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ルミネの新店は静かな変化
 ようやく秋の新規導入店が出揃ったので、新宿のルミネとエストをチェックに出かけました。今秋の新規導入物販店は計23店舗、うちアパレルは18店舗でしたが、目立った傾向は以下のようなものでした。
 ルミネ1/2の新規導入店はメーカー系の自社開発型ブランド、またはそれらの複合編集が多く、物がしっかり創られている分、価格もボリュームベター前後と高めでした(マーキュリーデザインの「AMIW」やアルページュの「リランドチュール」、フレーバーの「バルコニー」など)。「カバーガール」は「bonicadot」の自社ブランド編集+ブロガーブランドみたいですが素性が不明で価格も高く、私にはよく解りません。総じて世代的にも価格的にもトランスキャリア層が強化され、百貨店顧客の本格的取り込みが始まったという印象です。
 ルミネエストの新規導入店はフェミニンモードからモードミックスまで幅広く、レトロ感やヴィンテージ感が色濃いショップが目立ちました。なかでも可愛かったのがナチュラルガーリーなオリジナルに米国ブランドの古着をミックスした「フラワー」(3F)で、お値段もロワーモデレートとお手頃でした。マークスタイラーのカジュアルミックスブランド「アングリッド」はブロガーブランドっぽいヴィンテージ感がキャラですが、お値段と味付けのバランスは今ひとつ。マッシュスタイルラボのレトロなフェミニンモードブランド「リリーブラウン」は自社開発でデザインが可愛いわりに手頃なモデレートプライスに収まっていました。トーキョーブランドのセレクトショップ「ステュディオウィメンズ」、モードミックスブランドの「ブレストウキョウ」はいまひとつインパクトが感じられませんでした。
 総じて静かな変化という感じで目新しさはありませんでしたが、今の時代をそれなりに反映しているのでしょう。ざっと見た印象なので正確さを欠くかも知れませんから、詳しくご存知の方はツィッターででもフォローして下さいネ。
 2011/09/12 09:26  この記事のURL  /  コメント(0)

柳井さんの「総合芸術」発言にびっくり
 今朝の日経MJに日本マクドナルドHD会長兼社長の原田泳幸氏とファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏の対談が載っていましたが、『グローバルワンを目指せ』『現場とのダイレクトコミュニケーションが要』などお二人の主張が共通していたのが印象的だったのに加え、柳井正氏の『経営とは総合芸術だ』という発言にちょっとびっくり。柳井さんてコンピューター付きブルドーザー系の経営者というイメージが強かっただけに、ワーグナーを想起させる「総合芸術」という言葉が出て来るなんて想定外で、ひょっとしたら今までこの経営者を誤解していたのかもとさえ思ってしまいました。
 ファストファッションに多少は影響されたシーズンもあったけど、『生活の部品としての服』というブランド・アイデンティティを大きく外す事もなく、H&M社のようにコスト構造をインフレさせる事もなく、『良い服を安く』という仕組みを追求して「ユニクロ」をグローバルブランドに育てた経営手腕は確かに「総合芸術」と評価されてしかるべきでしょう。ジル・サンダー女史の感性とはギャップを否めなかったり、店頭のカラー陳列のセンスや店舗デザインの建築的美意識が疑われたりと感性の芸術性には疑問が残りますが、実績から評価される経営手腕は「総合芸術」の域にあるのかも知れません。
 私が美術的感性も含めて『経営とは総合芸術だ』と評価する経営者はリミテッドブランズ社の創業者かつ再生者たるレスリーH.ウェクスナー会長、アバークロンビー&フィッチ社を高収益企業に変身させたマイケル・ジェフリーズ会長、ギャップ社をSPA企業に変身させた中興の祖たるミッキー・ドレクスラー氏(現Jクルー会長)の三人ですが、彼らに共通するのは経営手腕のみならず建築的芸術性を備えていた事です。レスリーH.ウェクスナー氏など「ヘンリー・ベンデル」で商業美術の粋を見せつけたのみならず、創業の地たるコロンバスのオハイオ州立大学に現代美術作品を展示するウェクスナー美術センターを寄贈しています。
 私が柳井さんをレスリーH.ウェクスナー氏に並ぶ真の経営芸術家と認めるには(大きなお世話でしょうが)、「ユニクロ」に欠けている色彩美と建築的芸術性を見せつけてくれなければなりません。それらが経営手腕の水準に達した時、ファーストリテイリング社は世界で尊敬される真のグローバルカンパニーとなれるでしょう。
