| Main | 次へ
無理があるのでは・・・ 
 伊勢丹新宿本店の婦人服売上が低迷の度を深めている。夏バーゲンを後送りした6月の87.5をバーゲンが移った7月も97.5とカバー出来ず、その後遺症が続いた8月も94.6と低迷したのはともかく、9月も88.6、10月も85.2と低迷の度を深めている。全館売上は9月が96.1、10月が93.2、紳士服は9月が101.7、10月が95.9だったから婦人服の低迷は突出しているが、その要因は90億円をかけて来年3月の全面開業を目指す大規模改装がもたらす売場の混乱にあるようだ。
 実際、新宿本店の婦人服フロアに行ってみると、2F、3Fなどパネルで囲って改装中の売場がほぼ半分を占めている。営業しながらの改装ゆえにブランドは何度も移動を強いられており、ブランドの売場を探して右往左往するお客様が混雑に輪をかけている。新宿本店に出店しているアパレルに聞くところに拠ると、今回の改装が始まって以来、10回以上も移動させられているブランドも少なくないそうだ。当然ながら移動は営業終了後に行われるから深夜に及ぶ残業となり、何度も続けばアパレル側の疲弊は想像に難くない。三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長は日本経済新聞のインタビューで『定休日の復活や営業時間の短縮で従業員の労働環境にも配慮』と紹介されているが、お取引先の従業員は配慮の対象外なのだろう。
 これだけの全面改装なら、順繰りに部分閉鎖しての改装に加え、バーゲン明けの半月間ぐらい婦人服フロアの大半を閉めて一斉改装するという選択もあったのではないか。さすればブランドは何回も売場を移動せずに済み、お客様も右往左往せずに済み、売上の減少もミニマムに抑えられたのかも知れない。もし冬バーゲンの後倒しに拘ったゆえに一斉改装期間が取れなかったとすれば、ちょっと考えさせられる。もっと現場やお取引先に配慮して柔軟に物事を決めて行く事は出来ないのだろうか。
 2012/11/30 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

ルミネ有楽町店の通信簿
 昨年10月28日の開業から一年を経て早一ヶ月が過ぎたが、ルミネ有楽町店の初年度売上は未だ公表されていない。とは言え、テナントの声を聞けば開業当初の勢いからの陰りは否めず、初年度予算200億円は大幅未達だったと推察される。
 開業直後は押すな押すなの盛況で予算を上回るペースだったが、そんな勢いは年明けのセールまでで、以降は客足が引いて予算割れが日常化したようだ。その要因は、開業直後に私が指摘したように、
1)サプライズのない等身大に過ぎるテナント構成。
2)本館と切り離して大型テナントで埋めた別館の構成。
3)エスカレーターの位置が切り替わる本館中層階のゾーニング戦略の欠如。
などであったが、その本質的敗因は以下の二点に尽きよう。
4)等身大に徹したテナント構成ゆえ京浜東北有楽町商圏に留まり、立地と家賃に見合う広域銀座商圏が取れなかった。
5)決定から開業までの期間が極端に短く、戦略やテナント構成を詰め切れないまま稚拙な構成になってしまった。
 如何にルミネが駅ビルの覇者と言えども、戦略を検証しテナント構成を詰める時間を欠いては勝算はなかったのではないか。加えて、駅ビルとは異なって大家との融通が効かず家賃も法外に高い商業物件に手を出した事自体、JR流通グループの『駅利用客への利便提供』という土俵を逸脱したハイリスク行為との指摘も免れない。ましてや、その事業で損失を出して国有鉄道から継承した国民の財産を損なうとしたら経営責任は重大だ。
 ほんの一年で夏バーゲン時期を4週間も前後してテナント企業を振り回した事は寡占的地位の濫用であり、駅立地を出て高コストなマリオンビルに手を出した事は『国民の財産を継承して駅利用客に利便を提供する』というJR流通グループの社会的責務を逸脱している。ルミネは『駅利用客への利便提供』という原点に回帰し、寡占的地位を濫用して不要に民業を圧迫せず、国民の財産を消耗するような外部事業を戒め、広範な駅利用客に喜ばれる経営を心掛けて欲しい。
 2012/11/29 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

神宮外苑に巨大UFOが降りる?

