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大丸さん御立派!
 19日付けの日本経済新聞に拠ればJフロントリテイリングの今3〜8月期連結営業利益は従来予想を20億円も上回って60億円程度になりそうとの事。それでも前年同期比では6割減ですから自慢になりませんが、売上が従来予想を50億円下回って13%減となった割りには健闘したという事なのでしょう。こんな事がニュースになるほど百貨店の低迷は深刻なわけですネ。
 Jフロントリテイリングの主体は大丸さんですが、心斎橋北館への駅ビル並み歩率による駅ビル系手頃ブランドやセレクトショップの大量導入、低価格クロージングSPA“PSFAプラチナ”や低価格カップルSPA“イーブス”、低価格婦人靴SPA“エスペランサ”など低価格ブランドの積極導入、札幌店以来積み上げて来た合理的な売場運営体制など、他百貨店が売上不振に手を拱く中も積極的な革新が注目されます。今回の営業利益嵩上げも、これらの努力に加えて業務の効率化と経費圧縮を積み上げた成果と評価すべきでしょう。多くの百貨店が座して死を待つ中、大丸さんは御立派ですよ!
 そう言えば、ミレニアムリテイリングの“リミテッドエディションbyアツロウタヤマ”も予想を上回る好調なスタートを切ったようです。ミッシー狙いの等身大企画はトレンド感こそ希薄なもののNB価格の半値に近いお手頃価格のインパクトは期待以上で、既に欠品が続出しているとの事。これだけの低価格を絞り出した決定打は買取りの断行にあったわけで、それだけに売れ筋の欠品は不可避の宿命なのでしょう。とまれ、高コスト体質を価格に転嫁して顧客を失い存続を問われている百貨店が、一部とは言えコストを削減し価格を抑制して生き残りの突破口を模索している事は評価すべきと思います。
 とは言え低価格政策だけでは駅ビルなどと同質化してしまい、百貨店の独自性が失われてしまいます。完成度の高いアナログ商品や高級ブランドを合理的な価格と洗練されたサービス(顧客対応や文化催事も含む)で提供するのが百貨店の責務ですから、納入業者との重複業務や後方業務に関わる余剰人員を整理して経費を圧縮し、歩率を大幅に圧縮するか(残念ながら業界が一斉にやらない限り価格は下がらない)顧客値引きを最大20%まで拡大して価格合理性を回復すべきでしょう。
 百貨店の改革は瀬戸際まで追い詰められてようやく途に就いたばかりで、業界の崩壊を食い止められるか予断を許しません。米国の例を見ても百貨店は統合の果てに納入業界ともども心中の道行きを辿っています。革命的な指導者が現れて業界ごと一新しない限り、もはや破滅は避けられないでしょう。
 2009/09/23 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

苦境に足掻いて傷を深める企業の共通点
 今朝の朝日新聞にライトオンの全段広告とジーンズメイトの見開き2P広告が載っていましたが、どちらも一見して大空振りの予感がしました。ライトオンが訴求するブラック&クールな‘ニュースキニーデニム’は既に店頭でも見ていましたが、今どき法外なNB価格、かつ今のトレンドたる緩いレイヤード感覚を真っ向から否定するもので、独りよがりでマーケットと乖離してしまいそう。ジーンズメイトは‘創業50周年大感謝祭’と銘打って1990円NBジーンズとセールを大々的に訴求していましたが、見開き紙面に飛び跳ねる従業員達と経営者?のジーンズルックが今のものとは思えないほど時代ずれして鮮度がまったくなく、はっきり言って野暮過ぎます。これではとても買いに行く気にはなれないでしょう。
 ライトオンは今年2月以降、既存店売上が二桁前後のマイナスを続け、直近の8月では76.6と大きく落ち込んでいますし、ジーンズメイトも特売効果が剥げて8月の既存店売上は86.2と落ち込み、10年2月期の売上を5%減(既存店は7%減)、上場来初の営業赤字転落を予想しています。両社とも商品政策がマーケットと乖離して苦戦を続けており、何をやっても顧客の手応えが見えない情況でしょう。そんな時に力任せに動いても顧客は乗らず空振るだけです。手応えが見えない時は大きく動かず体力を温存し、在庫運用や経費コントロール、業務プロセスの精度向上で物とキャッシュの動きを効率化し、収益基盤を強化するのが鉄則だと思います。手応えがないのに足掻けば出血が酷くなり、回復のチャンスも遠のいてしまうからです。
 ライトオン、ジーンズメイトに限らず、苦境に足掻いて傷を深めている企業にはある人事的共通点がありますネ。お家の存続を脅かす経営者のミスジャッジに警鐘を鳴らしておきましょう。
 2009/09/18 09:19  この記事のURL  /  コメント(0)

退店ラッシュに見る溝金感覚
 先週末にクライアントの方々と東京郊外のSCを一周する機会がありましたが、何処のSCも撤退店舗の囲いが点在し、あるいは撤退店舗の跡を居抜きで取り繕う催事営業売場が目立つなど、昨年までとは一変した惨状を実感させられました。BC級デベのBC級SCがシャッター街化しているのはやむを得ないとしても、A級デベのA級大型SCまでこの惨状ですから、消費の冷え込みは並み大抵ではありませんネ。上場大手チェーン15社の合計を見ても今春以降は出店より退店が上回る情況ですから、SCの空き区画が急増するのも当然でしょう。
 当社は過去20年間の出店と退店の浮き沈みをリズムとして捉えていましたから、07〜08年前半の出店過熱を見て『そんなに売れない店出してどうするの!』と何度も警告を発して来ましたが、勢いに乗っている時は誰も耳を貸しませんでしたネ。リーマンショックを契機に消費の熱が一気に冷めると採算割れ店舗が急増し、背に腹は替え難く撤退ラッシュとなってしまいました。出店にも何千万円という金がかかるけど退店にも除却損など大差ない金が消えて行きます。海外ブランドの買収ほどではありませんが、‘溝に金を捨てる’馬鹿らしさには変わりありません!皆で渡ってもダメなものはダメですから、これからも出店は慎重に・・・・・
追伸/10月15日に『SC出店戦略ゼミ』を開催します。新設・増床予定SCを検証して売上を予測するとともに、最新の出店条件動向を報告します。乞う御期待!
※『SC出店戦略ゼミ』のご案内はこちら
 2009/09/17 09:03  この記事のURL  /  コメント(0)

