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混乱の早期収拾を願う
 秋期(8〜10月)の衣料品売上実績がまとまったが、レディスブランドは95.2、全国百貨店婦人服は98.4と、バーゲン時期分散で混乱した夏期の低迷を引き摺った。ゾーン別に見ると、駅ビル/ファッションビル系のヤング〜OLの落ち込みが激しい一方、百貨店のミセスやプレタは落ち込みが軽微で、ラグジュアリープレタだけが勢いを増している。総じて固定客比率が高く店頭バーゲンを行わない(個々に時期設定するシークレットセール主体)高価格ブランドの堅調が目立ったから、バーゲン時期分散の後遺症は流動客比率(同時に継ぎ接ぎMD比率でもある)の高い若向けブランドに大きかったと推察される。
 12月に入って16日までの都内百貨店売上は全館/婦人服/紳士服とも前年を3〜5ポイント下回っており、全国ベースも大差ないようだ。店頭は既にバーゲン待ちに入っており、夏バーゲン分散の混乱以来、前年を超えたのは寒気が到来した11月だけとなりそうで、百貨店売上高の16年振りの底打ちも怪しくなって来た。
 12月中旬でバーゲン待ち状態なのだから、年が明けてプロパー販売期間があると考えるのは著しく消費者感覚と乖離している。年明け早々からバーゲン入りするのが消費者感覚であり、17日や18日から始まる百貨店や駅ビルのバーゲンを財布を閉じて待ってくれる消費者が多数居るとは到底思えない。春物立ち上げが直後に迫る中、わざわざ在庫を積んで待つアパレル業者が多数派とも思えない。消費者感覚も在庫運用の現実も無視した暴挙の結末は業界にダメージをもたらすばかりか、罪もないアパレル事業者まで巻き込んで在庫処分の悪戦苦闘を強いる事になる。
 夏バーゲンの混乱で大きな損失を被った大手アパレルのトップは『バーゲン時期は法律で決めてほしい』と苦言していたが、シーズン在庫の将棋倒しに苦しんだアパレル業界の本音であろう。現場と顧客に背く暴挙に「錦の御旗」があるはずもなく、今回の冬バーゲンをもって混乱が収拾される事を願いたい。
 2012/12/19 09:22  この記事のURL  /  コメント(0)

「神話」とはとかく怪しいもの
 原発の安全神話が「神話」でしかなかったように、日銀の金融緩和による景気刺激効果ももはや「神話」でしかないのだろうが(榊原英資氏の「日本経済(円)の真実」は必読)、我ら業界にも怪しげな「神話」は尽きない。
 そもそも「神話」とは時代の為政者や権力者が自らの都合の良い歴史を捏造したものであり、「記紀」など粉飾と暗喩に脚色された文学書でしかない。戦前はもちろん今、目の前で起きている政変劇さえ真実は解らないのだから、ジャーナリズムのなかった古代の歴史など「神話」の域を出ない。韓国や中国で教えられている歴史は政治的な「神話」に過ぎないし、私たちが学校で習った歴史も相当にいかがわしい物だ。そもそも歴史とは「神話」の捏造を解き明かす推理でしかないと割り切れば、小林恵子氏のような壮大な半島と列島の古代史も見えて来るのだろう(当たらずとも遠からぬ真実かも)。
 我ら業界の「神話」は消費者に受け入れられて来た「ブランド神話」、業界人に定着した「企業神話」、そして企業内だけで信奉される「思い込み神話」の三つだと思うが、グローバル化とハイブリッド化が急進する今日のマーケットでは「神話」の崩壊は思いのほか速い。ガラな等身大ブランドの神話があっけなく崩れ、企業神話の神通力も怪しくなる中、「思い込み神話」に囚われて現実が見えなくなっている経営者も少なくないと思われる。
 どうせ「神話」は捏造するものだから、現実の変化を直視してグローバル&ハイブリッドな手法で「新世代神話」の捏造に注力するしかないが、「企業神話」は地道な実績と信頼の積み上げによってしか成り立たない。こんな時代だからこそ、『顧客や取引先を裏切らない誠実な商人』という「企業神話」が希求されているのではないか。
 2012/12/18 10:00  この記事のURL  /  コメント(0)

偉くなっては・・・・・
 年の瀬が迫った金曜日の午後、某大手商社が主催する某ライセンスブランドの取引先総会で講演して来た。私のような堅物には珍しくタレントキャスティング会社経由の講演依頼で、場所も東海地方の某ゴルフ場クラブハウスというから怪しい話かもと訝ったが、私も若い頃に着た事がある70年代の著名ブランドで、某大手商社とも縁がないわけではなかったからお受けする事にした。
 総会後の短い講演をゴルフ気分も吹っ飛ぶズシンと来る提案で締めくくって会場を後にしたが、新幹線の駅までの車中、キャスティングオフィスの若者との会話が面白かった。
 青年がぼやいたのは、『顧客世代に人気上昇中の新手タレントを提案しても経営陣が理解出来ず、彼等の世代が親しんだ古株タレントを要望される』という話で、そう言えば大手アパレルの広告に出て来るタレントさんは周回遅れっぽい感じがするな、などと思う一方、初音ミクもニコニコ動画も皆、息子に教えられた事を思い出した。彼がいつも言うには『TVも新聞も信用出来ない。ネットは真偽混交だけどまだ信用出来る情報がある』そうだが、業界紙や経済紙のあまりに作為的な紙面を見ていると賛同せざるを得ない。これで娘もいれば(好きなだけ服を買ってやる!)万全なのだろうが、残念ながら我が家のお嬢様は口の効けないウェスティちゃんなので、ルン妻のおしゃべりに聞き耳を立てるしかない。
 『老いては子に従え』と言うが、業界には『偉くなっては現場と顧客に従え』と言いたいものだ。
 2012/12/17 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

