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セール後倒しの後遺症
 昨夕、月例の「販売データ交換会」(レディス)を開催して7月販売の総括と8月直近販売動向の検証を行ったが、そこで異口同音に語られたのが夏セール後倒しの後遺症であった。
 セールを後倒したブランドやストアの7月売上は概して2〜5%のマイナスで、6月の買い控えによるマイナスと合わせると7/8月計で5%強の下押しとなったようだ。7月だけをとればセールは二桁減でもプロパーが二桁増となって収益面ではまずまずの成果があったようだが、セールを後倒した分、8月になっても夏物在庫を抱えてセールが尾を引き、秋物へのフェイス切り替えが大幅に遅れるという後遺症が指摘されている。
 秋物への切り替えが遅れれば顧客への秋物提案も浸透せず、売れ筋動向も見極め難くなり、9月以降の品揃え展開も遅れ気味になってしまう。事実、各社の報告でも秋物の動きは例年より格段に鈍く、秋物の主力を絞り切れないという声が挙っていた。それをカバーすべく、各社はウェブの販売動向(ゾゾタウンでは他社の先物受注点数も検索出来る)を注視していると言うから、O2O時代を如実に実感させられる。
 シーズンの在庫展開は連続したもので、何処かで遅らせたり早めたりすれば後々まで影響して在庫の流れが変わってしまう。夏物セールが早期化していったのは夏物や晩夏物の投入が早期化してGW以降の売場に鮮度がなくなった為であり、シーズン在庫展開の必然であった。夏物セールを無理に後倒せばセール待ちの買い控えが長引くだけでなく、夏物消化も後にずれ込んで秋物へのフェイス切り替えも遅れる事になる。それが秋冬商戦にどんな影を落とす事になるのか空恐ろしい。
 夏物セールの後倒しはシーズン在庫展開の必然を無視した暴挙であり、セール期の販売を下押ししただけでなく秋物の立ち上げも遅らせ、せっかくの消費回復気運に水を差す結果となってしまった。セールを後倒した各社はその功罪を冷静に検証すべきではないか。
 2012/08/24 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

韓流ファッションが目を惹く
 アパログのゲートにバナー広告を出している韓流ウェブ通販(DHOLIC)のスタイル写真につい目が行ってしまう。KARAや少女時代に通ずるスレンダーなモデルさんもともかく、韓流特有のウェットなカメラ目線や広角レンズによるAV感覚の接近撮影がモデルと商品の魅力を盛り上げているのは間違いない。国内有力ウェブ通販と較べてもスタイル写真のインパクトは格段で、プリクラ目線になりがちなショップスタッフのスタイル投稿など足元にも及ばない。ウェブ通販関係者は韓流スタイル写真の撮影技法を研究すべきではないか。
 私はDHOLICを韓流と知ってアクセスしたのではなく、特有のウェットでスレンダーなモデルさんとスウィートでニートなスタイリングを見て直感的に「韓流」と判断し、会社概要を見て韓流で在る事を確認したに過ぎない。ファッションは日本のスウィート系やセクシーエレガンス系に近いが、装飾性があるのにシルエットはもっとスレンダーでアジア圏のモード文化が通底しており、ディティールが大げさでどこか緩い日本のスウィート系OL(ややアニメチックに感じられる)とは本質的に異なる。モデルさんにしても日本人モデルと較べれば、筋肉感のないやや陰花的でスレンダーなボディ、自然な薄化粧とやや下に外した優しい目線(日本人のスウィート系モデルはギンギンに装飾した目を媚びるように投げて来る)、自然なポーズ(日本人のスウィート系モデルは誇張した媚びるポーズが鼻に付く)が特徴で、男心をそそるものがある。
モデルさんにしてもファッションにしても、欧米流の乾いたモードスタイル、日本流のアニメチックなスウィートスタイル、そして韓流の濡れたモードスタイルと様々で、各国のファッション文化の差異が感じられる。中国でも香港や北京は欧米に近く、上海は欧米モードと日本流スウィート系が同居する感がある。アジアに進出する企業はそんなファッション文化の違いにもっと敏感になるべきだと思うのだが・・・・・
