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百貨店がオムニショッピングを妨害?
 「O2Oとハイブリッド戦略」をテーマに開催した昨日のSPAC研究会は170名近いメンバーが参集し、お招きしたパネラーからもオオッ!という情報が次々と出て、会場騒然という盛り上がり様だった。中でもコージィコーポレーションの積さんのお話は出色で、モールサイトが立ち上がる以前から自社ECサイトを立ち上げた強者だけあってEC化率は20%に達し、バーコードやQRコードから自社サイトの商品ページにリンクさせるO2Oを先んじて実用化した先進ぶりには舌を巻いた。 
 積さんもシップスの高橋さんも揃って指摘していたのがECサイト運営経費の上昇で、モールサイトの手数料率も自社サイトの運営経費も年々嵩んで、かつては実店舗より十数ポイントも低かったのが数ポイントしか差が無くなり、コストメリットより実店舗へ送客するO2Oを重視するようになったそうだ。SPACメンバーのアンケートでも、この二年でモールサイトのコストは平均3ポイント、自社サイトも同1.9ポイント上昇している(それでも実店舗に較べると10ポイント以上、低コストに収まっている)。
 お話を伺うとテナントのO2Oに対するデベと百貨店の対応は両極端で、百貨店がブランドショップでのECサイト紹介さえ禁止する一方、駅ビル/ファッションビル/SCのデベはまったくの黙認で、逆にデベ側ECモールの紹介やリンクをテナントに求めている。米国では日常風景化している、お客様がスマホで値札バーコードをスキャンしてECサイトを見る行為も、日本の百貨店は煩く咎めるのだろうか。
 米国同様にオムニチャネルショッピングが日常化していく中、対応に出遅れた百貨店がガラパゴスな論理でお客様のオムニショッピングを妨害するなら、顧客の離反は避けられないだろう。百貨店業界の反省と進化を望みたい。
 2013/03/29 09:04  この記事のURL  /  コメント(0)

テナント対館のオムニチャネル合戦
 スマホの普及も加わって急拡大するファッションECだが、館の対応はどうなっているのだろうか。衣料品・身の回り品のEC売上が6200億円(13年3月期推計)、EC化率も4.4%に達し、EC化率が二桁に乗るブランドも急増する中、ECサイトに売上が流れる百貨店や駅ビル、ファッションビルやSCは黙って指をくわえているだけなのだろうか。
 積極的にO2Oを行っている何社かにヒアリングしたところ、店頭でのO2O活動(ウェブサイトへの送客)に対して駅ビル/ファッションビル、SCデベは今のところ寛容だが、百貨店は原則禁止が大半だとか。ECモールを展開しているルミネやパルコも容認しており、EC送客をデベのモールサイトに限らせる訳でもない(そもそも、そんなシステムを構築していない)。
 米国の百貨店は買取だから何処も自社のオムニチャネル(E[パソコン]/M[スマホ]/T[TV])に誘導する独自アプリを活用しており、ショールーミングは意識していない。同一商品の価格が競われる家電やコモディティNBはともかく、販路が限定されるファッションブランド商品ではO2Oは広がってもショールーミングは例外的で、家電店などで見られるバーコードをスキャンするショールーミング行為は百貨店やファッションストアでは見られないそうだ。
 日本でもショールーミングアプリを取り込んだスマホで店頭のバーコードをスキャンすると解るが、価格比較サイトに安売り店が有料で登録した流通NBしか表示されない。試しに様々なファッションブランド店でバーコードをスキャンしてみたが、まったく表示されなかった。それは著名SPAやセレクトショップも同様で、米国で見られるようなバーコードから商品サイトにリンクするアプリは未だ投入されていないようだ。
 とは言ってもユニクロやユナイテッドアローズは機能は限られるものの顧客コミュニケーション型のオムニチャネル?アプリを導入して顧客の囲い込みを図っており、館側のオムニチャネル対応は大きく遅れている。このままテナントのO2Oが広がれば館の売上機会損失は無視し難いものになり、営業の主導権も失いかねない。
 百貨店や商業施設デベはテナントのO2Oを制限するのではなく、自らもオムニチャネル戦略を構築して専用アプリで自社モールサイトと相互に送客し顧客を囲い込むべきだ。日本のファッション業界もEC売上を競う段階からオムニチャネル戦略で顧客囲い込みを競う段階に入ったのではないか。
 2013/03/28 09:05  この記事のURL  /  コメント(0)

