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今こそテナント専門店は団結せよ
 イオン系SCが早朝営業を強行する気配だ。今年6月1日からシニア層を意識して直営食品部門の7時開店に踏み切った時から遠からずSC総体での早朝営業に波及すると危惧されていたが、早ければ11月から実施される事になりそうだ。
 イオン系SCは00年前後から22時(直営食品部門は23時)までの夜間営業を強行し、テナント専門店は営業時間が12時間になって二交代制が必至となったため、全国的に販売員不足が常套化してテナント企業の経営を圧迫し、販売員の水準まで低下するという弊害をもたらした。それに9時からの早朝営業が加わって13時間営業となれば、販売員の勤務条件が悪化してなり手が減り、さらなる販売員不足を招きかねない。食品を除けば早朝営業による売上増はほとんど期待出来ないから、テナント専門店の経営もさらに圧迫される事になる。
 という訳だから当然、テナント専門店の反発は大きいが、マイカル系もダイエー系も吸収して郊外SCの過半(ローカルの大型SCに限れば大半)がイオン系となった現状では個々のテナント企業が抗える力関係にはなく、かつての夜間営業同様に押し切られてしまうのは目に見えている。
 営業時間に限らず、契約期間内退店時のペナルティや法外な内装監理費など、デベロッパーとの関係で弱者たるテナント専門店が不利な扱いを受けている事項は決して少なくない。それはフランチャイズ業界におけるジーの立場と大差ないのではないか。そんな一方的な状況が放置されて来た要因は、テナント専門店業界の団結が進まなかった事にあると思う。日本ショッピングセンター協会は一応、両サイドに門戸を開いているように見えても基本はデベロッパーサイドだし、日本専門店協会は普通借家契約時代の旧世代専門店が大半で新世代の専門店はほとんど組織化出来ていない。
 イオンに限らず、郊外SCでもアウトレットモールでもデベロッパー業界は寡占化が進む一方、テナント専門店業界の組織化はむしろ後退している。このままではデベロッパーとの関係における相対的弱者という立場は改善される見込みさえない。心ある業界リーダーは今こそ団結を呼びかけるべきではないか。最新の出店環境を検証して出店戦略を提ずる10月3日のSPAC研究会ではテナント専門店が抱える様々な問題を提議したいと思う。
 2012/09/27 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)

3年サイクルで流れが変わる
 毎シーズン、ブランド別販売動向を検証していると、テイストやタイプによる好不調の波はほぼ3年(6シーズン)サイクルで切り替わる事が見て取れる。もっとも顕著なのが109系で、20〜30%増だった人気ブランドが一転して20〜30%減に落ち込むからすぐ変調が掴める。一昨年のコースト系や昨年のガーリー系の暗転はその好例で、グラマラスモード系やモードミックス系に人気が移った。駅ビル系はもう少しバラエティがあるが、やはりレトロフェミニン系やスウィート系が失速してアラモ系に人気が移り始めたのは昨春だった。
 では人気テイストが失速に転じる前兆は掴めるかと言うと、実は明確に予測出来るものなのだ。どんなテイストでも、最初は自社開発の高価格ブランドが火を付け、ワンシーズン遅れてOEM開発の中価格ブランドが加わり、ODM開発の低価格ブランドが一斉に出揃ったら同質化と値崩れが始まり、そこから2シーズンでブームは終わる。そのサイクルから言えば「アラモ」ブームも来年いっぱいで終わるのだろう。
 そんなブームの消長を加速したのが00年に導入された定期借家契約で、駅ビルやファッションビルの大半は3年契約と短く、人気が落ちれば即、追い出されてしまう。郊外SCの契約期間は5〜6年とやや長く人気落ちのブランドも少しは延命できるが、好不調のサイクルもその分スローペースになるとは限らない。駅ビル/ファッションビルではどんどん新手ブランドが開発されて3年サイクルで入れ替わって行くのに、郊外SCでは新手ブランドの開発が緩慢で入れ替えサイクルも長く、変化に乏しい事が指摘される。郊外でも勝ち組商業施設は契約改定時に3年契約に切り替えるケースが増えており、新手ブランド開発サイクルの加速が求められている。
