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悲劇の巨大SCは再生成るか
 今朝の繊研新聞に拠れば、06年に開業した巨大SC『モレラ岐阜』の半年かけた大改装が完了し、9月14日にH&Mなど新規導入メガショップを揃えてグランドオープンしたそうだ。
 モレラ岐阜は大和システムが開発して06年4月29日に開業した商業施設面積約7万5500平米の岐阜県最大のSCだが、長良川と揖斐川に阻まれて岐阜、大垣方向の商圏が狭く所得水準も低く、パワーセンター的構成と500メートルにも及ぶ直線的モールに無理があって当初から苦戦が予想されていた。計画段階では年商300億円を超えると目論まれていたが、初年度は200億円強に留まり、開業翌年には大垣商圏にアクアウォーク大垣、イオン大垣SC、ロックシティ大垣と三つのSC(計11万8150平米)が相次いで開業して大垣方向の商圏が大きく削られ、11年には166億円まで落ち込んだ。当初225店で開業したテナントも撤退が相次ぎ、改装前には180店そこそこまで歯抜けていた。
 外資大型SPAなど52店を新規導入した今回の大改装で12年度は220億円を狙うとしているが、根本的問題である長過ぎる直線モールが解消された訳ではないし、大きく削られた大垣方向の商圏を取り戻せるとも思えない。当社で現状の実勢商圏を検証したところ、人口は15.7万人、市場規模は800億円に過ぎず、7万平米超級SCを維持出来る市場規模にはほど遠い。それでも計算上は238億円まで伸ばせる可能性があるが、衣料品テナントの月坪効率は11万円に留まる。220億円なら月坪効率は10万円かつかつに過ぎないから、音を上げたテナントが再び歯抜けていくリスクは否めない。
 運営を引き受けたザイマックスキューブが如何にSC再建に実績があってもハードルは極めて高く、もし再建に成功するなら奇跡と言うしかない。『商業施設の開発と再建に奇跡は起こらない』というのが私の長年の結論で、モレラ岐阜もサーキット構造などの合理的なレイアウトに建て替えない限り再生は困難だと思うが、悲劇の巨大SCが再建されるなら地元経済への貢献も大きく、奮闘を祈るしかあるまい。
 2012/09/20 11:05  この記事のURL  /  コメント(0)

52週単品継ぎ接ぎMDの弊害
 今朝の日経MJは冬バーゲンの開催時期を巡る業界の動向を上っ面でまとめていたが、不毛なバーゲン時期後倒しが強行される背景は業界の経営層がシーズン在庫展開の実感を失っている事、そして何より顧客第一の経営理念を失っている事が大きいと思う。
 シーズン在庫展開はプロダクトアウトな計画MD展開が主流だった80年代まではまだ明瞭だったが、90年代後半以降、マーケットインな52週単品継ぎ接ぎMDが蔓延してシーズン切り替えが不明瞭になり、今日では春夏と秋冬の切り替えはあっても期中はダラダラと売れ筋を追ってフェイスが切り替わらないのが当たり前になった。結果、売場も経営層もシーズン在庫展開の実感を失い、在庫展開を無視したバーゲン後倒しという暴挙に走ってしまったのではないか。
