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イーランド日本上陸の成算
 新聞報道に拠ると、韓国イーランドグループのSPAブランドが三月から次々と日本市場に進出する。「MIXXO」(「ZARA」をベンチマーク)と「SPAO」(「UNIQLO」というより「g.u」に近い)をアリオやそごう、三井不動産のSCなどに出店するそうだが、果たして「H&M」級の黒船騒動になるだろうか。
 イーランドグループはアパレルからレストランやホテル、百貨店やアウトレットモールまで手掛ける年商10兆ウォン(約9000億円)級のコングロマリットで、うちファッション事業は韓国、中国中心に150ブランドを一万店(韓国内はFC主体、中国は直営店)展開してグループ売上の約四割を占めている。デザイナーやパターンナー、生産管理要員など1200人もの開発スタッフを抱えて自社企画・開発の計画マーチャンダイジングと計画VMDを貫徹する欧米方式のブランドビジネスを志向しており、OEM/ODM依存の52週継ぎ接ぎマーチャンダイジングを場当たりディスプレイでお化粧する日本型SPAとは一線を画する。中価格帯の「E.Land」や「SCOFIELD」「PRICH」「ROEM」などはこのセオリーを貫徹してブランド価値を確立したが、量販大型SPAの「SPAO」と「MIXXO」はアイドルグループを使った派手なプロモーションが注目される。
 韓流ビジネスの定石通り欧米ブランドをリアルにベンチマークしてブランドを開発しており、どのブランドも何処か○○○ブランド風の既視感があるが、韓流独特の灰汁の強いウェットな味付けを指摘する人もいる。ベンチマークしたブランドより教科書的に徹底した計画MDやカラーVMDが特徴的で、イーランド系のブランドはすぐにそれと見て取れる。ブランドビジネスの教科書的実践は評価されるが、開発固定費とマーケティングコストも応分に高く、中価格帯ブランドには割高感、量販SPAには「UNIQLO」と較べて品質の格差が指摘される。
 そんなイーランド系ブランドは日本市場で受け入れられのだろうか。109市場やネット通販でグラマラスモード系韓流ブランド/デザインが受け入れられているという点はプラス材料だが、香港系ブランドの日本進出が悉く挫折したという過去はマイナス材料だ。「等身大」から背伸びモード志向に転じた今の日本市場を考えれば、やや泥臭いイーランドの中価格帯ブランドが人気を得るのは難しいし、「SPAO」も勢いに乗る「g.u」に張れるとは思えない。「ZARA」をファストに振って安くした「MIXXO」は、デザイン感度は「ZARA」と較べるべくもないが手頃感で一定の評価を得るかも知れない。
 進出が都心の大型路面店ではなくSCテナントや百貨店インショップというインパクトを欠く手法でもあり、「H&M」や「フォーエバー21」のような旋風が起きるとは到底思えない。支持を広げて行けるか否か、出店戦略とウェブやSNSを駆使したプロモーションに掛かっているのではないか。
 2013/02/21 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

千載一遇のチャンスと明暗
 日本百貨店協会の発表に拠ると1月度の全国百貨店売上は前年比0.2%増に留まった。特選雑貨を含む身の回り品が3.6%、宝飾品や美術品が6.8%も伸びたのに主力の衣料品が1.5%減と足を引っ張ったからだ。アベノミクス効果が株価に続いて特選雑貨や宝飾品、美術品に波及しだした一方、世界的なモード回帰と日本市場の脱「等身大」による画期的な買い替え需要が期待される衣料品が伸び悩んだ元凶はバーゲン時期分散にある事は疑いようもない。ここに至っても自説に固執するなら、伊勢丹やルミネはもはや業界に迷惑を振りまいて消費回復に水を差す「戦犯」と指摘されても致し方あるまい。
 本来なら在庫を積み上げて売上増を狙いたいところだが、セール分散による混乱で在庫を残す不安を拭えないアパレル業界は腰が引けていた。冬バーゲンまではともかく、本格的な売上増が期待される今春夏商戦まで弱気で対応しては千載一遇のチャンスに乗り損ねてしまう。業界には強気で在庫を積み、華のあるモードブランドなど新ブランド/業態開発を加速する事を望みたい。
