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‘デフレの20年間’に決別せよ
 既に実質バーゲンに突入したファッションビルや駅ビルの中で、未だほぼプロパーを維持して人気を集めているのが「スナイデル」と「ロデオクラウンズ」だ。前者はスィート系OLゾーン、後者はレトロアメカジ系マルキューゾーンを代表するブランドだが、どちらも今時の等身大スタイリングながら‘物’の創り込みが徹底している。
 「スナイデル」は素材感を活かしたパターンが巧みで周辺の類似商品と較べて立体感があり、スィート系OLゾーンでは高めの価格ながら国内でも中国でも人気を博している。「ロデオクラウンズ」はヴィンテージなグラフィックとデリケートな後加工が巧みで、パターンと着崩しがマッチして独特のライフスタイル感があり、これまた高めの価格ながら人気を博している。
 両者に共通しているのは デザイナー/パターンナー/生産管理が社内に揃った‘古典的’とでも言うべき開発体制で、マーケットインの機動性と開発固定費の圧縮を志向してアウトソーシングに流れた多くのアパレル事業者とは一線を画している。‘デフレの20年間’のビジネスモデルトレンドがマーケットインとアウトソーシングの小売業化だったとしたら、20年振りにインフレに転じたこれからはプロダクトアウトとインソーシングのメーカー回帰なのかも知れない。
 アパレル生産の海外移転とAMS(OEM/ODM業者)活用が進んだ‘デフレの20年間’にアパレルメーカーとリテイラーの際はすっかり曖昧になったが、これからはリテイラー系のSPAとメーカー系のSPA(と言うより直売事業と言うべきか)は道を分けて行くべきだ。リテイラー系でも「ユニクロ」のようなプロダクトアウトな垂直統合モデルも例外的に存在するが(だから画期的だった)マーケットインな水平分業モデルが大半であり、メーカー系SPAは同質化を回避して価値訴求に徹すべくプロダクトアウトなインソーシング開発体制に回帰すべきと思われる。
 ビジネスモデルのトレンドは時代とともに変遷して行くものであり、アパレルメーカーは‘デフレの20年間’に決別する刻を迎えているのではないか。
 2012/06/21 09:48  この記事のURL  /  コメント(0)

『皆で渡れば怖くない』で良いの?
 夏バーゲンを控えて晩夏物やプレフォールの打ち出しをチェックしようと店頭を一周したが、元よりプレフォール企画を手配していたごく一部のブリッジブランドやキャリアブランドを除いては流通素材を使った夏物の二次投入値頃品ばかりで、これで七月半ばまでプロパーを引っ張るのはもう絶対に無理。駅ビルやファッションビルでは既に大半のブランドがフライングセールやシークレットセールに突入しており、鮮度のない夏物をプロパーで引っ張る大手アパレルの売場は閑古鳥が鳴いている。
 このまま七月半ばまでプロパーを引っ張れば、6月は記録的な売上不振が避けられないし、二週遅れのバーゲンが盛り上がるという保証もない。二週遅らせてもバーゲンになる事には変わりなく、セール待ちの買い控え期間が長くなるだけだ。セールを先行するブランドや館で買ってしまう人も少なくないと思われるから、二週遅れのセールは盛り上がりを欠くのではないか。
 夏バーゲンの二週後ろ倒しは元より業界利益を目的に広がったもので「消費者利益」という錦の御旗がなく、消費者がそっぽを向けば大空振りになるリスクがある。業界が右往左往する中、プレフォール企画をしっかり投入するブランドや店頭では一切セールをしないブランドのポリシーがキラリと光る。業界ぐるみ『皆で渡れば怖くない』じゃなく、ブランド毎のMD展開と販売政策が問われているのではありませんか!
 2012/06/20 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

「悪夢の20年」の前には「狂気の10年」があった
 月曜日のブログで『ユニクロやしまむら、果てはファストファッションなど低価格訴求ビジネスが席巻した悪夢の20年』と書いたら、『80年代のDCブランド時代に戻りたいのか?』『SPAによるバリュー革新を否定するのはプロフェッサーの自己矛盾』などというツイッターが帰って来たが、適確なご指摘だと思う。私は20年振りの時流転換を明示すべく「悪夢の20年」とデフレ時代を総括したのだが、常軌を逸したインフレバブル時代であった80年代を無条件に肯定するつもりもない。
 総務庁家計調査による衣料品の購入単価は91年のピークから10年にかけて44.6%も下がったが、その前の80年代に実に55.0%(同期間の消費者物価上昇率は28.1%)も上昇しており、80年代のバブルを20年かけて清算したと言うのが実態だ。地価や株価など80年代のバブルは凄まじかったが、クリエイションという錦の御旗に燃えたDCブランドブーム下の衣料品バブルはもっと凄まじかったのだ。当時は若者が収入の大半を衣料品購入に費やすのが当たり前で、すっかり等身大になって価格に敏感になった今日の若者とは隔世の感がある。
 衣料品の値段が下がった分、業界の企画開発体制もすっかりシェイプされ、パターンや生産管理はほとんど外注に切り替わり、ODM活用が進んでデザインチームも大幅に減員されたが、一番デフレしたのは恐らくデザイナーの年俸だったのではないか。DCブランド時代の著名デザイナーは億単位で稼いでいたし企業内デザイナーとて今日の倍近くはもらっていたと記憶している。デフレの20年間に企画・開発職の削減と給与ダウンが続き、服飾専門学校生は実に5分の1以下に激減してしまった(78年〜2011年)。マーケットインに転じてアウトソーシングが進んだこの20年間、業界は間違いなく企画・開発力を損なって行き、業界を志向する若者も激減していったのだ。バブル時代を肯定する訳ではないが、「悪夢の20年」と揶揄したくもなろう。
 2012/06/19 10:23  この記事のURL  /  コメント(0)

