留めるべきで、期中のQR企画にまで踏み込むのは弊害が大きい。クリエイターにはじっくりと「コレクション」の開発に専念してもらい、マーチャンダイザーがクリエイティブに踏み込む方が良い結果が得られるように思う。マーチャンダイザーにクリエイションを理解する感性があって、最適な「面」と「線」の展開を設計出来る事が成功の鍵なのではないか。かつてのリズ・クレイボーンやCKカルバンクライン、近年のセオリーやJクルーはその典型だと思うし、トッカも素材・柄を切り替えて展開する「線」のMDと言えよう。そう見れば、コーチはもちろんルイ・ヴィトンもマーチャンダイジングの技が光る。
 「マーチャンダイジング」は「クリエイション」を否定するものではなく、その魅力を「面」と「線」に増幅する対等のテクノロジーなのだ。ゆえに、マーチャンダイザーにはクリエイターに劣らぬモードな感性とクリエイティブな技、一方で顧客の反応や在庫消化状況に即応するマーケット・イン感覚とディストリビューションのスキルが求められる。そんな想いで企画したのが4月18日に開催する『マーチャンダイジング技術革新ゼミ』なのだ。長年続いたデフレ下で蔓延した売れ筋追いの52週継ぎ接ぎMDを脱してブランド価値を再確立すべく、マーチャンダイジングの原点から学び直して欲しい。原点回帰のチャンスは「今でしょ!」。
 2013/03/22 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

O2Oとハイブリッドの効果は凄い!!
 今月28日に開催するSPAC研究会を控えてメンバーアンケートの集計・解析を急いでいるが、想像以上の数字に今更ながら驚いている。それはO2Oによるリアル店舗売上とウェブストア売上の上積み効果、リアル店舗と較べてのウェブストア運営経費率の格段の低さだ。
 O2Oとは「オンラインtoオフライン」の略だが、「ウェブ(ストア)toリアルストア」あるいはその逆も含む顧客誘導を指すのが今の見識であろう。ウェブでリアル店舗を紹介したり、割引クーポンを発行したり、スマホのGPSで誘導したりという「ウェブtoリアル」の一方、バーコードやICタグを利用したアプリでスマホやデジタル・サイネージにウェブストアのコンテンツを流したり、お買い上げに至らなかった商品のウェブコンテンツをスマホに残したり、原始的だがウェブで検索出来るよう品番のメモを渡したりという「リアルtoウェブ」が試みられている。
 家電製品などの汎用ショールーミング・アプリが先行して普及した米国では、店頭のバーコードをスマホでスキャンさせて自社サイトに誘導する(専用アプリのダウンロードが必要)のが主流だが、日本では汎用ショールーミング・アプリ(有料で登録した流通NB商品のみ対象)は広がりつつあるものの、ファッションブランドのウェブサイト商品ページに導く専用アプリはまったく普及していない。その一方でICタグを使った物流管理の効率化投資が先行しつつあり、ICタグをスマホ(iPhoneは不可!)でスキャンさせてウェブサイトに誘導したり、ICタグを店頭のカードリーダーで読ませてデジタル・サイネージに映し出す方が先行しそうな状況だ。ICタグとスマホが技術革新と低コスト化を競っているのがO2Oの最前線であり、SPACではその最新技術をタップリとご紹介したい。
 O2O効果の実感はリアル店舗に+10%弱、ウェブ店舗に+12%というのがメンバー企業回答の平均で、ウェブストアの運営経費率はリアル店舗に較べて13ポイント前後も低かった。詳しくは当日の会場で報告したい。
 2013/03/21 09:04  この記事のURL  /  コメント(0)

理想と現実のギャップ
 今春は商業施設の開発がようやく復活して次々と開業しているが、中には当社が開発企画やテナントミックス企画に関わった施設もある。当社の提案した企画とは似ても似つかぬ構成で開業する施設がある一方、当社の提案に極めて近似した構成に帰着する施設もある。前者にはがっくりさせられるが、後者は難しいリーシング交渉を乗り越えて、よくぞここまで頑張ったと誉め讃えたくなる。企画段階ではインパクトを考慮して各リーシング区画の第一候補はちょっと背伸びし、第二、第三候補で帰着してもストーリーが成り立つように組んでいるが、何せ相手のある事だし、条件次第でどうなるか読めない。
 近似した構成に帰着出来た施設はほぼ第三候補までに収まって、しょぼいテナントにすり替わったりはしていないが、似ても似つかぬ構成になってしまった施設は当然、第三候補で収まっていない。想定とはまったく違うテナントを並べ、ストーリーや密度が崩れてしまっている。当社の企画は参考程度にしか考えなかったのか、リーシング段階での粘り腰が足らなかったのだろう。
 理想と現実のギャップは実績評価の高い大手デベやリーシング業者ほど小さく、逆は大きい。そんな評判はSPACメンバーの出店担当者アンケートでリアルに格付けされる。今年もそんな季節が来月に迫っているが、格付けが上昇するデベ、下降するデベはおおよそ想像がつく。この一年間で開業/リモデルした施設の営業成績がストレートに反映されるからだ。
 「ウェブ販売とO2Oハイブリッド戦略」をテーマに開催する3月28日のSPAC月例会は既に満員御礼状態で、「今秋以降開業予定注目商業施設総点検」(近年開業施設の直近評価も行う)をテーマに開催する4月26日のSPAC月例会は3月例会以上の人気を呼びそうだ。メンバー企業には早めの席確保をお勧めしたい。
 2013/03/20 10:23  この記事のURL  /  コメント(0)

