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糸から面と時を紡ぐVMD
 東京国際フォーラムで開催された13AWのJFW−JCに行って来た。一応、業界人だから年に二回の素材展には目を通しているが、商談する訳ではないから、インデックスコーナーでテーマ別のサンプルレビューを見て関心のあるブースを一周し、大方の傾向を掴めば済む。何時もながら、物を作るというプロセスと物を売るというプロセスの、あまりにも掛け離れた距離を痛感させられた。
 コンバーター系のブースは得意とする産地素材の、工場系のブースは手持ち機械で開発出来る素材のサンプルを並べていたが、いずれもフォーカスは極めて狭く、バイヤー感覚で欲しい製品と繋げるのは至難の業だと感じる。かつては小売店のマーチャンダイザーやアパレルのデザイナーが産地に入って糸と機械から加工技術を紡いで製品化していたのだが、今となっては間に入った商社やODM業者に任せっきりで、手の届かない世界になった感がある。例外的となった国内産地はともかく海外産地では、自社開発と言ってもデザイナーが工場の機械と加工技術を紡ぐ訳でもなく、おそらくは工場や生産管理スタッフに任せっきりだろうし、OEMやODMでは工場に足を運ぶ事もないだろう。
 そんな現状では機械と加工技術を売れる製品開発に直結するのは至難の業で、単発の売れ筋企画を流通素材や間に合わせの開発素材で商品化するのが一般的と推察される。これでは工場は継ぎ接ぎの賃仕事に終始し、持てる機械と技術を活かす継続的な商品開発は夢のまた夢になってしまう。工場とマーチャンダイザーがタッグを組んで店頭フェイスを継続する製品開発が理想だと思うが、「プリーツプリーズ」や一時のテンセル製品、近年のユニクロと東レや貝原の取り組みを除けば極めて例外的だ。
 せっかくSPAがアパレル流通に定着したのに、ほとんどの商品開発が売れ筋を追った継ぎ接ぎに終始し、工場の開発力と店頭フェイスを直結して面を継続する企画はほとんど見当たらない。糸から紡いで糸染めでカラーストーリーを創り、デザインと編み立て、差し色を回して陳列フェイスを彩って行くカラーコンポーネンツ・マーチャンダイジングなどその典型だと思うが、誰かアンテプリマのビーズバッグのように面と時を紡ぐビジュアルマーチャンダイジングを魅せてはくれないだろうか・・・・

 2012/11/22 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

109文明の灯を消すな!!
 月例の「販売データ交換会」を控えて平日夕刻の渋谷109を一周したが、その閑散振りとODM商品の氾濫に断末魔の悲鳴を聞く想いがした。とりわけ人気が離散して売上の二桁減が続くXXXやXXX、XXXやXXXなど、夕刻のピークにも拘らず入店客が皆無で、手持ち無沙汰そうな販売員の掛け声が虚しく響いていた。
 渋谷109の館売上は震災反動の3月(前々年比では81.6)、4月(同90.0)、5月(同83.6)を除けば直近の10月まで46ヶ月連続して前年を割り続けており、年間売上はピークの09年度の286.5億円から前期は216億円まで減少し、今期は200億円かつかつまで落ち込みそうで、まさに釣瓶落としの凋落と言わざるを得ない。凋落の契機となったのが08年11月のH&M原宿店と09年4月末のフォーエバー21原宿店の開店で、売上前年比グラフを見ればガクンと落ちているのが明瞭に見て取れる。グローバルSPAの巻き起こしたファストファッションブームに圧し潰されてトーキョーエロカワ文明の砦が陥落して行く様を見るのは業界人として悲嘆に耐えなかったが、渋谷109は打つ手も無く凋落の坂を転げ落ちて行ったのだ。
 ファストファッションブームに飲み込まれないためにはファストなODM商品に流れずキャラを効かせた自社開発商品を強化すべきだったのに、東急モールズデベロップメントは逆に低価格のODM型テナントを増やし続け、客数減に単価減も重なって釣瓶落としの凋落を招いてしまった。加えて、最近は自社開発型だったテナントまで売上不振に音を上げて裾値のODM商品を投入するようになり、単価減と人気離散が加速して断末魔状態に陥っている。
 キャラの効いた自社開発商品を売り物にして来た有力アパレルまでが低価格のODMブランドを投入し、これまでは自社開発に徹して来た人気ブランドのXXXやXXXまで裾値のODM商品を投入するに至っては、もはやデベも打つ手がないだろう。これではアジア諸都市に必ず在る怪しげな市場(いちば)商品集積型B級ファッションビルと変わりがないではないか。となれば、それら同様、下層階には著名なグローバルSPA群を導入するXdayが遠からず現実となるのかも知れない(悲し過ぎるよ〜!!)。
 世界に冠たるトーキョーエロカワ文明の灯火を守るべく、業界は総力を揚げてキャラの尖った自社開発型ブランドを開発し、渋谷109に投入して欲しい。もはや手遅れの感もないではないが、ファッションキャピタルとしての東京と業界の底力を魅せて欲しいものだ。
 2012/11/21 09:28  この記事のURL  /  コメント(0)

