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良いお年を
 この一年、ジェットコースターのように様々な変化が在りました。さしものファストファッションも勢いが陰ってリアルへの回帰が始まり、業界は20年振りに自社開発へと回帰し始めましたが(一部は国内産地回帰でもある)、来年は一体どうなるのでしょう。春節明けの納期遅れと値上げのパニックがデフレに終止符を打ち、衣料品は値上げに転ずるに違いありません。ファストからリアルへ、デフレからインフレへ、OEM/ODM依存から自社開発へ、すべてが20年振りに反転する一大変動の年になるのは間違いないでしょう。そんな変動が業界再生の契機となり、前向きな明るい話題が広がるといいですネ。
 私も今年は様々な変動がありました。久方振りの出版や上海、SEOUL視察、Macの世代交代、軽井沢還暦プロジェクトなど幾つかの課題を遂行出来ましたが、メンズ担当コーディネーターの欠員と教授プロジェクトは積み残してしまいました。業界再生の来年はこれらの課題を解決し、長年かけて確立した技術体系をより多くの業界人に伝授したいと思います。皆さんのご支援を賜れば幸いです。
 年末の挨拶のついでに、コメントを下さった方々にも一言。コメントも呟きもちょこちょこ見ていますが、賛同ありご批判あり間違いのご指摘もあり、色々と考えさせられます。なるほどというご指摘には対応していますが、もっと研究しないと回答出来ない難しいご指摘も在り、機会を見て掘り下げた論展を加えたいと思っています。
 それでは年明けの四日まで、このブログもしばしお休みさせてもらいます。五日の水曜日にまたお目にかかりましょう。皆さん、良いお年を!
 2010/12/29 09:28  この記事のURL  /  コメント(0)

進化と退化は裏腹
 ユニクロやしまむらが跋扈する文明の退化はもはや否定しようもないが、失われた文明の輝きをささやかながらも復興したいという憶いも捨て難い。嘆かわしい現実の正視と失われた文明へのオマージュの間を揺れ動く論展は時として矛盾を指摘されるかも知れないが、それだけ失われたものたちへの憶いが深いのだ。
 建築的様式美に輝いた店舗デザインや美術的に洗練されたVMDは見る者と創る者、双方の退化で再現さえ難しくなり(経済的要因も否定出来ないが)、四季折々を彩る季節商品もQR軸のMDが蔓延するとともに失われて行った。職人技が冴えた手縫いのクロージングやオートクチュールも、もはや博物館行き寸前と言うしかない。
 文明は進化するもののように思われがちだが、近代を振り返れば進化と退化は裏腹な関係だと理解される。産業革命以降の貴族階級の没落は美術工芸品を衰退させ、代わって台頭した中産階級(ブルジョワジー)と労働者階級(プロレタリアート)に向けて大量生産のシンプルな生活用品が普及して行ったが、アールヌーボー、アールデコ、バウハウス、ポストモダンと幾度も揺り返しながらも、結局は美術性装飾性が後退して量産に向いたシンプルなデザインへと収斂して行った。産業や技術が進化すればするほどデザインはシンプルになり、大衆の美術的感性もシンプルになっていく。河村錠一郎氏の名著「世紀末の美学」(絶版ですが当社に在庫があります)をお読みになれば、産業革命以降の社会変化がどう美意識を変えて行ったか如実に理解出来ると思う。
 私は工芸的美術性や装飾性が進化で工業的単純化が退化だ、などと言うつもりはさらさらない。サムスンの薄型TVやIKEAの家具など工業的単純化の最たるものだが、下手に装飾されたデザインより遥かに洗練されている。デザイン史を振り返っても、工業的単純化を追求したバウハウスやコルビジェの機能美は今日もなお美しい。機能的必然性がミニマルに収斂されているからだ。
 そんな機能美という視点でユニクロやしまむらを見ると、どう好意的に見ても美しいとは言い難い。ユニクロには機能性とスタンダードな品質感はあっても、それらをミニマルに洗練させた機能美が欠けている。それは商品だけでなく、店舗環境やVMDも同様だ。しまむらに至ってはただ安くて手軽なだけで、機能美どころか清潔感さえ欠落している。このような洗練を欠くブランドを嬉々として受け入れる大衆の美意識は、やはり退化していると言わざるを得ない。貧困ビジネス化したしまむらはどうしようもないにしても、グローバルブランドを目指すユニクロには世界に通用するミニマルな機能美に目醒めて欲しい。ユニクロが目指すべきデザイン戦略はクール・ジャパンではなくグローバル・ミニマリズムではないのか。
 2010/12/28 09:29  この記事のURL  /  コメント(0)

