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勢いを失う「ルミネ」
 定期借家契約時代をリードして一世を風靡した「ルミネ」だが、鳴り物入りで開業した有楽町店が予想外に苦戦して初年度売上が二桁予算未達に終わり、「ルミネ型」を踏襲した地方大都市の駅ビルも必ずしも順調ではない事が業界に漏れ伝わるに至っては、「ルミネ型」が「時代の勝ちモデル」とは言えなくなって来た。その要因は以下の5点だと私は考える。
1)定期借家契約の一般化
 00年の導入初期はパルコのように財務的な負担やテナントの抵抗で普通借家契約からの切り替えが進まない館が大半だったが、新設施設では定期借家契約が定着し、セレクト系やカジュアルチェーンなど定期借家契約時代になって多店化した新世代がテナントの主流となるに及んで、駅ビル/ファッションビルでは3年4年の定期借家契約によるテナント入れ替えが一般化し、ルミネのアドバンテージが崩れて来た。
2)百貨店のハイブリッド化
 駅ビルが浸食して来た百貨店でもJ.フロントリテイリングを筆頭に駅ビル並み歩率?で駅ビル系テナントを導入するハイブリッド戦略が広がり、ターミナル立地におけるルミネの独占性が薄れて来た。
3)ウェブへの顧客流出
 近年、衣料・服飾のネット通販が急拡大してスマホ世代に定着する中、ルミネは対策が後手に回ってO2Oの仕掛けも作れず、テナントの大半が重複するZOZOTOWNやテナントの自社サイトなどに顧客が流れた。 
4)グローバル化の遅れ
 国内業界の新ブランド/業態開発が短期化するテナント入れ替えサイクルに追いつかず、「等身大」に偏って魅力的なテナントが不足する中、外資系ブランド/SPAへの依存が年々高まっているが、ルミネはその流れをリード出来ず後手に回り、109同様に顧客を奪われつつある。
5)「等身大感覚」がオフトレンドに
 ルミネの成長期は若者が「等身大」な消費に閉じこもりファッションがガラパゴス化した時代だったが、世界的なモード回帰とアベノミックス景気による脱ガラパゴス脱等身大が急進する今年以降、ルミネの「等身大感覚」は一気にオフトレンド化していく。時代の一変に対応すべく、テナントミックスと館環境を全面刷新しない限り、109のような没落が危ぶまれる。
 2013/01/31 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

伊勢丹とルミネの新旧明暗
 月例の『販売データ交換会』を控えて春物立ち上げのスタイリング動向を確認すべく新宿渋谷の主要商業施設を一巡したが、バーゲン後倒しの影響か1月末になってもバーゲンを引き摺る売場が大半で、春物立ち上げは例年になく遅れていた。一番酷かったのはODM商品が大半を占める渋谷109とルミネエストで、ウインドウさえ冬物のまま春物はワンラックツーラック程度の打ち出しに留まる店が多く、何処もシトラスカラーのニットと花柄のスリムクロプトパンツばかりで、まとめてH&Mに飲み込まれそうな危うさだった。
 そんな中、最新のモードスタイルに刷新された伊勢丹本館(まだ一部工事中)を見てからルミネに回ると、なんだか一昔前のローカルなファッションビルに見えてしまう。リモデルから間もないエストのB1やルミネ2の2Fはともかく、ルミネエストやルミネ2の上層階、ルミネ1は酷く古くさく見えてしまうのだ。
 なんでそう感じるかと言うと、低い天井のそこかしこに無粋な防煙垂れ壁が下がるモールは生暖かい旧式照明のままで、ナチュラルなウッド系内装の店舗が多い事もあって等身大なナチュラル感が色濃いからだ。00年代はそれが時代の気分だったのかも知れないが、アベノミックス景気が目前に迫り脱ガラパゴス脱等身大なモードシフトが急進する今の時代感は正反対を向いている。
 既に前回のリモデルで「加圧防排煙システム」を導入した伊勢丹本館は昇降導線区画を除いて防煙垂れ壁は皆無で、今回リモデルされた婦人服フロアはLED照明の多用(完全ではない)や柱巻き陳列の全面排除など斬新な試みも多く、世界でも最先端のモードスタイルに仕上がっている。そんな伊勢丹と較べると、どうしてもルミネは一昔前の「ファッションビル」に見えてしまうのだ。それは店舗環境に限らず、テナントミックスも同様だ。
 あまりにも00年代の「等身大」な時流に密着したルミネはこれからの時流とは大きく乖離して行くリスクを否めない。ルミネ有楽町店の予想外(私に取っては予想通りだが)の大苦戦、ルミネを踏襲した地方大都市駅ビルの伸び悩みなどを見るにつけ、業界はポスト・ルミネを模索すべき時が来たと思われる。

