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MTとRTを加えて5T!
 月曜の日経コラム「経営の視点」は起業家の台頭を促すのは「三つのT」で、ひとつはIT(情報技術)、二つ目はLT(ロジスティクス=物流技術)、三つ目がFT(フィナンシャル=金融技術)だと紹介していた。IT、FTにLTが加わったのはEC時代らしいが、MTひいてはRTが並ばないのは片手落ちだと思う。MTとはマーチャンダイジング技術、RTとはMTも含んだリテイリング技術で、私が生涯賭けて研究開発して来た分野である。
 MTは解り易く言えばクリエイションを増幅展開してビジネスを大きくする技術であり、企画段階から売場展開・販売段階まで一貫するものだから、MTは自動的にVT(ビジュアルマーチャンダイジング技術)を包含する。「点」のクリエイションをカラーやディティール、素材やサイズを展開して「面」の広がりに増幅し、柄や素材、ディティールやカラーを「時系列」に切り替えて売上を拡張するのがMTだから、それを棚割り設計して売場で陳列展開し、時系列にフェイスを切り替え、販売状況に応じて編集運用して行くのがVTだという事も理解されるだろう。ディスプレイの事をビジュアルマーチャンダイジングと称する業界の旧習がSPA時代になっても改まらないのは不思議と言うしかないが、QR依存の52週継ぎ接ぎMDがもたらした弊害の一つなのだろう。
 RTはMTとLTはもちろん、業態開発や出店戦略から販売プロセスまで連携する付加価値実現の技術体系で、付加価値を創造する商品開発体系と対等の両輪を為すものだが、クリエイションばかりが評価される「創経商工」のこの業界では製造現場とともに不当に軽視されて来た嫌いがある。とりわけ偏りが酷いのは業界人育成の教育分野で、服飾専門学校など99%クリエイションに偏ってRTはほとんど無視している。ファッションビジネス学科/大学院などと称するコースでもRTやLTの実務に通じた教授陣は極めて稀で、クリエイターがビジネスを教えているのが実態だ。
 どんなに付加価値を創造しても流通・販売段階で付加価値が実現されなければ非効率なビジネスになり、流通のロスとコストが乗った商品は割高になってマーケットに受け入れられない。RTの神髄は流通のロスとコストを極小化してバリューの高い商品を割安に提供する事に尽きる。RTを欠いてはクリエイションもマーケットに受け入れられないのだから、業界はもっとRTの技術革新と教育研修に注力すべきだ。
 服飾専門学校はいつまでも『いつかは企画に、いつかはプレスに』という幻想を振りまいて若者を販売員に送り込む悪習を続けるべきではない。企画やプレス以外にもマーチャンダイザーやビジュアルマーチャンダイザー、ディストリビューターやセールスマネージャーといった確実にキャリアアップしていけるRT職種がある事、それらになるための知識と実務技術を教え、幅広い選択肢を持たせて業界に送り出すべきだ。
 学生さんはともかく、業界第一線の実務家にはより高度で最新の技術体系が不可欠だ。欧米日亜有力企業の最新RTを満載する当社の公開ゼミを体験して頂ければ、第一線現場が希求するRTとは何か、肌で実感して頂けると思う。
 2013/02/14 10:26  この記事のURL  /  コメント(0)