 2012/09/26 11:56  この記事のURL  /  コメント(0)

萌え上がる「アラモ」
 月例の『販売データ交換会』を週末に控えて店頭動向を確認しようと渋谷、新宿を一巡りしたが、先シーズンまで主流だったスウィート系やプリティ系がすっかり勢いを失ってモードパーツ系〜モードミックス系が氾濫し、秋のレディス新ブランドでも‘アラモ系’が断然、目立っていた。渋谷109など、秋の6新ショップ(雑貨除く)中、4ショップがアラモ系で7Fなど3ショップが集中し、‘アラモ’旋風を実感させられた。
 マークスタイラーの「エモダ」が火を付けた‘アラモ’(アラウンドモード)は昨年11月28日号のWWDジャパンが特集し、このブログでもその直後、11月30日に『‘アラモ’って何ですか?』と取り上げている。‘アラモ’はリーマンショック以降、急進した過度なスタイルのローカル化への反動と位置づけられるが、欧米コレクションのあからさまなコピーが氾濫して早、同質化が著しく、単品継ぎ接ぎMDを煽る状況になっているのは残念と言うしかない。
 そんな中、ほぼ一年振りに‘アラモ’を特集したWWDジャパンの記事で、「クーシオ」(恵山)の織部久美子プロデューサーが『近未来的建築要素を取り入れたリアルクローズなネオモードスタイル』と自らのデザインコンセプトを謳っていたのが印象的だった。そもそもモードとは平面な布から立体的な人体を包むコスチュームを創造する建築的行為だが、マーケットインなODMに堕したローカルな服作りには建築的創造性は到底見いだせない。
 すっかりガラパゴス化した日本のレディスマーケットがモード回帰して‘アラモ’スタイルが広がるのは、市場の鮮度回復という点でもアジア市場への浸透性という点でも歓迎すべき事なのだろうが、建築的服作りにはパターンを重視したインソーシングが不可欠だし(大半の‘アラモ’ブランドはパターンの建築性を欠いた平板なODM商品なのは残念だ)、MDの建築的構造性とシーズン展開のストーリーを欠いては単品継ぎ接ぎMDによる同質化を脱するのは難しい。‘アラモ’というモードスタイル回帰がグローバルに通用する建築的MD展開への回帰に繋がる事を祈るばかりだ。
 2012/09/25 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

ノードストローム・ウェイ
 ちょっと確認したい事があって「ノードストローム・ウェイ」(2001年刊の新版)を久しぶりに読み返してみた。ノードストロムと言えばリッツ・カールトンホテルと並んで接客神話で高名な百貨店(正確にはセレクトショップ複合専門大店)だが、新版では絶頂期の80年代から一転しての90年代の不況期(バブルとその崩壊は日本と同じでした)における同社の苦闘や労組オルグとの戦いにも多くの紙面を割いており、旧版よりリアリティがある。
 販売員にリッツ・カールトンホテル並みの裁量権があるノードストロムでは必然的に時間給+インセンティブの給与体系になっており、よほどポジティブな性格でないと挫折してしまうし、勤務時間外や店外での自主的なサービスや営業活動が不可欠だ。それに時間給が支払われていないなど、労組オルグやマスコミに叩かれて同社が延々と苦闘し、少なからぬ対価を支払って企業文化を守り抜いたという話にはなるほどと思わされる。ノードストロムの接客神話に安易に追従する企業も少なくないが、給与体系の整備や脱落する販売員のサポート、サービス水準の平準化など、相応の体制を整えて企業文化の域まで高めないと定着は難しいだろう。ちなみに、接客神話で高名な企業ほど接客水準の個人格差が激しく、私がかつてNYやワシントンDCで定宿にしていたリッツ・カールトンホテルでは失望させられる事も多かった。