伊勢丹本店リモデルの激震
 3月6日にリモデル開業した伊勢丹本店婦人服が好調に飛ばしている。24日段階で前比120に迫る勢いで、紳士服もそれを追う絶好調が伝えられる。高島屋新宿店も大差ない好調ぶりだから、リモデル効果より副都心線と東横線の乗り入れ効果の方が大きいとも見えるが、リモデルのインパクトが業界を震撼させた事は疑いようもない。陳列手法や販売の物理的プロセスには不安が残るものの、グローバル最先端の構成がアベノミクス景気とモード回帰に沸き立つ上昇志向顧客の期待を呼んでいるのは間違いない。
 グローバル最先端の構成が国内アパレル業界に与えたインパクトは「激震」と呼ぶほど大きかった。フロアを詳しく一巡すれば解るが、これまで百貨店を支えて来た大手アパレルのブランドが悉く隅に追いやられ、あるいはラック数本の編集に押し込まれているからだ。その一方で欧米の有力ブランドや注目クリエイターブランド、旬のトーキョーブランドは大きくフォーカスされている。当社が全ブランドの位置付けを詳細に調査した「伊勢丹本店婦人服ブランドツリー」を見れば、それは一目瞭然だ。これが伊勢丹の下した評価であり、欧米ファッションキャピタルの著名デパートとグローバル最先端を競うオリンピック水準の構成と言えよう。
 大手アパレルとしては怒り心頭だろうが、『大手アパレルのブランド・ポートフォリオは旬を過ぎたガラなブランドばかりでグローバルな評価には耐えない』という審判と受け取るべきだ。そんな状態では欧米はおろか中国やアセアンでも通用するはずがないし、国内でも頭打ちは避けられない。伊勢丹本店は業界のトレンドセッターだから、ライバルの有力百貨店も遅ればせながら追従していくのだろう。大手アパレルはブランド・ポートフォリオの全面入れ替えを急ぐべきではないか。
 2013/03/27 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

交通革新が煽るグローカル街間競争
 3月16日に東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転が始まって新宿三丁目近辺の百貨店(伊勢丹も高島屋も)が勢いづいているが、百貨店関係者によると池袋は目立った変化がなく、渋谷は客数が減ったそうだ。楽天リサーチのインターネット調査でも両線の直通運転化で「栄える街」筆頭が新宿で池袋、横浜・みなとみらいと続く一方、渋谷は「廃れる街」筆頭に挙げられている。
 渋谷は今回の直通化でスルーが便利になる一方で乗り換え経路が複雑化して「通り過ぎる街」になりかねず、駅上や駅前の再開発も十年も先の話だから、それまで延々と廃れ続ける事になるのだろうか。となれば公園通りや明治通りなど衰退が加速し、駅上駅前の再開発が完成すれば一段と寂れてしまう。元より谷底地形の渋谷は水平リンクが衰退して垂直リンクへ集中する事が確実で、駅上駅前以外の出店はリスクが大きい。
 似たような変化が先行したのが中央線沿線の街々で、立川駅周辺の商業集積が加速して八王子や吉祥寺の水平リンクが萎縮して来たが、その立川でも水平リンクは駅周辺に集中して行く。駅周辺にららぽーとやIKEAが出来たらイオンモールむさし村山など落ち込んでしまうのだろうか。
 アベノミクスによる景気回復に23日から始まった交通系カードの相互利用も加わって人の流れが加速すれば、街間やモール間の競争は一段と熾烈になっていく。地方新幹線の延伸や高速化、LCCの普及で広域都市間や近隣外国都市との競争が現実の問題となり、商業施設のマーケティングや営業政策は見直しを迫られている。商業施設にとってグローカル街間競争はウェブ対応と並ぶ重要課題なのではないか。
 2013/03/26 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

ハイテクなクリエイション?
 月末のSPACを控えてコーディネーターから上がって来た最新スタイリング報告のカラーイラストを見ていると、「キレイ&カラフル」「スリム&モード」なニュートレンドと「ナチュラル&ワーク」「レトロ&ガーリー」「クラシック&エレガンス」なオールドトレンドが見事に二極化している。それが「革新」と「安心」の今のバランスなのだろう。毎日のように報道される内外のAWコレクションシーンでも意外と「レトロ&クラシック」が主流で、尖った「ミニマル&モード」は一端に過ぎない。
 時代の先端を嗅ぎ取るはずのクリエイター達は再びクラシック帰りすると見ているのか意外に鈍感なのか、ちょっと考えてしまう。久方振りのバブルに沸き立つトーキョーのクリエイター達はさぞやハイテク素材を駆使したミニマルモードを打ち出すかと思いきや、そんな兆しも見られなかった。せめて「初音ミク」や「きゃりーぱみゅぱみゅ」に着せたくなるような未来チックなスーパーカワイイモードを見せて欲しいものだ(個人的には「アレキサンダー・ワン」をハイテクキュートにして「初音ミク」に着せたい)。
 そんな嫌みを言うのは日本のハイテク機能素材開発は欧米を大きくリードしているからだ。先日の朝日新聞で紹介されていた「ガラスより強い透明な紙」などスマホの拡張ディスプレイ(画面がほぼ3倍になる)を実現する決定的ハイテク素材だし、ペナペナ薄布型のソーラーパネルや蓄電池はアパレルのモバイル家電時代を開くと期待される。薄くて軽くて温度調節や湿度調節が可能で、色彩や柄、透け具合も好みで変えられ、もしかしてソーラー発電や通信までこなすスーパーミニマルなアパレル家電がランウェイをリードするのも時間の問題で、「ヒートテック」が博物館に収蔵される日も遠くはないのかも。
 「クリエイション」とは過去のアーカイブを再編集して今日的価値を問うのではなく、画期的な技術革新に基づく新たなマーケットの創造であって欲しい。スティーブ・ジョブズによるiPhoneやiPadのような「クリエイション」をコレクションシーンに期待するのはお門違いなのだろうか。
 2013/03/25 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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