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プリンシプルとフェアプレイ
 昨日午後、『アジア市場における事業展開』をテーマに月例のSPAC研究会を開催しましたが、時節を得たテーマと魅力的なゲストパネラーで会場は満員となり、息苦しいほど熱気が溢れていました。中国/アセアン市場の最新動向と事業展開、出店コストや取引条件など私の詳細な報告の後、アパレルウェブの千金楽社長をコーディネーターに、シンガポール国際企業庁東京事務所所長 リー・ホイリョンさん、キャピタランド・リテール・マネジメント代表取締役 ケック・チーハウさんをお招きしてパネルディスカッションを開催しましたが、千金楽さんの突っ込みが上手かったのか私のリアルな報告でテンションが上がったのか、お二人とも期待以上にオープンに発言され、『シンガポールや中国に出店されるならご遠慮なくご相談ください』と締めくくって下さいました。という訳で、バネル終了後はお二人の前に名刺交換の行列が出来ました。
 お二人に共通するのは日本在住が長く(どちらの奥様も日本人)言葉に不自由がないこと、恐らく30代の若さで重要なポストに在ること、そしてプリンシプルが通った知的ジェントルマンであることでしょう。中国/アセアンというと属人的な要素が強く賄賂が横行するイメージがありますが、かつて英国の植民地であったシンガポールはプリンシプルとフェアプレイの紳士のお国柄で、公務員であるリーさん、国家資本デベロッパーのエグゼクティブであるケックさん、お二人ともプリンシプルの通ったサービス精神を感じさせてくれました。会場には香港貿易発展局のスタッフも駆けつけてくれましたが、同様に旧英国植民地である香港もプリンシプルとフェアプレイの紳士のお国柄である事は言うまでもありません。
 中国進出がブームとなり中国資本が日本企業を買いあさる昨今、「中国式ビジネス」を真似る経営者もおられるようですが、ビジネスの王道はプリンシプルとフェアプレイに徹してお客様やお取引先を裏切らない事だと思います。中国/アセアン進出においては信頼出来るパートナーや行政サービスを活用すべきで、‘裏技’に期待すべきではないでしょう。
 2012/06/29 11:02  この記事のURL  /  コメント(0)

百貨店人は学習するのか?
 今朝の日経はセブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武が西武沼津店とそごう呉店を来年早々に閉店すると報じていたが、同じく来年一月に閉店する大丸のららぽーと横浜店(食品のみの一層)、新長田店(食品と衣料・雑貨の二層)を合わせれば全国の百貨店は245店に減少する事になる。ピークの99年の311店からは66店減少して八掛け弱の店舗数になるが、この間に百貨店売上はほぼ七掛け弱、ピークだった91年からは実質六掛けになってしまった。
 この間の閉店店舗は地方都市の空洞化に伴う地方小都市店舗、地方都市下位店舗、新幹線駅上店舗(京都、名古屋、博多)への売上集中に伴う周辺都市店舗、大都市駅上/駅前店舗への売上集中に伴う旧商店街店舗に加え、一時は希望の星だった郊外SC店舗や郊外駅上衛星店舗も少なからず含まれる。結局のところ、日本の百貨店は成長機会をすべて失って都心一等立地への集中化と減店化の道を辿り、成長著しいアジアに希望を託す事になった。
 振り返って見れば、バブル華やかなりし80年代末期には米国ノードストロムに注目し、バブル崩壊後は低価格SPAの一方でセレクトショップが芽生えて行ったのに、百貨店は消化仕入れの歩率交渉に終始するばかりで買取の自主MDには踏み込めず、それゆえ郊外SC店舗の収益性にも目処が立たず、あらゆる成長機会を見失ってしまった。
 90年前後には百貨店業界のノードストロム詣でがブームとなったが、お偉方が大枚賭けて視察した結果は大理石張りの豪華な店装とピアノ演奏だけで、『買取仕入れに基づくセレクトショップの複合体』というノードストロムの魅力の本質が学ばれる事はなかった。それゆえ、今世紀に入っての郊外大型SC開発ブームにおいても郊外SC店舗の収益性が見えず、米国のような郊外店のチェーン展開は幻に終わってしまった。