 2011/09/09 09:58  この記事のURL  /  コメント(0)

SPAの本質を問う
 イトーヨーカドーの新開発PB「good day」は企画・開発から生産管理まで貫徹する同社初の本格的SPAと鳴り物入りで打ち上げているが、デザインチームが外注だったりトレンド対応のQRを謳ったりと矛盾が多く、どんなビジネスモデルなのかさっぱり解らない。商品を見ても大手商社標準仕様の味もキャラも鮮度もない代物で、ヨーカドー顧客の好みもまったく反映されておらず、本格的SPAであるか否かの以前にPBでさえない。商社にお任せの独占NBでしかないというのが私の評価だ。
 では『本格的SPA』とはいったいどんなものを言うのだろうか。イトーヨーカドー首脳の頭にあるのは「ユニクロ」的な自社企画・自社開発・自社生産管理・自社ブランディング・自社在庫運用・自社販売の垂直統合型SPAなのだろうが、果たして「good day」はそのどこまでを貫徹出来るのか。建前はともかく現実は遠く、コンプレックス剥き出しの「ユニクロ症候群」に終わるのではないか。
 究極のSPAは品質とブランディングを完璧にコントロール出来るものとすれば、前述の自社○○の羅列に「自社工場生産」まで加えるべきで、一品一品に製造番号を打刻して絶対単品管理を徹底すべきである。現実に「ルイ・ヴィトン」や「エルメス」の革製品は自社工場生産で絶対単品管理が貫徹されているし(LVでもアパレル、HSでも陶器や時計などは外部工場生産だが)、家電や自動車はOEM調達でも製造番号を刻印して絶対単品管理を徹底している。アパレルでは「ユニクロ」と言えども一品一品に製造番号を刻印する絶対単品管理までは行っておらず、ミスは許容範囲と見て品番管理までに留め、完璧な品質管理とブランディングは元より放棄している。アパレルで絶対単品管理が必要かどうかは議論のあるところだが、ブランドジュエリーなどでは常識とされている。
 SPAの本質が『製販一貫の効率的な流通システム』とするなら、原価率の高さとロス率の低さ、運営経費率の低さは外せない要件だ。ODMで30%/OEMで27%を切るような低原価率は論外で、マークダウンロスが投入総額の30%を超えるようでは偽装二重価格商法さえ疑われる。ちなみにH&M社の調達原価率は24%前後、投入総額対比のマークダウンロスは35%前後と推計されるから、決して効率的な流通システムとは言えない。それに較べれば、調達原価率が38%前後、投入総額対比のマークダウンロスが25%弱と推計される国内「ユニクロ」事業は極めて効率的なSPAと評価すべきであろう。
 『製販一貫の効率的な流通システム』かどうか判定する基準がもうひとつある。それは企画サイクルと現実の商品回転とのギャップだ。一般に年間の企画サイクルと商品回転には強い相関があり、すべての商品が売り切れるなら(マークダウンも含めて)年4企画なら4回転、6企画なら6回転、8企画なら8回転が上限となる。たまさか大ヒットが出て何回も追加投入されれば商品回転が企画サイクル上回るケースもあるが、統計上は極めて稀だ。年間12企画以上と推察されるH&M社は4回転前後と不振商品の滞貨が著しいが、年間6企画と推察される国内「ユニクロ」事業は5.74回転(10年8月期)とマークダウンも含めればほぼ全商品が売り切られている計算になる。これを見ても「ユニクロ」が完成度の高い効率的な流通システムであると評価される。
 「ユニクロ」の在庫運用は棚割り商品企画に基づく計画生産在庫を売価コントロールによって売り減らしていく些か粗っぽいもので、近似したベーシックSPAのギャップ社のような出前回転運用やルーチンな店間移動など繊細な手法は欠いているが、品番単位の週毎の売価コントロール精度の高さが効率的な消化回転を実現しているようだ。
 欧米はともかく法外な偽装二重価格商法が罷り通るアジア市場では「ユニクロ」は突出したバリュー信頼感を得て品質と価格のディフェクトスタンダードを確立し、グローバルSPA勢を押しのけてトップシェアを確立するのではないか。ちなみに、直近決算期における各社のアジア売上シェアはインディテックス社が4.8%、H&M社が3.0%に留まるのに対して「ユニクロ」は既に15.0%に達している。「ユニクロ」侮り難しであろう。
 2011/09/08 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

