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春飛んで初夏来たり夏飛んで晩夏来る
 東京では震災の混乱も原発クライシスもようやく収まって、日常が戻りつつある。まだ余震は続いているし原発も予断を許さないが、ともかく日常を回復しようと皆が努力している。そんな中、震災で一ヶ月飛んでいたクライアント各社の店頭クリニックも再開されたが、奇妙なほど春物在庫が消えている。三月後半の実需期が飛んだのだから売り切れた訳はなく、何処かの店に集中して処分したのかアウトレットに回したのだろう。
 震災直後から三月末にかけての状況判断と在庫の振り回しが適切か否かで、GW以降のMD展開ストーリーは大きく変わってしまう。震災後の販売低迷で滞貨した春物在庫を店間移動やマークダウンで逸早く処理し、4月下旬までに初夏物体制を構築出来た店はGW明けの晩夏物投入へと在庫が回転していくが、春物在庫を引き摺った店は春物処分に圧されてGWの初夏物体制が構築し切れず、6月まで初夏物を引き摺って晩夏物の投入も遅れてしまう。商機は後手後手にずれ、売上も消化率も低迷するに違いない。如何に手早く震災の影響を断ち切れたかどうかが明暗を分ける事になる。
 この話を聞いて変に思う人もいるかもしれないが、昨今の春夏MD展開は春物→初夏物→晩夏物と流れて夏物はほぼ存在しない。毎年のようにサマーダークな晩夏物投入が早くなり、早い店では三月下旬から、遅い店でもGW明けから投入されるのが当たり前で、能天気にカラフルな夏物の展開期間はほぼなくなってしまった。それに震災による春物実需のずれ込みが加わった今期は『春飛んで初夏来たり夏飛んで晩夏来る』と謳いたくなる流れとなりそう。
※GW中は会社もお休みなのでブログもお休みします。
 2011/04/28 09:01  この記事のURL  /  コメント(0)

「23区」銀座旗艦店を拝見
 先週、丸の内で知り合いのお店のレセプションに立ち寄ったついでに、3月20日に開業した「23区」の銀座旗艦店を拝見して来ました。銀座中央通りの八丁目、資生堂ビルの先で新橋にも近いという位置です。間口が広くガラス張りのウィンドウから店内が見渡せ、二階への階段も吹き抜けになっていてスケール感もあり、旗艦店にふさわしい格のある店舗デザインにまとめられていました。二層594平米の店内には銀座店だけのオリジナルやコラボ商品、「ロストマーク」のボディケアグッズ、ホームウェアラインの「HOTEL TWENTYONE」(2F)も展開され、スーツやシャツのパターンオーダーも頼めます。
 店内は百貨店のインショップからは想像つかないほどゆったりとレイアウトされ、大人が寛げるサロン空間に仕上げられていました。VMDもフォルム構成やカラー配列がきちんと設計され、グローバルブランドに肉薄する出来でした。『やれば出来るじゃないの!』という印象で、百貨店のインショップもこの水準に統一して欲しいものです。
 「23区」銀座旗艦店を見て想起されるのは明洞の「BEANPOLE」旗艦店で、日本の百貨店NBもグローバルなブランディング戦略に本腰を入れるようになったのだと認識を新たにさせられました。ここを訪れる中国などアジアの観光客に「23区」のブランドイメージを訴求し、アジアでの店舗展開を後押しするのが狙いなのでしょう。



 2011/04/26 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

ユニクロ帝国の光と影
ユニクロ帝国の光と影」なる新刊書が売れているとかで、早速購入して読んでみた。アマゾンの物流センターにアルバイトとして潜り込んで本を書いた横田増生さんというルポライターが書いた内幕ものだが、実に本質に肉薄している。ビジネスモデルがどうのマーケティングがどうのという検証はともかく、元ユニクロの店長とかバイトとかの本音をインタビューで引き出し、果ては中国の協力工場を探し出して従業員に突撃インタビューを敢行するなど、働く側からのリアリティ追求は凄い。インディテックス社に乗り込んでのユニクロとのビジネスモデル比較も本質を突いている。
 SPAの研究者から見れば新しい事実がそれほどある訳ではないが、柳井正と役員たちの確執、ユニクロという組織の軍隊的官僚的体質は私の想像通りだったし、店長達の過重労働が外食チェーンと大差ないという実情もシリアスに伝わって来た。なにより、柳井正は人間としてどうなのかという素人目線はあまりに実直で、柳井さんが可哀想に思えたほど。
 ユニクロにせよH&MにせよC社にせよ、底辺の労働者たる横田さんの目線にかかれば、労働者を搾取し顧客を欺く怪しげなビジネスモデルでしかないのだろう。顧客を欺く事なく労働者を搾取する事なく良品を低価格で提供する真摯な商法など、もはや麻布台の幻でしかなくなったのかも知れない。
 2011/04/25 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