 結局の所、日本の百貨店人は真摯に学んで成長機会を開く事がなく、今もセール時期を後ろ倒すの否のという次元で右往左往している。一部の賢明な百貨店は駅ビル/ファッションビルとのハイブリッドを志向しているが、これは日本の百貨店より格段に収益性の高い中国や韓国の百貨店の定石であり、ある意味、素直な学習が評価されよう。明日開催するSPAC研究会では中国における百貨店の歩率とSCの歩合家賃、代理商への買取卸掛け率などが検証されるが、中国や韓国では百貨店がビル型SCを一体開発するケースが多く(専業デベの開発するSCには百貨店は入らない)、百貨店とSCの実質家賃負担は大差ない。元からハイブリッドな一体開発ゆえと思われる。
 日本の流通業はこれまで欧米から学んで来たが、これからは中国や韓国、シンガポールやマレーシア、タイなどの先進的小売業者から学ぶべきだ。日本の小売業がアジアに先行していると思い違いしていてはアジアでの競争に取り残されてしまう。とりわけ百貨店人は真摯に学習してほしいものだ。
 2012/06/27 10:14  この記事のURL  /  コメント(0)

ウェブ販売に変調
 SPAC研究会に先駆けて毎月、当社で開催している「販売データ交換会」では参加者から最前線の実感が報告されるが、商品の傾向に加えてオヤッ!という変調が報告される事もある。今月の例会では某アパレル系モールサイトに出店している自社店舗の売上減少(伸び悩みではない)が異口同音に報告されたが、各社とも自社サイトは順調に伸びているとの事で、苦戦は某アパレル系モールサイトに限った現象のようだ。
 アパレルのウェブ販売は急拡大して来たが、某アパレル系モールサイトに限らず、ここに来て明らかな変調が見られる。それはウェブ専業アパレルに始まった伸び悩みがアパレル系モールサイトに広がって来た事だ。スマホの急激な普及はアパレルのウェブ販売を加速したが、O2O効果で店舗との相乗が高まった結果、店舗網を確立している事業者と店舗を持たないウェブ専業事業者の格差をもたらした。それがアパレル系モールサイトにも波及し、自社サイトとモール出店サイトの明暗をもたらしているのかも知れない。加えて、アパレル系モールサイトの苦戦はアマゾンや楽天など大手総合事業者のアパレル本格参入で競合が激化した事も大きな要因と思われる。
 ほんのちょっと前までイケイケどんどんで注目された事業が一瞬にして壁に当たるという変調はアパレル系モールサイトに留まらない。20年振りのインフレ転換で、アウトソーシングでマーケットインするお手頃カジュアルチェーンが壁に当たり、等身大OL狙いの駅ビルにも頭打ちの兆候が見られる。市場は時とともに移ろうもので、成功体験に囚われていてはやがて壁に当たる。「スマイルカーブ戦略」も「小売の環」もそれに警鐘を鳴らす先人の知恵なのだろう。
 2012/06/26 12:09  この記事のURL  /  コメント(0)

「ものづくり白書」の衝撃
 6月5日に経済産業省が刊行した「ものづくり白書2012年版」はまさしく衝撃的な内容だった。世界に冠たる日本の製造業の現状を検証して方向性を提唱する「ものづくり白書」が、先進国と新興国に挟み撃ちされて衰退する日本の製造業の‘敗戦’を認め、焼け跡からの再生を提言するという‘衝撃的’な論展だったからだ。
 ものづくりのデジタル化/モジュール化が進んで我が国製造業の技術開発に基づく垂直統合生産の優位性が崩れ、企画・開発に特化して付加価値を創造し生産は新興国にアウトソーシングする先進国、生産設備への巨額資本投下と技術のキャッチアップで先進国に劣らない製品を安価で大量供給する新興国に挟撃され、日本の製造業はマーケットシェアも収益力も失って行った。ITエレクトロニクス分野の勝者はアップルとIBM、その対極にある台湾中国の巨大EMSであり、自動車分野の勝者はVWグループだと総括する内容はまさしく‘敗戦宣言’と言うしかない。そんな事はもはや明々白々だが、経済産業省が公式な白書で前面降伏したという衝撃はまさしくボツダム宣言受諾に匹敵するインパクトがあった。