 2013/01/30 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

振り上げた拳を降ろす
 スタートトゥデイは昨年11月に10ポイントに引き上げた「ゾゾタウン」のポイント還元率を2月1日から1ポイントに戻し、無料配送は継続するそうだ。出店するアパレル各社の猛反発に折れ(期待した伸びが得られずコスト負担に耐えなくなったのが実情だろうが)『振り上げた拳を降ろす』結末となったが、昨年11月2日当ブログ掲載の「スタートトゥデイ社への提言」が部分的にせよ実を結ぶ結果となったのは喜ばしい。
 その一方、バーゲン時期論争では三越伊勢丹もルミネも未だ『振り上げた拳を降ろす』様子がないばかりか、「意見広告」や提灯記事を展開して勇ましい発言を繰り返している。業界紙が露骨な偏向報道に終始する中、さすがに日経は『孤立する三越伊勢丹』『三越伊勢丹の孤独』、日経MJは『進む分散、細る客足』と実情を公正に論評してジャーナリストの矜持を保っているのは立派だ。業界紙がジャーナリストの責務を放棄して業界のボス達の顔色を伺う偏向報道を続けるなら、ネット・リベラリズムが中国共産党さえ脅かす今日、遠からず存在意義を失うに違いない。
 バーゲン時期後倒しの混乱が消費者の買い気を削いで消費回復に水を差し、アパレル業界を在庫コントロールで四苦八苦させて「セール日常化」状態を招き、かえって「正価」への信頼を損なった事は明らかで、百貨店業界はサプライチェーン総体で競争力を低下させ、競合する商業施設やネット通販への流出を加速させるという最悪の結果を招いた。百貨店業界と大手アパレル業界は手遅れになる前にこの混乱を収拾し、業界一丸となって顧客の期待に応え、アベノミックスがもたらすプチ・バブル消費の上げ潮に乗らなければならない。三越伊勢丹とルミネは自らが招いた結末を真摯に直視し、面子を捨てて『振り上げた拳を降ろす』英断を下して欲しい。
 2013/01/29 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

陳列も接客も「定数定量」
 19日の伊勢丹出撃は混雑に負けて買い気を失い這々の体で脱出する羽目になったので、一週置いた26日、意を決して再出撃を試みた。何時も家で着ているセーターには穴が空き、一昔前のモコモコなダウンジャケットはジッパーが壊れるに及び、ルン妻にきつく購入を促されて追い出されるように朝一で新宿に向かった。
 開店直前に本館パーキングに滑り込みメンズ館に直行すると、先週末とは打って変わって館内は閑散としており、品出し陳列に勤しむ店員さんばかりが目立つほど。何より先週末と違っていたのは売場の在庫量で、大量に詰め込んだ陳列はとてもじゃないが選び難く買い気を萎えさせたが、セールの熱気が一巡した今週末は売り減らしが進んだのか、どの売場も「定数定量」に準じたすっきりした陳列に替わり、見やすく買い易く一変していた。
 それより買い気を進めてくれたのは接客の「定数定量」であった。セール二週目の朝という事もあって客数が疎らなため店員さんの対応もスムースで、大混雑で難渋した先週とは一変して丁寧に対応してくれた。『こんな商品のこの色このサイズ』とお願いすると、『何処にこんな商品があったのか』と思うほど目星しい品が次々と出て来るから魔法のようで、パーキングが終日無料になるほど大量購入してしまった。
 自前の店員さんはフロアの在庫状況に精通しているのはもちろん全館の品揃えも大枠は掴んでおり、最新のモードトレンドにも敏感でキーワードをすぐ理解し、周囲の派遣さんとの連携も絶妙で、『さすが天下の伊勢丹』と現場の力量を再認識させられた。天下に誇るべき現場の精鋭を活かすも殺すも経営者次第で、接客の「定数定量」が如何に大切か再認識すると同時に、過小な売場で過大な売上を強いるこの百貨店の根本的な問題点が浮かび上がる。
 販売効率が高すぎるゆえにブランドは過小な売場に圧し籠められ、「定数定量」な陳列では並べ切れない在庫がストック室に溢れ、売場スタッフは在庫を探してストック室と売場を煩雑に往復せざるを得ず、顧客は売場を見ただけでは品揃えの全体が見えず、「定数定量」な接客で初めて適切に選択し購買する事が可能になる。こんな実情がどれだけ販売を阻害し、お客様に見てもらえない商品が販売機会を逸するか、果たして、この百貨店の経営陣は身体で理解しているのだろうか・・・・・
 思い返せば、今回の改装計画が発表された時、私は昨年1月27日付『伊勢丹本店の自殺行為』、同30日付『伊勢丹新宿本店再生策』と本ブログでこの問題を指摘したが、果たして今回の改装では改善されたのだろうか。5館一体となっての物流導線の抜本改善と売場面積の大幅拡大という最重要課題を解決して次世代に渡すとなれば、阪急うめだ本店のように全面建て替えを決断すべきではなかったか。最高経営責任者として命を賭けるべきはバーゲン時期問題などではなく、もっと長期的根本的な所に在ると思う。
 2013/01/28 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