 私は幼少時から母の経営するブティックで育ち、学生時代にはアルバイトで売場に立ち、社会に出た当初は社員として売場に立ち、コンサルタントとして独立して以降も多くのクライアントの売場と在庫運用を見て来た。実に60年近く売場のシーズン在庫展開を見て来たのだ。近年の明確な変化は単品売れ筋の深追いで端境シーズンたる梅春期と晩夏期がほぼ消滅した事で、これによりバーゲン時期が次第に前倒されるに至ったと認識している。だから、バーゲン時期を後倒ししたいなら、過剰にマーケットインな52週単品継ぎ接ぎMDを抑制し、80年代のようなプロダクトアウトな計画MD展開を主軸としたシーズン在庫展開に回帰し、梅春期と晩夏期を明瞭に設定すべきだ、と指摘しているのだ。
 マーケットインな52週単品継ぎ接ぎMDが蔓延したのは日本だけのガラパゴス現象で、欧米でもアジアでもブランドビジネスの主流はプロダクトアウトな計画MDであり、単品継ぎ接ぎMDはファストビジネスと市場(いちば)商売にしか見られない。端境シーズンにしても、日本とは逆にプレフォールやクルーズが強化される方向に在る。20年振りに衣料消費がインフレ転換して底を打った今、退化の20年に終止符を打っても良いのではないか。
 そんな想いをこめて『ロジスティクスVMD技術革新ゼミ』と『マーチャンダイジング技術革新ゼミ』を業界に問うているのだが、何を言わんとしているのかも通じない現実に唖然とさせられる。もはや業界の退化は回復不能な段階に達しているのかも知れない。
 2012/09/19 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

東急百貨店が陣営離脱
 先週末の日経に拠れば、東急百貨店は冬物バーゲンを例年通り1月2日から開催することに決めたそうだ。今夏のバーゲンは伊勢丹などの呼びかけに呼応して例年より二週間、開催を遅らせたが、早くもバーゲン後倒し陣営を離脱する結論となった。東急百貨店の代表取締役は三越伊勢丹から派遣された二橋千裕氏が勤めており、その陣営離脱は少なからぬ衝撃を業界に与えたのではないか。
 三越伊勢丹に最も同調するはずの東急百貨店がバーゲン後倒し陣営を離脱するという結論となった背景は以下の2点だと思われる。
 1)初売りと同時に冬物バーゲンが始まる慣習は消費者に定着しており、遅らせると集客と売上に大きな影響が出る。
 2)冬物バーゲンを遅らせるとその切り上げも遅れ、春物の立ち上げが遅れる事が懸念される。実際、この夏バーゲンの後倒しで秋物の立ち上げまで遅れ、秋商戦の混乱を招いた事態が反省されたのではないか。
 今日のバーゲン時期はプロパー販売期間を確保しようと年々、シーズンMD展開が前倒されていった結果であって、バーゲンだけが前倒された訳ではない。バーゲン時期を「適正化?」したいなら各季節商品の立ち上げ時期まで業界ぐるみで後倒しするしかないが、これは不可能と言うしかあるまい。
 立ち上げの前倒しに加え、売れ筋の深追いが季節の切り替えを困難にしている事もバーゲン時期の早期化をもたらしている。冬物売れ筋の深追いで梅春物の投入枠が年々、縮小し、梅春期そのものが消滅状態となった今日では、年明け早々どころかクリスマス明けから冬物バーゲンに入ってもおかしくない。
 バーゲン時期は業界のシーズンMD展開総体の必然が決めるもので、特定企業や業界が意図的に左右出来るものではない。もし本気でバーゲン時期を遅らせたいなら、各シーズンの立ち上げ日とバーゲン解禁時を法律で定めるしかないが、そんな事は独占禁止法上も困難だ。唯一、現実的な選択は、業界が売れ筋深追いの悪習を抑制して晩夏期と梅春期をきちんと展開し、プロパー販売期間を自然に長くする事だ。晩夏期や梅春期がきちんと展開されていた80年代まではバーゲン時期はもっと後だったではないか!