「小売の環」が革新するネット通販
 リクルートホールディングスが来年3月からポータルサイト型モール通販に進出するそうだ。驚くのはそのシステム利用料(家賃)で、売上対比2.5%と先行する楽天の半分に設定し、ポイントも3%を付与するとか。これでは事実上、家賃無料で、先行他社に較べて圧倒的な低コストでテナントを集め、短期で品揃えを充実させようと言う戦略のようだ。まさにマルカム・マクネアの「小売の環」を地で行くような参入劇で、伸び盛りのネット通販業界の活力を実感させられた。
 ファッションのネット通販黎明期だった5〜6年前は、ポータルサイト型モール(顧客誘導のみ)で5%未満、フルサービス型モール(全業務代行)で20%強だった出店手数料が、勢いに乗るスタートトゥデイ社がマーケティング費用を肥大させて嵩上げするのに釣られるように上昇し、今日ではフルサービス型で平均して30%強、中には35%というケースまで出て来るという家賃高騰が業界の負担になっていた。
 今春の当社SPACメンバーのアンケート結果(ネット売上一億円以上の平均)を見ても、ポータルサイト型の場合で5.9%、フルサービス型の場合で30.3%と言うのが実情で、高騰する先行モールに対してコスト革新する新手の登場が待たれていた。その回答がアマゾンのファッション分野への本格進出と今回のリクルートホールディングスによるポータルサイト型モール通販への進出で、まさしくマルカム・マクネアの「小売の環」を実感させる出来事であった。そんな事態を招いた楽天とスタートトゥデイ社の怠慢は指摘を免れないが、家賃コスト高騰に悩むアパレル関係者には良報となったに違いない。
 そんな競争原理が何故か働かないのが店舗小売業の世界で、商業施設の賃料率や百貨店の歩率にはほとんどコスト競争が見られないし(人気ブランド導入では条件が競われるが平均は下がらない)、家賃を取られるブランド/ストア側にしても納入業者の掛け率をジリジリと切り下げるばかりでバリュー競争がなく、結局は退化する消費者が鴨にされるという構図が進行するばかりだ。そんな業界の構図は今様の政治の構図(この国民にしてこの政治家)と重なるようで、この国の未来には暗澹たる荒廃しか見えて来ない。
 信念も革新もなく執拗な弱い者虐めと小手先の顧客騙しが横行するこの業界では、果敢に信念を貫徹し国家の明日を憂う柳井正という経営者が輝いて見える。『納入業者を虐めず顧客を欺かずコストとバリューを革新し続ける誠実な商人』が例外となった以上、神々の「小売の環」が業界を浄化して消費者が救済される日が来る事は避けられない。「ユニクロ」や「アマゾン」はそんな使徒の先駆けなのではあるまいか。業界の指導的立場にある方々の意識改革が望まれる。
 2012/11/20 10:28  この記事のURL  /  コメント(0)