MDとVMDの退化に警鐘
 VMDとは、計画された面と時系列の展開にほどほどの期中企画を加えて元番地と出前の配置を組み、VP誘導で個々のコーナーやラックに、階梯誘導でラック内の個々の商品に顧客の購買プロセスを誘い、販売消化動向やスタイリング動向に対応して週単位に再編集してルック提案と出前を組み替え、プライシング訴求と店間移動も加えて消化を促進して行く営業実務を基本に、提案するコーディネイトのテイストミックスやフィット、陳列のフォルムや色配列、店舗環境と照明演出でブランディングを訴求するものだと考えるが、果たして業界の認識と一致しているだろうか。
 面と時系列の設計を欠いたり期中企画の比率が高まり過ぎると売場が継ぎ接ぎになってVMDのシナリオが組めず、単品集積と出来合いのルック訴求をディスプレイで化粧するしかなくなるが、これでは販売訴求もブランディングも期待出来ない。面と時系列のMD展開をきちんと組まないまま際限なく期中企画を投入して52週運用する継ぎ接ぎMDが業界の主流となり、VMDもそれを前提とした現場のやっつけ仕事やお化粧ディスプレイに堕落した業界の現状はグローバルなブランドビジネスの常識と大きく乖離しており、悲しむべき文明の退化と言わざるを得ない。そんなガラパゴス体質のまま、昇り行くアジア市場で成功出来ると考える風潮は理解に苦しむ。
 退化の潮流に飲み込まれ、あるいはガラパゴス的隘路に陥り、村の論理に終始してグローバルな戦いから脱落して行くファッション業界の姿は家電業界とも重なって見える。VMDの進化には面と時系列のMD設計が不可欠であり、MDやバイヤーの意識改革と技術的研鑽が急がれるが、何より経営者の意識改革が先なのではないか。
 2012/12/14 10:30  この記事のURL  /  コメント(0)

ポピュリズムの結末
 年末の衆院選が迫る中、政治家が泥縄に烏合集散し受けの良い空手形をばらまく有様は、国民を舐めているとしか思えない。どうせ当選すればマニュフェストなるものは空手形にされるのは見え見えだから、誰も信用出来ないというのが国民の実感だろう。議席欲しさの空手形に騙され国政がポピュリズムに流れた結果は見ての通りだから、票欲しさに主張を二転三転せず烏合集散しないプリンシプルが一貫した人物を選びたいものだ。
 振り返ってみても、明治期の自由民権運動が大正期の利権政党政治に堕落した果てに、軍部主導の侵略戦争拡大に大衆が熱狂した戦前昭和のポピュリズムの結末は悲惨なものとなった。政党政治が行き詰まって軍部が台頭した昭和七年以降、束の間のデモクラシーは霧散し国家主義翼賛のポピュリズムの熱狂に日本は流されて行ったのだ。国内経済が疲弊し頼みの輸出産業も壁に当たり政党政治への不信感が頂点に達した今の日本は、戦前昭和のようなポピュリズムに流れる危険性が指摘される。
 ワイマール政権下のドイツがナチス支配に流れたのは、天文学的インフレと失業で経済が行き詰まる中、選挙に拠る民主的な手続きで32年に第一党となった国家社会主義ドイツ労働党(NSDAP、ナチスは蔑称)が34年までのわずか二年間に大統領権を乗っ取って次々と法令を通して独裁体制を確立し、国民投票で89.9%の支持を得たヒトラーが国家元首(総統)に就任するという電撃的プロセスによる。ナチスの独裁はドイツ国民の熱狂的支持で成立したものであり、少なくとも形式的には民主的手続きに拠ったものであった。途中、何度かナチスを否定する民主的手続きの機会があったにも拘らず、ドイツ国民は熱狂的に支持してナチスの独裁体制を確立させてしまった。まさにポピュリズムの招いた過ちであり、ドイツは周辺諸国に多大な犠牲をもたらし自らも悲惨な結末を迎えた。
 私は今回の選挙で特定の政党や個人を支持し、あるいは誹謗する立場にない。ただ、過去の悲惨な結末を例にとって安易なポピュリズムに流れる事を戒めているだけだ。振り返って我ら業界を見ても、業界のボスや権力者が消費者や現場を無視したスタンドプレーに走っても、だれも口を噤んで諌めもしない。強者に媚びるポピュリズムがどんな結末を迎えるか、歴史に学ぶまでもないだろう。
 2012/12/13 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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