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立地だけで何の革新性もない!!
 先週末の日経にイオンの「コスメーム」、三越伊勢丹の「イセタンミラー」、東武百貨店の「コスメティックパレット」に続いて住友商事や高島屋(子会社のファッションプラザ・サンローゼ)も高級百貨店ブランドを揃えた化粧品専門店に進出するという記事が載っていた。これら一連の動きは百貨店の化粧品売上の陰りに危機感を持った外資系化粧品業界が仕掛けたものだとか。百貨店側に革新を仕掛ける技量が在るとも思えない。直近の5ヶ月間は前年を上回っているものの11年までの過去三年間、百貨店の化粧品売上は前年を割っており、百貨店数も減少が止まらず、20〜30代女性の駅ビルなどへの流出に危機感を持った事が背景だ、と解説している。
 この流れを若い女性の百貨店離れと捉え、百貨店で売っている高級ブランドを揃えて駅ビルなどで気軽なセミセルフで販売すれば新たな市場を開拓出来るという単純な立地戦略と見るべきか。ちょっと違うと私は思う。
 化粧品ブランドは古くからチャネル別に百貨店系/専門店系/ドラッグストア系、用途別にメイクアップ系/スキンケア系に分かれるが、近年は駅ビルなどでナチュラル系やドクター系の台頭が目立っている。販売方式はチャネルとほぼ一致しており、百貨店系はブランド毎の美容部員によるコンサルティング販売、ドラッグストアはブランド別棚割りVMDによるセルフ販売とはっきり分かれ、専門店は特定ブランドの美容部員に偏る事が多いもののブランド横断のコンサルティングが売物だ。ただし、百貨店に並ぶような外資系高級ブランドが揃うのは百貨店が存在しない中都市の特殊な高級専門店に限られ、中には客単価が十万円前後、月坪売上が三桁(百万円以上)という名店も見られる。日本ではワンダーコーポレーションの「コレコレ」(専門店系ブランド中心)ぐらいしかチェーン化に成功した例は見られないが、欧州ではそんな専門店がビッグチェーン化して注目された時期もあった(現在は香港資本下となった仏の「マリオノー」)。
 「コスメーム」も「イセタンミラー」もブランド別にコーナー展開し、各ブランドで研修を受けた自前販売員がブランド横断で側面販売するという提供方法を採るが、ポイント付加などはあっても定価販売が原則で、編集手法にも販売方法にも価格にも何の革新性もない。単に『百貨店の高級外資系ブランドが駅ビルやSCでも買えます』というだけの代物だ。立地的な便宜性だけが売りなだけに多店化していくと希少性が薄れ、ドラッグストア系同様、同質化競争に陥ると推察される。
 せっかく高級ブランドを揃えて百貨店外の立地に進出するのなら、「マリオノー」のようにブランド横断の本格的コンサルティングをじっくり行って客単価を稼ぐべきで、それなら混雑する駅ビルよりも、ゆったりと接客出来る高級住宅地のSC、駅ビルでも足元型のアトレの方が遥かに適している。外資系高級ブランドの肝いりで広がった動き故、価格の革新は期待出来ないから、『ブランド横断の本格的コンサルティングセールス』という提供方法の革新でもないと線香花火に終わりかねない。百貨店各社は化粧品に限らず、この機会に「専門店のノウハウ」を見直すべきだと思う。
 2012/07/31 15:29  この記事のURL  /  コメント(0)

SEOULバーゲンに殺到
 バーゲン時期論争が過熱する中、ちょっと小耳にはさんだお話。日本では業界利益を追ってバーゲンを後ろ倒しする動きが目立つが、インバウンド(海外観光客)消費を考えると世界の趨勢を無視して良いのかと警告を発したくなる。パリは6月末、NYは6月中旬と前にも書いたが、実際に競合する香港や上海、SEOULも6月中には本格的な夏バーゲンが始まるからだ。
 そんな中、今年は例年以上にSEOULの百貨店のバーゲンに日本人客が殺到しているという。格安航空便の就航で一段と手軽になった事もあろうが、日本の夏バーゲンが後ろ倒しされた事も影響しているのかも知れない。円高ウォン安で割安なSEOUL価格がバーゲンでさらにお買い得になり、日本では決してバーゲンしない一部のスーパーブランドまで上客にはVIP割引があるというから、わざわざ出かけるメリットがあるという事のようだ。
 昨日の日経のコラム『セールの開始時期』で高島屋の鈴木弘治社長が『売り手都合でバーゲンを一方的に先送りするのは顧客第一主義ではない』と言っておられたが、商人の本道をゆく立派な姿勢だとエールを送りたい。が、そんな立派な商売人はアジア近隣諸国にも少なくない。日本の不毛な混乱を見て、日本のお客様を積極的に勧誘しようという百貨店が出て来てもちっとも不思議ではないのだ。
 少子高齢化と産業の空洞化で市場が縮小して行く日本においてはインバウンド消費は数少ない有望市場であり、バーゲン時期の設定においても周辺諸国との競争関係を配慮すべきと思われる。バーゲン時期を後ろ倒しする動きが広がると、アジアのインバウンド客はおろか、大切な日本の上顧客さえ近隣アジア都市に奪われかねない。狭い業界村の論理を押し通して顧客を失う軽挙を反省してもらいたいものだ。
 2012/07/26 10:13  この記事のURL  /  コメント(0)

タイガーはH&M以上の衝撃!