 2012/08/23 09:19  この記事のURL  /  コメント(0)

戦略の成否は現場の運営力が決める
 ターゲットやアップルストアで成果を挙げ「リテイリングのカリスマ」と賞賛されるロン・ジョンソン氏をCEOに招聘し、ARなどのO2Oテクノロジーやモバイルチェックアウト、ベンダー提案のショップ・イン・ショップによるメインストリート・ゾーニングなどで万年セール体質を脱する改革を急ピッチで進めるJCペニーだが、急激な改革に現場が対応出来ず顧客も戸惑い売上は一段と低迷している。その最終的な成否はともかく、ロン・ジョンソン氏の改革に欠落していると危ぶまれるのが、初期価格設定〜在庫の投入と補給〜フェイス構築と陳列編集運用〜店間移動とマークダウンによる最終消化、という現場の運営力の嵩上げだ。
 どんなに適確な戦略もそれを遂行する現場の運営力を欠いては絵に描いた餅になってしまう。米国から伝えられるJCペニーの改革を見る限り、ロン・ジョンソン氏が現場のオペレーション力を重視して嵩上げと標準化に注力している形跡はまったく見られない。改革の骨子がウェブとリアルを一体化し、ウェブ世界的にアプリケーションベンダー(ブランドベンダー)の開発力を取り込むという極めてアグレッシブなものだけに是非とも成功してもらいたいが、買取のリアル店舗の世界では在庫の運用と消化という現場のオペレーション力を軽視しては成功は覚束ない。有力NBの独占化/PB化というJCペニーのこれまでの戦略がセールの乱発で潰えたのは現場のオペレーション力が伴わなかったためであり、同じ繰り返しに終わる事のないよう願うばかりだ。
 目を国内に転じても、IYやイオンの衣料品改革が幾度も巨額の損失を出しながら成果を挙げられないで来たのも、やはり戦略ばかりが上滑りして現場のオペレーション力が伴わなかった事が要因と思われる。MBA世界では戦略が成否を決めると錯覚しているようだが、現実には戦略が現場のオペレーション力と連動しない限り成果は得られない。その戦略はどんな現場運営技術を前提に成立するのか、創業経営者なら当然に見通せた事が現場感覚に乏しいMBA的エグゼクティブには見通せないのが実情だ。戦略を実現するのは現場のオペレーション力である事を再認識し、その嵩上げと標準化に注力し続ける事が企業の足腰(収益力)を確かなものにするのだと肝に銘じて欲しい。
 2012/08/22 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

百貨店と大手アパレルの無策
 今年上半期はほぼ前年を維持したとは言え、百貨店衣料品売上はリーマンショック前の07年からは73掛けに減少(ピークの91年からは54掛け)、大手アパレル4社(オンワード樫山/三陽商会/TSI/イトキン)合計売上高も二割以上落ち込み、同4社計経常利益率は0.1%(11年度)まで落ち込んでおり、この間の米国デパート/大手アパレル業界の回復とは極端な明暗を見せている。
 米国でもデパート業界は中産階級の崩壊とともに長期凋落傾向にあるが、11年度の大手Dept/PDS4社(メーシーズ/ディラード/JCペニー/コールズ)計売上はリーマンショック前の07年の水準をほぼ回復し(98.4)、大手アパレル5社(VFコーポ/ポロ・ラルフローレン/PVH/ジョーンズ・グループ/旧リズ・クレイボーンのフィフス&パシフィック)計売上は逆に二割り近く伸びており、同5社計経常利益率は10.6%と07年の6.4%を大きく上回っている。
