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パターンナーが逼迫する
 OEM/ODMに依存しない自社開発でないとバリューを訴求出来ないと異口同音に訴えて来たが、それは自身の購入体験にも裏付けられている。これまで数多の衣料品を購入して来たが、クロージングに限れば何年も着続けているのは欧州生産のファクトリーブランドだけで、中国生産品はおろか(一着も買った事は無い)、国内生産品さえ二度三度と袖を通す品はまったくなかった。国内生産品は何処か平板で、体が嫌がってしまうからだ。欧米人体型とまでは言わないが、鍛え上げ成熟した大人の図体は平板な国産クロージングを拒否してしまう。これは高名なセレクトショップのオリジナルでも同様で、買っては見たものの二度と袖を通さないスーツがワードロープの一角を占拠して困っている。クロージングはパターンの立体感に加えて素材の柔軟性や縫い目の伸縮性が不可欠で、上質素材を職人が手縫いしたフィット感を知ってしまうと固い素材をマシン縫製した廉価品は体が受け付けなくなってしまうのだ。
 ところがカジュアルでは国産品はもちろん、中国製でもベトナム製でも何でも受け入れてしまう。素材や後加工など風合いは気にしても、パターンは余程、細身でない限り、拒絶してしまう事は稀だ。「INCOTEX」のパンツを除けば、欧州ファクトリーブランドのカジュアルなど法外に高いだけとしか思えない。それに比べればアバクロの「REUHEL」やラルフの「LUGBY」は手頃な価格なのに風合いも着心地も納得がいく。そこがカジュアルの面白いところなのだろう。
 目をレディスウェアに転じてみれば、ドレスアイテムはメンズ同様に素材の質感やパターンの巧妙さ、縫製の適度な弛みが着心地を左右するが、そんな微細な違いにこだわる顧客は今や極めて例外的で、素材の質感や見た目のデザインを活かすパターンが備われば十分なのだろう。カジュアルも同様で、素材の風合いや加工感にデザインを活かすパターンが備われば十分に付加価値が出る。さらっと言ったけど、パターンだけは必須要件だという事が理解されただろうか。これまでまず先にアウトソーシングされ、待遇も低下の一途だったパターンナーだが、ファストからリアルへと20年振りに急転する中、最も逼迫する職種となるのではないか。
 2010/12/21 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

急成長は続くのか
 アイウエアSPAのジェイアイエヌやカジュアルSPAのクロスカンパニーなど、何かを契機に突出した成長に転ずる企業が注目されているが、それらに追従を試みる企業も含めて、急成長が続く企業と続かない企業の見分けはなかなか難しい。急成長の契機となった仕掛けの継続性やバリューの優位性、ビジネスモデルの革新性を検証しないまま、手放しで賞賛したり追従したりという風潮は如何なものかと思う。
 2009年3月、新宿ルミネに一号店を開設して人気が沸騰したキットソンなど、今では話題にも上らなくなったが、当時から仕掛けが先走った一過性のイベント商法と私は見抜いていた(仕掛人のM君自らもそう豪語していた)。このイベント会社が仕掛けたブランドはキットソンに限らず、皆一年内外で失速してしまったし、類似した仕掛けで離陸を図った他社ブランドも短期で人気が細るケースが多かった。ブレイクの契機はプロモーショナルな仕掛けに依存するにしても、人気を継続するには確かな市場性とバリューの優位性、ビジネスモデルの革新性が不可欠、というのが一連の盛衰劇から得た教訓と言えよう。
 そんな視点で見るなら、ジェイアイエヌやクロスカンパニーの急成長は続くのか続かないのか。ジェイアイエヌについては、プライスライン訴求アイウエアSPAが同質化して成長が壁に当たる中、曖昧な追加料金を全廃するという捨て身の革新が市場の支持を得て急成長に転じたのであり、市場性もバリュー優位性も評価出来るが、ライバルが追従すれば優位性は続かない。ライバルの追従で優位性が崩れる前に広告を集中してブランドを突出させられるか、追加料金全廃による収益性低下を垂直統合開発効果とロットの拡大でカバー出来るか、ここ一年が正念場となるだろう。
 クロスカンパニーについては宮崎あおい起用の広告効果先行は否めず、店頭の商品や陳列を見る限り突出したバリュー優位性は認め難い。デザイナーは抱えてもパターンナーは外注でOEM調達という開発体制を自社開発を強化して改革中とは言え、現状ではビジネスモデルの革新性には繋がらず、広告効果が一巡した二年目も急成長が続くとは思えない。現状のバリュー優位性はパルグループ>クロスカンパニー>ポイントの順で、パルグループが同様な広告戦略を採れば優位は一転して崩れかねないし、ポイントの垂直統合戦略が加速すれば開発体制の優位性も崩れてしまう。業界紙誌は手放しで賞賛するばかりだが、急成長が継続するか否かはきわどいところだと思う。
 2010/12/20 09:32  この記事のURL  /  コメント(0)

