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「伊勢丹な人々」の功罪
 伊勢丹話が続いたところで長年、伊勢丹について疑問に思っていた事を総括したくなった。それはもちろん「伊勢丹な人々」の功罪だ。
 「伊勢丹な人々」は川島蓉子女史の迷著で、刊行当時は何と軽薄な内容かと嫌悪したものだ。その後の伊勢丹出身者の活躍?を検証した上で「伊勢丹な人々」を私なりに定義するなら、『裏付けの無い自信と優越感を振りまいて会社を顧客から乖離させる危ない元伊勢丹人』と言う事になるのだろうか・・・・・もちろん、現場経験豊富で堅実な実務家もおられると思うが、00年代に派手な動きが注目された方々は皆、あまり好ましい結果は残されなかった。
 私の経験則では、小売業の改革に当たっては過去の成功体験に固執するより、当該企業の顧客と現場力を直視して現実的なカイゼンを積み上げる方が確実な成果に繋がると思う。顧客と現場力の関係を地に足付けて見通せば、何が突破口になるか自ずと見えて来る。それを曇らせてしまうのが過去の成功体験で、『勝てる時代に勝てる立場に在った企業の成功体験』など邪魔にしかならない。
 伊勢丹という企業に突出したノウハウがあったかどうか、小倉や吉祥寺の撤退、JR大阪三越伊勢丹の歴史的惨敗や三越銀座店の初年度予算割れという結果を見る限り、『勝てる時代に勝てる立場に在った企業』に過ぎず『負け戦を押し返す力量のある企業』とは到底言えない。当然ながら「伊勢丹な人々」に突出した力量があるという類推も難しい。むしろ「伊勢丹な人々」の裏付けの無い自信に振り回されて企業が顧客や現場から乖離し、残念な結果を招く事が多かったのではないか。
 2012/01/31 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

伊勢丹新宿本店再生策
 先週末のブログで伊勢丹新宿本店の来春リモデルへ向けた三越伊勢丹HD新経営陣の戦略構想への絶望を語ったが、関係者が理解し易いよう、もう少し具体的な指摘を加えておきたい。
 小売業にとって至上命題は顧客満足であり、顧客の失望と労苦を極小化しつつ売上を極大化するシステム変革を常に仕掛け続けなければ競争から脱落してしまう。伊勢丹新宿本店の課題は、顧客に苦痛を強いるほど、ブランドの品揃えを限定せざるを得ないほど、高止まりした売上を下げる事なく、顧客満足を改善する事にあると思うが、その突破口は館内ロジスティクスにあると見た。
 これはプロとしてより長年の顧客としての実感だが、新宿伊勢丹ではどのブランドの売場でも品揃えが(販売効率の低い他百貨店と較べて)相当に限定されており、接客途中で販売員さんが何処か遠くのストック室に消えて10分も15分も帰って来ない事が多い。その間、顧客は売場で待たざるを得ず、待ち渋滞による混雑が加速される。もうひとつ、前回も指摘したが、正社員のいる集中レジへ派遣店員が商品を持って往復しなければ精算が済まず、その為のスペースや二重人件費はもちろんだが、往復する派遣店員の渋滞、待たされる顧客の渋滞が混雑に輪をかけている事は明らかだ。
 このように、伊勢丹新宿本店の売上限界は旧態な販売管理システムと非効率な後方ストック配置による館内トラフィック混雑によるもので、来春のリモデルへ向けては以下の三点を抜本是正すべきと思われる。
1)新宿本店を商品在庫が経由しない販売システムを拡大する。物理的ハードルを下げるにはネットやTV、チラシ媒体で受注してメーカーやDCから顧客へ直送する販売システムの比率を高めればよい。アマゾンやスタートトゥディのようなロジスティクス戦略が百貨店にあったら、今日のような苦境には陥らなかったであろう。
2)本館/新館/事務館/駐車館/伊勢丹会館を含めた荷受け場とストック室の配置、後方物流のルートを体系的に再編し、トラフィックの無駄を極小化する。この問題を解決するには物流施設の専門家が不可欠だが、避難階段移動を含めた建築的消防法的対策も突破口になると思われる。
3)SC方式のオンライン(オフライン併用)レジシステムを導入し、派遣店員が売場から移動する事なく精算を完了出来るようにする。これは混雑や待ちを解消するだけでなく、要のスペースを占めていた集中レジが消える事により、売場が増えたり後方ストックを拡大する効果も期待される。
 この三点を遂行するなら売場面積はむしろ増え、館内トラフィック混雑は相当に緩和されて買い物の労苦も軽減されるはずで、『斬新な売場に改装するので売場面積が12%も減る』という大西洋氏の論旨は著しくリアリティを欠いている。市井の老識者の指摘に応える意志など持たないのかも知れないが、出来ればご説明頂きたいものだ。
 2012/01/30 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