 日本の百貨店が消化仕入れ依存のままローカルや郊外の店舗を撤収して都心店舗に投資を集中したのに対し、米国のDept/PDSは買取制の自社ロジスティクス(補給と店間移動)を活用して郊外店舗の売上を維持し、JCペニーは有力NBを次々とPB化して差別化を図り(結局はセール乱発で行き詰まり、アップルからCEOを招いて革命的再建途上)、コールズはしまむら的立地で大衆的NBをオフプライス販売して低所得層を取り込み、日本の百貨店のような縮小スパイラルには陥らなかったが、全米小売業平均の伸び率からは大きく劣ってシェアの凋落(各業態上位企業比較で02年度の49%から11年度は38.2%)は止められなかった。
 日本の大手アパレルが凋落する百貨店への依存を断ち切れず、駅ビルや郊外SCへのドメイン転換も遅々として進まなかったのに対し、米国の大手アパレルはポロ・ラルフローレンが世界規模でライセンス権を買い戻して直販体制に転換し、VFコーポレーションは果敢なM&Aで6割の事業を入れ替えてアウトドアビジネスに変身したが(社名の起源となった基幹インティメイトブランドも売却)、フィフス&パシフィック(旧リズ・クレイボーン)は果敢なM&Aと自社ブランド売却による『マルチブランド&マルチチャネル』戦略も破綻して凋落の一途を辿った。そんな米国大手アパレルのドラスティックなドメイン転換劇と較べると、日本の大手アパレルのM&Aや新流通への取り組みはジャブの域を出ていない。
 近年、日米百貨店/大手アパレルの戦略展開の比較検証は業界で顧みられる事がなかったが、当社は00年以降、毎年夏のビックコンベンションで検証し続けている。今年も8月30日開催のSPACビックコンベンションで、国内業界動向や商業施設開発動向に加え、米国SPA/大手アパレル動向も検証する。大手アパレルや百貨店の首脳には是非とも聞いてもらいたいものだ。
 2012/08/21 09:54  この記事のURL  /  コメント(0)

百貨店ブランドの納入掛け率を問う
 今年上半期の百貨店衣料品売上は14年振りに回復に転じているが、震災の反動を除いた実質では僅かながら水面を割っている。百貨店衣料品売上は91年の3兆9300億円をピークに11年は2兆1300億円と54掛けまで低落したが、その経緯を振り返ると何回かのターニングポイントがあった。
 92〜94年の売上急落はバブル消費の崩壊に拠るものだが、95〜00年の売上低下(96〜99年のそごう分売上を除く)はこの間に10ポイントも切り下げられた納入掛け率がアパレルの生産原価率をほぼ同率に切り下げて品質が劣化し顧客離れをもたらした事が主要因と思われる。さらに00年には定期借家法が施行され、前後して駅ビルの出店保証金はほぼ5分の1(80年代からは10分の1)になって駅ビルと百貨店の不動産コストがさらに開き、お値打ち感の差から百貨店から駅ビルへの顧客流出が加速した。
 それと並行して百貨店の駅ビルブランド導入が加速して01年以降は百貨店の平均納入掛け率は低下に転じ、11年では納入掛け率切り下げ前の94年の水準まで押し戻されたが、これは条件の良い駅ビルブランドが掛け率を押し上げたためで、百貨店ブランドの納入掛け率は切り下げられたままだ。これでは百貨店ブランドのお値打ち感は駅ビルブランドに対抗すべくもない。
 95〜99年に百貨店は大手アパレルの納入掛け率を切り下げて売上低下による収益低下を補い、01年以降は駅ビルブランドを好条件(高掛け率)で導入してOL層の流出防止に努めて来たが、大手アパレルの納入掛け率が改善される事はなかった。これでは大手アパレルを犠牲にして駅ビルブランドを厚遇しているだけで、百貨店ブランドのお値打ち感の改善にはまったく繋がらない。そんな本質的問題を放置したまま、バーゲン時期の後倒しで収益を改善しようという業界の動きは不可解と言うしかない。百貨店衣料品の浮上には中核たる百貨店ブランドのお値打ち感向上が不可欠で、大手アパレルはバーゲン時期論争が盛り上がる今こそ、この問題を提議すべきと思われる。
 2012/08/20 11:23  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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