 大阪はミナミのアメリカ村に21日に開店したデンマークの激安ワンコイン雑貨SPAの「タイガー」は超激安なのにカラフルポップな北欧デザインとジョーク感覚が楽しくてどれもこれも欲しくなり、お客さんが殺到して買いまくった挙げ句、アパログの南充浩君のブログに拠れば『在庫が底をついて初日は17時に繰り上げて閉店し、22日も同様で、24日、25日は臨時休業した』そうだ。24日は久しぶりに仕事で大阪に行ったのに、臨時休業で見損なったプロフェッサーは地団駄を踏んでいるのです。
 なのに見て来たように評価出来るのはウェブ時代ならではのマジックで、日経トレンディネットの多数の写真を使った報道に加え、BuleMonsterさんがユーチューブに投稿した14分44秒の店内動画『タイガーコペンハーゲン アメリカ村店』がほぼ全アイテムを網羅していたからです。カラフルポップな数百のアイテムと価格がバッチリ見れますから、消されてしまわないうちに皆さん、急いで見た方がよいですよ!
こんなカラフルで洗練されたデザインの、一部は何に使うか考えてしまうようなジョーク感覚が可愛い激安雑貨が今までどうして無かったのか、ダイソーさんやシルクさん、スリーコインズさんはもちろん、お高く止まっているフランフランさんにも衝撃だったに違いありません。最近は国内で元気のないユニクロさんも参考にした方がよいのかも。なにはともあれ、早く東京にも出て来て欲しいものです。タイガーはH&M以上の衝撃でしたよ!
 2012/07/25 12:53  この記事のURL  /  コメント(0)

バーゲン正常化より納入掛け率正常化
 バーゲンの後ろ倒しに批判的な意見を書くと、『バーゲン正常化のチャレンジに水を差すのはけしからん!』というお叱りのツィートが帰って来る。そもそもバーゲン後ろ倒しが出て来た背景は、夏物プロパー販売期間の短さによる歩留まり率の低さが収益を圧迫しているという業界の課題であった。しかし、バーゲンを後ろ倒ししてプロパー販売期間を長くすると歩留まり率は改善されるのだろうか。もっと本質的な問題を棚上げした主張のように思われる。
 そもそも春夏物の展開は12月のクルーズ(日本では例外的だが)に始まって冬バーゲン明けの春物投入、3月の連休前の初夏物投入、そしてGW前の夏物投入と流れるが、販売期間を確保して消化率を高めようと毎年、投入が早くなり、かつては5月末に投入されていた晩夏物がセレクトショップなどではGW前に立ち上がるようになった。そんな実情下ではGW前に投入した夏物をプロパーで引っ張るのは6月半ばが限界で、バーゲンを遅らせてもセール待ちに陥るだけだ。ましてや、GW前に投入した夏物を焼き直したような値頃品でプロパーを引っ張るのは無理が在り過ぎる。
夏のプロパー販売期間を後ろに伸ばすには、GW前投入の夏物とはスタイリングも素材構成もカラーリングもまったく異質な晩夏リゾート企画(通気性の高い晩夏色綿麻系意匠素材軸のゆるいスタイリング)を投入すべきではないのか。
 逆に、欧米式にプレフォールを早期に立ち上げるなら、夏バーゲンを前倒して早めに切り上げる法が合理的だ。どちらを選択するかは個別ブランド/館の営業方針だが、実際のシーズンMD展開と一致しないと売上も収益も望めない。
 歩留まり率を改善するもっと本質的な課題はマークアップ率の正常化だ。かつて消化仕入れの百貨店NBの生産原価率は30%強と言われたが、92年以降の売上低下局面で百貨店側が収益を確保せんと納入掛け率の引き下げを要求し、98年頃までにほぼ8ポイントも切り下げられた。結果、百貨店NBの生産原価率もほぼ8ポイント下がって22%前後(今日では20%以下)となり、90年代初期まではほとんど日本製だった百貨店NBはほとんど中国製になって価格に対するお値打ち感は大きく損なわれ、顧客の百貨店離れを加速する事になった。バーゲン正常化を言うなら、まず納入掛け率を92年以前の水準に戻して原価率(お値打ち感)の正常化を図るべきではないか。