ブランドの階級
 109世界には沢山のブランドが犇めいていますが、そこには明確な階級があります。ファーストクラスはマウジーやロデオクラウンズなど、デザイナーやパターンナーを抱え半年前後かけて自社開発するオリジナル発信ブランド。セカンドクラスはデザイナーはいてもマーチャンダイザー主導でオリジナル開発するMDブランドで、おそらくOEM活用が主流でしょう。こちらの開発期間は三ヶ月内外と思われます。サードクラスはデザイナーを抱えずバイヤー主導で売れ筋を追うODMブランドで、開発期間は6〜8週程度と推察されます。中には韓国の流通素材を使って数日で売れ筋をパクるキャリーブランドさえ見られますが、これは最低クラスに位置付けるべきでしょう。価格もこの階級順に安くなっていきます。カジュアルパンツを例にとれば、ファーストクラスは一万円強、セカンドクラスは6800〜7800円程度、サードクラスは3900〜4800円程度が主流でしょう。
 これと同じ構図は駅ビルにも見られますが、よりクリエイティブで値段も高いデザイナーブランド/キャラクターブランドがプレミアムポジションに乗ります。さて、皆さんのブランドはどのクラスでしょうか・・・・・・
 2010/12/17 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

失われた文明を伝える神官
 某大手セレクトショップのトップに『都内で参考にすべき理想的な店舗は何処ですか』と聞かれて一瞬、絶句してしまいました。どう思い起こしても、頭に浮かんでこないのです。領域を全国に広げてみても、やはり同じでした。中国の沿海都市部では豪華な店舗も見られますが、どこかちぐはぐで建築的様式美が欠落していますネ。
 新設の商業施設は一通りチェックして来ましたが、近年は美しい!良く出来てる!と感じる店舗がまったく見当たりません。建築的様式美や美術的洗練の欠落はもちろん、店舗としての販売導線やカテゴリーレイアウト、什器構成や陳列がデタラメな店が大半なのです。ファスト系の店など、せいぜい良く出来たバラックの域を出ていませんね。フォーエバー21の銀座店など酷いものでしたが、三越銀座店も五十歩百歩の出来と行ったら言い過ぎでしょうか・・・・
 では何処なら建築的美術的に美しいのかと言えば、1980年代の米国に戻るしかありません。ペンタゴンシティのMacy’sやボストン/NYのHenriBendelのような様式美に輝く美術的なストアは90年代以降、コストや効率が優先されるにつれ米国でもほとんど見られなくなりました。日本に限らず、先進国の文明は皆80年代がピークだったのでしょう。HIDやLEDなど照明機器こそ進化しましたが、ストアデザインもVMDもどんどん幼児的に退化するばかりです(最近のトーキョー感覚というやつは特に幼児的ですネ)。
 洗練されたもの、美しいものを知らない世代が世の主流を占めるにつれ、建築的様式美や美術的洗練が必要だという事さえ理解されなくなって来ました。今は残像でしかない爛熟の80年代文明を知る者は、もはや失われた文明の奥義を密かに伝える神官でしかないのでしょう。米国でも数少ない建築的様式美を保っているリミテッドグループのVictoria’s Secretが日本に進出すれば、私が何の事を言っているのか、少しは理解されるかも知れません。



 2010/12/16 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

もう秋冬を総括しちゃいます
 コーディネーターの月例店頭スタイリング報告を確認すべく渋谷109を一周しましたが、売れ筋コピーと定番の防寒アウターが氾濫するばかりで同質化が極まり、早くもプレセールに突入していました。秋口から出ていた全面ユニオンジャック柄がニットからアウターまで広がり、プレップカーディガンとシャツのフェィクレイヤードも氾濫していました。アウターは何処でも大差ないショートダッフルやショートダウン、ファンシーなケープコートやダブルブレストコートばかりで、前月と何も変わっていませんでした。マーケット全体を見渡しても、梅春企画を打ち出していたのはトランスキャリアやカジュアルSPAの一部、クルーズ企画を打ち出していたのはごく一部のセレクトショップやラグジュアリーブランドだけで、80年代頃と較べればホントに季節感が無くなってしまいました。これも売れ筋QRの弊害なのでしょう。
 今秋冬を総括すると、トレンドをリードしたのはセレクトショップと一部のコレクションブランドで、ファストSPAは売れ筋の後追いが目立って新鮮スタイリングが続かず勢いを失い、109系や駅ビル系は売れ筋後追いの果てに同質化して低迷を深めたと言えましょう。そんな中で健闘したのがリードタイムの長い自社開発型のブランドで、前出しジャンケン(後出しジャンケンの反対です)にも拘らずレイト60’S〜70’Sトレンドや梅春企画を打ち出していたのは御立派です。
 売れ筋追いの後出しMDでは季節が切り替わらず店頭鮮度が損なわれ、同質化による売上不振や値崩れも避けられません。口先だけでなくホントに反省するなら、季節展開をきちんと仕組んだ計画MDに回帰して鮮度と完成度を取り戻して欲しいものです。来年こそ、ホリデイ企画やクルーズ企画が出揃う楽しい店頭を復活させましょう!
 2010/12/15 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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