 神宮外苑の国立競技場が、バクダッド出身の女性建築家ザハ・ハディッド氏の未来感覚表現主義デザインによる巨大UFOを想わせるメガロ建築に建て替わるそうだ。同氏のデザインはコンペ参加46作品中、突出して目を惹く斬新なもので、審査委員長の安藤忠雄氏も絶賛していた。ザハ・ハディッド氏はロシア構成主義を原点に未来感覚の躍動的な表現主義建築を提案して注目されて来た建築家で、広州のオペラハウスやグラスゴーのリバーサイド博物館など斬新な建築に加え、インテリアからスニーカーまでデザイン活動を拡げている。
 経済成長著しい中国沿海大都市やシンガポールに較べると経済活動が停滞する近年の東京は斬新な新建築が限られていたが、これで面目躍如となる事が期待される。完成は2019年3月と随分先になるが、アジアの僻地に転落しつつあるバラック都市、東京にシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズに匹敵する?ランドマークが登場するのは喜ばしい限りだ。
 とは言え、シンガポールではION、Paragon、VIVOcityなど商業施設でも斬新な表現主義建築が競われているのに、日本の商業施設は関東大震災直後の看板建築を思わせる張り簿てバラック建築やオフィスビル然とした味気ない箱形建築ばかりで較べる術もない。フィリップ・スタルクの奇抜な建築(吾妻橋のスーパードライホールが代表的)がニョキニョキと東京に出現したバブル期の再現も今更どうかと思うし、森ビルの六本木ヒルズや表参道ヒルズのように建築に凝って家賃が高騰するようでは困るが、アジアのファッションキャピタルに伍するには商業施設開発者の文明観や建築的美術的見識が問われよう。
 2012/11/28 10:10  この記事のURL  /  コメント(0)

悪循環を断ち切ろう
 スタートトゥデイがポイント10%付与を常態化してアマゾンも対抗し、アパレルネット通販では事実上の10%オフが常態化してしまった。ルミネのカード顧客10%オフ優待もネット通販に対抗して一段の多頻度化が避けられず、他のファッションビルも追従せざるを得ないだろう。既に百貨店ではカード顧客(一定買上額以上)優待の10%オフが定着しており、定価で買うのは騙されたような気分になってしまう。実質プロパー価格は「正価」の10%オフというのが今日の常識となったのではないか。
 「バーゲン正常化」を目指したバーゲン時期後倒しはアパレルを在庫処理恐怖症に陥らせて期中セールを頻発させ、かえって「バーゲン日常化」状態を招いて消費者の「正価」不信感をさらに高めてしまった。プロパー消化率の低下はアウトレット依存を高め、今やほとんどのブランドがアウトレットで買える状態だから、「正価」への信頼感はもはや地に堕ちた感がある。
 プロパー販売の実質10%オフ定着と期中セールの氾濫、アウトレット依存の加速はアパレル事業者の歩率家賃負担とマークダウンロスを肥大させ、この10年間で業界の平均的な調達原価率は10ポイント近くも切り下げられてしまった。今や百貨店アパレルの調達原価率は20%前後、ODM調達のカジュアルSPAでも30%弱が常識となり、この間の価格低下を考えれば品質は恐ろしく劣化した事になる。それを受け入れて来た以上、消費者の目利き(感性)も退化したと指摘されてもやむを得ない。
 ロスの肥大と歩留まりの悪化が続けば際限なく調達原価は切り下げられ、酷い商品を押し付けられた消費者はますます「正価」で買わなくなり、さらにロスの肥大と原価率の切り下げを招く悪循環が続いてしまう。そんな悪循環を断ち切るには「正価」販売比率を高めてマークダウンロスを極小化し、原価率を高めてバリュー感と価格信頼感を取り戻す事が望まれる。
 それはバーゲン時期を遅らせるとかの小手先ではなく、歩率家賃負担と運営経費、マークダウンロスを抑えて原価率を高め、お値打ち感ある商品を提供する事に尽きる。それには商品展開計画と在庫運用の精度を高めるのが大前提だ。売れ筋深追いの単品継ぎ接ぎMDと場当たりの陳列運用を続けては悪循環は断ち切れない。抜本的なMDとVMDの技術革新が不可欠なのだ。
 急速に拡大して来たユニクロがこの10年間、商品展開計画と在庫運用の精度を高めてロスを抑制し、原価率をほぼ38%という高水準に保ってお値打ち感を突出させた事は高く評価されるべきであろう。『調達原価率が高いほどロス率が低い』(図参照)という事実をアパレル事業者は改めて直視し、悪循環を断ち切る事を決意して欲しい。
 2012/11/27 10:25  この記事のURL  /  コメント(0)

