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SPAへ突っ走るGMS衣料部門
 ユニクロやしまむら、H&Mなどの低価格大型衣料店に顧客を奪われ凋落が続くGMS衣料部門がSPA型PBショップで再攻勢をかけようとしています。イオンの「トップバリューコレクション」は三菱商事と組んで元アバクロのデザイナーをディレクターに起用、イトーヨーカ堂はウォルマートも組んでいる香港の大手商社リーフォンと提携してSPA型の商品開発を進めるそうです。
 06年春にもイオンが戦略PBショップ群で構成するイオンスタイルストア、イトーヨーカ堂が百貨店感覚のPBショップ群で構成する衣料部門改革でチャレンジしましたが、イオンはSPA的なMDの絞り込みがバラエティを損ない、イトーヨーカ堂は百貨店志向の気取ったMDが下駄履き感覚の顧客に総スカンを食い、どちらも惨憺たる失敗に終わってしまいました。それから4年、ユニクロやファストファッションが一段と蔓延する中、満を持して再チャレンジする事になったのでしょう。
 イオンもイトーヨーカ堂もユニクロやH&Mの急拡大を見て、衣料部門の不振を打開するには低価格と品質を両立させる垂直統合型SPAしかないと思い込んでいるようですが、それなら06年のチャレンジはもっと成果を得たはずです。『06年のチャレンジが空打ったのはSPA型の取り組みが中途半端であったからで、もっと徹底すれば成功するに違いない』というのが両社が得た教訓のようですが、『GMS衣料部門には垂直統合型SPAのMDは求められていない』という教訓は得なかったのでしょうか。
 長年に渡ってGMS衣料部門を検証してきた私が思うに、中小商圏で顧客層が広いGMSにはユニクロ的な垂直統合型SPAよりしまむらやフォーエバー21的な水平分業型バイイングSPAの方が適しているのではないでしょうか。もっと正確に言えば、GMS衣料部門は多様な手法で様々な顧客を取りこぼしなくカバーすべきで、ベーシック単品を訴求するユニクロ的垂直統合型SPA売場、トレンドやバラエティを訴求する水平分業型バイイングSPA売場、ブランド付加価値を訴求するライセンスブランド売場(米国JCペニー復活の突破口となった)を目的別に組み合わすべきと思われます。
 両社の新チャレンジSPAが立ち上がって顧客がどんな反応を示すのか待つべきですが、06年と同様、極端な一方向へ突っ走る衣料部門改革が良い結果をもたらす事はないでしょう。
 2010/08/24 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

プレッピーシフトを見落としたユニクロの苦悩
 この春夏のユニクロの不振はチノブームを予測できずに「UJ」に集中した事が要因の一つと思われますが、チノ人気とデニム不振の兆候は一年以上前から米国の販売動向に顕著に現れていました。ダメージデニムに象徴されるアバクロが昨年、既存店二桁減に陥ったのは高価格がリーマンショック以来の消費不振に直撃された事に加え、米国カジュアル市場がワークからプレッピーにシフトした事が要因と指摘されています。『デニム=ワークVS.チノ=プレッピー』の図式が米国カジュアル市場に浸透し、デニム軸ブランドが失速してチノ軸ブランドが浮揚したというのです。それが一年遅れで日本市場に波及したのが今春夏のチノブームだったのでしょう。
 日本市場でもプレッピートレンドは昨秋冬期から始まってレタードカーディガンやカレッジトレーナーが復活していましたが、今初夏以降の消費復調気分の中でカジュアルがキレイ目シフトしてチノブームとなったと思われます。この傾向は来春夏も続き、プレッピーやIVY、クラシックやアウトドアが主要なトレンドとなりますから、ワークイメージの強いジーンズやハードな加工は当分、影を潜める事になるのでしょう。
 プレッピーシフトが米国で先行していたのに、なぜユニクロはトレンドを見誤ったのでしょうか。その要因は、素材からの開発を追求するにつれ開発期間が長くなり、急成長でロットが膨れ上がるにつれ生産期間も長くなり、商品政策の意思決定がシーズンの1年も前に行われるようになった事が大きいと思われます。1年前の意思決定では市場の販売動向から2シーズンもずれてしまい(11SSを9SSの動向で判断するしかない)、プロダクトアウトが極まってしまいます。ゆえに今春夏のような大空振りが起こってしまうのです。
 垂直統合で素材から品質を追求する限り開発リードタイムは短縮出来ず、今回のような大空振りが頻発する事は避けられません。そうかと言って無理に開発期間を短縮すれば、今夏のシーズン商品のような品質の低下を招いてしまいます。品質神話の巨大SPAというビジネスモデルゆえの相克にユニクロは苦しんでいるのです。ユニクロはまさしくトヨタ的リスクに直面していると言うべきでしょう。
 2010/08/23 09:00  この記事のURL  /  コメント(0)