 聡明な日本の製造業は既に白書で指摘されたようなスマイルカーブの収益ポジションへ移動を急いでおり、高付加価値な素材や基幹部品、機能性とバリューで独占的なシェアと高収益を実現している企業も少なくない。身近な所では繊維の東レ、自転車部品のシマノ、ランジェリーのワコール、化粧品の資生堂などがその典型だが、アパレル業界では誰がそんな戦略を描いているだろうか。ビジネスモデルの基本はスマイルカーブの何処で収益を確保するかだが、日本ブランドの海外進出ではそれがまったく見えていない。
 業界では中国、アセアンへの進出が加速しているが、アウトソーシングでマーケットインするデフレ型ビジネスモデルのお手頃ブランドがインフレ著しい新興国のブランディング競争に勝ち残るとは到底思えない。アップルのように突出した企画・開発力とブランディングが可能とする水平分業、あるいはルイ・ヴィトンのように完璧な自社企画・自社生産とブランディングが実現する高付加価値、あるいは・・・・・、どれも見当たらないのが実情だ。
 アジアで成功するジャパンブランドはラグジュアリーかクリエイションに徹した高付加価値ブランドかパーツ性と機能性に徹したバリューブランドだけだと思う。それも日本からの出店感覚ではなく企画・開発から販売・アフターサービスまで現地に根ざした別途の事業であるべきだ。そんな事を考えながら、今週28日(木)に開催するSPAC研究会『アジア市場の最新動向と事業展開総研究』の詰めを急いでいる。
 2012/06/25 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

やはり泥縄だったんですネ
 コーディネーターから6月直近の店頭スタイリング動向報告が上がって来たが、駅ビルや百貨店のOL〜トランスキャリアブランドは夏物売れ筋の値頃焼き直し品ばかりで鮮度がなく、これでプロパーを引っ張るのは絵空事に思えた。その一方で一部のカジュアルブランドではクール&ダークな晩夏企画も値頃で投入されており、こちらは本セールまで実需で売れそうに見えた。本格的なプレフォール企画はラグジュアリーブランドやブリッジブランドでは当たり前で、グローバルSPAやセレクトショップの一部でも見られるが、駅ビルや百貨店のOL〜トランスキャリアブランドではまったく見られない。
 6月半ばからセールに入る米国や6月末からセールに入る欧州ではプレフォール企画の早期立ち上げは必然だが、セール時期が大差ないのに日本ではプレフォール企画は例外的で、ダークカラーの晩夏企画(綿/麻素材のオリエンタル〜エスノ系、ジャージ素材のクールモダン系など)がその替わりを担って来た。しかし、近年は晩夏企画の立ち上げが早まってGW前に一巡してしまい、販売期間が限られる5月末〜6月投入はごく限られるようになり、セール待ちに入ってしまうと売る物がないというのが実情だった。だから夏バーゲンの前倒しが進んでしまったのであり、意図的に後ろ倒しするのならプロパーで引っ張れる晩夏企画の拡充が不可欠だったはずだが、後ろ倒しを強行した大手アパレルはほとんど晩夏企画を投入していない。どうやら夏バーゲンの後ろ倒しは泥縄式に広がった話のようで、準備万端だったとは言えないようだ。
 夏バーゲンは結局、弾が揃った早い者勝ちで、後ろ倒し組は手痛い打撃を被る可能性が高いが、本気で後ろ倒しを定着させたいなら万端の準備をして晩夏企画やプレフォール企画を拡充するしかない。来年の事を言うと鬼が笑うのかも知れないが、後ろ倒し推進派は来年に向けて仕切り直しすべきであろう。
 2012/06/22 10:11  この記事のURL  /  コメント(1)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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