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ブランドは館から独立せよ
 伊勢丹とルミネが強行するセール時期後倒しの混乱は消費回復に水を差し、アパレル業界を在庫処分で苦しめる結果となったが、両者は未だ持論を撤回する様子はないし、業界紙も両者に肩入れする「大本営発表」的偏向報道に終始して問題を長引かせている。早期の解決が難しい以上、アパレル事業者は館(百貨店や商業施設)の営業政策に囚われない独自路線を確立するしかない。
 本来、セール時期はもちろん、セールをするかしないかもブランドの営業政策に帰するもので、館に振り回されてはシーズン在庫展開を阻害されるばかりか、ブランド価値を損ないかねない。ラグジュアリーブランドやブリッジブランドの一部は店頭での期末セールを行わず、先行するシークレットセールやファミリーセールで顧客に応え、最終処分はアウトレットに限っているし、アウトレット処分さえ行わないブランドもある(税務署立ち会いで焼却処分する)。
 駅ビル/ファッションビルでも、ODM依存の低価格ブランドは値崩れが早く、先行してセールを始めざるを得ないが、自社開発型のキャラクターブランドは期末までプロパーを引っ張れる。OEMブランドは価格的にも両者の中間に位置するが、セール時期も中間になる。それゆえ、期末セール時期をこの三タイプで分け、パート1、パート2、パート3とする館もある。
 セール時期を含めて営業政策は本来、販売実務も在庫リスクも担うブランド側の専管事項のはずで、どちらも担わない館が強制する事は出来ない。店子たるブランド側は館の営業政策に協力出来る事はすべきだが、買取契約でない以上、ブランド価値に関わる営業政策を左右されてはならない。寡占的地位を嵩に着て不合理な要求を強いる館には勇気を持ってNO!と言うべきで、問題が長引くようなら公正取引委員会の判断を仰ぐ事態となろう。
 結論をはっきりさせよう。セール時期混乱を契機に、アパレル事業者は「ブランド価値」という原点に立ち返り、館の営業政策に左右されないシーズン展開と期末処理方法を確立し、顧客との信頼関係を自らの手で守る事を決意すべきだ。また、館側もブランドの営業政策を尊重するとともにセール時の来店客分散を図るべく、複数段階に分けての期末セール実施を検討して欲しい。
 2013/02/28 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

商圏特性のい・ろ・は
 昨日のブログで「新興サバブ」「成熟サバブ」とか「アーバン」と書いたら、意味が解らなかった方も多かったようなので、商圏特性の基本を解説しておきたい。
 郊外住宅地の開発初期は原野を切り開いて画一的な一戸建てや公営住宅が並ぶ「新興サバブ」で、幼い子供がいる核家族ニューファミリーが主体となるが、開発から20年以上が過ぎれば初期入居世代は高齢化して子供達も独立し、やがて相続もからんでアパートやマンションに建て替わっていく。そんな段階が「成熟サバブ」で、若年世代は親と同居する定着二世とアパートに住む流動的な若者に二極化していく。さらに成熟が進めばマンションが立ち並ぶ「再開発期アーバン」に移行し、新たに入居した流動的なニューファミリー/ニューカップルや単身の若者が急増し、古くから定着している老齢層は次第に少数派になっていく。
 開発初期ほど核家族比率も定着性も高いが、成熟とともに子供が巣立った老齢カップルやアパート暮らしの若者が増えていき、マンションが林立する再開発期になれば新たな若年カップルやニューファミリーが流入して流動性が強まって行く。一般に住宅地が成熟するにつれて所得水準も消費余力も上昇するが、再開発期になって流動性の若年世代が増えて行くと、所得水準も消費余力も再び低下する。
 単価の高い百貨店が成立するには、定着三世代ファミリーが主力となる「成熟サバブ」が後背商圏に広がる必要がある。住宅ローンを背負って消費余力に乏しい「新興サバブ」ではもちろん成り立たないし、「再開発期アーバン」でも高級住宅地が成熟して高級分譲マンションが立ち並ぶケースを除いて成立が難しい。工場と住宅が混在するような地域では、「再開発期アーバン」となってもアパートや賃貸コーポが犇めいて所得水準が低位に留まり、百貨店の後背商圏とはなり得ない。
