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『デフレの正体』はファクトリーブランドに帰結する
 来客が持って来てくれた『デフレの正体』(藻谷浩介著 角川書店刊)という新書をさらっと一読しましたが、その主旨は『景気の波と関係なく、経済活動も消費も生産年齢人口の増減が左右する』というもので、生産年齢人口がどんどん減って老人が増え若者の所得水準が低下して行く日本では個人所得総額の減少が止まらず、政府や日銀がどんな景気浮揚策を打っても効果はない、と論じています。その対策として、高齢富裕層から若者への所得移転、女性就業率の向上、外国人の受け入れ、などを挙げていますが、現実に効果がありそうなのは女性就業率の向上ぐらいですから、読者は『老齢化と生産年齢人口減少が止まらない日本は延々と衰退して行くしかない』という絶望論に帰着するかも知れません。
 筆者は生産性を追求してコストを切り下げると給与総額も減少して経済が衰退するから、フランスやイタリア、スイスなどに見られるような人手をかけた高付加価値ブランドビジネスを創造すべきとも提じていますから、ファッション業界にも参考になるでしょう。生産年齢人口が減少して経済規模が萎縮して行く社会では、コストを切り下げて薄利多売する商法はデフレを加速して経済を萎縮させるから、人手をかけて(雇用を増やして)高付加価値を創造する商法が奨励されるべきだ、と指摘しているのです。
 永らく業界の盛衰と内外の市場やビジネスモデルを見て来た私の帰結は、『企画と生産を一体化して市場を創造するファクトリーブランド型SPAこそ究極の高付加価値型ビジネスモデル』というものです。筆者の主張とも共通しているのではないでしょうか。中国では欧州ブランドの受託生産でノウハウを手にした工場がファクトリーブランドを続々と立ち上げていますし、産地が疲弊し切った我が国でもシャツやパンツのファクトリーブランドが業績を伸ばしています。高級ニットなどでもまだチャンスがありますから、工場とブランドメーカーががっちり組めば有望な事業を創造出来るのではないでしょう。
 2010/10/22 09:56  この記事のURL  /  コメント(0)

ピッタリでした
 今朝の繊研新聞に三菱地所リテールマネジメントが運営する南砂町スナモ(08年10月開業)の初年度売上が180億円であったと報道されていましたが、これは当社が開業の一年前に予測した売上とピッタリ一致していました。ちょっと違ったのは開業二年目の売上で、北約2キロに今年6月開業したアリオ北砂に食われて170億円に落ちる(4ヶ月間の影響)と見ていたのが176億円に踏みとどまった事です。アリオ北砂のパワーが当社の予測ほどでなかったのか、スナモの営業努力が功奏したのでしょう。
 当社はほぼすべての大型商業施設の売上と販売効率を開業の一年前に予測してSPACメンバー企業に提供していますが、これまでわずかな例外を除いてほぼ3%以内の誤差で正確に的中させて来ました。それでもミスがゼロではありませんから、ハフモデル境界の設定方法や占拠率の計算方式などを見直して予測精度を向上させたいと思っています。当社の予測に異議をお持ちの方は是非、ご意見をお寄せください。
 この予測業務はテナント企業の方々には喜ばれているものの、残念な事にデベロッパーには煙たがられているようです。当社としてはデベロッパーと情報を交流して予測精度を向上させたいのですが、冷たい反応が返って来る事も少なくありません。開業予定商業施設の売上を予測してテナント企業に提供しているのは当社だけであり、その意義は小さくないと思います。より多くのテナント企業がこの予測情報を活用して出店ミスによる損失を回避してほしいと願うとともに、デベロッパー企業の理解も得たいと願うのは無理な願望なのでしょうか・・・・
 2010/10/21 09:45  この記事のURL  /  コメント(0)

渋谷109のリニューアルは失敗だった
 月例の店頭巡回で渋谷109も一巡したが、明らかにODM(企画仕入れ)に依存するブランドが増え、キャラの立った自社開発型のブランドがメッキリ減ってしまった。カジュアル市場がファストに流れて低価格で売れ筋を追うテナントが増えたゆえであろうが、単価が下がるにつれて館の売上も低迷を深め、残暑に災いされた9月は83.0と昨年10月以来の二番底を叩いてしまった。このまま12月まで前年割れが続けば、丸二年連続の前年割れになってしまう(正確には一昨年12月はジャスト100だったが)。世界に冠たる109ギャル文明の火を消さないためにも何とかして欲しいものだが、デベの動きは逆を向いているとしか思えない。
 今春以降、多数の新規テナントが導入されたが、自社開発型でキャラ明快に打ち出しているのはEMODAとGimletぐらいなもので、売れ筋後追いODMが見え見えのブランドばかりが目立つ(ルミネエストもマルキュー系ブランドを少なからず導入しているがODM見え見えのブランドは避けており、デベの眼力の差が指摘される)。WCはキャラが立っているとは言え原宿臭が強く、109ギャル文明とはかけ離れている。EMODAとGimletにしてもH&M的ファストモードの延長上にあり、ファストファッションとの同質化が懸念される。お世辞にもリニューアルで魅力が増したとは言えず、販売数字の推移もそれを裏付けている。
 今春以降のリニューアルよってODM依存テナントが氾濫して売れ筋同質化を招き、駅ビルやファストファッションと同質化して109文明が希薄化した事は否めない。ギャル文明のスピリットも物創りの本質も掴み切れないまま目利き外れのテナント導入を続ければ、109文明は遠からず崩壊してしまう。東急モールズデベロップメントの反省と奮起を望みたい。
 2010/10/20 09:47  この記事のURL  /  コメント(0)