 華のあるモードブランドや高額品に追い風が吹く一方、「等身大」ブランドの凋落は悲惨を極める事になろう。民主党政権下の貧乏共和社会で繁殖した「等身大」ブランドは逆風下で様々に転身を模索しているようだが、動かなくても動き過ぎても売上の低迷は避けられない。既存顧客と新規顧客、ナチュ可愛とモードのバランスをデリケートに見極める必要があるが、勘と度胸の粗っぽいマーケティングでは空振りが続いてしまう。ブランド別の売上動向を子細に検証してテイストのミキシングと面合わせ、フィットをデリケートに変化させ、顧客の反応を慎重に見極めて転身していくしかないが、果たして経営者や社内にそれだけの感性と体制はあるのだろうか。このままでは打つ手も無く凋落して行くブランドや企業が続出する事になりそうだ。
 2013/02/20 10:31  この記事のURL  /  コメント(0)

自滅的ショールーミング
 『店頭で選んだ商品のバーコードをスマホでスキャンして価格の安いネットショップで買うから店舗がショールーム化してしまう』というのがショールーミングだが、自ら売場をショールーム化して販売を阻害するのは如何なものかと思う。「自滅的ショールーミング」とも言うべき愚行が流行りそうなので、リテイルテクノロジーの専門家として警鐘を鳴らしたい。
 問題だと思うのは過度に陳列量を圧縮する店舗デザインと「定数定量」思想だ。業界の注目を集める伊勢丹本店婦人服のリモデルが全容を現しつつあるが、モダンなミニマルデザインは世界の最新傾向に即したものと評価出来る一方、柱巻き陳列を排除してゆったりと什器が並ぶ様には危惧せざるを得ない。販売効率が突出して高く狭い売場をさらに削って極限まで陳列量を抑えた売場空間はモダンに見えるが、これでは品揃えの一部しか見せられず、接客の度にサイズなどの在庫を探しに後方ストックに走らざるを得ない。
 恐らく靴売場の手法を衣料品に持ち込んだのだと思うが、売場の後ろにピッタリとストックを配置しない限りお客様を長時間お待たせし、ストックへ行って不在中は接客不能になってしまう。そこまで配慮して改装したのか、是非とも後方ストックのレイアウトを拝見したいものだ(見せてくれるかな?)。業界のトレンドセッターたる伊勢丹本店のモダンな売場を見て表面的に真似する百貨店が広がれば、売場がショールーム化して販売が阻害され、売場スタッフもお客様も迷惑する事になるから、敢えて注意を喚起しておきたい。
 もうひとつ、誤解を招きそうなのが「定数定量」思想だ。陳列量を一定に保つと確かに見易く美しく出来るが、売場スペースが十分でないと在庫を出し切れず、接客の度に色やサイズを後方ストックまで探しに行かなければならないし、繁忙時など接客出来ずにご自分で探されるお客様は商品を見つけられずお帰りになるかもしれない。週や曜日で販売効率は何倍も開くから、「定数定量」では補給も追いつかない(販売ピーク前には「定数定量」を超えて在庫を積むのが定石)。十分かつ近接したストックスペースがあり、在庫探しに売場を離れても替わりに接客出来る販売スタッフを置ける体制なら成り立つと思うが、現実の百貨店には望む方が無理というものだろう。
 柱巻き陳列を排除したモダンな売場も「定数定量」を保った整然とした売場も、それ自体は必ずしも否定しないが、実際の販売プロセスを阻害せずに実現する事はかなり難しい。百貨店の経営陣が販売実務やお客様の購買行動を熟知して、このような売場を提唱するならともかく、現場の実務から乖離した発想で提唱しているとしたら考えさせられる。
 久方ぶりの景気回復で百貨店に追い風が吹かんとする今、在庫の積み増しが不可欠で、陳列量を削るのが流行るとせっかくのチャンスに水を差しかねない。百貨店やアパレルの経営陣は現場実務と顧客の購買行動に真摯に向き合うべきではないか。
 2013/02/19 09:05  この記事のURL  /  コメント(0)

マフィアと悪代官が手を取り合って