「失われた20年」から「繁栄の20年」へ
 アベノミクスが巡航バブルに離陸して「失われた20年」にようやく終止符が打たれそうな情勢だが、その背景はシェールガス革命による米国経済の本格復活だけではない。89年11月のベルリンの壁崩壊を契機に92年から本格化した中国の共産党一党独裁下市場経済政策が20年に渡って世界に輸出して来たデフレの奔流が終わりつつある事がもうひとつの背景なのだ。とりわけ日本経済にとっては工業生産の空洞化をもたらした元凶と言っても良いだろう。
 そんな中国のコストが急騰し対元で円安が進めば、20年間に渡って日本を苦しめて来た中国発のデフレも勢いを失い、過剰な金融緩和などなくてもインフレ転換は実現してしまう。我らアパレル業界は既に11年度から年率4%ものインフレ局面に転じているではないか。「チャイナ+ワン」などと低コストな南アジア諸国に生産をシフトしても、遠からず所得のグローバル平準化へとコストは上昇して行く。中国発のデフレがもたらした「失われた20年」がようやく終わろうとする今、新たなデフレの元凶を求めて「チャイナ+ワン」を模索するのは愚かなイタチごっこなのかも知れない。
デフレの輸出国からインフレの輸出国へと中国の役割が変わって行く「繁栄の20年」のシナリオを脅かすリスクがあるとすれば、中国の帝国主義化と内乱であろう。半島情勢の逼迫も加わって「白村江」的構図に陥る事態だけは避けたいものだ。
 2013/03/19 09:02  この記事のURL  /  コメント(0)

ランウェイに背を向けて!
 欧米ファッションキャピタルに続いて先週から東京でもコレクションが始まったようだが、私には遠くを通り過ぎて行く季節の風物詩でしかない。業界に身を置いて毎日のように発信していてもファッションジャーナリスト(ジャーナリストというより業界雀でしょ!)でもパーティセレブでもないから御案内もなく、新聞を見て初めてそんなことやってんだ?と気が付いた。ランウェイは極端に時間合理性がなく女々しい?張り合いに神経を逆撫でされる不快な場だから、よほど業務上の必然があるか極端な数寄ものでもない限り見物に出掛ける意味は無いと思う。お膝元のTOKYOでもそうだから、PARISやLONDON、NYなんかまで大変な日数を割いて飛行機代やホテル代まで払って出掛けるのは相当な見返りが期待出来る人に限られよう。
 わざわざ出掛けなくても、今はショーの翌日にはウェブで一覧出来るし、一部は動画で見る事も出来る。かつてはコピーリスクに神経質だったメゾン各社もウェブの発信効果を無視出来なくなり、会場での撮影にもうるさく言わなくなった(デジカメやスマホでもましな動画が撮れちゃう時代です!)。パソコンからスマホまで何処に居ても自在に見る事が出来るが、いちいち掲載を追いかけるのが面倒な人はウェブ上の総集編解説を見れば済むし、多少の金と三〜四時間を割いてコレクション報告セミナーに行っても良い。ウェブ時代にわざわざランウェイ会場まで出掛ける人は余程のブランド信奉者かパーティ好きなのだろう。
 ならばブランド側にしても、とんでもない費用をかけ、見に来てくれる方々にも大変な労力を強いるランウェイをアナログなやり方で続ける意味があるのだろうか。上場企業のIR情報同様、ランウェイに招待された一部の人にだけ先行して情報を開示する事もネット民主主義のディスクロージャー理念とは相容れないから、公式サイトで生中継するのがお約束になるのは時間の問題だろう。ならば、ショーの構成(おまけの演出は不要だから短くしろ!)や見せ方も始めからウェブ公開向けに組まれるようになるに違いない。欧米ファッションキャピタルに対して圧倒的に劣勢なTOKYOが世界に発信するには全コレクションのウェブ生中継が突破口になるのではないか。古典的なお祭り騒ぎだけでは劣勢は挽回出来ないのだ。
 という訳で、無精な私はランウェイに背を向けてウェブチェックで済ませ、そんな日が来るのを今か今かと待っている。次回14SSのTOKYOコレクションが組織立ったウェブ生中継に踏み切らないとしたら怠慢の誹りを免れまい。
 2013/03/18 09:24  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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