売上回復も傷は深い
 昨夜の『販売情報交換会』では震災後の各社の対応と売上の回復が話題になった。駅ビル/ファッションビルのレディス売上は3月末から前年ペースに回復して4月に入っては二桁増という店も見られるが、ミセス比率の高い百貨店婦人服は未だ回復し切れないでいる。全館売上もまだ8掛け〜9掛けというストアもある。回復著しい駅ビル系にしても、震災直後の買い控え分が4月にズレ込んだだけで、3月4月計で前年並みというのが実情。加えて、4月売上の中身は3月から持ち越した春物在庫の値引き処分が少なからず含まれるから、収益の圧迫は避けられないようだ。
 3月に売れるべき在庫が4月にズレ込んで4月の投入枠を圧迫し、在庫処理を急いでセールが散発的に前倒され、GW前にようやく夏物を投入するも晩夏物に目が流れて値崩れは早い。という悲観的なシナリオが想起される。ほぼ半月間だったとは言え、春〜初夏〜夏という商品展開の流れが一度塞き止められると在庫運用のシナリオは元には戻せない。極端な地域間在庫移動を断行するか、マークダウン処理と並行するシーズン強制シフトを仕組むしか手は無いだろう。結局はロジスティクスと在庫運用が対策の要だったのではないか。業界の受けた傷は見た目より深く、今後の消費マインド変化を考えれば、シーズン展開や業務プロセスを抜本から見直す必要が生じるかも知れない。
 2011/04/22 10:28  この記事のURL  /  コメント(0)

チャイナシンドローム
 と言っても原発事故とは関係のないビジネスモデルのお話です。『低い調達原価率で厚い値入れを確保し、宣伝費をかけて人気を煽り、期中値引きを連発して売上を稼ぐ』という商法は中国では一般的ですが、現地でそんなビジネスモデルを体感してイケルと感じた経営者が増えているのか、国内でも中国式のビジネスモデルが広がる兆候が見られます。そんな風潮を「チャイナシンドローム」と名付けてみました。
 SPAなのに調達原価率を30%未満(セール用商品など20%未満)に抑え、人気タレントを全面に押し出したテレビCMなどで人気を煽る一方、毎週のように「特別価格」などと打ち出して期中値引きを連発して売上を稼ぐ商法は、まさしく中国方式ですが、実は日本でも昔からあるビジネスモデルなんですよ。みんな大なり小なりやってる、あるいはやりたい商法みたいですネ。
 バブル華やかなりし頃、人気タレントや歌手をフィーチャーしたテレビCMで急成長した「ジョワイヨクチュール・マキ」の三貴グループを覚えている業界人も少なくないでしょう。ピークには宝石に加えて婦人服「ブティックJOY」や子供服「ファニィ」など1400店以上を展開し、年商1800億円以上にも達していたSPA企業でしたが、値引き販売の乱発が二重価格だと指摘されるなど何かと問題になる事も多かったと記憶しています。97年にはアパレル事業から撤退して宝石事業に特化したものの業績は悪化し続け、02年には債務整理して新会社に営業譲渡し事業を継続したものの、09年には民事再生法適用を申請して経営破綻してしまいました(現在も事業縮小して営業しています)。
 厚い値入れを取って二重価格で値引き販売する一方で宣伝費をかけて人気を煽る商法は『効率的な製販一貫ビジネスモデルで良品を廉価に供給する』というSPAの本質とは乖離しているとは言え、現実にマーケットに受け入れられブレイクしている以上、ビジネスモデルとして注視せざるを得ません。古典的な流通革命思想的SPA像に囚われる事自体がもはや時代遅れで、中国式ビジネスモデル?が日本でも成功する事を認めるべきかも知れませんネ。それだけマーケットは変わってしまったのでしょう(昔からそうだったという声もあるよ)。
 2011/04/21 10:42  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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