百貨店のSPA化?
 三越伊勢丹が国内の委託工場を使ったオリジナル衣料品の開発に乗り出すそうだ。これまでもバイヤーが提案した企画を取引アパレルメーカーに商品化してもらうオリジナル開発は手がけていたが、工場直接に開発するというのは一歩踏み込んだ取り組みと言えよう。
 百貨店のオリジナル衣料開発はセブン&アイホールディングスのそごう西武が量販アパレルメーカーのクロスプラスと取り組んで買い取りの商品開発を拡大しているが、これまでの百貨店のオリジナル衣料開発は取り組みアパレルメーカーに在庫リスクの分担を求めるケースが多く、アパレルメーカーにとってはご無理ごもっともでお付き合いするお荷物の性格が強かった。百貨店のオリジナル衣料開発は開発コストの割にロットが小さく、売れ残っても他の百貨店に回せないから処分も難しく、赤字覚悟のお付き合いとならざるを得なかったのだ。百貨店側にしても、企画が単発だと売場での展開が途切れて顧客が定着せず、アパレルメーカーのように他店舗への振り回し(店間移動)も効かず、消化率が低位に留まってアパレル側に無理を押し付ける事が多く、アパレルメーカーが音を上げて頓挫してしまうケースが多かった。
 そんな壁を超えてオリジナル商品開発を定着させるべく、アパレルメーカーを飛び越して工場直接に調達しようという動きになったと思われるが、課題山積と言わざるを得ない。
 アパレルの商品開発は1)MD企画、2)デザイン、3)パターンメイキング、4)生産仕様開発、5)素材開発、6)ファブリケーション、7)仕上げ加工、8)物流加工、などの開発プロセスによって付加価値が創造され、9)ディストリビューション(配分・補給・店間移動)、10)VMD(陳列訴求・再編集運用など)、11)接客販売、12)プライシング(値付け・売価変更)などのリテイル技術によって付加価値が実現される。
 バイヤーが企画すると言っても1)MD企画だけで、2)デザインや3)パターンは何処かに外注するしかない。それもコンセプトを明確にして継続しないとスペックが安定せず、単品企画の継ぎ接ぎになって固定客化もブランディングも難しい。MD企画と言っても、有力SPAのように素材開発から仕組んで面展開と時系列展開を綾なす技を百貨店バイヤーが持っているとも思えない。ましてやユニクロのように工場に入り込み、機材毎に作業行程を指導して機材配置から作業プロセスまでコントロールし、仕上げ加工から物流加工まで管理し切るなど、望む方が無理というもの。
 リテイル技術にしても、百貨店のバイヤーは自らプライシングし再編集陳列して売り切って行く買い取り商売に熟練しているとは到底言えず、水平と時系列のMD展開を陳列フェイスに表現し再編集陳列して消化をコントロールするVMD技術、多店舗間で商品移動し売り切って行くチェーン・ディストリビューション技術など知る術もない。これらリテイル技術を欠いたままオリジナル商品開発を広げれば、残品の山を作るのは目に見えている。
 アパレルメーカーの持つ開発技術の習得にも課題が多いが、まずは小売業として本物の買い取り商売のリテイル技術を真摯に会得すべきではないか。百貨店が学ぶ事は山ほどあると思うのだが・・・・
 2012/11/19 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

第三バブル饗宴の予兆?
 先日、表参道を安手の見せ物のような半身ロボット人形を載せた宣伝トラックが走るのを見て、昭和初期に開発された東洋初のロボット「學天即」を想起してしまった。今週のWWDジャパンに拠れば、どうやらそれは新宿歌舞伎町に出来たショーパブ「ロボットレストラン」のプロモーションだったようだ。
 WWDジャパンに載った半裸の踊り子達が乱舞するケバいショーの様子(YOU TUBEでいっぱい見れるよ)はバブル華やかなりし頃のボディコンが乱舞したディスコというより、むしろエロ・グロ・ナンセンスな出し物が氾濫した昭和初期の浅草あたりの見世物小屋を想起させる。百億円をかけたというギンギラハイテク?な仕掛けもあって連日押すな押すなの盛況のようだが、人気が陰れば『○曜日には踊り子がビキニを落とす』という噂が広まるのかも。
 景気も政情も暗雲がたれ込め失業者が街に溢れる中での饗宴は関東大震災の復興景気から世界恐慌、そして戦争へと雪崩落ちて行く昭和初期の空蝉な世情を思わせる。AKB48はカジノ・フォーリーの踊り子達と重なり、川端康成の「浅草紅団」や堀辰雄の「水族館」の切なくも妖し気な世界が彷彿とされる。
 「ロボットレストラン」はそんな昭和初期震災復興バブル期を連想させるが、東日本大震災の復興は遅々として進まず、斜陽の坂を下る極東の僻地と化した今日の日本で20年代、80年代に続く第三バブルの饗宴が華開くとも思えない。せめて初音ミクやきゃりーぱみゅぱみゅに続くポストモダンなトーキョーカワイイ文明が世界を席巻する様に溜飲を下げるしかないのだろう。
 2012/11/16 09:04  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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