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欲望とコストを清算する必然のカタルシス

 日曜の日経新聞朝刊のコラムで12月の輸出総額35%減、新車販売台数22.3%減、工作機械受注71.8%減、鉱工業生産指数11.4%減という経済収縮の惨状が報告されていましたが、その中で百貨店売上高が9.4%減というのは意外に思えます。セールの前倒しなど営業努力で下支えした結果でしょうが、2月3月の春商戦では二桁減が避けられないでしょう。12月でも高級品に特化した百貨店は20%減と悲惨でした。
 恐慌が実態経済に波及して生産も雇用も消費も収縮スパイラルに陥る中、ファッション消費は意外に底堅いというのが私の実感。確かにラグジュアリーブランドや高級プレタは6掛け7掛けの惨状で、百貨店NBも平均すれば9掛け割れというのが冬商戦の趨勢でしたが、駅ビルやSCの平均は水面前後を保っており、自動車産業や家電産業が集中する中京・東海地区を除けば百貨店のような大幅な落ち込みは見られません。ファッション消費総体が落ち込んでいるのではなく、バブルなコストが乗った割高な流通からコストの低いお値打ちな流通へ消費が移動しているのが実態のようです。
 恐慌の現実に直面した消費者は皆それぞれに支出の総棚卸しを行い、不要不急な支出や不合理に割高な支出を抑制しているのだと思います。派遣社員の雇い止めに始まった雇用収縮が正社員にまで及ぶのは避けられず、支出の棚卸しは一段とシビアにならざるを得ないでしょう。となれば、法外な歩率が乗った百貨店流通や極端にロスの大きい量販店流通は崩壊せざるを得ません。
 百貨店は自前のレジ&包装体制の廃棄やスタッフ組織の圧縮でコストを抑制して消化仕入れの歩率を半減するとともに、SPA型(セレクトSPA含む)調達の自主売場を拡充してバリューと収益の両立を実現しないと破綻は避けられないでしょう。量販店衣料部門は一方的な顧客の切り捨てをやめて品揃えを緻密にし、調達射程の短縮と投入の高頻度化、適確な在庫編集運用によってロスを圧縮し、バリューを高めて顧客に応えるべきでしょう。SPA企業にしても原価率を高めてバリューを革新し(35%以下では顧客が離れる)、多頻度投入や在庫編集運用によって消化回転を高めロスを圧縮する努力が不可欠です。
 恐慌はバブルに肥大した消費者の欲望と企業のコストを清算する必然のカタルシスであり、地球と人類文明の破綻を回避する神々の鉄槌に他なりません。欲望にも資源にも限りがあるのです。
 2009/01/26 10:02  この記事のURL  /  コメント(0)

SC開発の現実は厳しい!!

 木曜の午後、大阪でクライアント向けのディレクションが終わった後、電車を乗り継いで琵琶湖岸の瀬田まで行き、氷雨の降る中をタクシーを捉まえてイオンモール草津に辿り着いた時はもう夜の帳がとっぷりと降りていました。
 滋賀県最大のSCとして昨年11月26日(プレオープンは21日)に開業したイオンモール草津はサティとワーナーマイカルシネマズを核に186の専門店が揃う商業施設面積約92,000平米の本格的RSCですが、アズール・バイ・マウジーやコーエンという目玉?はあるもののGAPやZARAといった外資系はもちろん、ポイント系などメジャーテナントの多くが欠落していて(マルキュー系だけはなぜか揃っている)、ちょっと期待外れでした。9月20日開業のピエリ守山(大和システムが開発/店舗面積79,000平米)や11月21日開業のフォレオ大津一里山(大和ハウス工業が開発/店舗面積41,463平米)などと重なってテナントリーシングが厳しかったのか二軍級のローカルチェーンが目立ち、空き区画や催事営業区画も幾つか見られるなど苦戦の跡が伺えました。それでも二軍三軍級テナントばかりで空き店舗や催事営業店舗が目立つピエリ守山やフォレオ大津一里山の惨状よりは遥かにましで、地元では『イオンモールしか残らないね』ともっぱら噂されているそうです。これで10年夏に三井不動産のアウトレットパーク滋賀竜王が開業すれば、空き店舗はもっと増えそう。大恐慌の御時世にこんなにSC作って、いったいどうするのでしょう。
 イーアスつくばで二軍級テナントが多数を占めるのは致し方ないにしても、メジャ−デベたるイオンモールの大型物件、しかも事前の売上予測も合格サインが出ていたSCでテナントリーシングが苦戦するなど、昨秋からの出店意欲の冷え込みは予想以上に深刻なようです。SC開発の現実は厳しい!!
 2009/01/23 13:26  この記事のURL  /  コメント(0)