不条理 百貨店支えているのに
 日経朝刊の名物連載「私の履歴書」に2月1日からオンワードホールディングスの馬場彰名誉顧問が登場して毎朝、楽しみに拝見しているが、8日付け第八回では『不条理 百貨店 支えているのに』と新米社員時代の苦労や憤慨をなつかしく振り返っておられたのに改めて共感させられた。そこでふと疑問に思ったのが、オンワード現役の方々は馬場彰氏の想いを受け継いでいるのか?と言う事だ。委託(現在は消化が大半だが)取引で商品開発も物流も販売も在庫リスクも皆、引き受けて百貨店を支えているのに、大手百貨店に幾度も振り回されて来たからだ。
 92年からのバブル崩壊局面では伊勢丹主導の納入掛け率切り下げ圧力に抗し切れず、心ならずもコストの低い中国へと生産地を移動する結果となり、今は同じく伊勢丹主導のバーゲン時期後ろ倒しの混乱で在庫コントロールに苦闘し、心ならずも社員に労苦を強い、顧客との距離も開いたかも知れない。馬場彰氏が新米社員の時、『不条理 百貨店 支えているのに』と悔し涙を流した上下関係は、オンワードホールディングスが巨大グローバルファッション企業となった今日も変わっていないのだろうか。
 現実には百貨店市場においてオンワードホールディングスは突出した存在であり、今日なお支店営業体制を維持する唯一の大手アパレルとして、地方百貨店にとってはオンワードの支援がなければ売場が維持出来ないほどだ。一方で、どの大手百貨店も同質化して競合に苦しみ、寡占的地位を行使出来る優位にはもはやない。律儀に頭を低くして過去の上下関係を演じる姿は商人の鏡なのかもしれないが、勘違いして殿様風を吹かす大手百貨店に業界が振り回されては弊害が生じる。
 アパレル業界の雄、オンワードが大手百貨店の不条理な要求に『NO!』と言ってくれないと、いつまでも業界は振り回されて社員が苦労し、顧客との距離も開いて競争力も損なわれて行く。馬場彰氏の『不条理 百貨店 支えているのに』という悔しい想いを今の社員にさせないためにも、ブランドビジネスとして館の営業政策に振り回されないためにも、不条理な要求に業界が振り回されて他業界との競争力を損なわないためにも、大手百貨店との対等な関係を確立すべき時だと思う。
 2013/02/13 09:05  この記事のURL  /  コメント(0)

第300回SPAC大盛況ありがとう
 先週木曜に開催したSPAC「ビッグコンベンション」は180余名のご参加を得て立錐の余地も無く熱気に溢れ、そのあと会場を移しての懇親パーティも例年にないほど盛り上がって、用意したモエシャンのマグナムもボルドーやブルゴーニュのヴィンテージワインも皆、空になってしまいました。夏のコンベンションにはもっと沢山、ご用意する事に致しましょう。お忙しい中を御登壇頂いたアーバンリサーチの竹村社長様、トリニティアーツの木村社長様、ご参加の皆様、有り難うございました。
 SPACの「ビッグコンベンション」は半期に一度、私が最新の情勢分析に基づいて国内外の出店政策、業態開発戦略、商品政策、調達政策、営業政策からウェブ&O2O戦略まで重点経営課題を80分に詰め込んで提言し、注目企業トップを招いてのパネルでは次の戦略展開と本音の経営哲学を聞く真摯なビジネスコンベンションなのです。明日の白黒左右を明確に言い切る場ですから、お祭り騒ぎの業界イベントとは登壇する方も聴講する方も真剣度が違うのではないでしょうか。
 SPACは今回で300回を迎えました。88年から25年間もよく続けられたものだと感慨深いものがあります。勘と感覚に頼って時流に迎合し流通を軽視するこの業界では異端に扱われ、何度も危機を乗り越えて今日まで辿り着きましたが、過去に予測、提言した事柄はすべて現実になり、グローバル&ハイブリッドな視野で明日を見通す精度は一段と高まっています。「ビッグコンベンション」に参加された方々にはそれを実感して頂けたと思います。
 SPACは我が業界唯一の第一線実務者が参画して最新データを共有する「フィールドデータ実証型実務研究会」であり、時空を超える視野と緻密なデータ検証に基づいて大胆な予測と白黒つけた政策提言を重ねて来ました。回を重ねる毎に最新の実務データが更新蓄積され、視野がどんどん広がって予測精度が高まっている事は嬉しい限りです。奢れる企業には不愉快な指摘や提言も、真摯に研鑽する企業には暖かいエールに聞こえるに違いありません。
 異論正論を封じ込めたい業界の暗黒面の勢力が未だ中国共産党的な統制と黙殺を続ける中、何時まで頑張れるかは予断を許しませんが、『顧客と取引先に誠実な、研鑽を厭わぬ商人』に最新の情報と技術を提供して不要な挫折を回避させ成長の機会を開くべく、真摯に努力して行きたいと思っています。志を持った企業の参画を得てSPACが業界を革新していく事を願うばかりです。


 2013/02/12 09:45  この記事のURL  /  コメント(0)