テナントを選別する眼力
 軽井沢がらみでインテリアのストアやサイトを覗く機会が増え、デザインや品質、サービスの違いに詳しくなりました。IKEAは低価格にしてはデザインが洗練されているけど品質のばらつきは否めず、サービスはないに等しく買い物は苦役でしかありません。ニトリは手頃な価格にもかかわらずフルサービスでらくちんですが、家具やファブリックのデザインセンスには貪引きしてしまいます(多くは企画仕入れに見える)。低価格なのにファブリック類が意外と洒落ているのはカインズホームですが、家具はいただけません。ネットはベッドやカーテン、ブラインドなど特定アイテムに特化したサイトは価格、サービスとも揃っていますが、品質は商品が届いてみなければ分からないというリスクがあります。帯に短し襷に長しという各々を組み合わせて、何とか揃えて行くしかないのでしょう。
 そんな悪戦苦闘の中で気が付いたのは、表面はPBでも業者企画の仕入れ品(ODM)ではデザインセンスも価格も納得出来ず、他に難点が山ほどあっても結局は本物のオリジナル商品しか選べないという事でした。企画買いの水平分業SPAと自社企画開発の垂直統合SPAの差はインテリア関連でも明々白々で、実際に買おうとするとはっきり解ります。そんな体験もあってか、最近手掛けた幾つかのSCリモデル企画では、業種やテイストが適合していてもODMやOEMに依存するブランドは本能的に外すようになりました。インテリア系でもアパレル系でも、店頭で商品群(一品だけでは見分け難い)を見れば水平分業型か垂直統合型か、直感的に見分けがつくようになりましたよ。
 消費文明の退化は否めないものの、業界にしてみれば一時の行き過ぎが値崩れを広げた事が反省されてか、消費者にとっては味気ない安物買いが悔やまれてか、時代は急速にファストからリアルへと転換しています。他人任せで手軽に作った商品には統一感や味わいが欠けて価格が通りませんが、手間かけて自分で作った商品は統一感と味わいがあって値段が通るのです。
 SCでも売上を伸ばすには客数のみならず単価の維持向上が大切で、水平分業型で価格訴求するテナントを安易に増やせば単価が下がって館の売上も低下してしまいます。今や物作りの姿勢からテナントを選別する眼力がデベロッパーに求められているのではないでしょうか。先日、ルミネの花崎会長と歓談した際も、この指摘に強く共感しておられました。
 2010/10/19 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

脱百貨店の大手アパレル再編劇が始まった
 サンエー・インターナショナルと東京スタイルの統合は大手アパレル再編劇の口火を切ったのではないか。百貨店はすでに4グループに再編されたが、それに対応する大手アパレルの再編は遅々として進んでいなかった。その口火を切ったのが両社の再編劇であったと見るべきであろう。
 米国では販売不振が深刻化する中で百貨店が次々と合併して企業数が激減し、06年にメイシーとメイが合併するに及んで巨大チェーンの寡占が極まったが、大手アパレル各社は統合ではなく、それぞれに脱百貨店戦略に走った。その四年間のドメイン再編劇の結末は明暗際立つものとなった。積極的な買収でアウトドア&アクションスポーツなどのライフスタイルブランドに主力を移し直営店と海外売上を拡大したVFコーポレーションは全米最大手の地位と高収益を維持し、カルバンクラインの買収でライセシング事業を拡大しトミーヒルフィガーの買収で海外売上を急増させたフィリップ・ヴァン・ヒューゼンも高収益を維持し、ライセンスの買い戻しで直販体制を押し進め直営店を拡大したラルフローレンも高収益を維持と、百貨店依存を脱却した大手アパレルはいずれも再編劇を成功させたが、買収戦略に行き詰まって百貨店依存を脱却出来なかったリズ・クレイボーンは三期連続の減収、二期連続の二桁欠損に陥ってJCペニーに主力ブランドを独占させるに至り、直営店戦略に出遅れて百貨店依存が未だ8割にも達するジョーンズアパレルグループは五期連続の減収、四期連続の営業赤字に陥っている。
 この結末を見れば、百貨店依存からの脱却の可否が明暗を分けた事は明らかだ。日本でも百貨店の復活はもはや期待すべきもなく、百貨店脱出戦略が大手アパレルの運命を分けると見るしかない。百貨店依存脱却というドメイン再編には膨大な出店投資とブランド開発力が不可欠だから、資金力に乏しいアパレルやブランド開発力の弱いアパレルは合併やファンド資金導入という選択が避けられないだろう。両社の統合を契機に大手アパレルの再編劇が急加速するのではないか。
 2010/10/18 09:43  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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