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原価開示要求
 最近、カジュアルSPAの納入ODM業者に対する原価開示要求が相次いでいるそうだ。ODM業者の企画提案を仕入れるアウトソーシング体制からデザイナーを雇用しての自社企画体制へのシフトが背景で、開発固定費の増加を仕入れコストの切り下げで吸収しようという事らしいが、そうでなくても利幅の薄いODM業者の納入価格切り下げは優越的地位の濫用が疑われるし、カジュアルSPAで30%、百貨店アパレルでは20%を切っているという調達原価率をさらに切り下げるのは価格合理性(顧客の感じるバリュー感)を一段と損なう事が懸念される。
 20年振りに衣料品のデフレが終焉し品質とこだわりが再評価される状況は歓迎すべきで、デフレ時代のマーケットインなアウトソーシングからプロダクトアウトなインソーシングへシフトするのは必然だと思うが、それが調達原価率の切り下げをもたらして価格合理性を損なうとしたら本末転倒も甚だしく、せっかく市場が品質とこだわりに回帰して再拡大に転じようとする気運に水を差しかねない。
 アウトソーシング体制下で企画開発を支えて来たのはODM業者のデザイナーや生産管理スタッフであり、決して恵まれたとは言えない待遇にも拘らず夜討ち朝駆けでスペックを詰めてくれて来た。カジュアルSPA側が今になって多少、デザイナーを雇い入れて企画に注力しても、それは生産現場から遠く離れた机上の企画であり、生産現場に密着したODM業者の汗にまみれた企画開発とは次元が異なる。カジュアルSPA側が企画スタッフを雇用して開発固定費が増加した分、ODM業者の納入コストを切り下げて吸収しようとするなら、ODM業者の企画開発スタッフの待遇と陣容を圧迫して開発力を損ない、かえって付加価値を毀損する結果となるのではないか。
 ODM業者が原価に載せる手数料や利益はカジュアルSPAが調達原価に載せる膨大な利幅に較べれば‘雀の涙’ほどに過ぎない。そんなものを陰険に削って開発力を損なうぐらいなら、自らのコストを圧縮して原価率を切り上げ、バリュー感を高めて顧客の期待に応えるべきであろう。優越的地位を嵩に着て利幅の薄いODM業者に原価開示を要求する前に、まず顧客に対して自らの調達原価を開示すべきではないか。
 2012/08/31 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

ネタがないよね!
 といってもブログネタの話ではありません。今秋の改装ラッシュで新規導入されるテナントのラインナップがインパクトを欠いている事に警鐘を鳴らしているのです。三井不動産のラゾーナ川崎は全300テナント中、113テナント、同じくららぽーと豊洲は全190テナント中、50テナント、ルミネは全館で94テナント、渋谷109は8テナントを入れ替えるが、それら新規テナントとしてラインナップされたブランド/業態の大半は登場して久しく、あるいは新規開発でも小粒でインパクトを欠くものばかりで、ネタ不足を否めない。
 07年11月の改正都市計画法施行に伴う駆け込み開発が一巡した09年以降、郊外SCの開発は激減して新規開発の大勢は都心立地に移り、郊外SC向け業態の開発がストップしている上、新規開発が集中した駅ビル向けブランドは小粒ばかりで、外資SPAの進出も一巡してしまったから、改装の目玉になるテナントが不足しているのだ。セレクトショップやカジュアルチェーンで試みられているトラフィック業態やお手頃ファミリー業態も未完成でインパクトが弱く、目玉にはなりそうもない。そんな中、06〜08年の駆け込み開発SCが次々と定期借家契約の満了を迎えて今秋以降、改装ラッシュが続くのだから、インパクトあるテナントの弾不足は深刻な問題となっている。
 では、どんな業態が不足しているかと言うと、顧客やカテゴリーを限定しないライフスタイル業態や生活雑貨軸のデザインコンセプト業態で値頃感とスケール感のあるものが期待されるが、ターゲットを絞ったアパレル軸の業態/ブランドは小粒でインパクトが弱い。近年、駅ビル向けに開発されたブランドは後者のタイプばかりで、改装の目玉とはなりえない。
 スケール感のあるライフスタイル業態やデザインコンセプト業態の開発は大掛かりで数が期待出来ないから、未進出の外資SPAを漁りたくなるが、欧米系の有力業態は既に進出済みで、残された大物はビクトリアズ・シークレットとアンソロポロジー、ダークホースとしてはジョー・フレッシュぐらいでバラエティがなく、視野をアジアンSPAに拡げるべきだと思うが、欧米系に較べると極端に軽視されている嫌いが在る。
 SPAOやMIXXOなどの低価格韓流SPAには魅力を感じないが、シンガポールのエンフォシスやチャールズ&キース、香港のシャンハイ・タンなどグローバルに通用するブランドも少なくない。ちなみに、チャールズ&キースはLVMH、シャンハイ・タンはリシュモンが買収して傘下に入れている。さすが目の付けどころが違うという事なのだろう。日本のデベロッパーや百貨店も、そろそろアジアンSPA/ブランドに注目してもよいのではないか。
 2012/08/30 09:48  この記事のURL  /  コメント(0)