 原価率と歩留まり率は統計的に極めて相関性が強く、原価率が高いほど(価格設定が誠実なほど)プロパー消化率が高くなって歩留まり率も高くなる。ちなみに、原価率38%のユニクロの歩留まり率はほぼ75%と推計されるのに対し、原価率63.2%のしまむらの歩留まりは独自の自社ルート便活用絶対単品店間移動体制も寄与して93.2%(ロス率はわずか6.8%)と極めて高い。原価率が20%以下の百貨店NBの歩留まり率は恐らく65%を割っているのではなかろうか。
 もし、百貨店NBの納入掛け率が8ポイント切り上げられて原価率も同程度改善されれば、プロパー消化率も歩留まり率も格段に向上するはずだ。歩留まり率改善にはバーゲン正常化より納入掛け率の正常化が先決なのではないか。
 2012/07/24 10:30  この記事のURL  /  コメント(0)

優越的地位の濫用!
 先週のWWDジャパンのコラムで伊勢丹新宿本店長の中陽次さんが夏セールを送らせる事が如何に業界や消費者の為になるか延々と論展しておられたが、私には一方的な主張としか思えなかった。実際、6月の専門店各社や百貨店の売上は不調で、多くが夏セールの後ろ倒しを要因として挙げていた。7月の売上が出て合算してみないと解らないが、セールの後ろ倒しが消費の回復基調に水を差した事は間違いないだろう。業界を主導する強大な企業の思いつきに業界が振り回されるというのは一種の優越的地位の濫用ではないかとさえ思える。
 それを言うなら、駅ビル業界の寡占企業、ルミネの夏セールに関する動きはもっと業界を振り回したのではないか。ルミネは三越伊勢丹に同調して夏セールを二週間後ろ倒しし、業界にも同調を強く働き掛けたが、昨年は逆に二週間、前倒ししたという経緯がある。節電下でのセール熱気を回避するためと理由付けしていたが、これも相当の屁理屈と言うしかない。結局、昨年と今年で一ヶ月も夏セールを前後した訳で、業界は散々振り回される事になった。
 セール時期をどうするかは個別館や個別ブランドの営業政策やシーズンMD展開に拠るもので、個々に一貫している限りは自由な競争政策として許容されるべきものだ。しかし、ルミネのように昨年は二週間前倒し今年は二週間後ろ倒すような無節操な跛行は、業界を振り回す優越的地位の濫用と言わざるを得ない。
 三越伊勢丹、とりわけ伊勢丹は欧米式のシーズンMD前倒しをリードして来た百貨店であり、プレフォールを積極的に展開して来た経緯を考えると、これもセールの後ろ倒しとは矛盾している。プレフォールを積極展開する欧米のデパート、とりわけ米国のデパートの夏セールは早く、6月中旬から始まって独立記念日(7月4日)までには一巡し、プレフォール一色に切り替わる。伊勢丹もまた自社の営業政策と矛盾しており、今回の夏セール後ろ倒しの経緯には不透明な点が多い。
 三越伊勢丹のセール後ろ倒し提案に同調した大手アパレルにしても、店頭のMD展開を見る限り、晩夏物を素材から開発した形跡が無く、一部で報道されたように大手アパレル側から働き掛けたとも思われない。セール後ろ倒しでMDも販売も混乱し、振り回された側だったと見るべきであろう。
 セールを何時行うかは営業政策が一貫している限りは個別館の競争的判断に委ねられるが、営業政策が無節操に跛行するようでは業界を振り回すだけで迷惑としか言いようが無い。強大な寡占企業の営業政策においては、優越的地位の濫用とならないよう慎重な行動が望まれる。
 2012/07/23 09:29  この記事のURL  /  コメント(1)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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