大人災の責任を問う
 10月29日に開催する月例のSPAC研究会「来春夏MD展開総点検」の準備に直近年間売上(11年9月〜12年8月)の月指数分布を調べたら、驚くべき数字が出て来た。前年の震災の反動で伸びた3月はともかく、夏バーゲンが分散して勢いが削がれた6〜7月の月指数が異常低下していたのだ(月指数とは年間売上を100とした時の月別シェアで、単純に12等分すれば8.333・・・・となる)。
 震災の反動で伸びた3月の月指数が百貨店総額で+1.0、百貨店婦人服で+1.6、百貨店紳士服で+1.3だったのに対し、6〜7月計月指数の落ち込みは百貨店総額で−0.6、百貨店婦人服で−0.8、百貨店紳士服では−1.3にも及んでいる。バーゲン時期分散の混乱は婦人服では大震災の反動の半分、紳士服ではほぼ同量の影響を及ぼした訳で、まさしく「大人災」であった。
 6〜7月の落ち込みをタイプ別に見ると、婦人服ではヤングカジュアルの−1.5、セクシーガールの−1.2、ランジェリーの−1.9、紳士服ではアダルトカジュアルの−1.5、シャツシングルライナーの−3.1が大きく、ユニクロが−0.7に留まったのに対してGAPは−1.9と影響が大きかった(すべて当社集計100商業施設の単純平均値)。
 夏バーゲン分散の混乱は夏物在庫処理をずれ込ませて秋物立ち上げを遅らせ、秋商戦まで低迷させるという後遺症をもたらしたが、それだけでは終わらなかった。アパレル各社は在庫コントロールに四苦八苦した挙げ句、4〜9月期でワールドは営業赤字に転落、上手く処理したように見えるユナイテッドアローズでもアウトレットに回す在庫が急増してしまった。店舗数の少ない中小アパレルや百貨店依存度の高いアパレルでは在庫処理の損失は経営を脅かすほどに至ったのではないか。
 後遺症は今に至るも終わっていない。在庫の流れが将棋倒しになって冬商戦最盛期の今も過剰在庫に窮するアパレルが少なくないし、夏物在庫の処理に余程苦しんだのか『羹に懲りて膾を吹く』の例えを地で行くように、不振在庫を煩雑に期中で値引き処理するストアが以前にも増して増えている。冬バーゲンも混乱が続いて在庫処理に窮するのでは、という不安を拭い切れないのであろう。「バーゲン正常化」どころか、逆に「バーゲン日常化」をもたらしてしまった。こんな状況では例年のように大量のバーゲン弾を用意するブランドは限られ、弾不足から冬バーゲン売上が低迷するという結末が危ぶまれる。ましてや春物立ち上げが直後に迫る中、冬バーゲンを後倒す百貨店や駅ビルのためにバーゲン弾を積むアパレルは極めて限られるのではないか。
 何度も指摘したように在庫運用は連続したものだから、何処かでずれ込めば後々まで将棋倒しになって在庫処理に四苦八苦する事になる。消化仕入れの殿様商売で在庫を抱えるリスクを知らない百貨店や大家感覚が抜けない駅ビルデベの一方的な思い込みに振り回され、延々と在庫処理に苦慮するアパレル業界の実情をはっきり数字で見せつけられるに及んでは、もはや「人災」の責任を追求せざるを得ない。『業界のため』という建前が本当なら、三越伊勢丹とルミネの経営陣は一刻も早くバーゲン後倒しの放棄を公言すベきであろう。
 2012/11/26 09:29  この記事のURL  /  コメント(0)

| Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