アパレルはローカルなもの
 ファストファッションなど外資SPAが注目されるとは言え、その売上は微々たるものだ。国内売上ランキング上位に入るのは推定860億円で14位に位置するギャップジャパンだけで、推定230〜250億円のザラジャパン、本国決算から238億円と推計されるH&Mジャパンがベスト50に食い込むに留まる。
 ユニクロの国内事業が前期6000億円で国内アパレル専門店市場の約7%を占めるのに対し、外資SPAはトップのギャップジャパンでも約1%、主要外資SPA全社を合計しても3%に届かないのが現実だ。それは米国でも同様で、ギャップ社が145.5億ドルを売り上げて全米アパレル専門店売上の5.9%を占めるのに対し、00年に進出したH&M社は239店で15.3億ドルに過ぎないし、89年に進出したZARAはわずか46店に留まる。
 外資SPAが急伸しているアジアでも、全社店舗数に占める比率は先行するユニクロこそ23%と突出しているが、インディテックスは7.5%、H&Mは4.7%、出遅れたギャップは0.6%に留まる。そのユニクロにしても、アジアシフトを強めるほど国内売上が伸び悩む傾向が顕著だし、大枚を投資した米国では赤字が拡大している。アジア市場に対応するほど国内や米国で伸び悩むというジレンマを抱えているようだ。
 我も我もと進出が加速している中国市場にしても、ジャパンファッションが受け入れられるのは沿海大都市部の限られた市場であり、大半のブランドは数十店舗、20〜30億円程度で頭打ちになって ‘巨大市場’の片鱗しか捉える事が出来ない。本格的に拡大するには中国市場に特化した実質的‘別ブランド’を開発してローカル対応するしかないが、それだけの覚悟で進出している企業が果たして何社あるのだろうか。アパレルでは現地開発の別ブランドを展開するオリーブ・デ・オリーブ、ランジェリーでは現地の体型と好みに抜本対応したワコールが良いお手本なのではないか。『アパレルはローカルなもの』と肝に銘ずるべきであろう。
 2012/08/29 09:38  この記事のURL  /  コメント(0)

木曜夕刻に迫るビッグコンベンション
 SPAC研究会の半期に一度の「ビッグコンベンション」が今週の木曜夕刻に迫っていますが、今回は20年振りのインフレ転換と38年振りのファッション係数反転という歴史的節目にあたって歴史観に立つ中長期の戦略構築を提言すべく、マーケットと業界の50年間に渡る経緯とターニングポイントを検証し、米国ファッション業界との比較も加えて今後の10年を予見します。
 ようやく底打ちして成熟期を迎えた市場に応えるには高付加価値を創造するプロダクトアウトなインソーシング開発体制、高付加価値を実現するブランディングな計画切り替え型VMD展開が不可欠で、単品売れ筋をマーケットインなアウトソーシング開発体制で継ぎ接ぎしてディスプレイでお化粧するこれまでのガラパゴス型ビジネスモデルは競争力を失うでしょう。
 戦略とビジネスモデルが正しくても、それを日々遂行する現場のオペレーション体制が伴わなければ絵に描いた餅になってしまいます。どのような戦略やビジネスモデルにはどのような現場オペレーション体制と技術体系が必要なのか、見極める現場感覚も経営者には不可欠です。
 そんな私の基調政策提言の後、オンワード樫山の馬場昭典様、ユナイテッドアローズの竹田光広様、お二人の新社長をお招きし、回復が期待される市場にどう仕掛けて行くか攻めの構想を伺います。現場感と歴史観に立つ複眼的視野でこれからの10年を提言するSPACビッグコンベンションにご期待下さい。
 2012/08/28 09:01  この記事のURL  /  コメント(0)

紳士服・婦人服の明暗を分けた要因
 今春夏期(2〜7月)の東京地区衣料品売上前年比は通算して紳士服が婦人服を3ポイントほど上回ったようだが、その要因をどう見るべきだろうか。
 婦人服に較べると変化に乏しい紳士服だが、今期に限れば婦人服を上回る変化があった。昨年に続いてビジカジのスタイル提案が広がった分、ビジネスとカジュアルのTPOが明確になり、スーツは上質志向で単価が上がり、カジュアルは一気にお洒落になってプリント物や丈変化パンツが広がった。それに対して婦人服は昨年来のレトロスウィートやクラシックフェミニンのトレンドを引き摺って変化に乏しく、レイヤード化でTPOがますます曖昧になって紳士服ほど単価が回復せず、両者の格差をもたらしたと推察される。この対称的な動きは3〜4月の春期で著しく、5月以降は格差も縮まって行った。
 紳士服は変化が緩慢な分、カジュアルは3〜4年に一度、クロージングは10年に一度ほどの間隔で地滑り的な変化が生じるもので、今年はビジカジとカジュアルの変化にビジネスの買い替え需要が重なり、売上が伸びたと思われる。婦人服は毎シーズンのように変化があるものの今春はトレンド変化に乏しく、売れ筋追いのQRがそれに輪をかけて鮮度を損ない、売上が伸び悩んだと推察される。OEM/ODM活用による短サイクルなマーケットインが蔓延した婦人服に較べれば紳士服はまだ自社開発による長射程なプロダクトアウトが色濃く残っており、トレンド変化が明確に出る分、3.11を契機としたスロー消費への転換にも紳士服の方が適応したと見るべきであろう。
 20年振りのインフレ転換から3シーズンを経た今も婦人服の開発体制はマーケットイン体質を脱しておらず、不器用にプロダクトアウト体質を維持して来た紳士服が変化に適応したというアナロニー劇と総括されよう。
 2012/08/27 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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