業界の変遷と職種の盛衰
 業界の体質は時代とともに大きく変遷し、職種人気も様々に移ろって来た。70年代までの発展期では糸から製品までの垂直分業体制が国内で完結しており、アパレル企業の開発組織もデザイナー、パターンナー、生産管理のチームをマーチャンダイザーを兼ねたブランド長や経営者が統率するという古典的なチームワークが一般的だった。特殊な技術を持ったパターンナーは外注される事もあったが、他の開発業務はほとんど組織内で完結していたのだ。
 国内産地の開発力と市場の活力がピークにさしかかった80年代初期、DCブームが巻き起こり、行政が後押しした「東京クリエイション」の掛け声とともにデザイナーが突出して職業ギルドまで結成され、古典的なチームワークは混乱に陥った。クリエイション至上の旋風が吹き荒れ、リテイリングやマーケティングはクリエイションに従属すべきという風潮がまかり通った。そんな中で一部のDCアパレルがクリエイション信仰に押し流される事なく冷静な経営戦略を見極め、直営店を拡大してリテイリング組織を確立しSPAへと発展する礎を築いたのは賢明であった。
 90年代以降、生産が中国などの海外へ移転して国内の垂直分業体制が崩れて行く中、アパレル企業は商社などに生産管理や物流を委託するようになり(本来のOEM)、マーチャンダイザーが主導権を取ってデザイナーは従属するようになる。00年代に入って国内の生産チェーンが途切れ始めると生産の海外移転は一段と加速し、企画・開発業務までもアウトソーシングされるようになる(ODM)。それとともにアパレル企業は開発組織を圧縮し、生産管理はおろかパターンナーやデザイナーまで外へ出すという開発の空洞化が加速。パターンナーやデザイナーはOEM/ODM業者に職を求めるようになり、待遇も劣化して行った。
 OEM/ODMの一般化と若者の感性退化を背景に「誰でもSPA時代」が到来して開発よりもリテイリングやマーケティングが重視されるようになり、マーチャンダイザーに権限が集中してQRが蔓延し、店頭のブランディングを担うビジュアルマーチャンダイザーや配分・移動の精度を担うディストリビューターが注目されるようになった。その頂点を極めたのがファストファッションだったのではないか。
 そんな時代が続くかと思われたのも束の間、中国の経済成長による産地から消費地への変貌によってアパレル生産はコスト急騰とキャパ逼迫に直面し、業界はOEM/ODM依存のもたらすデフレを断ち切るべく開発業務の内製化(垂直統合志向)へと舵を切り始めている。OEM/ODM業者にしか職が無いという状況が一気に解消される訳ではないが、パターンナーやデザイナーが再評価されブランドの開発組織に帰り始めたのは間違いない。「誰でもSPA時代」の終焉とともに過度なリテイリング重視が是正され、マーチャンダイザーを筆頭に開発側のデザイナー/パターンナー/生産管理、リテイリング側のビジュアルマーチャンダイザーやディストリビューターがバランスの取れたチームワークを確立する事が期待される。
 80年代の過度なクリエイション信仰、00年代の過度なリテイリング依存という蛇行を経て、アパレル企業の組織は新たなチームワークへ到達するのだろうか。国内の生産チェーンが寸断され果てた今日、70年代までの古典的なチームワークの再現を期待するのは無理があるが、中価格帯以上のファクトリーダイレクトSPAなら理想に近い姿が期待出来るかも知れない。大ロット低価格なSPAには生産の南アジアシフトという選択も在るだろうが、開発側とリテイリング側のバランスの取れたチームワークを志向するなら、中小ロットのブランドは韓台回帰、中価格以上のブランドは国内回帰が現実的と思われる。
 それにしても、業界がクリエイション信仰からリテイリング主導へと大きく変遷した20年間も、専門学校教育は80年代のクリエイション至上主義から一歩も進化しなかった。相変わらずリテイリングやマーケティングは軽視され、クリエイション至上の教育が続けられたのだ。デザイナー神話に憧れる生徒達を獲得するにはやむを得なかったのだろうが、卒業後の生徒達は業界の現実とのギャップに苦しむ事になったと推察される。
 慶応義塾という四年制私大を出たに過ぎない私にはクリエイションもマーケティングもマーチャンダイジングも同等の価値を持つ分野に思えるし、創始者たる福沢諭吉先生の『天は人の上に人を創らず』という言葉も染み付いている。今時、士農工商でもあるまい。グローバル時代の今日においてさえクリエイションが至上であるかのごとき教育を続ける服飾専門学校に、業界人生40年の怨恨を込めて抗議したい。貴方達の間違った教育が若者の人生も業界の発展も妨げていると!
 2010/12/27 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