デザインはアーカイブを超えられるか
 20代から乗り継いで来た某独逸車は現車で多分、10台目だと思うが、当たり前だが最新型が最良と言わざるを得ない。70年代〜90年代設計のモデルは正直、‘中古’でしかないのだ。何故そんな事を言うのかというと、性能や安全性、経済性はともかく、意匠的官能的には60年代の‘縦目’以上のモデルが出て来ないからだ。
 ‘縦目’と言えば吉田茂宰相が愛用したW111の300SEロングが著名だが、貴族趣味から言えばSEクーペに優るものはあるまい。今でもレストアして優雅に乗っておられる方を時折、見かけるが、つい勝手に尊敬してしまう。私も20代には一時220SEクーペに乗っていたが、高い着座位置から大径の白ハンドルを握ると貴族になったかと錯覚したものだ。独身時代最後を飾ってくれたのはW114の250CEクーペだったが、グラマラスに過ぎる最新のCLSシューティングブレイクなんかより遥かに貴族的でスタイリッシュだった。
 それに較べれば今の車は個性や官能に乏しく、最新の独逸車も似たり寄ったりで面白くない。‘デザイン革新’を謳った新型クラウンなど、アウディ紛いに大口なだけでプロポーションは悲しくなるほど凡庸だ。せめてジャガーXFくらいエッジの効いた官能的なプロポーションを見せて欲しかった。車も家電も建築もデザインは技術革新を背景に官能とミニマリズムの表現主義的収斂に向かっているのに、トヨタのデザイン感覚はあまりにも時代ずれしている。
 車も建築も73年までに意匠が出尽くし、以降はアールデコからインターナショナルモダン(ミニマリズム)までのボックス圏を行ったり来たりしてアーカイブを再編集しているに過ぎない。未来的な表現主義建築も原点は1930年代にあり、ボックス圏を出たクリエイションとは言い切れない。それに較べればモードは80年代のアバンギャルドと90年代初期のミニマリズムというクリエイションがあっただけましだが、以降は同様なボックス圏のアーカイブ再編集に留まっている。
 デジタルな技術革新がボックス圏を超える進化を見せているのは音楽やITツールの分野であろう。ボーカロイドが可能にした超音域発声や高速ビートリズムがリアルのアーチストにまで波及し、LSIや蓄電池の高密度コンパクト化はエッジーなミニマルデザインを加速させている(もはやiPhoneやiPadのデザインは厚くて重くて無骨に過ぎる!)。それに較べればファッションデザイン分野は相も変わらずアーカイブの再編集コピーゲームばかりで、著しく革新性を欠く。はっきり言ってコレクションシーンは退屈で、時間を割く気にはなれない。‘クリエイション’とは技術革新に花咲く新たな意匠創造であり、アーカイブの再編集コピーゲームではない、と思うのだが・・・・
 2013/01/25 09:22  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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