伊勢丹本店の自殺行為
 今朝の日経に2月1日付けで三越伊勢丹HD社長に就任する大西洋氏へのインタビューコラムが載っていたが、主題となった来春の伊勢丹新宿本店全面改装の方針を聞いて『コリャ駄目だ』とガックリ来た。
 『斬新な内装に刷新するので売場面積が12%減るが、集客力を高めて売上は毎年5%伸ばす』という方針は、限られた売場面積に無理に突っ込まれたブランドの品揃えが偏って取引先との軋轢が絶えず、顧客もあまりの混雑に買い物の労苦を厭ってしまうという現状をさらに悪化させる『ブランドと顧客に冷淡な効率主義』であり、これ以上混むなら他店へ乗り換えようという顧客、これ以上品揃えを削がれるなら他店へ乗り換えようというブランドを増やす事になるのではないか。
 かっこつけて売場面積を圧縮する以前に、伊勢丹新宿本店がやるべき改革は山ほどある。まずやるべきは古典的な集中レジシステムとそれが占める面積と導線の無駄、派遣店員と重複する大量のレジ要員の削減であろう。実際の販売はブランドの派遣店員がしているのに支払いと包装は遠くの集中レジへ行って正社員にやってもらわねばならず、時間とスペースの無駄、二重雇用の無駄が指摘される。正社員のいるレジへ行って先払いし、レシートを売場に持って行って商品を受け取るチャイナ方式を笑えないのでは・・・・。最近のデパ地下食品ではレジシステムのオンライン化が進み、派遣店員だけで精算と包装が済んでしまう合理的な方式が急速に普及しつつあるが、まさか伊勢丹さんはご存じないとも思えない。
 もうひとつ、売場の通路に仁王立ちになって周囲を威圧している黒服のおじさんやお兄さんをなんとかして欲しい。販売するでもなし何かを聞いても案内出来る訳でもなし、時として腕まで組んでいる姿を見ると、こいつら派遣店員と顧客を監視しているつもりなんだとムカついて来る。それも主通路の一等地端に立って通路巾を確実に狭めているのだから、混雑に疲れた顧客とすれば『退いた退いた!』と押しのけたくなる。この販売実務を負担しない黒服たち(所謂エリート総合職)の人件費が百貨店の法外な歩率要求をもたらしている一因である以上、三越並みに削減すべきは当然だ。
 こんな必然の改革に目を瞑ったまま、かっこつけた売場圧縮に走ってさらなる販売効率を取引先と顧客に強いるという新経営陣のミーハー感覚とリアリティの欠落を恥ずべき同窓(大西氏とプロフェッサーは同じ大学同じ学部)の体質と疑うのは、名門私大に大学から入った地方出身者の僻かも知れませんネ。
 2012/01/27 10:45  この記事のURL  /  コメント(1)

コレクションに背を向けて
 毎シーズン、コレクションが始まる頃になると当社スタッフはそれに背を向け、各ブランドの店頭を何周もして「ブランドツリー」の作成に入る。ブランドミックスにせよテナントミックスにせよ、テイストのみならず開発手法や物作りのスタンス、MD手法や編集手法まで反映した「ブランドツリー」をきちんと詰めておかないと実務に耐えないからだ。
 80年代にはコレクションと店頭MDにほぼ等量の時間を割いていたように思うが、今では1対10以上に開いてしまったのではないか。それだけコレクションブランドの存在がマイナーになり、世の主流がMDブランドになってしまったと言う事なのだろう。あるいは業界が忙しく世知辛くなり、時間を取られる割りに(自己満足以外の)メリットの薄いコレクション見物が疎まれるようになったのかも知れない。
 コレクションを見ればブランドのカルチャーやテイストは位置づけられるが、展示会や店頭を見ないとMDの組み方やシーズン展開は解らない(MDを組まない事がコレクションブランドの特質と言われた時代もかつてはあったが・・・)。評論家にとってはカルチャーやクリエイションが判ればよいのかも知れないが、MDのプロはそうは行かない。変にクリエイション信仰にのめり込むバイヤーもいるが、第一線のバイヤーこそブランドのMDを見極めて欲しいものだ。
 2012/01/26 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

FCの色々
 数日前の日経にワールドが地方スーパー向けに「シューラルー」のFC展開を広げるという記事が載っていた。元々「シューラルー」は小商圏の小型SCに適した自社ブランド編集低価格ママ子カジュアル業態で、単価や販売効率と運営費のバランスから見れば直営店の拡大には限界があった。
 そんなワールドと低価格ママ子カジュアル商材の入手に苦労する地方スーパーの利害が一致して、FC展開を拡大するという機運になったと思われる。
 FC展開(以下、FC契約と言う)はジー側が店舗投資してザー側が商品や運営ノウハウを提供するもので、ザー側が店舗投資してジー側に運営を委託する販売代行とは区別されて来たが、曖昧な言い方をする企業もままある。FC契約は資金力はあるがノウハウを欠くローカル企業が選択するもの、販売代行契約は運営ノウハウ/人材はあるが資金力を欠く企業が選択するものと考えられる。
 FCの一種にバーチャルSPAという概念があるが、これは直営店と同じ商品補給管理下で(当然、同じVMD運用下で)直営店と同じサービスを提供せんとするもので、本社の在庫補給管理下で同一水準の運営が行われる限り、FCか販売代行かは問われない。ただし、買い取り型FCはこの概念を満たさない。
 ワールドは70年代のオンリーショップ当時から買い取り型のFCで卸し事業を拡大したが、DCブランドブーム以降は直営店展開にシフト。90年代に入ってはバーチャルFCを初め様々なFCモデルを模索して来たが、直営店主導体制が崩れる事がなかった。今回のFC拡大もローカル小商圏業態に限っての部分的な取り組みになるのだろう。
 2012/01/25 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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