イトーヨーカドーがSPAに再挑戦
 カリスマバイヤー?藤巻幸夫氏を担いだ百貨店志向のSPA作戦で派手に転けて懲りたと思っていたイトーヨーカドーだが、こんどはイオンの「TOPVALU」みたいなユニクロ志向のSPAで再挑戦して来た。プレスリリースを見ると企画・開発から生産管理まで貫徹するユニクロ的垂直統合型SPAを志向しているようにも聞こえるが、デザイナーが外部だったり最新トレンドを短期で企画に反映するとかODMっぽい話も混じっている。ビジネスモデルも開発体制もはっきりしないプレスリリースを読む限り、ちょっと期待薄かも知れないと思いながら商品を検分してみた。
 商品を細かくチェックしたところ、中国製やベトナム製などが入り交じっているものの素材や縫製は破綻の無い大手商社仕様で、残念ながらパターンやフィットも大味な商社標準仕様でしかない。きれい目ニート好みのイトーヨーカドー顧客を見据えたオリジナルなフィットとは言い難く、PBと言うより商社NBと言った方が実態に近いのではないか。
 AAAを使ったイオン流のCMは今風だが最後は何時もの『行ってみようカドー』の駄洒落でガクッと来るし、肝心の商品はベーシックに過ぎて着こなしも今風の緩ニートさを欠いている。ネルシャツの柄など去年のライトオンかと見紛うほどで、新鮮さはまったく感じられない。本格的なSPAに挑戦という建前とは裏腹に、商社に丸投げしたとしか思えないのだ。顧客を等身大に見据えて手堅いパートナーと組んだ「GALLORIA」がそこそこ成果を挙げているだけに、「good day」は大空振りにならないかと心配してしまう。
 ウェブとリアル店舗の融合など最先端の戦略が評価されるイトーヨーカドーだが、SPA戦略は未だ顧客も自分も見えておらず、「ユニクロ症候群」の二の舞を演ずる事になるのだろう。
 2011/09/06 15:50  この記事のURL  /  コメント(0)

三度目の挑戦
 香港の大手カジュアルSPAジョルダーノ・インターナショナル社が日本に再々上陸するそうだ。同社は1992年と2001年に進出して撤退しており、今度で三度目の挑戦となる。今回も前2回と同様、「ジョルダーノ」ブランドでの進出となるが、今度は直営ではなくFC契約でウィゴーに運営を委託する。10年に撤退した時点でジャパン社をウィゴーに売却していたから(7月1日付け)、その時からFC展開の合意が成立していたのだろう。一号店を9月16日に福山市に開業して9月末には池袋にも小型店を出し、12年度中に10店舗を開設する計画だが、今度は上手く行くのだろうか。
 「ジョルダーノ」はアジア各国中心に2127店舗(全社では2353店舗で内、直営が1052店/FCが2353店、10年12月期末)を展開する初期のユニクロがお手本にしたほどの老舗ローカルSPAだが、近年はアジアに進出したグローバルSPA勢に圧されて業績が低迷していた。とは言え中国ローカルの「メーターズ・バンウェイ」などに較べると品質も感性も格段に上等で、VMDのセンスなどユニクロより洗練されている(色の並べ方は「GAP」並)。低迷していた業績も10年12月期から急回復して過去最高水準の営業利益率(14.7%)に達し、今期に入ってさらに加速しているから三度目の正直も実現性が出て来たが、ユニクロが制圧する日本市場に類似したアジアのローカルSPAが参入するのは極めて難しい。大味加減はユニクロと大差ないのに機能性商品を持たずブランド知名度で大きく劣るとなれば、ウィゴー社が余程のローカル対応を工夫しない限り再々撤退という事になるのではないか。
 ジョルダーノは三度目の挑戦となるが、フォーエバー21だって二度目の挑戦(以前は三愛がFC展開して2000年に進出し一年で撤退)だし、家具のIKEAだって二度目の挑戦で成功したのだ。スーパーのカルフールはイオンに店舗を売却して撤退したし今度はテスコも撤退するそうだが、西友を買収して進出したウォルマートは何度も撤退の噂が囁かれながら頑張っている。欧州ブランドなど何度も進出、撤退を繰り返したり、ジャパン社を出したりエージェントに任せたりと試行錯誤を繰り返すブランドも多い。二度や三度の失敗では諦めないのがグローバルビジネスのパワーなのだろう。
 2011/09/05 10:33  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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