 売れ筋深追いの単品継ぎ接ぎMDを止めない限り季節展開の「正常化」は困難で、業界の退化も止まる事はない。シーズンMD展開を「正常化」する事なくバーゲン時期だけ遅らせようという試みは思慮深いものとは言えず、東急百貨店の陣営離脱で混乱が収拾に向かう事を祈るばかりだ。
 2012/09/18 09:52  この記事のURL  /  コメント(0)

夢の跡
 秋の新規導入店をチェックしようとルミネ新宿店を覗いてみたら、あのKitsonがなくなっていた。7月31日に閉店し、その跡には9月7日にデザイナーズセレクトの「クライ」とモードミックス系セレクトの「デミ・ヴー」が開店していた。
 ルミネ2の2F案内カウンター向かいの一等地にKitsonが開店したのはファストファッションブーム最中の09年3月8日。開店初日には3000人のギャルが押し掛け、入店待ちの行列がフロアに溢れていたのが記憶に新しい。そんなKitsonのイベント商法を私は『衝撃!の‘祭り’ビジネス』と09年4月21日のブログで揶揄し、その継続性に疑問を投げ掛けたものだ。
 そんな私の危惧が現実となったのか、表参道裏の路面店も早々と閉店し、華々しく開店したルミネ新宿の一号店も閉店と相成り、今や都心にはラフォーレ原宿店が残るのみ。他にはみなとみらいコレットマーレ、キャナルシティ博多、レイクタウンアウトレット、アウトレットモールあしびなーの四店舗があるのみで、最盛時の人気とは比較すべくもない。
 ファッションビジネスも‘商い’の鉄則は免れず、地道に商品開発と店舗運営を積み重ねて顧客の支持を確立して行かないと継続的な発展は望めない。一時の派手な仕掛けで人気を盛り上げるイベント商法は、やはり続かなかったという事なのだろう。ウェブ通販ではフルフィルメントと顧客満足、店舗小売業では店舗運営と顧客満足、そして両者ともコスト革新が継続的発展の絶対条件であり、派手なプロモーションに依存してコストを肥大させる風潮には疑問を呈さざるを得ない。
 クロスカンパニーのCMによるブレイクもブランド人気の継続を担保する事は出来なかったし、スタートトゥデイの躍進劇もコスト肥大に陥って急ブレーキがかかっている。一時のプロモーションやイベントに依存して‘商い’の本道を外せば、顧客の支持を失って継続的発展が損なわれるリスクが指摘される。イベント商法の‘夢の跡’を見て、そんな想いを強くした。
 2012/09/13 09:21  この記事のURL  /  コメント(0)

リテイリング技術の継承
 昨日のブログでも小売実務技術の散逸を指摘して技術継承の重要性を訴えたが、私は小売実務の肝はマーチャンダイジングとロジスティクス、在庫の編集陳列運用と販売プロセスの連携に在ると思う。展示会仕入れや消化仕入れによる小売業ではこれらが分断されて一貫した連携は困難だが、SPAやブランドの直営店展開ではこれらを一貫して効率的な消化回転を図る事が出来る。その基本的な業務プロセスは90年代の米国SPA業界でほぼ完成され、セレクトショップのリミックス技術やO2Oによるウェブ連携手法を加えて今日に至っている。その連携技術精度で売上や消化率はもちろん、ブランディングも大きく左右されるが、マーケットインな単品継ぎ接ぎMDに堕した日本のアパレルチェーンではこれらの連携性が崩れ、消化率もブランディングも壁に当たっているのが実情だ。
 そんな状況を打破すべく、私は欧米日亜の有力SPA企業/ブランドビジネスのリテイリング技術を子細に比較研究し、指導先企業に取り入れながら技術体系を整備して来た。その成果をまとめて業界に問うのが当社の実務技術ゼミで、今秋も10月18日に『ロジスティクスVMD技術革新ゼミ』、11月7日に『マーチャンダイジング技術革新ゼミ』を開催する。前者は多店舗運営における配分・補給・店間移動と陳列の構築・編集運用の連携を体系的に解説するもの、後者はシーズン展開や予算編成の基本から水平展開/時系列展開の技法、開発・調達手法によるビジネスモデル比較まで、マーチャンダイジング技術を体系的に解説するものだ。自己流・自社流には限界があるから、この機会にグローバルに通用するリテイリング技術体系を学んで欲しい。
 この他、11月には『ブランディングVMD&ストアプランゼミ』『テナントミックス&ゾーニング技術革新ゼミ』を計画しており、企画が固まり次第、御案内したいと思う。
 2012/09/12 10:28  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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