 このような商圏の特性は当社が使っているような高価な商圏分析ソフトを使わなくても都市計画図の用途指定を一覧すれば解るし、googleやyahooのマップや航空写真を見れば誰でも想像がつく。商業施設の開発やリモデルの基本となるもので、単純な円形商圏ではなく電車や車のアクセス環境や地形から子細に検証すべきだが、現実にはびっくりするほど大雑把な検証で済まされる事もあり、デベにもテナントにも悲惨な結果を招くケースが後を絶たない。商業施設開発にあたる方々の職業的誠意と技術的研鑽を祈るしかないのだろう。
 2013/02/27 09:22  この記事のURL  /  コメント(0)

成熟するSCとミスマッチ
 長らくSC関連の仕事をしていると、時間を経て同じSC絡みの仕事が廻って来る事がある。開業前の開発企画やテナントミックス、売上予測に始まって、定期借家契約満了にともなうリモデル企画、受益権や土地建物の買収に関わる営業ポテンシャル評価、果ては建て替えに伴う再開発企画まで、幾度も関わるSCがあるが、ご縁があると言うのだろう。そんなSCに共通しているのが地域のコミュニティや消費文化の中核となっている「名門SC」という性格だ。
 SCには時代の栄枯盛衰がつきものだが、そんな「名門SC」には周囲に新たな大型SCが出来ても離れない顧客層があって売上を下支えしている。問題はその顧客層の高齢化のようで、シニア化する顧客層に替わる子世代(と言っても40〜50代)や孫世代(と言っても20代)の取り込みがなかなか進まない。そのひとつの理由が定着二世三世が求めるライフスタイルと品質感を満たすテナント(特にアパレルと飲食)が限られる事だ。
 開発期サバブに位置する新参SCならともかく、開発から久しく世代交代が進みマンションやアパートが建ってアーバン化し始めた成熟サバブの「名門SC」に求められるライフスタイルと品質感は百貨店水準のようで、百貨店の郊外SC進出が頓挫した今となっては専門店が満たす他はない。にもかかわらず、そんな専門店は一握りしか存在しないのだ。
 少子高齢化が進んで郊外圏が萎縮し、かつてのニュータウンが高齢過疎化する今日、もはや新興サバブなど幻想でしかない。なのに大手デベもテナントチェーンも未だその幻想を追っているのは尋常ならざるミスマッチではないか。大半のSCが開発から10年20年を経て商圏の成熟化が進んだ今日、業界は新興サバブとニューファミリーの幻想を脱して成熟市場向け業態の開発を急ぐべきだ。
 2013/02/26 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

プチ氷河期でモードの歳時記はどう変わる?
 陽射しはようやく春の気配が感じられるものの、今年最大の寒波が来るとかで厳しい寒さが続いている。昨年に続いて冬は寒さが厳しく夏は暑く春秋が短くなったと感じる人が多いようで、巷でもウェブでも「プチ氷河期」の到来が囁かれている。
 「プチ氷河期」は17〜18世紀にもあったようで、NY湾が凍結したりテムズ河でスケートが出来たり、飢饉になってグリーンランドの人口が半減したりアイルランドから大量の移民が流出したり、日本でも飢饉による一揆が頻発したり、なるほどと思う記録が並ぶ。太陽活動の盛衰サイクルや北太平洋の海流循環の逆転などが要因と言われており、これから10〜20年は「プチ氷河期」が続くそうだ。20世紀以降の人間活動によって温暖化が進んだという仮説は宇宙レヴェルの変動の前では「不都合な真実」と化したのかも知れない。
 それはともあれ、「プチ氷河期」が続くとなればモードの歳時記も一変してしまう。「プチ氷河期」は単純に寒くなるのではなく夏は逆に暑くなり、狭間の春秋が短くなってしまうのだ。となれば、情緒細やかな日本の四季は崩れ、冬も夏も厳しく春秋が短いNYやPARIS、LONDONのようなシーズン展開になってしまうのだろうか。