秋物立ち上げは順調
 昨夕は月例の「販売データ交換会」(婦人服)を開催しましたが、ファーのベストやニットポンチョ、トレンチコートやブーツなど秋物の動きが順調で、この秋冬は前年割れを脱却できそうという手応えを感じました。7月の全国百貨店既存店売上も1.4%減と前年クリアまであと一歩と復調し、都内主要百貨店の8月売上も18日段階では全館売上はもちろん、婦人服も紳士服も前年をクリアしている店が多いようです。松屋銀座本店などゲゲゲ催事が大当たりして入店客が急増し、ほとんどの部門が二桁増だそうです。伊勢丹新宿本店も婦人服、紳士服とも前年をクリアしており、グッチやシャネル、エルメスが好調な特選は二桁増と報告されています。
 景気や株価は再失速が危ぶまれていますが、リーマンショックから二巡してようやく消費は本格的に復調しつつあるようです。負け癖がついていた百貨店業界や衣料品業界も気分一新し、積極的に仕掛けるタイミングでしょう。消費文明を復興すべく頑張りましょうネ!
 2010/08/20 12:27  この記事のURL  /  コメント(0)

百貨店は漁夫利頼み
 日経MJの百貨店調査に拠れば、09年度の百貨店既存店売上は9.6%減少し、前年を超えた店舗は調査対象全226店中、6店舗に過ぎなかったとか。しかも、その6店舗の内、伊勢丹吉祥寺店、中合会津店、大和上越店は閉店セール効果、西武旭川店は丸井今井の閉店効果、大丸札幌店は西武の閉店効果、新宿マルイは前年が改装中だったことの反動効果と言うから、実力で売上を伸ばした店は皆無だった事になる。いかに逆風下とは言え、営業努力で増収を果たす店が一店や二店はあってもよいと思うのだが、情けないと言うしかない。これが負け癖がついてしまった今の百貨店の実情なのだろう。
 数少ない増収百貨店で目立つのがライバル店舗の閉店による漁夫利効果だ。大丸札幌店の西武閉店による漁夫利効果は他に三百貨店があるため約8ポイントに留まるが、丸井今井の閉店で一店だけになってしまった西武旭川店は20ポイント以上、伊勢丹の閉店で一店だけになってしまった東急百貨店吉祥寺店は22ポイント(4〜7月)も押し上げられている。まさに漁夫利と言うしかない。百貨店人にプライドというものがまだ残っているなら、漁夫利ではなく実力で増収を見せて欲しいものだ。
 2010/08/19 08:58  この記事のURL  /  コメント(0)

退化と進化?
 欧州高級ブランドビジネスの今上半期決算が発表されましたが、各社とも米国の復調と新興国市場の急拡大で増収大増益となりました。LVMHは売上が16.5%、純利益は52.8%も伸び、PPRも売上は3.6%増に留まったものの純利益は113.3%も伸びました。LVMHでは日本を除くアジアが25.7%増だったのに日本は1.2%減、PPRでも同22.2%増に対して6.1%減、エルメスも同50.8%増に対して2.9%増に留まったそうです。興隆するアジアと衰退する日本の明暗が現れていますネ。
 高級ブランド消費が拡大するアジアを進化、衰退する日本を退化と見るべきか否かは意見の割れるところでしょう。アジアがブランド神話に飛びついているのは発展途上で上昇志向が強いからであり、成熟してものに固執しなくなった日本はブランド神話を卒業したのだ、という見方もあるからです。でも、上昇志向もブランドへの憧れも失ってエコ低温消費に走れば、消費は萎縮し経済の活力も損なわれてしまいます。金は天下の回りものですから、経済発展のためには消費の活力は不可欠です。エコ低温消費体質は明らかなガラパゴス的退化であり、そこから離脱しない限り経済の活況は戻らないでしょう。経済の活力を取り戻すためにも消費文明を復興するためにも、ゆとりのある方々はブランド消費を増やして欲しいものです。高級ブランドが次々と日本市場に見切りをつけて撤退して行けば、消費文明の華も枯れてしまいますよ。
PS・・・・投稿されたコメントを読むと拙宅を板橋の大山町と思っている方もおられるようですが、渋谷区の大山町、代々木上原駅からまっすぐ登ったユニクロ御殿通りです。
 2010/08/18 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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