ブラック企業
 週末恒例の町内清掃をしていると煙草の吸い殻や空き箱のポイ捨てが実に多い。煙草のパッケージには『健康を害する』とは書いてあるが『路上に捨ててはいけない』とは何処にも書いてないし、JT社員がボランティアで吸い殻拾いをしているとは聞いた事もないから、きれいごとで誤摩化すブラック企業なんだと思ってしまう。NTTにしても、かつて何万円かで買わせた電話加入権を踏み倒したという過去は拭い切れず、ブラックなイメージがつきまとう。東京電力など法外な広告広報費用を費やして原発の「安全神話」を振りまいて来た反社会性は重大で、ブラックどころか「真っ黒」企業と言わざるを得ない。
 公害企業はもちろん、事業活動の結果として周囲に迷惑をまき散らす企業は‘ブラック’というレッテルを免れないが、我ら業界ではどうだろうか。「不当表示」や「偽装表示」を消費者庁に、「下請法違反」や「優越的地位の濫用」を公取委に幾度も指摘される企業はブラックと言わざるを得ないし、お取引先や顧客の迷惑も顧みず独占的地位を濫用する百貨店や駅ビルも‘ブラック’というレッテルを免れない。
 企業が寡占的地位に立つと経営者は不要に権力を行使したくなるものだが、批判は底辺に積もり続け、やがては取引先や顧客の離反によって寡占的地位を失ってしまうか、その前に内部の浄化作用によって経営者が引き摺り降ろされる事もある。公取委の摘発や識者の批判はその先駆けであり、真摯に受け止める必要があろう。
 2013/02/08 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

「定数定量」の問いかけるもの
 松屋の太田伸之氏が提唱する「定数定量」はマーチャンダイジングと言うより陳列の基本という性格が強いが、現実の商品展開や販売プロセスにおいては解決すべき課題を含んでいる。
 「定数定量」を遵守すれば確かに陳列は見易くすっきりとするが、十分な売場面積が確保されないと品揃えを陳列し切れないという問題が生じる。ましてや今回リモデル中の伊勢丹本店婦人服のように売場面積を圧縮して柱巻き陳列まで排除すれば、陳列量が極端に圧縮されて品揃えの一部しか見せられず、接客による品揃えの補完と後方ストックとの煩雑な往復が不可欠になる。すなわち、「定数定量」な陳列は「定数定量」な接客と近接した十分なストックスペースを前提としなければ成り立たないのだ。 
 ちなみに、「定数定量」な接客とは来店客数に見合った販売スタッフの配置であり、曜日別時間帯別のレイバーコントロールが適確(混雑時は閑散時の4倍以上)でないと成立しない。百貨店インショップのように小さく小間切った売場では困難だから、伊勢丹のようにブランドコーナー複合統一環境売場にしてブランドの際を超えた接客が出来る自前販売員を張り付ける動きが広がるのも当然であろう。また、「定数定量」な接客を重視するなら、バーゲン(シークレットセール)も顧客度別多段階に実施して来店客の分散を図るのが賢明ではないか。
 販売効率の格差に対応する現実的な陳列ルールは「定数定量」ではなく「定型適量」である事も付け加えておきたい。スリーブアウト陳列では「定数定量」の枠を大きくは出られないが、フォールデット陳列では「定型適量」にフェイシング点数を積み上げて補給頻度を抑制するのが定石で、どちらもMDを表現する「心太」配列あるいは「台帳」配列、高感度なスリーブアウト陳列では「色環優先ルック回転」配列に陳列の定型を保つべきだ(私の旧著「ブランディングへの解る見えるマーチャンダイジング」に詳しい)。
 「定数定量」な陳列を「定数定量」な接客と近接した十分なストックスペースで補完するというという体制は売場とストックを一体に配置設計しないと難しく、古い百貨店建築のリモデルでは限界がある。十分な売場面積と適正な後方ストック配置、物流導線と顧客導線の分離、加圧防煙システムと適正な非難導線による顧客の安全確保、などを追求すれば、阪急うめだ本店のように建て替えという選択に至らざるを得ない。今回の伊勢丹本店婦人服のリモデルは売場だけでなく後方のレイアウトも含めて検証すべきで、それが指摘したような問題を解決出来ていないなら、なぜ建て替えの決断が出来なかったのかが問われよう。
 2013/02/07 09:04  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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