ローエングリンにハマりました

 月曜の夜、ふとTVをつけるとNHK教育TVでワーグナーのローエングリンをやってました。根っからのワグネリアンである私は早速、BOSEのサラウンドシステムを起動して50インチプラズマで至高のロマンティックオペラを堪能。さすが三幕3時間30分の長丁場で、11時半まで夜更かししてしまいました。
 ローエングリンと言えば三幕の婚姻の合唱が有名で結婚式には必ずと言ってよいほど使われますが、筋書きは女性不信を極めた悲劇で、結婚式の高揚から一転し女性の惑いによって一夜にして破局に至るのです。なんだか夕鶴を逆転したような話で、翌朝には聖杯の騎士ローエングリンは去り、復活したゴッドフリート王子の胸でエルザ姫は息絶えて大団円となってしまいます。結婚式には絶対ふさわしくない曲だと思うのですが、なんで誰もが使うのでしょうか。
 中世に題材を取ったワーグナーの楽劇では女性不信、とりわけ性愛の否定が色濃く?、タンホイザーなど性愛を謳歌するヘレニズム文明を象徴するヴェーヌス(ヴィーナス)とストイックな中世キリスト教文明の相剋がテーマとなっています(河村錠一郎著の「ワーグナーと世紀末の画家達」に詳しい)。ワーグナー自身は不倫に身を焦がすヘレニズム的女性関係が有名で、トリスタンとイゾルデでは許されぬ不倫の果てに死に至る耽溺のロマンチシズムが極限の美しさで表現されています。ワーグナーの楽劇は中世の残滓と近代の解放の狭間で揺れ動く二重のライトモチーフに彩られた希有なる傑作だと思います。
 ローエングリンはル−トヴィヒ二世やヒトラーが耽溺した事でも有名で、とりわけヒトラーは第三幕の大団円で騎士達が「ドイツの国土のためにドイツの剣を取れ」と大合唱するクライマックスを政治集会で常用したそうです。私もこのクライマックスの高揚感が大好きで、SPACのコンベンションでよく使います。2月5日のニューイャーコンベンションもローエングリンで演出する事になるのでしょう。乞う御期待です!
 2009/01/21 09:19  この記事のURL  /  コメント(0)

B級SCと二軍級チェーンに注目!!
 休日の午後、冬休みに行きそびれた“イーアスつくば”にようやく出掛けました。遥か茨城県は筑波山の梺近くという事で車は使わず、SC巡りで乗り馴れたつくばエクスプレスで行きましたが、代々木上原から千代田線に乗って北千住で乗り換え、区間快速で研究学園駅まで80分ほどかかりました。筑波山を間近に見る野原のまん中の駅を降りると何にも無い駅前にマンション群が建築中で、その向こうに“イーアスつくば”がチラリと見えました。
 人影疎らな駅前から徒歩3分ほどで到着すると、3700台収容の駐車場は満杯状態でモールも隅々まで人で溢れ、予想を超えた活況にちょっとビックリ。小型軽量SC専業デベの大和ハウス工業の開発ながら商業面積8万5000平米級とRSCサイズで、3層モール+4F/屋上駐車場の建築も立派なRSC仕様。地域最大のSCで広域を制圧出来る位置に在り(イオン土浦SCが出来ると東方向は削られるが)、当社の売上予測も約320億円(デベの目標は300億円)とRSC級です。
 デベの性格からB級SCと見られがちでRSCとしては破格の低家賃条件だったと聞きますが、テナントの顔ぶれを見ると半分以上は知名度の怪しい二軍級や催事業者で、RSCでお馴染みの一軍級は4割そこそこ。“GAP”や“ZARA”などのグローバル勢は皆無で、ポイント系も出ていません。出店しているSPACメンバー企業に聞いたところ売上は月坪25万円前後と好調、なんだかんだの実質坪家賃(共益費/共同販促費/駐車場協力金なども含んだ合計)は2万円強とかで、下手なRSCより儲かっちゃうようです。
 ここ2〜3年は資材の高騰でSCの建築コストが急上昇し、景気の高揚期だった事もあってデベもアップスケールな仕様と構成を志向したので、有力デベの開発するRSCでは実質坪家賃は4万円にも達していました(家賃以外にも共益費9000円、駐車場協力金2500円などが加算される)。景気の急冷却で売上が苦しくなって来ると家賃負担が重く、高家賃のRSCに疑問符が付き始めていた昨今、家賃の安いB級SCや空き区画への居抜き出店を狙う二軍級チェーンが急台頭して来たのです。
 “イーアスつくば”にはRSCでは見かけない店が沢山出店していますが、調べてみると本社はローカル中小都市(中には○○町や○○村も)ながら既に二桁店舗を布陣している会社も多く、中には全国展開を始めている会社も。RSCで光るようなパキッとしたコンセプトや目を惹く店舗環境ではないものの、手頃な価格と現実的な品揃え(一軍チェーンの真似が多い)、ローコスト経営が共通しているようです。彼等の中からやがて、スタジオクリップやハートマーケットのようにコンセプトを確立して一軍に伸し上がるチェーンも出て来るのでしょう。大恐慌の御時世、ローコストなB級SCと二軍級チェーンに注目です!!
 2009/01/19 09:51  この記事のURL  /  コメント(0)

『09AW MDディレクション』が完成しました
 11月から悪戦苦闘しながら詰めて来た『09AWレディスMDディレクション』がようやく完成しました。12のスタイリングテーマはとっくに決定していたのですが素材ボードが難航。ピッタリの素材を探すのが大変で、テキスタイラー提供の新作素材に加えてユーズドを探したり加工を加えるなどし何とかイメージに近付けました。御時世を反映して等身大なリアルクローズのテーマがほとんどでコージー/ネイティブ/メルヘン/レトロ/デジャビュといったところがキーワードになっているのですが、中にはTOKYOコミック感覚や80'Sグラマラスなテーマもチラホラ。あんまり清貧ばかりでは面白くないですものネ。
 という訳で1月16日から契約各社へのディレクションが始まり、2月6日にはビジュアル資料を御用意して当社ミーティングルームでささやかに公開セミナーを開きます。何せ定員20名の会場ですので、お早めにお申し込み下さい。
※セミナー詳細はこちら
 2009/01/16 09:49  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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