『夢を売るビジネス』へ回帰せよ!
 今朝の日経MJは第一面で『安売り神話一休み』と打ち出してユニクロ、マクドナルド、すき家の5月既存店売上の失速を大きく取り上げていたが、‘一休み’という見出しで解るように一過性の足踏みか時流の反転か見定めかねているというスタンスが伺える。確かに今5月は昨年より土日祝日が2日少なく売上の減少要因となったが、衣料品に限ればバーゲンが後ろ倒しされる6月、その売上が乗る7月も前年との比較が難しく、消費基調の変化は8月、9月の数字が出るまで判定し難いという事になる。
 そんな先まで待っていては来年に向けての投資計画や商品計画が定まらず、そろそろ消費動向に結論を出すべき時期なので、改めてプロフェッサーは明確に結論したい。『20年続いたデフレ局面が終焉して中長期的なインフレ局面に転じており、これからは安売り型より価値訴求型のビジネスが伸びる』と。
 既に衣料品の単価は昨春以降、5%前後のインフレを続け、紳士服から子供服、婦人服へと復調が広がりつつあるが、現金給与総額、消費支出、消費者物価などのマクロ指標も2月以降、プラスを継続している。昨年の震災の反動や復興需要という一面も否定出来ないが、5月16日付けの本ブログで『産業の空洞化と少子高齢化が進む中で収入は伸びないのに支出が増加し、製造業が低迷しても消費が経済成長を主導するという米国型の経済に転換し始めた。OECDの統計に拠れば、90年代までは倍から三倍も差のあった日米の貯蓄率が今世紀に入って急速に縮まり、08年以降は日本が逆転して低くなり、11年度では米国の3.6%に対して日本は3.2%となっている。もはや日本人の勤勉貯蓄体質は過去の神話となったのだ。』と指摘したように、米国型のキリギリス経済へと日本は間違いなく転じつつある。
 欧州経済危機下の今第一四半期もラグジュアリー各社は好調に売上を伸ばしており、『景気に関わらず価値訴求型のビジネスは伸ばせる』という証を見せつけている。ファッションビジネスは元より夢を売る価値訴求ビジネスであったはずで、ユニクロやしまむら、果てはファストファッションなど低価格訴求ビジネスが席巻した悪夢の20年が終わった今、我らファッションビジネスは再び『夢を売るビジネス』に回帰すべきだ。
 2012/06/18 11:06  この記事のURL  /  コメント(0)

衣料消費回復は続くのか
 3.11以降、衣料消費が20年振りにインフレ転換し、婦人ランジェリーに続いて紳士服にも神風が吹いて久方振りの活況を呈しているが、果たしてこれは部分的一時的現象ではなく衣料消費全般の長期的回復に繋がると見てよいのだろうか。
 マクロ的に見れば、国内生産の空洞化も生産年齢人口と総給与所得の減少も収まるはずはなく、国内総消費支出のパイは今後も縮小が続くと見るしかない。衣料消費の回復は調達コスト上昇と過度のファスト志向の反動による購入単価上昇がもたらしているもので、中長期的な継続は読み切れない。しかし、衣料消費回復の継続を十分に期待させる明確な要因がある。それは行政の商業施設開発規制による競争環境の緩和である。
 92年以降の衣料消費の縮小はバブル崩壊後の経済の停滞、生産の中国移転によるデフレ進行、低価格SPAの急成長などが要因とされるが、より本質的な要因として商業施設開発の規制緩和を指摘する研究者も多い。実際、74年の大店法施行以降、次第に強化されていった開発規制が日米構造協議を経て90年頃から緩和に転じ、92年の改正大店法施行、94年の改正大店法のさらなる規制緩和、00年の大店立地法の施行と急速に規制緩和が進み、郊外主体に毎年大量のSC開発が続いた。SC総商業施設面積は91年の1845万平米が00年には3720万平米と9年で倍増して平均坪販売効率は27%も下落、08年には4875万平米と2.6倍を超えて平均坪販売効率は43%も下落してしまった。これにともない、量販店や専門店チェーンの収益力も大きく低下して行ったのだ。
 そんな流れが一変したのが07年末の改正都市計画法施行による開発規制の強化で、駆け込み開発も一巡した09年以降はSC開発数も増加商業施設面積も激減(ほぼ半減)し、競争環境は次第に緩和されて行った。そんな状況に3.11以降のインフレ転換が重なって今の衣料消費回復に至った訳だから、再び行政が規制緩和に転じない限り回復基調は継続すると考えられる。内政的には消費税増税も控えて規制緩和に転ずる背景はなく、回復は中長期的に継続すると結論される。
 開発規制による競争緩和効果は郊外SCにおいて顕著だが、都心再開発が一巡した百貨店にも回復が波及しつつある。婦人ランジェリーから紳士服に広がった回復が婦人服全般に及ぶのも時間の問題で、価値訴求型、ライフスタイル訴求型、トラフィック・コンビニエンス対応型のブランド/業態開発が報われる公算は極めて高い。業界は積極策に転ずる刻を迎えたようだ。
 2012/06/14 11:41  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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