スタッフ急募
 12月20日で辞めるメンズ担当コーディネーターの後任がなかなか見つからず、メンズ担当が空席になってしまいました。急遽、前任者に年末まで退社を伸ばしてもらいましたが、それ以上は予定もあって何ともなりません。レディス担当スタッフでは短期の埋め合わせも難しく、適任者が見つかるまでメンズセクションは看板を下ろすしかなくなりました。
 当社のコーディネーター業務は広くマーケット全体を見て各タイプ/ブランドを正確に位置づけ、月度に客層別のスタイリング変化を追ってトレンドを読むのが基本で、その積み重ねの上にブランドコンセプトやシーズンMD展開、商業施設のテナントミックスを提案するものです。駅ビルや百貨店、SCからストリートまで広範な商業施設を定期的に巡って膨大なブランドをひとつひとつ掌握し、様々な角度からマーケット全体の構図を描いて行くという緻密な業務が不可欠ですから、誰もが出来る訳ではありません。それでも頑張ってる当社の現役スタッフは立派だと思います。
 という訳で、当社のメンズ担当コーディネーターを引き継ぐ気鋭の若者を急募しています。商品企画か仕入れ、MD、いずれかの経験があり、マーケティングやMDを極めたいという方は是非ともチャレンジして下さい。募集の詳細は当社サイトまで。
 2010/12/24 12:10  この記事のURL  /  コメント(0)

エアリーは可愛いよ!
 青山商事が住金物産と共同出資(青山商事90%/住金物産10%)で米アメリカンイーグル・アウトフィッターズ社と提携し、カッブルアメカジの「アメリカンイーグル・アウトフィッターズ」とカジュアルランジェリーの「エアリー」をFC展開するそうです。一号店を12年春、東急不動産が表参道と明治通りの交差点に開発中のビル(ギャップ旗艦店跡)に開設し、5年後100億円を売ると計画しています。
 「アメリカンイーグル・アウトフィッターズ」は90年代末期からマークしていますが、正直言ってあまりインパクトのあるブランドではありません。「アバークロンビー&フィッチ」の二番煎じを手軽な価格で展開する何処にでもあるキャンパスカジュアルのチェーン店という印象で、品質感もアバクロに較べれば今ひとつですが、リーマンショック以降は高価格なアバクロから顧客が流れてか、同様なポジションの「エアロポスティル」と同様に好調に売上を伸ばして来ました。日本に持って来ても「アバークロンビー&フィッチ」や「RUGBY」のようなインパクトはなく、値頃なカジュアルチェーンとの競合に埋もれてしまうかも知れません。
 その一方、スクールガール感覚のカジュアルランジェリー&ドームウェア(学生寮の部屋着)を展開する「エアリー(aerie)」は清潔感があってちょ〜可愛いよ!アバクロの「ギリーヒックス」のような洗練されたエロ味はないけど、アメカジそのもののカジュアル感が実に爽やかで可愛いのです。日本で言えば「ランチ」をキャンパス感覚に振った感じかな。ビクトリアズシークレットの「PINK」の向こうを張って06年9月から「アメリカンイーグル・アウトフィッターズ」のインショップでスタートし、07年春からは単独店展開も始めて10年10月末で147店に達しています。エレガンス系やグラマラス系ばかりの若向けランジェリー市場に新風を吹き込むと期待されますよ!

 2010/12/22 10:17  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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