 このところ毎朝、楽しみに愛読している日経朝刊コラム「私の履歴書」の馬場彰氏の回顧録も佳境に入り、ついに「マフィアと悪代官」論争が登場した。これは委託取引と派遣販売員を武器に売場の主導権を奪ってシェアを拡大する大手アパレルを「ミスター百貨店」と賞賛された故山中竡≠ェ『マフィアみたいなもの』と揶揄したのに対し、馬場彰氏が『それなら百貨店はあくせく働くアパレルを搾取する悪代官だ』と言い返したという業界の「伝説」だが、ご本人が『84年に大磯で開いた流通セミナーで』と開示しているのだから実話だったのだろう。
 この逸話は当時の大手アパレルと百貨店の関係をリアルに想起させるが、外資ブランドや駅ビルブランドが百貨店に跋扈するようになった今日でも両者の関係は大きくは変わっていない。変わったのは経営環境と経営者の器なのだろう。
 80年代の大手アパレルと百貨店は過剰消費の勢いに乗って同床異夢な繁栄を謳歌していたが、「マフィアと悪代官」論争のように本音をストレートにぶつけ合えるだけの度量が経営者にあった。それが90年代に入ってバブルが崩壊すると百貨店は自らの利益を確保すべく大手アパレルに納入掛け率の切り下げを迫り、以降は限られた利益を凌ぎ合うギクシャクとした関係に移行して行った感がある。百貨店が流通の王座を謳歌していた80年代と郊外SCや駅ビル、SPAやECに追われて斜陽の坂を下る今日とでは両者の経営のゆとりも格段に違うから同列に較べるのは酷だと思うが、「マフィアと悪代官」が手に手を取ってマーケットに応えていた当時のパートナーシップが損なわれた事が今日の百貨店業界の苦境を招いたとも見える。
 百貨店流通をこれ以上、衰退させない為には大手アパレルと百貨店が「マフィアと悪代官」論争のように正面から本音をぶつけ合って論争し、あるべき方向を見極めて行く必要がある。一部に根強い上下意識を捨てて対等のパートナーと認め合い、度量を持って異論を聞く関係を築くべきだ。納入掛け率問題にせよ、バーゲン時期問題にせよ、改装過程の売場移動問題にせよ、上下の意識無くパートナーを思いやる度量があってこその共存共栄ではなかろうか。
 2013/02/18 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)

激変するメンズファッション
 昨年末に13AWのゼネラルディレクションを終えてクライアント向けの個別ディレクション製作も一巡しようとしているが、メンズの変貌振りはレディス以上だ。クライアント向け個別ディレクションを製作するのにファッション誌やコレクションのネット画像をチェックしていると、洗い加工物やダメージ加工物はおろかナチュラルなカントリーアイテムまでデッドストックに見えて来て、時代の一変を痛感させられる。ピッティなど未だクラシック感覚を引き摺っているようだが、一部の先鋭的なデザイナーはミニマルモードに突っ走っている。
 コレクションシーンはともかく、現実のマーケットがどう動くかだが、13SSはキレイ目ナチュラルなゆる細フィットに動くもののワンウォッシュは根強く残りそうだが、13AWになるとノンウォッシュのゆる細フィットが主流になり、アウターは薄くて軽い合繊系機能素材やニット/ジャージが圧倒して重くてごついカントリーツイードなどは過去の遺物になってしまいそう。そんな中、合繊系ミニマルアウターやジャージ/ニットジャケットのインとして拡大しそうなのがニットPOで、ネップ感のあるミドルゲージのゆるタートルやハイゲージのタートルが最有望と思われる。
 そんな13AWでは品質感のあるモードなビジカジが伸びる一方、加工感やラフな崩しを訴求するカジュアルは壊滅的な売上減少に直面するだろう。ようやく底を打ったかに見えたジーンズカジュアルは再び底割れ、カントリーやブリティッシュを深追いするセレクトも苦戦を免れないだろう。
 13AW、日本のメンズファッションは激変する。上げ潮に乗るブランドやストアの一方で売上の急落に蒼くなるブランドやストアも頻出するだろうが、日本の男が「等身大」を脱して格段に格好良くなるのだから歓迎すべき変化と言うべきだ。
 2013/02/15 15:05  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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