 欧米市場では春秋の狭間が短く、秋立ち上げに遅れる事なく防寒アウターが出揃い、春の立ち上げからリゾート商品が並ぶ。旅行需要もあるとは言え春秋が短い事が大きく、欧米アパレル業界のシーズン展開は「AW+プレフォール」と「SS+クルーズ」のビッグ2+ミニ2が主流となっている。対して日本では80年代までは初秋/秋/冬/梅春、春/初夏/盛夏/晩夏の8期展開が主流だったが、バブル崩壊以降の衣料消費の衰退と生産の海外移転による素材流通市場の萎縮、カジュアル化とレイヤード化による季節感の希薄化、QRによる売れ筋の深追い、などが重なって秋や梅春、晩夏などが細り、欧米型?に近づいて来たという経緯が指摘される。
 そこに「プチ氷河期」が加わるのだから、ますます端境シーズンは細り、AW期は秋が飛んで初秋+冬になりかねず、QRの冬物ばかりでは12月に入れば値崩れしてしまう。SS期はアジア亜熱帯的な特性もあって春/初夏/盛夏のシーズン区分は崩れないと思うが、値崩れや残品リスクを恐れて前倒し投入が年々加速し、夏物が三月中、晩夏物がGW前に立ち上がる状況では、6月に入ればプロパー販売は難しくなる。売場の鮮度を保ってプロパー販売期間を伸ばすにはAWは梅春期、SSは晩夏期を大きく仕掛けるべきであろう。
 「プチ氷河期」に伴うウェアリング変化は極めて欧米的で、防寒アウターの下でサーフアイテムやリゾートアイテムを前倒しで楽しむという日本的クルーズ傾向は既に昨春から散見され、今年は一段と広がりを見せている。ゆえにSS期は初夏物、夏物の前倒し投入は止め難く、GWに夏物の山を越え、GW明けから晩夏物を大規模に投入して7月まで引っ張るしかない。夏バーゲン明けにはトレンド鮮度の高い初秋物を立ち上げて残暑が残る9月に山を設け、体育の日を過ぎたら冬物に切り替えるが11月末のQR投入は抑制し、11月半ばには梅春物を打ち出して売場の色彩を春に切り替えて値崩れを避ける、というのが賢明なシナリオと思われる。
 2013/02/25 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

キラリと光ってました
 月例の「販売データ交換会」を控えて渋谷の店頭を一周した折、ヒカリエShinQs4Fにある「GATHERS IN THE PARK」の陳列が目を惹いた。今春トレンドの透明感あるイエロー〜グリーン系とピンク〜オレンジ系に左右仕分けてルック回転配列しただけだが、未だナチュラルカラーが大半を占める周囲のショップの中ではキラリと光っていた。シンプルなカラー仕分けなのに魅力的に見えたのは、配色を二系統に絞っていた事に加え、オーガンジーからサマーツィードまで上質素材のコントラストが効いていた事が要因だと思う。
 VMDって結局は商品企画の陳列表現であり、企画段階のルック提案や素材構成、配色構成でVMDの魅力も決まってしまう。商品企画とりわけMD構成企画段階で陳列を構想するのが本来のVMDなのに、この業界では何時の間にか継ぎ接ぎのMDを化粧するディスプレイにすり替えられてしまった感がある。そんな退化した売場ばかりの中、一部の外資系ブリッジ〜ラグジュアリーブランドだけでしか本来のVMDが見られなくなって久しいが、この「MOLDAVITA」(セレクトを加えたショップ名が「GATHERS IN THE PARK」)という三陽商会のブランドにはそれが活きている。
三陽商会というと最近は2015年問題や早期退職募集といった暗い話題が目立つが、自社開発体制で高品質な商品を提供する本来のブランドビジネスの姿を保っている数少ない大手企業として再評価されるべきであろう。幾つもブランドが廃止される中、この「MOLDAVITA」は渋谷ShinQsと梅田EST、梅田阪急に加えて3月6日には西宮阪急にもお店が出来るようで、頑張って欲しいと思う。
 2013/02/22 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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