 私は80〜90年代、毎年のようにノードストロムの新店をリサーチして、その部門構成・配置と各部門のMD編成を棚卸ししたものだが(膨大な品揃え編成表とスライドが残っている)、調べれば調べるほどノードストロムは百貨店ではなくセレクトショップ(発祥は靴のセレクトショップだった)だという思いを強くした。‘高級百貨店’と言われるが、シャネルやアルマーニ、ダナカランなどラグジュアリーブランドをラック編集する「コレクター」(大型店ではブティック展開されるケースも稀にあるが、すべて買い取り)から低所得なワーキングガールに向けた単品構成の「ポイント・オブ・ビュー」まで様々なセレクト売場を揃え、カフェやスパまで加えて実に巾広い顧客をカバーしている(私の旧著「見えるマーチャンダイジング」に詳しい)。出店する商圏の規模と客層に応じて各セレクト売場の規模と組み合わせを替え、1万2000平米級から2万5000平米級までを主力に117のフルライン店を展開している(12年1月末、他にオフプライスの「ラック」108店などがある)。また、セントラルバイイングに偏りがちな米国デパートメントストアの中、セントラルバイイングに地域バイヤーと店舗販売員の発注権を組み合わせて個店対応に努めているが、バイイングコストとロスに挟まれて試行錯誤を続けている事も知って欲しい。
 ノードストロムの神話は信念を持った同族経営陣の何世代にも渡る試行錯誤が築き上げた‘傷だらけの栄光’であって、今日もなお様々なリスクと困難を抱えて苦闘している。神話とは「揺るぎなきプリンシプルを傷だらけになって守り抜く継続的意志によって現場から積み上げられるもの」であり、MBAが机上で描くビジネスモデルとは対極に立つものだ。「ノードストローム・ウェイ」はそんな真実をリアルに教えてくれる業界人必読の良書だと思う。
 2012/09/24 09:21  この記事のURL  /  コメント(0)

ユニクロ不買運動?
 反日デモの最中、上海のあるユニクロ店舗の店頭に『尖閣列島は中国固有の領土』と短時間ながら張り出された事に反発して一部でユニクロ不買運動が叫ばれ、先週末には我が家の目と鼻の先にある柳井邸周辺にも右翼の街宣車が押し掛ける騒ぎになっているが、如何なものかと思う。
 この件に対するファーストリテイリング社の対応は冷静沈着なもので過剰なリアクションに走らず事実を淡々と釈明するに留め、緊急時の広報対応の見本とも言うべき適確さを示していた。『政治的論争には関わるべきでない』という同社の姿勢はしごく真っ当で、私はむしろ好感を持った。
 かつて軍国主義大日本帝国が侵略し暴虐の限りを尽くした中国や韓国の反日感情はささいな事から発火しがちで、とりわけ共産党一党独裁下で言論が厳しく統制されている中国では過激になりがちだ。そんな中国や韓国で日本企業が商売を拡げるのはカントリーリスクが避けられず、デリケートな対応が求められる。業界では我も我もと中国進出がブーム化しているが、果たしてそれだけの覚悟があっての進出なのだろうか。その意味でも、ファーストリテイリング社の今回の対応は高く評価されるべきであろう。
 大山町の柳井邸は大富豪にもかかわらず派手なパーティや多人数の出入りもなく、町内の例祭などにも出過ぎず応分の協力を惜しまない良き住民であり、その人格を疑うような話は聞いた事もない。今朝も出がけに玄関前を通ったら、今週末に催される町内の秋祭りの提灯が控えめに掲げられていた。
 私はユニクロのロードサイド時代から引き摺った洗練を欠く色彩感覚や金型で量産したプラスティック製品のような味わいのない商品がこれほどまで大衆化した事に違和感を否めず、根っからのファッション人間としてマーケットの退化を悲しんでいるのであって、ファーストリテイリング社や柳井正氏を嫌っている訳ではない。その良い所は良いとして評価し学ぶべきだとも思うが、あのナンセンスな色彩感覚だけはどうにかして欲しい。それが欧米市場での致命傷になるとしたら、ファーストリテイリング社は真摯な変革を急ぐべきであろう。
 ユニクロが膨大な投資にもかかわらず米国市場で苦戦する一方、カナダ発祥の色彩の美しい低価格フレンチモダンSPA「ジョー・フレッシュ」があれほど短期で米国市場に受け入れられたという事実を、ファーストリテイリング社はもっと重く受け止めるべきではないか。
 2012/09/21 09:29  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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