ららぽーと新三郷はボリュームゾーンSC
 月曜の午後にららぽーと新三郷のプレス内見会があって、できたてホヤホヤのSCを一周して来ました。新三郷駅からららぽーとに繋がるブリッジに立てば、左手にイケアのブルーの大きな平屋が拡がり、右手には細長い二階建てのららぽーとの奥手にコストコが遠望されます。道路と駐車場で隔てられたイケアとは歩いて回遊する距離感ではなく、細長いららぽーとの一番奥の2F通路で繋がるコストコとも行き来する感覚は希薄で、無料の循環バスが回るとは言え回遊性には疑問符が付きます。イケアもコストコもモールとは購買局面がかなり異なりますから、三者を一体の商業施設(合計店舗面積は131,947平米)と捉えるには無理が在ると思います。基本的にはららぽーと単体(店舗面積59,400平米)の商業施設と見るべきでしょう。
 ららぽーと新三郷の特徴は低価格大型専門店の比重が極めて高い事で、大目玉のH&Mを筆頭にユニクロ、無印良品、ニトリ、アカチャンホンポと揃う様はまさしくボリュームゾーンSC(ZARAとAZULはややハイグレードでこの範疇には入らない)。モールの内外装もこれまでのららぽーとと較べれば軽装備で、足元型のららがーでんに近い印象でした。もう1つ特徴的なのは、京王百貨店のサテライトストア、暮らす服、ファッションヴィレッジ、ゴールデンベアなど、1Fにミセス/アダルト向けの専門店が揃っている事。多くの郊外SCはニューファミリーに片寄ってミセス/アダルト向けは手薄でしたから、これだけ揃うと目立ちますネ。
 注目されるのは二駅隣の巨大SCイオンレイクタウン(店舗面積218,483平米!)との競合で、西をイオンレイクタウン、東をつくばエクスプレス沿線のSC群や柏商業集積に阻まれ、西〜南〜東を中川と江戸川に阻まれるららぽーと新三郷の商圏は極めて狭いのが現実。三井不動産は初年度売上265億円を見込んでいますが、当社の売上予測計算ではH&Mという大目玉が無ければ222億円にしか届かず、H&M効果とイケア/コストコとの相乗効果で幾ら載せられるかが注目されます。ざっとした計算では250〜260億円に着地するのではないでしょうか。
 2009/09/16 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

フリーズマートは黒船ファストSPAと戦えるか?
 フリーズマートの1号店が6日にラゾーナ川崎にオープンして初日620万円を売り上げ、以降も日販150万円のペースで飛ばしているそうです。同店はフリーズショップからの転換ですが、フリーズショップだった時の3〜4倍の売上ペースと言いますから、「フリーズショップが食われちゃう」という社内の不安も頷けますネ。
 その意味で注目すべきは2号店の自由が丘で、1Fがフリーズマート、2Fがフリーズショップという大胆な試み。フリーズショップがオリジナルはアパーモデレート、セレクトはボリュームベターという価格帯に対し、フリーズマートはオリジナルがロワーモデレート、セレクトでもアパーモデレートにかかる程度とほぼ6掛け価格ですから、「フリーズショップが食われちゃう」というリスクは確かにあります。でも自由が丘店を見る限り、内装も陳列もまったく次元が違って客層も異なり、直接的な食い合いは避けられそう。
 フリーズマートがほぼテイスト別にギッシリと単品構成されたやや量販ぽい空間であるのに対し、フリーズショップはルック提案のシングルハンガーとテーブルがゆったりと散在するエレガントな空間で、顧客もフリーズマートが20代までの学生やOLであるのに対し、フリーズショップは30代以上のヤングミセス〜キャリアと上手く棲み分けようとしています。でも、これは山の手住宅地の自由が丘ならではの例外的対応であって、フリーズショップがOL層を顧客とする駅ビルでは食い合いは避けられないでしょう。駅ビルやファッションビルの性格によってどちらか一方だけを出すように割り切るしかありませんネ。
 フリーズマートに‘ファストなセレクトSPA’というインパクトがどれほどあるか、ちょっと疑問符も付きます。LAブランドの別注品などフォーエバー21と重なる商品も見られるものの、価格水準はH&Mやフォーエバー21よりひと回り以上高く、‘劇安’という感覚には遠いと思います。加えて、50坪級というブティックサイズも数百〜千坪級のH&Mやフォーエバー21に較べるとコンパクトに過ぎます。黒船ファストSPAと正面切って闘うには、せめて300坪級のスケールとH&Mクラスの低価格が必要なのではないでしょうか。
 黒船ファストSPAが1店で60〜200億円超を売り上げ、来年中には両社で1ダースを超えて1000億円以上を奪おうという勢いの前に、50坪級で5億円程度を売るコンパクトな店を2ダース程度出したところで百億円少々で勝負になりません。感度もMDの仕掛けも期待通りなのですから、ここはスケールと価格の勝負を賭けて欲しいものです。頑張れ国産ファストSPA!!!
 2009/09/15 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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